メギド――断罪の炎――(後編)

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メギド――断罪の炎――(後編)  ◆KKid85tGwY



翠星石が、その手に持つ如雨露を振るい地面に水を巻く。
金色の装飾が施されたそれは、紛れも無くただの如雨露。
如雨露は地面に水を撒き散らすための道具であって、およそ武器になるとは想像も付かない物だ。
しかし薔薇乙女の振るうそれならば、軍事の常識も覆すような武器と化す。

翠星石の足下から闇が何本も立ち上った。
それは一瞬で翠星石の姿を覆い隠し、天へと上っていく。
闇の正体は影。地面から異常な速さで成長させられた蔓のような植物の影だった。
蔓はその巨体をうねらせて、先端からヴァンとクーガーに向かう。
ヴァンの視界全体を蔓が埋め尽くし襲い掛かってくる。

「マハラギオン」

視界全体に広がっていた蔓が、瞬時にして炎に巻かれる。
炎の高熱は巨木を凌ぐ質量の蔓を容易く消し炭にしていった。
狭間が詠唱したのは火炎を拡散して敵全体を攻撃する魔法・マハラギオン。
翠星石の攻撃が植物の物であることを瞬時に見抜き、その弱点となる火炎で防いだのだ。
狭間が魔法戦闘に卓越している点は、その絶大な魔力と同時に、
瞬時に戦局を見極めて、それに適切な対応ができる頭脳にある。
蔦がヴァンに届く前に全て焼き払うことができた。

(……クーガーはどこだ!?)

狭間は先ほどまで眼前に居たクーガーの姿が無いことに気付く。
一瞬、蔦の攻撃を受けたのかと思ったが、すぐにそれは無いと思い直す。
あの誰よりも速さに優れたクーガーが、そんな愚鈍なはずが無い。
おそらく狭間よりも、誰よりも早く攻勢に転じたのだ。

時間を僅かに遡る。
遡ると言っても、ほんの数秒前。
蔦がクーガーに伸び始めた瞬間。
突如、周囲の地面に穿たれたような穴ができる。
そこから光の粒子がクーガーの両脚に集まり、桃色の装甲が形成される。
周囲の物質を分子レベルまで分解、そして再結合させるアルター能力。
クーガーの融合装着型アルター能力『ラディカル・グッドスピード』。
その脚部限定状態を形成したのだ。

踵のピストンを利かせて急発進。
人間の運動力学を超えた加速は、一歩目からトップスピードに到達。
視界を埋めつく蔦の、津波のごとき攻撃範囲から瞬時に脱出した。
面制圧攻撃すら余裕を持って回避する、ラディカル・グッドスピードの走行速度。
それはクーガーの身体を銃弾のごとき速さまで加速していた。
クーガーはその速さを保ったまま、急旋回する軌道を取り、
翠星石の側面に回り込む。
そしてラディカル・グッドスピードの気圧噴射によって更に増した加速度を活かした蹴りを放った。
衝撃波(インパルス)と共に放たれる神速の蹴撃・シェルブリットをこう呼ぶ。

「衝撃のファーストブリットォォォ!!」

クーガーの蹴りが炸裂。
空間に衝撃波と紫色の光の波紋が広がる。
しかし蹴りは翠星石に届かない。
翠星石が水銀燈と同じ要領で張ったバリアである。
いかにクーガーが速くとも、攻撃が来るタイミングの大体の見当が付けば、
予めバリアを張っておいて防ぐことが可能。
そして今の翠星石が張るバリアは、シェルブリットをすら防ぎ切る堅牢さを発揮していた。

シェルブリットの反動を受けて弾けるように後方に飛ぶクーガー。
その着地地点へ向けて、翠星石は雛苺と真紅から受け継いだ能力で追撃に掛かる。
両手から轍と花弁を飛ばしたのだ。
矢のごとき速さで伸びる轍だが、クーガーの初速はそれを上回る。
着地とほぼ同時に横っ飛び。轍を回避する。
しかし追撃の手は、そこから更に伸びる。
轍と沿うように飛んでいた花弁の群れ。
それが轍から離れて、一本の鞭のごとくに伸びる。
クーガーの腕に巻きついたそれは、身体ごとを軽々と引きずり落とす。
地面に叩き付けられ、引きずられるクーガー。

「ブフダイン」

翠星石に氷片の混じった大気が叩き付けられる。
同時に翠星石の周囲の大気も急激に冷やされ凍結していく。
凍結魔法・ブフダインは標的を周囲の大気ごと凍結させる魔法。
そして狭間が放ったそれならば、瞬時にして大気を融点以下まで冷却することが可能。
その上ブフダインは標的単体のみに絞って攻撃することができるので、クーガーには被害が及ばない。
クーガーも動きを止めた花弁から脱出することができた。

凍りついた大気に覆われた翠星石。
しかし凍結の内部、翠星石の身体から紅い光が漏れる。
太陽のごとき赤い光。
翠星石を覆う氷結が、一挙に内部から破砕される。

(……何という力だ!!)

幾多の悪魔と戦って来た狭間だが、それでも翠星石の発揮する異常な力には驚きを禁じ得ない。
単純な出力において、これほどの強大さを示した者は初めて見る。
狭間の魔力が最大の状態でも比肩し得るかどうか。
まして消耗した今の状態では――――

「ドルミナー」

敵を強制的に眠らせる魔法・ドルミナーを翠星石に掛ける。
しかし先ほど同様、翠星石の紅い光に遮られて効果を発揮しない。
あの光は、シャドームーンがランダマイザを防いだ際の光と似た性質の物であるようだ。
ならばランダマイザも同様に翠星石には通用しない公算が大きい。
それどころか魔法による搦め手は、ほとんど通じない公算になる。
どうやら翠星石と言う“敵”は、狭間の予想以上に厄介な存在だったらしい。

カシャ カシャ カシャ カシャ

どこか壊れた機械を思わせる、ぎこちない足音。
それと共に白銀の鎧から生々しい血肉を露にした姿が、狭間の横から進み出る。
シャドームーンがその傷だらけの姿に、並ならぬ覇気を纏い進み出てきたのだ。

「……貴様が持っていたとは、探す手間が省けたな…………」

狭間との契約において、シャドームーンは自分の安全を保障させている。
しかし、シャドームーンにとってそれはあくまで首輪解除の際の安全を保障するための物。
戦いにおいて自分の身を護衛して貰おうなどとは、露ほども考えていない。
翠星石がいかに強大であろうと、自らの危機にはあくまで自分の力で応じる。
それこそが世紀王の在り方なのだ。

何より今のシャドームーンにとって、翠星石の強大さ以上に、
その力の源泉が問題だった。

先ほど、上田は翠星石に紅い宝石を渡したと言っていた。
そして今の太陽を思わせる紅い輝き。
その符号で、シャドームーンは嫌でも気づくことができた。

「…………どうやって取り込んだかは知らんが、貴様には過ぎた物だ。
返して貰うぞ。本来の所有者たる世紀王の私に。もう一つのキングストーン、太陽の石を」

翠星石の中にあるキングストーン。
それは本来、ゴルゴムの王のみが所有を許される。
そしてシャドームーンの持つ月の石と、翠星石の持つ太陽の石。
この二つを“世紀王”が併せ持った時、究極の存在“創世王”へと進化を果たすことができる。
世紀王の大望を果たすため、シャドームーンは翠星石へ殺意を向ける。

シャドームーン以外の者には、キングストーンが何なのか見当も付かない。
それでも話から推測するに翠星石の中に在るその物体が、出力源になっているらしい。
しかし狭間にとって問題となるのは、その出力源がどんな物であるかより、
シャドームーンがそれを回収しようとしているらしいことだ。
無論、それは穏当な手段とはならないだろう。
翠星石を殺してその死体から回収するか、あるいはそれに類する方法を取るつもりだと予想できる。
いずれにしても翠星石は無事ですまないだろう。
翠星石とシャドームーン、二人を制圧する必要が出て来たのだ。

(この二人を相手に可能か? 今の私の状態で……)

いずれにしろ、もう考えている余裕は無い。
今更翠星石が退くはずが無いし、シャドームーンも説得で引き下がる相手ではない。
狭間の力でこの場を収めるより他に無いのだ。

狭間がタルカジャとラクカジャを詠唱。
その効果を自分に受けたことを実感したヴァン、クーガー、シャドームーンの三人は、
同時に動き出した。

ヴァンが剣術の踏み込みで、
クーガーがラディカル・グッドスピードのピストンで、
シャドームーンが人工筋肉・フィルブローンの瞬発力で、
同時に翠星石へ飛び掛ったのだ。

三方向からの同時攻撃。
翠星石は左手から薔薇の花弁を、ヴァンへ向けて拡散するように連射。
ヴァンは飛来する花弁を刀で切り払っていく。
高速の剣技は花弁を次々と切り落とすが、絶え間なく発射される花弁の全てに対応することは不可能。
幾つもの花弁が叩きつけるような衝撃をヴァンに与えてる。
ヴァンは翠星石に届くことなく、あえなく墜落。
それでも囮としての役割を果たすことには成功する。

「壊滅の、セカンドブリットォ!!」

翠星石の正面からシェルブリットを打ち込むクーガー。
それもバリアに阻まれて届かない。
しかしそれも囮の役割を果たすことには成功する。
水銀燈のバリアは平面上にしか発生しなかった。
同じローザミスティカで発生させている、翠星石のバリアも同様である。
即ち側面から斬りかかるシャドームーンのサタンサーベルを防ぐことはできない。
サタンサーベルの一閃。
対象的に翠星石の右手にあった庭師の鋏も一閃。
薔薇乙女と共に数百年の時を戦い抜き、刃こぼれ一つ起こさぬ庭師の鋏が、
伝説の魔剣サタンサーベルを受け止めた。
驚くべきは翠星石が片手でシャドームーンの一刀を易々と受け止めたことだった。
しかもヴァンとクーガーを片手間であしらいながらである。
翠星石の戦力が、以前までとは根本的に異なっている事実を端的に示していた。
しかしこの場に居るのは三人だけではない。
四方向目からの攻撃がまだ残っている。

「アギダイン」

単体を標的とするならば最強の火炎魔法・アギダイン。
狭間の詠唱と共に、巨大な火球が発生。
狭間はそれを翠星石へ向けて発射する。
しかしその攻撃にさえも、翠星石は既に迎撃の準備ができていた。
ヴァンとクーガーの攻撃を迎撃し終えた翠星石は、黒羽を飛ばす。
水銀燈が得意とした羽による攻撃。
その最大の長所は速射性と連射性にある。
予備動作のような物が一切無く連続発射することが可能な、羽による攻撃の性能は、
ローザミスティカを通じて、翠星石にも受け継がれている。
そして威力は、水銀燈の時の比では無い。
連続発射された羽は、狭間の放った火球と正面衝突。
結果、火球がまるで誘爆を起こしたように、火勢をその場から激しく四散させた。
発射した狭間のほとんど目の前で。
さしもの狭間も、突然の爆炎に目と耳を奪われる。

それを好機として、今度は翠星石が反攻に移る。
片手に持つ庭師の鋏で、鍔迫り合いをしていたサタンサーベルを、シャドームーンの身体ごと軽々と弾き飛ばす。
そして両手で払うように左右へ広げた。
同時に翠星石から四方へ薔薇の花弁が発射される。
花弁はシャドームーンと、翠星石へ更なる攻撃を加えようとしていたクーガーを、
衝撃と斬撃で巻き込む。
全身に幾つもの切り傷を作りながら、地面を転がるシャドームーンとクーガー。

「四人がかりで傷一つ付けられんとはな……」

爆炎が晴れて、紅いオーラに身を包む翠星石の威容を見た狭間が思わず零す。
確かに狭間たちは消耗していたが、それ以上に翠星石の戦力が凄まじい。
とても殺し合いの動向においては、ほとんど戦果と呼べる物を上げられなかった者とは思えない。
翠星石を倒すには他の三人との、更なる精確にして巧緻な連携が必要だ。
狭間は更に神経を研ぎ澄まし、自らの魔力を練っていく。

シャドームーンの下腹部に在るシャドーチャージャーが回転。
それは内部のキングストーンのエネルギーがチャージされたことを意味する。
チャージされたエネルギーが緑色の光となって、シャドームーンの胴体から左腕に送られる。
そして更なる収束によって光線となるまで昇華されたエネルギーは、指先から発射された。
速射性と貫通性に優れたシャドームーンの光線技・シャドービーム。
並みの薔薇乙女なら、必殺の武器となり得るほどの光線。
しかし今の翠星石は、既存の薔薇乙女の水準をはるかに超えた戦力を発揮できる。
如雨露の水によって瞬時に蔦を育てる。
高密度に発達した蔦は、今や鋼鉄をも凌ぐ防護壁と化していた。
しかしシャドービームは、その蔦すらも貫いていく。
問題は蔦が地面から成長していく植物だということ。
シャドームーンへ向けて伸びるように成長していく蔦は、
シャドービームに貫かれても、後から更に発生して向かって行く。
秒にも満たない時間の内に、シャドービームと蔦が激しく押し合う。
やがてシャドービームは蔦の後端、翠星石の側の面まで抜けて穴を開けた。
しかしその時点でシャドービームのエネルギーが切れる。
シャドービームは翠星石に届くことは無かった。
それでも、既にクーガーは体勢と呼吸を立て直していた。

クーガーが再度、翠星石に真っ向から突撃する。
同じ相手に、愚直なほど何度も同じ戦方を取るクーガー。
しかしそれも仕方がない。
クーガーのラディカル・グッドスピードは格闘戦以外の攻撃手段を持たない。
どんなに愚直でも誰が相手でも、クーガーは常に己のラディカル・グッドスピードを信じて戦いに臨む。

クーガーが飛び蹴りを放とうとする構えで翠星石へ向けて飛び掛る。
しかしやはり翠星石はそれを予想していた。
いかに翠星石が強大でも、速さという分野ならばクーガーが上回る。
それでも来ると予想できれば、予め張っていたバリアで対応が間に合うのだ。
そしてそれはシャドービームを防ぐ片手間でも可能な
クーガーの蹴りがバリアに阻まれる。
寸前にクーガーの姿が消える。

「!?」

空中に居たクーガーが、一瞬でその場から消えたのだ。
クーガーは空中を飛行することはできない。
ラディカル・グッドスピードからの噴出で方向転換するにしても、
蹴りを放とうとする体勢から、そんな急激な方向転換ができるはずが無い。
クーガー一人の力ならば。

衝撃波(インパルス)が翠星石の頬を撫でる。
クーガーが居たはずの場所と反対の方向から。
そこにクーガーが移動していた。
巨大な紺色の蝙蝠に掴まれて。

それこそ仮面ライダーナイトと契約したミラーモンスター、闇の翼『ダークウイング』。
ミラーモンスターは仮面ライダーに変身をしていなくても、デッキの所有者なら鏡から召喚して使役することができる。
ヴァンがナイトのデッキを自分の刀の刀身に映し召喚したのだ。

その巨大な翼が発する衝撃波ゆえ、クーガーの接近を素早く察知した翠星石。
しかしクーガーの速さの前では、圧倒的に足りなかった。
クーガーのシェルブリットが、遂に翠星石を捉えたのだ。

翠星石の腹に刺さるクーガーの蹴り。
小柄な翠星石の質量はその衝撃に耐え切れず、サッカーボールのごとく弾け飛ぶ。
凄まじい速度で背中に生やした黒い翼から地面に叩き付けられる。

「ッ! そんなへっぽこな蹴り、翠星石に効く訳ねーです!!」

堕天使を思わせる黒い鳥翼は、かつて水銀燈も生やしていた物だ。
翠星石は地面に叩き付けられる直前、それを急激に生やすことでクッションとしたのだ。
翠星石は自分を蹴ったクーガーを憎々しげに見る。
クーガーはシェルブリットを打った反動から立ち直っていない。
それほど渾身の力を込めた一撃だったのだろう。
しかし翠星石には背中から黒い翼を生やすと共に、無数の黒い羽も舞っている。
それらは翠星石の意思で武器とすることができる物だ。
翠星石の周囲を乱舞する黒羽は、一斉に無防備なクーガーに向かい、
そして発射された。

「ジオダイン」

直後、狭間の詠唱が終わる。
同時に発生する閃光。
ほとんど同時に鳴り響く、空気を裂いた轟音。
そして閃光は翠星石に一瞬にして伸び、そして包み込む。
それは文字通り雷速の一撃だった。
雷撃魔法・ジオダイン。
単体の標的に対する雷撃魔法としては、最高の威力を持つ。
狭間の放つジオダインなら、自然発生する雷と同等の雷光と雷鳴、
そして威力を発揮する。
更に標的の肉体に電気を流すため、麻痺させる効果も併発できる。
その上、雷は周囲に側撃を発散する。
側撃は翠星石の発射した羽も霧散させた。

放電を身に纏い、地面を転がる翠星石。
泥に塗れて倒れ伏すその姿は、先ほどまでの威容が嘘のようだった。

「フッ。壊れた人形とは無様な物だ」

シャドームーンが歩み出る。
その両足に、シャドーチャージャーからのエネルギーがチャージされているのを、
狭間は見逃さなかった。

「止めろシャドームーン!! 勝負が付いた以上、翠星石に危害を加える理由は無いはずだ!」

翠星石に殺気を向けるシャドームーンは、狭間の言葉にも耳を貸さない。
この場合は、仕方が無いとも言える。
狭間との契約上、正当防衛で無い限り他の参加者をシャドームーンが殺すことは許されていない。
それを盾に取るため、狭間は翠星石との勝負が付いたと強弁したのだ。
しかし翠星石は一時的に動きを止めているが、あれで戦闘続行不能であるとは思えない。
シャドームーンも、おそらく同じ見解を示しているのだろう。
シャドームーンは確実に翠星石を殺すつもりだ。

狭間の制止も聞かず、シャドームーンは跳躍した。
そして両脚を揃えて翠星石に突き出した。
両脚は翠緑の光を放つほどに、シャドーチャージャーからのエネルギーが込められていた。
それは仮面ライダーにとってのライダーキックに相当する、シャドームーン最大の必殺技・シャドーキック。

狭間はシャドーキックを知らない。
しかし見ただけでも、その尋常ならざる威力は想像がつく。
直撃すれば翠星石は無事では済まないだろう。
一瞬の逡巡も許さない判断。
狭間は魔法を詠唱していた。

「ザンダイン」

衝撃魔法・ザンダイン。
高密度の空気圧、衝撃波(インパルス)その物で単体の敵を攻撃する魔法。
高密度の大気その物が、翠星石に叩き付けられる。
それは翠星石に対する攻撃であり、
同時に翠星石を守る防御でもあった。
高密度の大気が翠星石に叩き付けられたと言うことは、その大気が邪魔となり他の攻撃ができない。
それはシャドーキックもまた例外ではない。

突如発生した急激な気流に煽られ、シャドーキックは標的の翠星石を外れ、
シャドームーンはあえなく宙を舞う結果となった。

「貴様!! 私の邪魔をしたな!」

シャドームーンは故意に邪魔をしたことに気づいたようだ。
ともかく翠星石を守ることはできた。
後のことは後で考える他は無い。
今は翠星石の身柄を拘束、確保することが先決だ。

しかしその目論見は、次の瞬間に大きく裏切られることになる。

翠星石の背中から生えた黒翼。
それが突如うねりを巻き、急激に巨大化。
シャドームーンへ向けて伸びる。
その黒翼の先端で、巨大な顎が牙を剥いて開いていた。
それはさながら黒龍。
飛行する能力の無いシャドームーンは、空中で素早い動きを取ることはできない。
抵抗する暇も無く、巨大な黒龍の獰猛極まりない顎の餌食となった。

シャドームーンの首と腹に黒龍の牙が付き立てられた。
牙は破損したシルバーガードの欠損部分に入り込み、筋肉を裂き血を啜る。
更にシャドームーンはそのまま身体ごと持ち上げられた。
黒龍の凄まじい勢いでその体躯を伸ばし続け、それを受けたシャドームーンは急加速を受ける。
黒龍はそこから更に体躯をうねらせて、シャドームーンを牙で貫きながら地面に叩きつける。
そしてシャドームーンを地面に擦りつけながら、尚も勢いは衰えない。

その黒龍の胴体に、クーガーが蹴りを入れる。
しかし黒龍は小揺るぎもしない。
クーガーの方が反動で弾かれる始末だ。
それでもクーガーは反動で得た距離を、助走に使いシェルブリットの構えを取った。
桃色の装甲で覆われた脚が、ラディカル・グッドスピードの気圧噴射を受けて黒龍に打ち込まれる。
直前、足首に巻きついた轍に止められる。
紅いオーラを身に纏い立ち上がった翠星石の手から伸びた轍。
翠星石が軽く手繰っただけで、轍に引っ張られたクーガーは軽々と宙を舞う。
そして轍を切断しようと刀を構えて駆け出してきたヴァンへ向けて、振り落とされる。
クーガーとヴァンの身体が衝突。
縺れるように転がる二人。

「ブフダイン」

炎や雷では龍や轍を経由して、味方に被害が及ぶ懸念がある。
衝撃波では味方の拘束を解かせるには不足だ。
ゆえに凍結魔法を唱えた狭間。
凍気が轟音を立てて翠星石に襲い掛かる。
しかし不可視の壁に阻まれて翠星石に届かない。
実体を持たないバリアは、それゆえ凍結魔法でも凍りつくことは無く遮断できる。

そうしている間も、シャドームーンは黒龍の餌食となっていた。
その大顎に咥えられたまま、地面を削り続けている。
黒龍の口中から、突如発せられる閃光と放電。
シャドームーンがシャドービームを放電のような状態で撃ったのだ。
内側からの攻撃に黒龍の口が煙を上げて開かれる。
地面に零れ落ちたシャドームーンは立ち上がるのもままならない様子だ。
シャドームーンと言えど限界が近い様子だ。
しかし今のシャドームーンには休む暇も与えられない。
黒龍が再びシャドームーンに迫り来る。
先ほどの黒龍ではない。
翠星石の翼は左右一対の二枚を生やしている。
即ち黒龍もまたもう一頭存在するのだ。
再び牙で貫かれるシャドームーン。
黒龍はシャドームーンを牙で貫きながら、容赦なく振り回す。
そして頭から地面に激突して、更にシャドームーンの頭で地面を削っていく。

「ブフダイン」

狭間が再び凍結魔法を唱える。
ただし今度の標的は翠星石ではなく、その背中から伸びる黒龍の胴体部分。
凍結魔法は首尾よく、翠星石とシャドームーンを咥える黒龍の頭を繋ぐ部分を凍らせた。
胴体の凍った黒龍は狭間の計算通り、その動きを止める。
更にその凍結部分へ衝撃魔法・ザンダインを撃ち込む。
凍り付いていた胴体が破砕。
シャドームーンが再び黒龍の口から零れる。
しかしその身体に力は無く、
壊れた玩具のごとく頭から地面に落ちていった。

「シャドームーン!!」

狭間の悲痛な呼びかけにも反応が無い。
シャドームーンは明らかに意識を失っていた。
狭間からは、命があるのかどうかも判別が付かない。

思わず歯噛みする狭間。
守ると誓ったはずのシャドームーンを危険に晒してしまった。
そしてそれは完全に狭間の失態なのだ。
シャドームーンが翠星石に向けて放ったシャドーキック。
あれを邪魔しなければ、この事態には至らなかった。
あまりにも致命的な判断の誤り。
魔人皇の名においてその安全を保障しておきながら、この様だ。

しかし今は終わったことに拘泥している場合ではない。
シャドームーンの安否を確認しなければならない。
シャドームーンの下へ駆け出す狭間。
しかしすぐにその足を急停止させる。
狭間の眼前を黒い羽が通り抜けた。

「……そんなに銀色オバケが心配ですか?」

翠星石は紅いオーラを増大させて、狭間の前に立ち塞がる。
魔人皇ですら迂闊に出ることを許さない、翠星石の威圧。
翠星石とてダメージは少なくないはずである。
クーガーのシェルブリットや、狭間のジオダインやザンダインを受けて間もないのだ。
しかし今の翠星石には、全くダメージの影響が見受けられない。
不条理なほどの耐久力を示していた。

翠星石の耐久力の所以、それはその身を包み込むオーラにあった。
それはキングストーンのみならず、五つのローザミスティカの余剰なエネルギーである。
キングストーンは言うに及ばず、ローザミスティカもまた所有者の想いに応える力を持つ。
それらを併せ持った際の出力は当然、各々を単体で持つローゼンメイデンや世紀王を上回る物だ。
余剰となるエネルギーもまた莫大な物となる。
その余剰エネルギーが、翠星石の意思を受けずとも、
自動的に防護シールドのように運用されていた。
それはローゼンメイデンにも世紀王にも無い、今の翠星石独自の能力。
ローザミスティカとキングストーンを併せ持った翠星石は、前例の無い領域まで能力を拡張していた。

狭間の推測を大きく上回る翠星石の戦力。
それは万全の状態ではないとは言え狭間、シャドームーン、クーガー、ヴァンの四人がかりでも圧倒される途轍もない強さ。
そしてシャドームーンは倒れ、狭間も疲労の色が出てきている。
狭間の勝算はいよいよ少ない物となって来た。

かつては狭間にとって救助対象だった翠星石。
それが今や、かつてないほどの強大な敵として立ち塞がっていた。


     ◇


かつてはローゼンメイデンの長女として相応しい美しさを誇っていた水銀燈。
しかし今の水銀燈は炎に巻かれて、全身が焼け爛れている。
にも拘らず、水銀燈は平然と立ち尽くしていた。
その傍らで真司もまた立ち上がる。
手足の関節が不自然に捻じ曲がっているが、やはり意に介している様子は無い。
二人の間に薔薇水晶が降り立つ。
薔薇水晶がドアを指す。
途端、水銀燈と真司がぜんまい人形のごとく機械的な足取りで歩き出し、
部屋から退出した。
二人が退出したのを見届けた薔薇水晶は、さざなみの笛を懐に仕舞い直す。

さざなみの笛は死者を生者のごとくに動かすことができる外法の道具である。
本来は殺し合いを主催する立場の者しか使用できない道具であった。
薔薇水晶は主催者側の立場なので、使用の権限を持っている。
問題となったのは死体である。
薔薇水晶は殺し合いの会場を自由に行動できる権限を持つが、それはあくまで殺し合いの進行に大きく干渉しない範囲である。
参加者の死体を回収して使用する権限が自分に在るのか確証は持てなかった。
しかしV.V.に確認を取ってみれば、拍子抜けするほどあっさり承諾を得ることができた。

水銀燈と真司の死体をF-8エリアの民家から回収して、さざなみの笛で操る。
そして翠星石にけしかける。

薔薇水晶がしたことは、主にそれだけのことだった。
後は翠星石に適宜アドバイスをした程度のことだ。
薔薇水晶は決して翠星石に強制はしない。
全ては翠星石自身が選択すること。

それだからこそ、薔薇水晶の本意の通りの選択を翠星石はするだろう。

そして翠星石がもし殺し合いに乗ったのならば、おそらく敵う者は居ない。
六つの賢者の石を有する今の翠星石は、猛者ぞろいの参加者の中でも最強の存在であろう。
今や最強のローゼンメイデンとなった翠星石。
薔薇水晶はただその戦果を待てば良い。

偽りの薔薇乙女は静かに偽りの姉妹を想っていた。


     ◇


「どうしたですか? 大事な大事な銀色オバケを助けに行かないんですか?」
「言われなくともそのつもりだ……」

翠星石に言われるまでも無く、狭間は大事な契約相手であるシャドームーンの救助に急いでいた。
王の契約。翠星石には、その重さの理解も納得もいかないだろう。
その是非を問うことに意味は無い。
折れ合うことは叶わない以上、戦って道を切り開く他は無い。

「愚問ですなぁ、全然大事じゃありませんよ。少なくとも貴女よりは」

横合いから姿を現すクーガー。
翠星石はクーガーを睨み付けるが、
クーガーはその目に闘志を湛えつつも、その表情は侮蔑の色を含まない穏やかな笑みを浮かべていた。

「じゃあ、何で銀色オバケに付くんですか!!!」
「貴女をこれ以上貶めたくないからですよ」

あれほど激しく戦って居たにもかかわらず、クーガーはあくまで穏やかに翠星石へ返答する。
しかし当の翠星石は、クーガーの言葉の意味が分からない。
意味の分からない理由でシャドームーンについて自分に敵対するクーガーへの怒りが募るだけだ。

「……だから別に、あんな奴は大事じゃねえよ」

ヴァンも呼吸を整えながら姿を現す。
疲労の色は濃い。
それでも闘志が衰えている様子は無い。

「だが俺の邪魔する奴は、どんな奴だろうとぶっ倒す」

ヴァンはあくまで翠星石を倒すつもりだ。
翠星石もヴァンとの付き合いは薄いが、今更退く人物でないことくらいは察していた。
戦う覚悟なら翠星石にもできている。

「私はシャドームーンも翠星石も大事な戦力だと考えている。これは数学的に考えても極めて厳密な計算に基づく物で、かの数学者ガウスも……」

はるか遠く、クーガーの運転していた車に身を隠していた上田の講釈は、
距離が遠すぎたために、翠星石の耳に届いてはいなかった。

「そんなに銀色オバケと仲良く心中したいって訳ですね…………」

周囲に居る全ての者を敵に回した翠星石。
自分の気持ちが更に暗く淀んでいくのが分かる。
結局、北岡が言った通りの展開になった。
そしてそうなると分かっていた。
分かっていても、シャドームーンを討つことを選んだのだ。
最初から覚悟ができていたこと。
自分にそう言い聞かせて、翠星石は無明の修羅場に臨む。

クーガーはいかなる時でも周囲より先んじる男だ。
今回もまた、誰よりも早く翠星石に仕掛けた。
ラディカル・グッドスピードのピストンが躍動。
クーガーの身体が弾けるように急発進。
但し、それは翠星石へ向けて真っ直ぐに向かう物ではなった。
慌ててバリアを張る翠星石を、斜めに見切れて行くように走り抜けていくクーガー。
そしてすぐに急停止。
翠星石はすかさずそこへ羽を撃ち込む。
しかしまた急発進したクーガーには当たらない。
クーガーはまたも翠星石を斜めに横切っていく。
翠星石の置き去りにして行った後、また見当違いの場所で急停止と急発進。
攻撃の照準が間に合わない翠星石。
クーガーは翠星石の周囲を、付かず離れずを繰り返す。

翠星石の主観においては、クーガーの攻撃がいつ来るか分からない状況だ。
クーガーには速さで劣るため、後手に回ると防御や迎撃が間に合わないのだ。
従って翠星石から先手を取る必要がある。
翠星石は薔薇の花弁を生成して、周囲に散布。
そして周囲に拡散するように発射。
される直前、翠星石の頭上から衝撃が襲う。

ダークウイングが翠星石の頭上から突貫したのだ。
クーガーの動きは翠星石の意識を水平面状に拡散させる役割を果たしていた。
そこへ頭上からの垂直攻撃。
完全に不意を打たれた形になった翠星石。
予想だにしていなかった衝撃で、翠星石は頭から崩れるように落ちていく。

しかしクーガーにとっては予想していた事態。
クーガーは今度こそ真っ直ぐに翠星石へ向かう。
無防備な翠星石にシェルブリットを叩き込むために。

同時に発射される薔薇の花弁。
今度はクーガーが不意を打たれる番だった。
クーガーの蹴りが届く前に、花弁の散弾を受けた。
羽のごとくに軽いはずの花弁一つ一つが、クーガーを切り裂き、重い衝撃を与える。
背後へ吹き飛んだクーガーは、背中から地面を滑る。

4000APを誇るダークウイングの頭上からの不意打ち。
しかし翠星石は合計六つから保持する賢者の石の余剰エネルギーによる防護膜をその身に纏う。
今や絶大な防御力を持つ翠星石の意識を断ち切ることはできなかった。
膝を付いていた翠星石が立ち上がる。

「アギダイン」

灼熱の炎が翠星石に襲い掛かる。
しかし途上に張られたバリアが炎を遮断。
高熱を遮ることはできなかったが、翠星石にダメージを与えるには足りない。
しかしそのバリアを迂回するようにダークウイングが空中を旋回して、翠星石に向かって行く。
それでも、翠星石は既に戦闘態勢を取り戻していた。
黒い羽をはためかせて飛ぶ翠星石の運動能力の前に、容易に回避される。
翠星石は単純な運動性能も、大幅に向上させていた。
しかしダークウイングの陰から、蛇のようにうねる刃が現れる。
名うての刀匠、新井赤空の後期型殺人奇剣・薄刃乃太刀。
ヴァンはダークウイングに隠すように薄刃乃太刀を振るっていた。
薄刃乃太刀は翠星石の腕に巻き付く。
ヴァンはそのまま力付くで翠星石を引きずる。
つもりが逆に翠星石の腕に引っ張られる。
ヴァンは地面に倒れる暇も無く、薄刃乃太刀越しに引かれるまま、地面を平行に飛んだのだ。
そして翠星石は薄刃乃太刀をヴァンごとに振り回す。
ヴァンは翠星石を中心軸とした円を描いて、地面と平行に旋回した。

六つの賢者の石を直接出力源にすることができるローゼンメイデンたる翠星石は、
なんら特殊な能力を媒介していない単純な腕力だけでも、ヴァンを圧倒していた。

「ほーれほれ! 回れ回れですぅ!!」

自分の純粋な腕力で、何倍も大きな人間を振り回せるのが面白いのか、
翠星石は楽しげに笑い声を上げる。
しかし玩具扱いされているヴァンはとてもそれどころでは無い。
どれほど激しいヨロイの戦闘でも体験したことの無い、
全身の血液が逆流を起こしそうなほどの遠心力と、
骨格まで潰されそうな加重と、
衝撃魔法と紛うほどの風圧に晒されているのだ。
これ以上耐えると命にまで関わると判断したヴァンは、薄刃乃太刀を離す。
遠心力によって今度こそ文字通り飛翔するヴァン。
地面を削りながら転がり、ようやく停止することができたが、
そこから立ち上がろうとしない。
気絶している様子だった。
腕に絡まっていた薄刃乃太刀を邪魔臭そうに捨てた翠星石は、ヴァンを一瞥すると、
今度は狭間に向き直った。

クーガーとヴァンのダメージは重い。
そしてダメージの重い二人を無視して、狭間を睨み付ける翠星石。
狭間は、今やいかなる悪魔よりも強大な敵である翠星石と単独で対峙する形になった。

狭間の疲労は著しい。
単独で翠星石を倒す方法が無いわけではないが、極めて条件は限定されてくる。
そして今の翠星石は、おそらく同じ手が何度も通用するような甘い相手では無い。
即ち戦いが長引けば長引くほど、更に狭間が不利になる。
翠星石を倒すチャンスは、良くて一度か二度になるだろう。
狭間に残されているのは藁をも掴むような僅かな勝算。
それを掴むため、狭間もまた無明の修羅場に臨む。

翠星石が羽を飛ばす。
音も構えも無く放たれる、銃弾以上の高速射撃。
そしてその射撃は、狙撃の精度で狭間の頭を撃ち抜いた。
そのはずが狭間の頭は、そこには無い。
紙一重の間合いだが、狭間は確かに羽を回避していた。
翠星石はすぐさま次弾を発射。
やはり狙撃銃を越える精度と速度で狭間の心臓を撃つ。
しかし、それも紙一重で狭間の横を通り抜けていった。

「何で……当たらないんですか!?」

苛立ちをそのまま口に出す翠星石。
対照的に狭間はその様子を冷静に観察していた。
それができているからこそ、狭間は回避が可能だったのだ。

狭間は無限の塔で数多の悪魔と戦った。
天界より降りたった精霊・天使とも。
破壊と創造を司る神々・破壊神とも。
天より堕とされたる者どもを統べる旧き魔・魔王とも。
多種多様な悪魔との歴戦を潜り抜けてきた。
悪魔との戦闘は、人間とのそれとはまるで世界が違う。
人間をはるかに超える運動速度から、多様な魔法を使う物も居れば、
魔法に劣らぬ、全く未知の異能を駆使する者も居る。
歴戦は有名無名を問わぬ戦闘技能を狭間にもたらした。
今の狭間は、集中すれば翠星石の意識が攻撃に向かうのを察知することができる。

翠星石は確かに強大で多彩な能力を持っている。
そしてローゼンメイデンの一角に相応しく、多彩な能力を十全に駆使して戦えるだけの才覚も持っていた。
しかし翠星石には決定的に欠ける物がある。
アリスゲームを禁忌していたがゆえに、戦闘の経験がほとんど無いのだ。
従って、いざ自分から戦いに臨むとなれば、攻撃をする際もそれが読まれ易くなる。
殺意や殺気を隠すような技術は持っていない。

翠星石が何度も羽を飛ばすが、回避に専念する狭間に当てることはできない。
そして今の状況こそ、狭間の狙い通り。
翠星石が羽を飛ばしていると言うことは、
その射線、即ち狭間と翠星石の間に遮る物が無いと言うこと。

「ジオダイン」

雷速の一撃が翠星石に撃ち込まれる。
電撃が一瞬で翠星石の全身を暴れ回る。
魔法を打ち終えた狭間は、即座に翠星石へ向けて走り始める。
そしてその手には斬鉄剣を構えていた。
剣ならば翠星石の命を危険晒さず、身体の一部分だけを攻撃することが可能。
更に斬鉄剣の切れ味ならば翠星石を切断することも可能。
もし四肢などを切断することが、翠星石を制圧できる公算が大きくなる。
その場合、翠星石に二度と癒せぬ傷を残すことになるかもしれないが、
翠星石にここまで追い詰められた以上、狭間に手段を選ぶ余裕は無かった。

翠星石の身体は電撃による麻痺効果によって縛られている。
しかし翠星石は背中から瞬時に黒い翼を生やして、双龍を造り上げた。
バリアを張ることはできなくとも、翠星石には身体を覆うオーラ状の防護膜がある。
それが電撃の効果を軽減している。
更に電撃を受けた後に生やした翼なら、麻痺効果も薄い。
向かってくる狭間に対して、真っ向から双龍が襲い掛かる。
双龍の牙が突き立てられた。

それこそ、回避に専念していた狭間の待っていた好機その物だった。

次の瞬間、双龍の頭が反転。
狭間を放置して翠星石へと突貫していった。
翠星石の意思による物ではない、全く予想外の現象。
双龍の突撃を無防備に受けて、翠星石はあえなく、
二頭の大顎の餌食となった。

双龍の反転は、物理攻撃反射魔法・テトラカーンの効果。
これは壁に投げたボールが跳ね返るように、単純に物理的な作用を反射するだけの物ではない。
それが物理攻撃なら、因果関係を逆転させたかのごとくどんな攻撃でも敵に返すことができる。
狭間は予めテトラカーンを自分に掛けていながら、翠星石の攻撃を回避しつつ、
効果的な使用条件が整うのを待っていたのだ。

翠星石の小さな体躯は、龍の口の中に完全に収まった。
その龍の内側から、狭間を強く照らすほどの紅い光が漏れる。
そして龍は無数の羽となって霧散した。
翠星石は先ほどより強烈な紅い光=キングストーンの光を纏っている。

翠星石の纏うオーラは可視化するほど強大なキングストーンの余剰エネルギーであり、
更にローザミスティカ五つ分の余剰エネルギーが加算された物だ。
そして今の翠星石はそれを常時展開しているが、それに回すエネルギー量を増やせば、
防御効果を上げることも可能なのだ。

狭間は構わず剣を構えて、大地を蹴り跳躍。
ほとんど直下から翠星石に向かって行く。

大地を蹴る音で、空を切る音で、翠星石は狭間の接近を察知するが、
どの方向から来るのかが分からない。
ならば全方向に攻撃を展開させれば良い。
翠星石は長大な轍と、大量の薔薇の花弁を一挙に生成。
自分を中心に上下左右前後を問わず、あらゆる方向に放射する。

当然、狭間にも轍と花弁が伸びる。
しかし轍であろうと花弁であろうと、それが実体を持つならば物理攻撃に違いは無い。
テトラカーンによって反射可能。
狭間は構わず翠星石へ突貫する。

突如、狭間の見る景色が揺れる。

鈍い衝撃と鋭い痛みに襲われる狭間。
原因は明快だった。
狭間の身体が轍で叩かれ、花弁で切り裂かれていた。
テトラカーンが効果を発揮していなかったのだ。

狭間は以前にもキングストーンの光が、ランダマイザやドルミナーの効果を防いだのを見ている。
しかし他人に掛けられた物理無効魔法まで無効化できることは認識していなかった。
しかも龍の中から漏れたような光で、である。

翠星石の有する計六つの賢者の石は、キングストーンの光をすら強化していた。

テトラカーンの効果が打ち消されること自体は、狭間も予想していた。
だからこそテトラカーンの使用を、ギリギリまで温存していた。
予想外だったのは、龍の口の中から漏れるような光だけで、
狭間に掛かった魔法を強制解除するほどの力を翠星石が持っていたこと。
それほど強大な力を持つ翠星石が、今まで殺し合いの参加者として存在していたことに、
狭間は不条理な思いを抱いた。

全身の負傷と、地面に墜落した衝撃で意識が薄れ行く狭間。
それでも必死に意識を繋ごうとするが、身体が思うように動かない。
戦闘態勢が整わない狭間に向けて、翠星石が無数の羽を向ける。
それらが発射されれば、狭間に防ぐ手段は無い。
自分の死の瞬間が迫る中、狭間は必死に自分の意識に、身体に活を入れる。
しかし翠星石が羽を発射するのに間に合うはずが無いことは、狭間自身が一番良く分かっていた。
狭間は為す術も無く、翠星石の処刑を見守るしかなかった。
そして翠星石の背後から迫る影を。
狭間は痛みも忘れて目を凝らす。
その先にはクーガーの姿が在った。

花弁に受けたダメージはクーガーにもまだ残っていた。
しかしシャドームーンもヴァンも狭間も倒れた以上は、クーガーが戦う以外に無い。
狭間に止めを刺さんとする翠星石の背中へ向かって行くクーガー。
女性を背中から奇襲するなど、本来のクーガーなら絶対に選ばない非文化的な手段だが、
今の翠星石は手段を選べる相手では無く、今の状況は手段を選べる余地は無い。

先ほどまで虚ろだった狭間の眼に驚きの色が刺すのを、翠星石は見逃さなかった。
視線の先は翠星石、ではなくその背後。
振り返るまでもなく、背中越しに渦巻く衝撃波(インパルス)で分かる。
音を超える速さで接近する者は一人しか居ない。
ラディカル・グッドスピードを駆使する男、ストレイト・クーガー
翠星石の持つ能力では、羽や花弁の生成も、蔦や轍の育成も間に合わない。
今、手元にある武器で対処する他無い。
ほとんど反射的でありながら、的確な状況判断の下に、翠星石は振り返る。

ラディカル・グッドスピードのピストンで跳躍。
それによって、一瞬にして翠星石との間合いを詰めるクーガー。

振り返りながら、クーガーへ向けて右手を振り上げる翠星石。

クーガーは跳躍の勢いに乗って蹴りを繰り出す。

まるで交通事故のような、鈍く重い激突音が木霊する。

クーガーは自分の蹴り足の先を見る。
そして珍しく自嘲的な笑いを浮かべた。

「……………………俺の速さが……届かなかったとはな…………」

クーガーの胸から生える刃・庭師の鋏。
その根元から鮮血の噴水が上がる。
クーガーは赤い血を流しながら、ゆっくりと地面に落ちていった。



翠星石の右手から衝撃が伝わる。
突き出した鋏の先から、クーガーの血が噴出する。
血に塗れながらゆっくりと地面に引かれて行くクーガーを見て、
翠星石の脳裏には、真司の死の瞬間が浮かんだ。

自分が引き起こした鮮血の惨劇を、翠星石は信じられない物を見るように目を見開いた。



「クーガー!!!!」

空から落ちて来るクーガーに悲痛な叫びを浴びせる狭間。
しかしそれに応える者は居ない。
クーガーは力無く、狭間の腕の中に墜落した。
狭間はクーガーの状態を観る。
クーガーの胸、ちょうど心臓の部分には大きく穴が開いて血液を噴出していた。
医学の知識が無くとも、一目で致命傷と分かる。

「ディアラハン!!!」

単体を標的とした物としては最大の効果を誇る回復魔法・ディアラハン。
狭間が詠唱すると共に、クーガーの身体が治癒効果を持つ光に包まれる。
薔薇の花弁によって全身に刻まれていた細かい切り傷が消えていき、
胸の傷も癒えて行く。
しかし胸の穴が塞がりきることは無かった。
レナや真司の時と同じく、ディアラハンでは致死の傷を治し切ることはできなかった。

「またか……また駄目なのか……」

もう何度も味わった自分への失望。
今の狭間は死に行く者の前ではあまりにも無力だった。
腕の中で死に行くクーガーに、狭間は嫌でもレナを想い起こさせる。

『うん……皆を元の世界に返してあげて欲しいんだ……狭間さんならきっと出来るよ』

レナの願いを受け取ったのに、また犠牲を出してしまった。
それも今度こそ掛け値無く狭間の失敗によって。
翠星石がクーガーの接近を察知したのは狭間の視線によってだ。
それ以前にシャドーキックを邪魔しなければ、今の戦況は無かった。
どうしようもない後悔が狭間を支配する。

(……すまないレナ…………私は…………君との約束を守れなかった……………………)

全ての命を拾うために戦っていたはずだった。
翠星石も含めて、誰一人犠牲にしないために。
それこそがレナの願いだったはずだから。

違う。
レナはもう死んだ。
そして死んだ者の願いは誰にも分からない。
狭間は確かにレナと約束した。
レナは今も狭間の中で生きている。
しかしそれは狭間の中での問題。
狭間の内面の問題のために、クーガーを犠牲にして良いはずが無かった。
シャドームーンを裏切って良いはずが無かった。

(レナ…………私はもう……………………君と約束をした魔人皇ではない…………)

狭間はレナに謝罪と、決別を告げる。
レナとの約束を守れなかった不甲斐無い自分を認めて、
そしてもうこれ以上、死した者のために戦うことはできないことを告げる。
しかしそれも狭間の中の問題だった。
現実が狭間の後ろから迫っていた。

「ひひ……ク、クーガーが悪いんですよ……翠星石は脱出させてやるって言ったのに…………」

背後から聞こえてきた翠星石の震える声は、笑っているのか泣いているのかも判別が付かなかった。
その精神はもう正常な状態ではないのだろう。
でなければ、とっくに狭間へ攻撃していたはずだ。

「お前も望み通り銀色オバケと心中させてやるですよ……」
「……望み? そんな物は、もう何も無い」

クーガーを地面に横たえさせ、狭間はゆっくりと立ち上がる。
狭間の放つ只ならぬ気配に翠星石は一瞬気圧されそうになるが、すぐに気を取り直す。
戦力差は明白。
今更、狭間に怖気づく所以は無い。

「貴様に望む物は、もう何も無い。共闘も、交渉も、貴様にはもう何も望まない。
……だがそうだな……強いて貴様に望むとすれば――――」

しかし狭間の言葉を聞いていると、どうしても落ち着かなくなる。
狭間にこれ以上気圧されないために、翠星石は眼前に羽を生成して攻撃の構えを取る。

「――――死ね」

その眼前が突如歪み始める。
生成した羽が歪んだわけでも、翠星石の視界が歪んだわけでもない。
空間その物が、捩れて歪んだのだ。
尋常ならざるエネルギーの奔流。
それが空間の歪みから、光となって翠星石に浴びせられた。
神のみが扱うことができる万能の光でありながら、天よりの裁きの炎。
この世の条理を越えた光にして炎たるその力の名が、狭間より詠唱される。

「メギド」

天の光が、紅いオーラを貫いて翠星石に浴びせられる。
空間を歪曲するほどのエネルギーを叩きつけられて吹き飛ぶ翠星石
万物を焼く条理を越えた炎が翠星石を燃やした。
声にならない絶叫を上げる翠星石。

翠星石は苦悶の表情を上げながら、海へと消えて行った。

狭間はディアラハンを自分に掛ける。
最高位の回復魔法は、一瞬で身体中の傷を癒し体力も回復していく。
狭間はすぐにでも可能な限り回復をする必要があった。
翠星石を殺すために。
翠星石はまだ生きている。ならば確実に殺さなくてはならない。
倒すのではなく確実に殺す。
翠星石に怒りや怨みが持ったためではない。
そもそも翠星石だけの問題ではない。
脱出を阻もうとする者は、V.V.であろうと志々雄であろうと命を以ってしても排除する。
何故ならそれはもう、レナとの約束を守るためではない。
今、生きている者たちのための戦いだからだ。
死んだ人間との約束に拘泥して、生きている人間を助けることができなかったら、
それこそがレナに対する最大の裏切りになるのだろうから。

だから約束を交わしたレナに別れを告げる。
真にレナの意思を汲み取るために。

 カシャ   カシャ

壊れた機械を思わせる、酷く間の抜けた足音が聞こえて来る。
音の方からは、白銀の装甲はおろか、内部筋肉まで全身傷だらけになったシャドームーンが居た。
どうやら命を取り留めて、自力で意識も取り戻したらしい。
しかしサタンサーベルを杖代わりにしてようやく歩くことができているその姿は、最早平時の威厳は微塵も無い。

「…………敵は……どこだ?」

その上、視力にまで問題が生じているようだ。
正に満身創痍。今ならその命も容易く摘み取れるだろう。
それでも、シャドームーンは闘志を失っては居ない。
今の質問も、狭間に『お前は敵か味方か?』と言う問いを突きつけているようにすら思える。
壮絶なまでの覇気。
いかなる状態でも、シャドームーンはゴルゴムの王で在り続ける者なのだろう。

「シャドームーン……私の中途半端な覚悟が、貴様を傷付けてしまった。
…………最初からこうするべきだったのだ」

狭間の懺悔はシャドームーンに聞こえているかは分からない。
それでも構わない。
狭間が今からするべきことは決まっている。
本当にシャドームーンを信じて契約をするなら、
本当にシャドームーンを守る意思があるなら、
もっと早く、シャドームーンと契約を交わした時点でするべきだったことだ。

「ディアラハン」


     ◇


翠星石は今、自分がどこに居て、どんな状況なのかも分からなかった。
視界は火花で埋め尽くされている。
全身を激痛で覆われている。
半ば狂乱状態に陥り、苦しみもがく翠星石だが、
手足も上手く動かない。

しかし翠星石の無明も永遠には続かなかった。
視界の火花もやがて収まり、全身の痛みにも慣れてくる。
それで翠星石は自分が水中に居ることに気付いた。

翠星石は混乱した頭で、何とか状況を確認する。
シャドームーンたちと戦っていたのは海岸沿いだったから、自分は海に入ったのだろう。
痛む手足を見ると火傷していた。
狭間の魔法で燃やされていたのだ。
ならば海に入っていたのは、幸運だったと言える。
それで炎症を抑えることができたのだ。
海水のため、痛みを伴ったが。

しかしその痛みも、徐々に引いている。
翠星石の内側から溢れる力によって、傷が癒えていっているのだ。
自分の発揮する能力に感嘆する。
翠星石自身のみならず、真紅と蒼星石と水銀燈と雛苺の物も含めた五つのローザミスティカの力はここまでの力を発揮するのかと。

実際はそこにキングストーンの力が含まれているからこそ、驚異的な自己治癒力まで発揮しているのだが、
翠星石は自分の中に在るキングストーンの存在その物を知らない。
だからこそ、素直に自分の力を喜んでいられるのだ。

怪我も治り切らない内に翠星石は背中から翼を生やして一瞬で海上に飛び出す。
そのまま海岸に向けて飛びながら、狭間たちを捜す。
薔薇乙女を焼いてくれた狭間の罪は重い。
先ほどは不意を衝かれたが、同じ手を二度と食うつもりは無い。
今度は確実に狭間を殺す。

カシャ カシャ カシャ カシャ

聞き覚えのある足音に、翠星石は思わず動きを止める。
胸中に沸き起こる恐れを抑える翠星石。
今の自分は、それを恐れる必要は無い。
そう自分に言い聞かせる。
そして足音の主を睨み付ける。

一部の隙も無く白銀に輝く装甲。
装甲で覆われた四肢。
エメラルドのごとき双眸。
下腹部のシャドーチャージャーにもエメラルドのごときキングストーンの光が宿っている。
満身創痍だったはずのシャドームーンが、傷一つ無い姿で現れたのだ。

世紀王は生来的に高い回復力を持つ。
しかし制限やシャドーチャージャーの損傷によって、それが発揮できない状態だった。
そこへ狭間の魔力によって掛けられたディアラハンで、生来的な回復力をも取り戻すことができた。
かつて日本を占領した世紀王の威風が再び蘇る。

「フッ、わざわざ殺されに来たか」
「銀色塗れに戻ったからって、今の翠星石には勝てないですよ」

今や最強の力を持った薔薇乙女と、ゴルゴムの威信を掛けて造られた世紀王。
キングストーンを分かつ二人が睨み合う。
ゴルゴムの掟によれば、キングストーンを分かつ二人は決して並び立つことはできない。
二人は不倶戴天の敵として対峙する。

「……シャドームーン、翠星石を殺したいのなら手早く済ますことだ。もし貴様が手間取るようなら――――」

更にシャドームーンの後ろから、狭間が姿を現す。
翠星石は狭間にも、得体の知れない恐れを抱く。
圧倒的な戦力差で終始優勢に立っていたはずの相手だ。
確かに痛手を受けたが、それでも戦力的な優位は変わらないはず。
それなのに翠星石は、先刻までとどこか違う気配を狭間から感じていた。

狭間から感じる得体の知れない気配。
薔薇乙女としては戦闘経験が極端に少ない翠星石は、それをどう呼ぶべきかを知らなかった。
それは殺意や殺気と呼ばれる物だと。

「――――私が翠星石を殺す」

【二日目/早朝/F-10 沿岸部】
狭間偉出夫@真・女神転生if...】
[装備]:斬鉄剣@ルパン三世、ベレッタM92F(7/15)@バトルロワイアル(小説)
[所持品]:支給品一式×2、インスタントカメラ(数枚消費)@現実、真紅の下半身@ローゼンメイデン、USB型データカード@現実、ノートパソコン@現実、
     鉈@ひぐらしのなく頃に、琥珀湯×2
[状態]:人間形態、魔力消費(極大)
[思考・行動]
0:殺し合いから他の者達と一緒に脱出する。
1:シャドームーンとの契約を遵守する。
2:翠星石を殺す。
3:脱出を阻む者は誰であろうと殺してでも排除する。
[備考]
※参加時期はレイコ編ラストバトル中。
※『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページを閲覧しました。
※『多ジャンルバトルロワイアル』のホームページのユーザ名はtakano、パスワードは123です。
またこれらを入手したことにより、以下の情報を手に入れました。
全参加者の詳細プロフィール
全参加者のこれまでの動向。
現時点での死者の一覧。
各参加者の世界観区分。
nのフィールドの詳細及び危険性。
「彼」が使用したギアスの一覧。
※目的の欄を閲覧することはできませんでした。

【ヴァン@ガン×ソード】
[装備]:ヴァンの蛮刀@ガン×ソード
[所持品]:支給品一式、ナイトのデッキ@仮面ライダー龍騎、サバイブ(疾風)@仮面ライダー龍騎、昇天石×1@真・女神転生if…、
     エアドロップ×1@ヴィオラートのアトリエ、調味料一式@ガン×ソード
[状態]:右目欠損、全身打撲、疲労(極大)、気絶中
[思考・行動]
0:カギ爪の男に復讐を果たすためさっさと脱出する。生き残る。
1:V.V.を倒した後シャドームーンを殺す。
[備考]
※まだ竜宮レナの名前を覚えていません。
C.C.の名前を覚えました。
※ファイナルベントを使用したため、二時間変身不能です。
※薄刃乃太刀@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-(先端部欠損)はF-10沿岸部に放置されています。

【シャドームーン@仮面ライダーBLACK(実写)】
[装備]:サタンサーベル@仮面ライダーBLACK、バトルホッパー@仮面ライダーBLACK
[支給品]:支給品一式、不明支給品0~2(確認済み)
[状態]:健康
[思考・行動]
0:創世王を殺す。
1:創世王を殺した後、他の参加者を皆殺しにする。
2:狭間との契約は守る。
3:翠星石を殺してキングストーン(太陽の石)を回収する。
【備考】
※本編50話途中からの参戦です。
※殺し合いの主催者の裏に、創世王が居ると考えています。
※会場の端には空間の歪みがあると考えています。
※空間に干渉する能力が増大しました。
※nのフィールドの入り口を開ける能力を得ました。

※狭間偉出夫とシャドームーンは契約を交わしました。内容は以下の通りです。
シャドームーンは主催者を倒すまで他の参加者を殺害しない。(但し正当防衛の場合は例外とする)
狭間はシャドームーンの首輪を解除する。
狭間はシャドームーンが首輪を解除するまで護衛する。
シャドームーンは首輪を解除できれば他の参加者と協力して主催者と戦う。(シャドームーンは会場脱出や主催者の拠点へ侵攻する際は他の参加者と足並みを揃える)
主催者(の黒幕)の殺害はシャドームーンに一任する。
主催者を倒した後はシャドームーンと他に生き残った全ての参加者で決着を付ける。
主催者を倒すまでにシャドームーンが誰かに殺害された場合、狭間は必ずその報復を行う。

【翠星石@ローゼンメイデン(アニメ)】
[装備]真紅と蒼星石と水銀燈と雛苺のローザミスティカ@ローゼンメイデン、キングストーン(太陽の石)@仮面ライダーBLACK(実写)
   ローゼンメイデンの鞄@ローゼンメイデン、庭師の鋏@ローゼンメイデン、庭師の如雨露@ローゼンメイデン
[支給品]支給品一式(朝食分を消費)、真紅のステッキ@ローゼンメイデン、情報が記されたメモ、確認済支給品(0~1)
[状態]首輪解除済み、全身に火傷(回復中)
[思考・行動]
0:殺し合いに優勝する。
1:銀色オバケ(シャドームーン)を殺す。
[備考]
※スイドリームが居ない事を疑問に思っています。
※ローザミスティカを複数取り込んだことで、それぞれの姉妹の能力を会得しました。
※キングストーンを取り込んだことで、能力が上がっています。
 またキングストーンによる精神への悪影響が見られ、やがて暴走へ繋がる危険性があります。
※nのフィールドに入る能力を取り戻しました。

※さざなみの笛@真・女神転生if...は薔薇水晶が所持しています。
※水銀燈と城戸真司の遺体は薔薇水晶にさざなみの笛で操られています。二人がどうなったかは後続の書き手に任せます。

人は死を避け続けることはできない。
それは最速のアルター使いを自称するこの男も例外ではなかった。
心臓を貫かれたストレイト・クーガーは、屍を地面に横たえていた。
その屍には、淡い光を纏っていた。

ドクン

淡い光の正体は狭間が掛けたディアラハン。
ディア系の魔法は、単独の標的に治癒効果を持つ光を浴びせる。
狭間のディアラハンはとりわけ強力な効果を持つが、。
それでもディア系の魔法に、死した者を蘇生する効果は無い。

ドクン

ディア系の魔法は治癒効果しか持たない。
この場合の治癒効果とは、主に二つ。
一つは負傷の治癒。
もう一つは体力の回復。
対象の生命力を活性化して、疲労などを回復させることができるのだ。
生命力を活性化すると言っても、それは死んだ人間を生き返らせることに直結しない。

ドクン

そしてディア系の魔法は単体のみにしか効果が無い。
なぜ、単体のみにしか効果が無いのかと言うと、
治癒効果を持つ光が、一人だけにしか当てられないからだ。
従ってクーガーに掛けられたディアラハンは、クーガーの身体にしか効果を及ぼさない。

ドクン

しかし人間の身体に宿っている生命は一つだけではない。
例えば人間の身体には無数の細菌に代表される微生物が共生している。
もっとも細菌の生命活動は極端に微小かつ単純なので、治癒魔法の影響はほとんど受けない。

ドクン

しかしクーガーの中に共生しているのは、単純に微生物に分類される存在だけではない。
それは本来人間の脳を含む、頭部全体を乗っ取る寄生生物。
しかし今はクーガーの脳を残しながら、
一部は同化して、
一部は細分化されて全身に偏在する。
かつて田宮良子とも田村玲子とも呼ばれた寄生生物。

ドクン

細分化されてクーガーの全身に散った寄生生物もまた、狭間のディアラハンの影響を受けた。
寄生生物の細胞の内に宿る生命力が活性化される。
そして寄生生物には、宿主の肉体の生命を存続しようと言う極めて強い本能がある。
クーガーの身体に宿った寄生生物が本能に従って一斉に活動を始める。

ドクン

クーガーの全身から細胞組織を少しずつ集めて、胸部の穴を塞ぎ、
心臓と肺を動かして、血液と酸素を全身に循環させる。
クーガーの体内から応急措置を行っていく。

ドクン

無謀な処置のように聞こえるが、実は既に成功例のある応急措置なのだ。
かつて泉新一が心臓を貫かれた際、寄生生物であるミギーが、
新一の体内から同様の応急措置を行って成功させている。

ドクン

生命はそれ一人では成立しない。
今のクーガーもまた、
狭間の魔法によって、
田村玲子の細胞によって、
生命の脈動を保っていく。

ドクン

胸の穴が塞がる。
クーガーの生命は、まだ速さを失ってはいない。

【二日目/早朝/F-10 沿岸部】
【ストレイト・クーガー@スクライド】
[装備]:なし
[所持品]:基本支給品一式、昇天石×1@真・女神転生if…、リフュールポット×1
[状態]:出血多量、気絶中
[思考・行動]
0:???
※総合病院にて情報交換をしました。
※ギアスとコードについて情報を得ました。
※真司、C.C.らと情報交換をしました。
※田村玲子が同化して傷を塞ぎました。アルターについては応急的な処置なので寿命が延びる事はありません。
 それ以外の影響があるか否かは後続の書き手氏にお任せします。
※君島の車@スクライドとミニクーパー@ルパン三世はクーガーのアルターで同化しました。F-10沿岸部に放置してあります。
※胸の傷が塞がりました。







「…………………………………………誰も私のことを忘れていないだろうな?」

【二日目/早朝/F-10 沿岸部】
上田次郎@TRICK(実写)】
[装備]ニンテンドーDS型探知機
[支給品]支給品一式×4(水を一本紛失)、富竹のポラロイド@ひぐらしのなく頃に、デスノート(偽物)@DEATH NOTE、予備マガジン3本(45発)、
    上田次郎人形@TRICK、雛見沢症候群治療薬C120@ひぐらしのなく頃に、情報が記されたメモ、浅倉のデイパックから散乱した確認済み支給品(0~2)、
    ファサリナの三節棍@ガン×ソード、倭刀@るろうに剣心、レイ・ラングレンの銃@ガン×ソード
[状態]額部に軽い裂傷(処置済み)、全身打撲
[思考・行動]
0:ヴァン達に協力する。



※C.C.、縁の遺体がF-8民家に安置されました。
※水銀燈、L、真司、C.C.のデイパックが車内に置かれています。
※水銀燈のデイパック
 支給品一式×10(食料以外)、しんせい(煙草)@ルパン三世、手錠@相棒、双眼鏡@現実、首輪×3(咲世子、劉鳳、剣心)、
 着替え各種(現地調達)、シェリスのHOLY隊員制服@スクライド、農作業用の鎌@バトルロワイアル、前原圭一のメモ@ひぐらしのなく頃に、
 カツラ@TRICK、カードキー、知り合い順名簿、剣心の不明支給品(0~1)、ロロの不明支給品(0~1)、
 三村信史特性爆弾セット(滑車、タコ糸、ガムテープ、ゴミ袋、ボイスコンバーター、ロープ三百メートル)@バトルロワイアル
※Lのデイパック
 支給品一式×4(水と食事を一つずつ消費)、ニンテンドーDS型詳細名簿、アズュール@灼眼のシャナ、角砂糖@デスノート、
 情報が記されたメモ、首輪(魅音)、シアン化カリウム@バトルロワイアル、イングラムM10(0/32)@バトルロワイアル、おはぎ×3@ひぐらしのなく頃に、
 女神の剣@ヴィオラートのアトリエ、DS系アイテムの拡張パーツ(GBA)、才人の不明支給品(0~1)、ゼロの剣@コードギアス、
※真司のデイパック
 真司の確認済み支給品(0~2) 、劉鳳の不明支給品(0~2)、発信機の受信機@DEATH NOTE、カードキー、神崎優衣の絵@仮面ライダー龍騎
※C.C.のデイパック
 支給品一式×4、ゼロの仮面@コードギアス、ピザ@コードギアス、カギ爪@ガン×ソード、レイ・ラングレンの銃の予備弾倉(60/60)@ガン×ソード、
 白梅香@るろうに剣心、確認済み支給品(0~1)、S&W M10の弾薬(17/24)@バトル・ロワイアル
※浅倉のデイパックから散乱した確認済み支給品のうちの昇天石×5@真・女神転生if…は、北岡・つかさ・ジェレミア・ヴァン・クーガーで配分しました。


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168:メギド――断罪の炎――(前編) 狭間偉出夫 170:ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- Ⅰ
ヴァン 170:ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- Ⅱ
ストレイト・クーガー
上田次郎
シャドームーン
薔薇水晶
翠星石



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