第五回放送

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第五回放送



 おはよう、皆。
 二日目の朝、六時――五回目の放送の時間だ。
 これが最後の放送になるかも知れないね。
 だから心して聞いて欲しい。
 今まで通り、一度しか言わないからね。
 皆忙しそうだから、手短に行こう。

 まずは禁止エリアの発表だよ。


 A-9

 H-5

 F-2


 続いて死者を発表するよ。




 これで、生存者は九人。
 遂に一桁になってしまったね。
 僕も知り合いがいなくなってしまったから、とても寂しいよ。
 けれど……分かるよね。
 あと八人殺せば、君の望みが叶う。
 六十人以上いた参加者の中の、たった八人なんだよ。
 今は仲間と結束したつもりでいる君も……本当にいいのかな?

 もう一度会いたい人はいない?
 理想の世界が欲しくはない?
 短すぎる人生に未練はない?
 本当に、それで後悔はないの?

 残された時間は、そう長くはないよ。
 けれど君が真剣に、必死に考えた末での選択ならば、僕はそれを尊重したいと思う。

 じゃあ……直接会って話せる時を、楽しみにしているよ。
 それがどんな形になったとしても――ね。


 古時計の置かれた放送室を離れる。
 別室に入り、壁一面を埋め尽くす液晶画面の群れを眺めてから、V.V.は短く息を吐き出す。
 画面一つ一つが会場の各所を映し出しているが、その中で目立った動きがあるのはごく一部のみだった。
 既に殺し合いは終わりに向けて収束しつつあり、参加者が残っているのはF-10沿岸部だけなのだ。

「煉獄とらんすろっとを使い潰して、結局死んだのはくたばり損ない一匹か。
 てめぇの世界御自慢のないとめあとやらも大した事はねぇようだな」

 ただ一人、今V.V.の目の前にいる志々雄真実を除いては。
 志々雄の辛辣な物言いに、V.V.は苦笑を混じらせて応える。

「煉獄は相手が悪かったね。
 ランスロットも、あのサザーランドは彼用にチューンしたようなものだから。
 ……それでランスロットが落ちるとも思っていなかったんだけどね」

 志々雄は胸の前で腕を組み、小柄なV.V.を高見から見下ろしている。
 見下すのではなく値踏みし、真意を測ろうとする視線だ。

「贔屓が過ぎるように見えるぜ」
「サザーランドの事かい?」
「いいや……てめぇの知り合い連中の事だ」
「…………」

 それまで常に薄い笑いを張り付けていたV.V.の口元が引き締まり、対照的に志々雄の笑みが深まった。
 V.V.は自身が見せた隙に気付き、すぐに薄ら笑いを張り直す。
 志々雄が会場を脱出してから既に九時間程が経過しており、情報収集や分析をする時間もあったという事なのだろう。

「僕は、六十五人の参加者全員の選択を平等に見届けたいと思っているよ。
 ……でも確かに、彼らの選択を特に気に掛けていた。
 それは否定出来ないね」
「ロロはそこに入らなかったらしいな」
「……うん。
 彼だけは少し事情が違うんだよ」

 V.V.は想いを馳せる。
 『多ジャンルバトルロワイアル』という催しを開くよりも、考えつくよりも更に前に見た景色に。
 そして一つずつ志々雄に語っていく。

「僕は一度、死ぬはずだった」

 嚮団殲滅戦。
 ルルーシュらの攻撃で致命傷を受けたV.V.は、実の弟シャルルにコードを奪われて死ぬ運命にあった。
 そこに現れたのがラプラスの魔であり、歴史が歪んだ瞬間だった。
 それが全ての事の始まり。
 志々雄は腕を組み直し、黙って続きを促した。

「ラプラスに助けられた僕は、彼に連れられて色んな世界を見たんだ。
 僕が生きていたのとは全く別の世界や惑星、君がいた明治時代の日本。
 それに……本来僕が見るはずのなかった、僕の世界の未来も」


――それでも俺は……『明日』が欲しい!!!


 V.V.が、シャルルが、C.C.が、マリアンヌが望んだ『昨日』への回帰。
 V.V.の甥であるシュナイゼルが得ようとした『今日』の維持と停滞。
 その二つを否定して、ルルーシュは『明日』を求めた。
 そして世界が『明日』へと向かっていくのを、V.V.はラプラスと共に眺めていた。

「このバトルロワイアルに参加した彼らは、ゼロ・レクイエムという計画に賛同した――『明日』を求めた者達なんだ。
 もっとも、思想に共鳴したと言うより『ルルーシュが求めたから』従った者もいただろうけどね」

 ルルーシュとスザクを中心として、それに協力したC.C.、咲世子、ジェレミア。
 ロロはそこに至る前に死亡していたが、彼の死がゼロ・レクイエムの発端の一つになったのだから無関係ではない。
 だからこそ彼もバトルロワイアルの参加者として選ばれた。

「僕は、気になっていた。
 ゼロ・レクイエムを知る前の彼らでも同じ選択をするのか。
 参加者全員を見てはいても、彼らがきっかけだったからね……そこは、君の言う通り。
 贔屓、だったのかも知れない……ほんの少しだけなんだけど、ね」

 ルルーシュのギアスは使い方次第でどんな相手でもねじ伏せるものだが、制限されているのは直接相手や自分の生死に関わる命令のみ。
 同じギアスユーザーであるロロのそれに比べ、緩い枷と言える。
 C.C.には選択肢を広げる為に敢えて不死性を喪失させたものの、そうする為に払った労力は小さくなかった。
 少なくともV.V.だけの力では、コードに干渉する事など不可能だっただろう。
 スザクには参加者中で彼にしか扱えないKMF、それも一部ではあるがミラーワールドに侵入出来るものを用意した。
 サザーランドは多くの参加者が搭乗出来るだろうが、ジェレミアのスペックが最大限に活かされるよう改造している。
 咲世子には女性用の支給品としては最も強い部類に入るファムのデッキを与えた。

 参加者ごとに支給品や制限の強さはバラつきがある。
 一つ一つであれば気にする程のものではないだろう。
 しかし他の参加者よりも多くの情報を得た志々雄にとって、それは違和感として残ったようだ。
 事実ゼロ・レクイエムに直接関わっていないロロを除き、何かしらの優位がある。

「ゼロ・レクイエムは簡単に言えば、悪者を一人つくって。
 その一人に全ての罪を被せて殺す事で、世界中の憎しみを解決しようとしたんだよ」
「随分都合の良い話だな」
「うん。だから遠からずあの世界では、再び戦争が起こるよ。
 仮面の英雄がどんなに奔走しても、根本的な解決は何もしていないのだから。
 僕らの計画が進んでさえいれば、憎しみも争いも、悲しみも嘘もない世界になっていたのにね」

 全人類の意識を一つにする。
 全てを共有すれば、あらゆる嘘は意味を失くし争いが消える。
 死んだ人間とすら共にいられる理想郷。
 V.V.達が志したそんな『昨日』なら、或いはシュナイゼルの治める『今日』ならば、戦争はなくなっていたかも知れない。
 だが、そうはならなかった。

「……でもね。
 『明日』を求めた彼らだって、そんな事は分かっていたと思うんだ。
 それでも『明日』を求めたのは何故なんだろうって……思ってね」

 そして、口にする。
 あの未来を見てしまってから、心に溜まり続けていたものを。

「……ねぇ、志々雄」

 画面に照らされて浮かび上がる包帯姿の怪人は、まともな答えを期待出来る相手ではない。
 だとしても、胸の中でくすぶり続けていた疑問を呟いた。

「僕達は、――僕は……間違っていたのかな」
「それを俺に訊いてどうしようってんだ。
 そもそも『争いを無くす』なんざ俺とは全く相容れない考えなのは知ってるだろ」

 間髪入れず、考えていた通りの冷めた返事にV.V.は僅かに肩を落とす。
 しかし志々雄は素っ気ない返しとは裏腹に楽しげだった。

「信じれば裏切られる、油断すれば殺される、殺される前に殺れ。
 現世ってのはそういうもんだ、てめぇはそれを分かっているから根本のところを変えようと思ったわけだ」

 饒舌に語る志々雄。
 「実際てめぇも弟に殺されかけたわけだしな」と付け足した上で、顎に手を当てて続ける。

「世の中が地獄だって事を理解している。
 それを何とかしようとして世界を丸ごと作り変える計画を立てた。
 この二点だけなら、甘い事や綺麗事を抜かしやがるだけの連中よりは評価出来るぜ」
「……ふふ。
 君にフォローされるとは思わなかったよ」

 肩を小さく揺らして笑う。
 そして、改めて問い掛ける。

「君なら――どれを選ぶ?」

 過去か、現在か、未来か。
 何を分かり切った事を訊いているのかと、そう言いたげに志々雄は肩を竦めた。
「俺をただの殺人狂と思っちゃいねぇだろうな。
 まぁ半分は正しいが」
 冗談めかしながら、しかし細めた目は鋭利なままだ。

「俺の最初の目的は国盗り……動乱を起こして脆弱な明治政府を倒し、俺が頂点に君臨する。
 そして俺が真に強い国にしてやる、それが俺の弱肉強食であり正義だ。
 つまり、俺は俺で国の未来を憂いているんだぜ」

 今となってはその規模を“世界”に広げてはいるが、志々雄の根幹は何も変わらない。
 生粋の悪でありながら、人を惹きつけてやまない革命家。
 誰よりも今の状況を楽しむ狂人は、堂々と言い放つ。

「『昨日』踏みつけた屍に用はねぇ。
 『今日』に留まるなんざ温すぎて欠伸が出る。
 俺が見ているのは『明日』だけだ」

 未来に向けて、貪欲に手を伸ばす。
 炎のように全てを飲み込もうとしている。
 業火を思わせる熱に、V.V.は寂しさすら感じていた。

「……そう。
 君も『明日』が欲しいんだね」
「気にしていた知り合い全員が死んで、少しは疑問も片付いたんじゃねぇのか?」
「いいや、まだ……分からない。
 だから僕は、最後に残った彼らの選択が楽しみなんだ」

 志々雄から視線を逸らす。
 画面の中の景色は未だ動き続けている。

「例え僕が死んだとしても、戦いは終わらない」

 映し出される薔薇乙女と世紀王。
 どちらかが倒れない限り――否、このままなら両者が倒れない限り、元凶が排除されたとしても殺し合いは続く。
 だからこそ彼らは選択を迫られる。

「そしてきっと僕も、選択する事になるんだろう」

 何を、とは敢えて言わず。
 話が途切れると、志々雄も視線をV.V.から外して部屋の出入り口へ向けた。

「随分悠長に話をしているが、そいつは不死者の余裕か?
 そろそろ来てもおかしくないぜ」
「そうだね……“alter”は進化を意味する言葉。
 アルター使いとして覚醒した梨花を、観柳程度で止められるとは思えない」

 アルター使いの成長率は未知数で、コードによる不死に甘んじていては足下を掬われかねない。
 薔薇水晶も独自の考えに従って動き始めており、想定外の動きをする可能性がある。

「でも、僕も全てを見届けるまでに倒されるつもりはないからね。
 梨花には悪いけど、思い通りにはさせられないよ」

 梨花もまた、皆と生きる『明日』を求めて百年の戦いを乗り越えてきた人物だった。
 その事を思い返しながら、V.V.は怪人と共に殺し合いを静観する。

 そして物語はV.V.すら知らない結末へと向かう。


【二日目/第五回放送/???】
【志々雄真実@るろうに剣心-明治剣客浪漫譚-(漫画)】
[装備]:サバイバルナイフ@現実、ヒノカグツチ@真・女神転生if...、サバイブ(烈火)@仮面ライダー龍騎
[所持品]:支給品一式×4、リュウガのデッキ@仮面ライダー龍騎(一時間変身不可)、確認済み支給品0~4(武器ではない)、林檎×7@DEATH NOTE、鉄の棒@寄生獣
     マハブフストーン×4@真・女神転生if…、本を数冊(種類はお任せ)、工具@現実(現地調達)、首輪の残骸(銭形のもの)、首輪解除に関するメモ
     逆刃刀・真打@るろうに剣心、玉×5@TRICK、紐とゴム@現実(現地調達)、夜神月が書いたメモ、
     鷹野のデイパック(魔力の香@真・女神転生if...、体力の香@真・女神転生if...、???@???、その他不明支給品))
[状態]:各部に軽度の裂傷、首輪解除済み
[思考・行動]
1:ぶいつぅの掌の上にいる。(飽きるまで)
2:気が向いたらガリア王国のジョゼフを持て成す。
3:翠星石の中のキングストーンが欲しい。
4:間引く。
[備考]
※クーガー、C.C.、真司らと情報交換をしました。
※ギアスとコードについて情報を得ました。


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166:package h.GRY.ed 志々雄真実 170:ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- Ⅰ
V.V.



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