ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- Ⅰ ◆EboujAWlRA
放送直後のこと。
志々雄は、ふぅ、っと長い息を吐きながら天井を見つめる。
感傷ではないが、それでも若干気にかかっていることではあった。
志々雄の脳に浮かんだのは二人の少年少女のことだった。
もちろん、タバサと三村信史のことである。
タバサ、志々雄へと魔法の詳細を包み隠さず語った少女。
氷のように醒めた瞳の中に、全ての破滅を望んでいるような炎を持っていた。
その炎が志々雄の胸の中に溢れる野望の炎に呼応していたことを、志々雄は気づいている。
三村信史、志々雄へとこれから辿るかもしれない日本という国の歴史を語った少年。
大人のように冷徹を気取りつつも少年らしい未熟さを持った。
未熟さとは言い換えれば伸びしろであることを、志々雄は知っている。
志々雄は、ふぅ、っと長い息を吐きながら天井を見つめる。
感傷ではないが、それでも若干気にかかっていることではあった。
志々雄の脳に浮かんだのは二人の少年少女のことだった。
もちろん、タバサと三村信史のことである。
タバサ、志々雄へと魔法の詳細を包み隠さず語った少女。
氷のように醒めた瞳の中に、全ての破滅を望んでいるような炎を持っていた。
その炎が志々雄の胸の中に溢れる野望の炎に呼応していたことを、志々雄は気づいている。
三村信史、志々雄へとこれから辿るかもしれない日本という国の歴史を語った少年。
大人のように冷徹を気取りつつも少年らしい未熟さを持った。
未熟さとは言い換えれば伸びしろであることを、志々雄は知っている。
「フ……」
志々雄の顔に自然と笑みが浮かぶ。
タバサや三村のような有望な子供は、まさしく志々雄の好みだった。
殺す覚悟と殺される覚悟を持ち、それでいて志々雄の強さへ憧れに似た感情を抱いている。
三村信史もタバサも、殺すには惜しい人材だった。
タバサや三村のような有望な子供は、まさしく志々雄の好みだった。
殺す覚悟と殺される覚悟を持ち、それでいて志々雄の強さへ憧れに似た感情を抱いている。
三村信史もタバサも、殺すには惜しい人材だった。
「酒はねえのか?」
気分が良かった。
この一日で志々雄の野望は光の速さで膨れ上がった。
この先の血と炎に溢れた未来へと、それこそ祝杯を上げておきたい気分だった。
この一日で志々雄の野望は光の速さで膨れ上がった。
この先の血と炎に溢れた未来へと、それこそ祝杯を上げておきたい気分だった。
「必要なのかい?」
「思っていたよりもガキだな、お前は。
酒を飲むのに理由なんて要らねえだろ」
「人間は未熟だからね、肉体と精神の齟齬に耐えられないんだ」
「思っていたよりもガキだな、お前は。
酒を飲むのに理由なんて要らねえだろ」
「人間は未熟だからね、肉体と精神の齟齬に耐えられないんだ」
幼いままの身体は一種の罰だった。
V.V.はどれだけ歳を重ねようと天井の染みを感じられない。
六十年に近い年月が過ぎようと、V.V.の世界は変わらない。
だから、V.V.はシャルルに置いてけぼりを食らってしまった。
二人の間にあるわけがないと信じていた壁が、生まれてしまったのだ。
V.V.はどれだけ歳を重ねようと天井の染みを感じられない。
六十年に近い年月が過ぎようと、V.V.の世界は変わらない。
だから、V.V.はシャルルに置いてけぼりを食らってしまった。
二人の間にあるわけがないと信じていた壁が、生まれてしまったのだ。
「もっと早く気づくはずだったんだ……僕とシャルルは、もう変わってしまったことを。
老いを克服した僕と、老いに侵されつづけたシャルル。
一緒なはずがないのにね」
老いを克服した僕と、老いに侵されつづけたシャルル。
一緒なはずがないのにね」
V.V.は自嘲するように志々雄へと笑いかける。
志々雄は笑みを崩さず、未だに余裕を保ち続けている。
それでもV.V.は神に懺悔するように、言葉を続けた。
志々雄は笑みを崩さず、未だに余裕を保ち続けている。
それでもV.V.は神に懺悔するように、言葉を続けた。
「そうさ、僕はこの瞬間から明日がなくなったんだ……C.C.と同じさ」
「まあ、わからないでもねえな」
「まあ、わからないでもねえな」
志々雄は小さく頷き、その肌から炎が吹き出そうなほどの威圧感を持った火傷痕を撫でる。
かつて、地獄を見た時の後遺症だ。
かつて、地獄を見た時の後遺症だ。
「この火傷がな、急かすんだよ。
テメエの時代を作れ、戦火のない国なんざ退屈だってな。
元の身体に戻っちまったら……また、別の考えになるかも知れねえ」
「戻る気はあるのかい?」
「さあな。お前の力を奪ってなんでも出来るようになったら、戻るかもしれねえな」
テメエの時代を作れ、戦火のない国なんざ退屈だってな。
元の身体に戻っちまったら……また、別の考えになるかも知れねえ」
「戻る気はあるのかい?」
「さあな。お前の力を奪ってなんでも出来るようになったら、戻るかもしれねえな」
ニヤリと唇を歪める。
V.V.は軽く笑みを漏らして、結局その話に持って行きたいんだね、と小さく呟いた。
しかし、拒絶するつもりはない。
そろそろ話してもいい頃になっている。
カーテンコールは近い。
なにせ、二つのキングストーンが激突しているのだから。
V.V.は息を吸うと、ポツリポツリと話し始めた。
V.V.は軽く笑みを漏らして、結局その話に持って行きたいんだね、と小さく呟いた。
しかし、拒絶するつもりはない。
そろそろ話してもいい頃になっている。
カーテンコールは近い。
なにせ、二つのキングストーンが激突しているのだから。
V.V.は息を吸うと、ポツリポツリと話し始めた。
「ここはあらゆる世界から隔離された、ラプラスお手製の特殊空間さ」
口にした言葉とは裏腹に、V.V.はなんでもないような口ぶりで語り始める。
志々雄はただ黙って続きを待つ。
丁寧にV.V.の言葉を吟味するためだ。
志々雄はただ黙って続きを待つ。
丁寧にV.V.の言葉を吟味するためだ。
「君は知らないだろうけど、あの会場は端と端が繋がっているんだ。
ループ構造……と、横文字はわからないかな。
まあ、東に海を超えて進んで行ったら会場の西端に飛ばされてしまうんだ」
「それがあの兎の力か?」
ループ構造……と、横文字はわからないかな。
まあ、東に海を超えて進んで行ったら会場の西端に飛ばされてしまうんだ」
「それがあの兎の力か?」
「そうだよ……だから、本当はラプラスが居ない今の状況はすごい危ないんだ」
「あの甲冑野郎がぶっ殺しちまったからな」
「……ラプラスの死よりも、キングストーンが共鳴していることが一番危険なんだ。
ラプラスの空間すらも歪める、あの魔王の石が。
あるいはラプラスが居ればその対処も出来ないから、結局はラプラスの死が一番危険なのかな」
「あの甲冑野郎がぶっ殺しちまったからな」
「……ラプラスの死よりも、キングストーンが共鳴していることが一番危険なんだ。
ラプラスの空間すらも歪める、あの魔王の石が。
あるいはラプラスが居ればその対処も出来ないから、結局はラプラスの死が一番危険なのかな」
初めてV.V.がその顔を引き締め、対して志々雄は笑みを深める。
V.V.が恐れるほどの力だ。
この世の頂点を求める志々雄の野望の炎が強めるに十分値する代物に決まっている。
V.V.が恐れるほどの力だ。
この世の頂点を求める志々雄の野望の炎が強めるに十分値する代物に決まっている。
「こちら側にあるのならば、いや、世紀王の元にないのならばそこまで恐ろしくはないよ。
問題は、世紀王の元にあるということさ」
「なら、あの人形に言って回収させりゃ良かったじゃねえか」
「……創世王が誕生することもこの数多に繰り返された選択の結果。
それはそれで、僕の求めている一つの答えさ」
問題は、世紀王の元にあるということさ」
「なら、あの人形に言って回収させりゃ良かったじゃねえか」
「……創世王が誕生することもこの数多に繰り返された選択の結果。
それはそれで、僕の求めている一つの答えさ」
そうは言いながらも、出来ればそうならないように願っているといった表情だった。
恐らく、創世王が誕生すればその瞬間に勝敗が決すると踏んでいるのだろう。
V.V.は話をもとに戻すよ、と断りを入れて言葉を続ける。
恐らく、創世王が誕生すればその瞬間に勝敗が決すると踏んでいるのだろう。
V.V.は話をもとに戻すよ、と断りを入れて言葉を続ける。
「Cの世界はあらゆる記憶が眠る……おっと、それはすでに知っていたかな」
「盗み聞きしたからな」
「結構。でも、『存在の炎』は知らないでしょ?」
「……炎、か」
「人間は、いや、生きているものは皆、炎なのさ。
燃えるように生きているんだ、存在の炎はその存在そのものってわけだよ」
「盗み聞きしたからな」
「結構。でも、『存在の炎』は知らないでしょ?」
「……炎、か」
「人間は、いや、生きているものは皆、炎なのさ。
燃えるように生きているんだ、存在の炎はその存在そのものってわけだよ」
志々雄の反応が真剣になったことを確認する。
V.V.はこれからが本題だと言わんばかりに、ゆっくりと口にする。
V.V.はこれからが本題だと言わんばかりに、ゆっくりと口にする。
「特殊な空間である会場と、第二会場であるここでは死というトリガーがある」
――――奇跡への引き金さ。
志々雄の眼の色が変わる。
それこそが聞きたかったと全身で表現していた。
その貪欲さにV.V.は苦笑を浮かべた。
それこそが聞きたかったと全身で表現していた。
その貪欲さにV.V.は苦笑を浮かべた。
「ラプラスの置き土産……特殊すぎる自在法、【バトルロワイアル】」
死んでしまったラプラスの魔がこの殺し合いの全貌を握っている。
そもそもがラプラスの魔が始まりなのだ。
V.V.は、ただの舞台装置だ。
そもそもがラプラスの魔が始まりなのだ。
V.V.は、ただの舞台装置だ。
「この異世界そのものがギミック。
そして、六十四人の『脱落』が確認された瞬間、死亡表記が出ることで、ね。
その瞬間に、願いを叶える自在法……一種の魔法を発動させる」
そして、六十四人の『脱落』が確認された瞬間、死亡表記が出ることで、ね。
その瞬間に、願いを叶える自在法……一種の魔法を発動させる」
いや、はっきり言ってしまえば。
「六十四名の存在を消滅させ、数多の世界を歪めることで常識を塗り替えるのさ」
――――殺し合いに招かれた六十五人以外は、全てが舞台装置とも言える。
「死んだ六十四名は消える。命が無くなるんじゃない。
Cの世界に刻み込んだ存在の炎が消えてなくなるんだ。
もうその人のことを誰も覚えちゃいないし、何も残りはしない」
Cの世界に刻み込んだ存在の炎が消えてなくなるんだ。
もうその人のことを誰も覚えちゃいないし、何も残りはしない」
それは空白になる。
上書きされるわけでもなく、消えたという記憶すら消えてなくなる。
あったはずものが失われる、虚無の存在へと変わるのだ。
上書きされるわけでもなく、消えたという記憶すら消えてなくなる。
あったはずものが失われる、虚無の存在へと変わるのだ。
「そんな不自然はCの世界に巨大な矛盾を残す。
Cの世界は人の意思そのものだから、きっと人間はひどいことになる。
嘘だとかそんなことどうでも良くなるような、異世界規模の大災害が起こるさ」
Cの世界は人の意思そのものだから、きっと人間はひどいことになる。
嘘だとかそんなことどうでも良くなるような、異世界規模の大災害が起こるさ」
つまり、奇跡と同時に破壊が行われる。
世界が壊れ、人が死に、記憶は消える。
奇跡には代償が必要とはよく言ったものだ。
世界が壊れ、人が死に、記憶は消える。
奇跡には代償が必要とはよく言ったものだ。
「例え、始まりに、『全てを元にリセットした』ところでCの世界に歪みが生まれる。
世界のすべてが壊れ、Cの世界に生まれた矛盾は人という種そのものをおかしくしてしまうかもしれない」
「それでいいさ」
世界のすべてが壊れ、Cの世界に生まれた矛盾は人という種そのものをおかしくしてしまうかもしれない」
「それでいいさ」
志々雄は唇を歪める。
V.V.にそのまま食い付きかねない、悪鬼の笑みだった。
頭によぎるのは少年と少女。
どちらも力を求めた、好ましい子供だった。
そいつらが世界から本当に消える。
それもまた好ましい。
弱肉強食とは、そうあるべきなのだ。
V.V.にそのまま食い付きかねない、悪鬼の笑みだった。
頭によぎるのは少年と少女。
どちらも力を求めた、好ましい子供だった。
そいつらが世界から本当に消える。
それもまた好ましい。
弱肉強食とは、そうあるべきなのだ。
――――敗者に残されるものなど、あってはならない。
「敗者はどこまでも惨めでないと意味がねえ、そういうこった……多少のリスクは覚悟のうえだ。
俺が生きてれば、それだけで弱肉強食の世界になる」
「なら、協力してもらおうかな」
俺が生きてれば、それだけで弱肉強食の世界になる」
「なら、協力してもらおうかな」
V.V.はそう言うと、志々雄に向き直った。
そして、手に小型端末を持ち志々雄へと声を投げかける。
そして、手に小型端末を持ち志々雄へと声を投げかける。
「それ、返してもらえるかな」
その瞬間、どこからか現れたブリタニア兵が志々雄へと手を伸ばす。
志々雄は無言でヒノカグツチを振るい、ブリタニア兵を一刀に伏す。
志々雄は無言でヒノカグツチを振るい、ブリタニア兵を一刀に伏す。
「あん?」
しかし、ブリタニア兵は動きを止めずに志々雄からデイパックを奪った。
本来ならば生命活動を停止させるはずの傷だというのに、だ。
志々雄も疑問を抱くが、そのブリタニア兵が斬り落とされたヘルメットを落とすと得心する。
本来ならば生命活動を停止させるはずの傷だというのに、だ。
志々雄も疑問を抱くが、そのブリタニア兵が斬り落とされたヘルメットを落とすと得心する。
「ハッ……こいつが悪魔ってやつか?」
「そうだよ、【ゾンビくん】っていう悪魔なんだ。仲良くしてあげてね……もう死ぬだろうけど」
「そうだよ、【ゾンビくん】っていう悪魔なんだ。仲良くしてあげてね……もう死ぬだろうけど」
V.V.は志々雄のデイパックから、鷹野が奪った『あるもの』を取り出す。
巨大なその器に入った『あるもの』を別のゾンビ兵へと渡す。
例の場所に置いておいてね、とだけ言うと再び志々雄と向かい合った。
巨大なその器に入った『あるもの』を別のゾンビ兵へと渡す。
例の場所に置いておいてね、とだけ言うと再び志々雄と向かい合った。
「君の手癖の悪さは承知しているし、それもまた強さだとはわかるよ。
でも、これも必要な物なんだ。悪いけど、簡単にはあげられないね」
「……奪ってもいいのか?」
「奪えるものならね」
でも、これも必要な物なんだ。悪いけど、簡単にはあげられないね」
「……奪ってもいいのか?」
「奪えるものならね」
緊張が場を走る。
志々雄のヒノカグツチが熱を上げたように感じる。
あるいは、志々雄の剣気が熱を出しているのか。
いずれにせよ、志々雄はV.V.へと殺気を向けているのは事実だった。
志々雄のヒノカグツチが熱を上げたように感じる。
あるいは、志々雄の剣気が熱を出しているのか。
いずれにせよ、志々雄はV.V.へと殺気を向けているのは事実だった。
「やめだ」
「へえ?」
「どうせ、すぐに終わる……俺はその時に備えるだけさ。」
「へえ?」
「どうせ、すぐに終わる……俺はその時に備えるだけさ。」
しかし、志々雄は剣を収めた。
これからの出来事が志々雄にはわかっているのだろうか?
いや、それはあり得ない。
志々雄は人間だ。
どれだけ常軌を逸した狂気を持っていようとも、そのくくりからは抜けられない。
人間である以上は未来はわからない。
これからの出来事が志々雄にはわかっているのだろうか?
いや、それはあり得ない。
志々雄は人間だ。
どれだけ常軌を逸した狂気を持っていようとも、そのくくりからは抜けられない。
人間である以上は未来はわからない。
「宴もたけなわってな……祭りもいつかは終わりが来る。
俺は戦いを考えるだけだ」
俺は戦いを考えるだけだ」
それでも、戦いが来ることだけはわかっていた。
地獄の修羅が闘いの予感を読み違えることなどありはしないのだから。
やがて来るすべての終わりを手に入れるために。
奇跡を手に入れ世界を地獄にするために。
志々雄は英気を養うという判断をしただけだ。
地獄の修羅が闘いの予感を読み違えることなどありはしないのだから。
やがて来るすべての終わりを手に入れるために。
奇跡を手に入れ世界を地獄にするために。
志々雄は英気を養うという判断をしただけだ。
◆ ◆ ◆
その頃。
『向こう側の世界』を覗き込むことで力を手に入れた古手梨花と悪魔の力を手に入れた武田観柳が睨み合っていた。
黄金銃を片手に、観柳は小型端末のキーを叩く。
メインサーバーに眠っている悪魔召喚プログラムへとアクセスするための端末だ。
すなわち、その行動は悪魔召喚プログラムの起動に他ならない。
『向こう側の世界』を覗き込むことで力を手に入れた古手梨花と悪魔の力を手に入れた武田観柳が睨み合っていた。
黄金銃を片手に、観柳は小型端末のキーを叩く。
メインサーバーに眠っている悪魔召喚プログラムへとアクセスするための端末だ。
すなわち、その行動は悪魔召喚プログラムの起動に他ならない。
「ジャァックフロスト! ケットシー!」
「ヒーホー!」
「ヒャッハー! 地獄の時間だあ!」
「ヒーホー!」
「ヒャッハー! 地獄の時間だあ!」
観柳は二匹の悪魔の名を呼ぶ。
【妖精】ジャックフロストと【魔獣】ケットシーだ。
ともに接近戦を得意とする悪魔である。
うちの一体、ジャックフロストは圭一たちの着る制服を見て興奮を示す。
【妖精】ジャックフロストと【魔獣】ケットシーだ。
ともに接近戦を得意とする悪魔である。
うちの一体、ジャックフロストは圭一たちの着る制服を見て興奮を示す。
「おお、オイラも学校の想い出あるホー! 鍛え上げたぶちかましでぶっ飛ばしてやるホー!
血と汗と涙に染み込んだまわしの匂いを感じ取れー!」
血と汗と涙に染み込んだまわしの匂いを感じ取れー!」
学生服を着たジャックフロスト、ヒーホーくんは体当たりを仕掛ける。
迎え撃つのは圭一だ。
金属バットを思い切り振り、ジャックフロストをまるでボールのように打ち変えさんとする。
迎え撃つのは圭一だ。
金属バットを思い切り振り、ジャックフロストをまるでボールのように打ち変えさんとする。
「い、痛いホー! 相撲部は野球部には勝てないのかホ……?」
しかし、ジャックフロストも低級とは言え悪魔。
ダメージこそ感じているものの、死を与えるには遠い。
そのまま、もう一度ジャックフロストは体当たりを仕掛ける。
圭一は他のメンバーに目配せし、ジャックフロストへの迎撃に専念する。
ダメージこそ感じているものの、死を与えるには遠い。
そのまま、もう一度ジャックフロストは体当たりを仕掛ける。
圭一は他のメンバーに目配せし、ジャックフロストへの迎撃に専念する。
「ケットシー、タルカ――――!」
観柳はケットシーにタルカジャ、すなわち攻撃力増強の補助魔法をかけさせようとする。
しかし、次はレナがケットシーへと迫り詠唱を中断させる。
ケットシーを打ち倒すためにその鉈を鋭く振るう。
しかし、ケットシーもその手に持った剣で鉈を受け止める。
ケットシーはレナと交戦、魔法を唱える隙はない。
しかし、次はレナがケットシーへと迫り詠唱を中断させる。
ケットシーを打ち倒すためにその鉈を鋭く振るう。
しかし、ケットシーもその手に持った剣で鉈を受け止める。
ケットシーはレナと交戦、魔法を唱える隙はない。
「糞が……来い、ウコバク! コボルト!
ジャックフロストは一度後衛に下がれ!」
ジャックフロストは一度後衛に下がれ!」
ジャックフロストと入れ替わるようにコボルトがその手に持った棍棒で圭一の金属バットを受け止める。
そして、入れ替わったジャックフロストが新たに召喚されたウコバクが後衛へと移り魔法を唱える。
中範囲魔法である炎熱系魔法マハラギと氷結系魔法マハブフが梨花たちを襲う。
梨花はバックステップで致命傷を避ける。
羽入を背負った梨花はその耐久力も増している。
ウコバクとジャックフロストの放つ魔法程度ならば耐えられるほどに。
そして、入れ替わったジャックフロストが新たに召喚されたウコバクが後衛へと移り魔法を唱える。
中範囲魔法である炎熱系魔法マハラギと氷結系魔法マハブフが梨花たちを襲う。
梨花はバックステップで致命傷を避ける。
羽入を背負った梨花はその耐久力も増している。
ウコバクとジャックフロストの放つ魔法程度ならば耐えられるほどに。
「攻撃を止めるな!
殺せぇ! さっさと殺すんだ!」
「甘いわ!」
殺せぇ! さっさと殺すんだ!」
「甘いわ!」
その瞬間、前へと進もうとしたウコバクとジャックフロストが転倒する。
床に貼られたピアノ線トラップ。
音もなく、光もなく。
北条沙都子が仕込んだトラップが作動した。
その隙を狙い撃つように園崎姉妹の散弾銃が火を噴く。
ジャックフロストとウコバクは防御姿勢を取った。
状況は梨花有利。
それを確信すると、梨花は前へと突き進んだ。
床に貼られたピアノ線トラップ。
音もなく、光もなく。
北条沙都子が仕込んだトラップが作動した。
その隙を狙い撃つように園崎姉妹の散弾銃が火を噴く。
ジャックフロストとウコバクは防御姿勢を取った。
状況は梨花有利。
それを確信すると、梨花は前へと突き進んだ。
「くっ……お前ら、何をやっている! さっさと止めろ……!」
観柳は悪魔たちへと叱責する。
しかし、不利な状況は変化させられない。
梨花がアルター能力によって生み出した仲間は観柳の仲魔と同等。
そこの五対六という数的不利が加わっているのだ。
しかし、不利な状況は変化させられない。
梨花がアルター能力によって生み出した仲間は観柳の仲魔と同等。
そこの五対六という数的不利が加わっているのだ。
圭一とレナがコボルトとケットシーを跳ね除け、観柳へと道を作る。
迫り来るウコバクの炎弾とジャックフロストの氷弾を魅音と詩音が撃ち落とす。
観柳が迎撃に黄金銃へと手を伸ばす。
しかし、突如右手に痛みが走る。
観柳の意識の外で動いていた沙都子のトラップが発動し、右手に突き刺さるように針が刺さっている。
痛みに顔をしかめ、一瞬動きが止まる。
迫り来るウコバクの炎弾とジャックフロストの氷弾を魅音と詩音が撃ち落とす。
観柳が迎撃に黄金銃へと手を伸ばす。
しかし、突如右手に痛みが走る。
観柳の意識の外で動いていた沙都子のトラップが発動し、右手に突き刺さるように針が刺さっている。
痛みに顔をしかめ、一瞬動きが止まる。
梨花は歯を食いしばり、繰り返される地獄の中で何度も握りしめた拳を固めた。
そして、そのまま観柳へと殴りかかる。
梨花の人生は理不尽への怒りであり、その怒りを観柳へと叩き込んだ。
そして、そのまま観柳へと殴りかかる。
梨花の人生は理不尽への怒りであり、その怒りを観柳へと叩き込んだ。
「ブッ!?」
梨花の鉄拳を叩きこまれ、観柳はたたらを踏んで退いた。
そして、梨花の後方で戦い続ける仲魔と雛見沢の住民を眺める。
お互いに拮抗しあっており、助けにこれそうな悪魔は居ない。
そして、梨花の後方で戦い続ける仲魔と雛見沢の住民を眺める。
お互いに拮抗しあっており、助けにこれそうな悪魔は居ない。
「武田観柳……! 貴方ならわかるでしょう、武器庫の場所を!
いえ……違うわね。V.V.のところへと案内しなさい」
いえ……違うわね。V.V.のところへと案内しなさい」
このまま、この力でV.V.と対面する。
奇跡を起こした仲間達とともに、この惨劇を食い止める。
それが出来ると梨花は信じている。
一度出来たことが二度出来ないわけがないのだ。
奇跡を起こした仲間達とともに、この惨劇を食い止める。
それが出来ると梨花は信じている。
一度出来たことが二度出来ないわけがないのだ。
「こ、この糞ガキ……!」
観柳はこめかみに青筋を立て、怒りを顕にする。
しかし、どれだけ怒りを覚えてもその怒りで解決することは出来ない。
観柳は小型端末を操作し、新たな悪魔を呼び寄せる。
しかし、どれだけ怒りを覚えてもその怒りで解決することは出来ない。
観柳は小型端末を操作し、新たな悪魔を呼び寄せる。
「ゾンビ兵、来い!」
現れる十数人規模のゾンビ兵。
動きが緩慢なゾンビ兵達だが、この人数となると壁としては十分すぎるほどの効果があった。
銃器をを持たず、腕を伸ばしながらただ迫ってくるだけのゾンビ兵を蹴散らしていく。
圭一の金属バットとレナの鉈で首が吹き飛び、魅音と詩音の銃撃で手足を吹き飛ばされて行動が不能となる。
動きが緩慢なゾンビ兵達だが、この人数となると壁としては十分すぎるほどの効果があった。
銃器をを持たず、腕を伸ばしながらただ迫ってくるだけのゾンビ兵を蹴散らしていく。
圭一の金属バットとレナの鉈で首が吹き飛び、魅音と詩音の銃撃で手足を吹き飛ばされて行動が不能となる。
しかし、観柳が逃げ出すには十分な隙だった。
恥も外聞もなく、背中を見せて逃走する観柳。
目的地はひとつ、メインサーバー、つまり悪魔召喚プログラムが仕込まれた場所だ。
そこにはフロッピーディスクとカードデッキがある。
観柳は自身の生命線とも言える最大の武器が眠る場所へと走る。
恥も外聞もなく、背中を見せて逃走する観柳。
目的地はひとつ、メインサーバー、つまり悪魔召喚プログラムが仕込まれた場所だ。
そこにはフロッピーディスクとカードデッキがある。
観柳は自身の生命線とも言える最大の武器が眠る場所へと走る。
「逃さないわ!」
梨花も観柳の逃走が、何かを求めたゆえの逃走であることを察して懸命に追いかける。
しかし、基地のどこに隠れていたのだと言いたくなるほどのゾンビ兵が梨花の前に立ちふさがる。
アルター能力によって生み出した五人との協力でゾンビ兵を蹴散らしていく。
しかし、基地のどこに隠れていたのだと言いたくなるほどのゾンビ兵が梨花の前に立ちふさがる。
アルター能力によって生み出した五人との協力でゾンビ兵を蹴散らしていく。
「ハァ……ハァ……ハ、ハハハ!」
しかし、足止めは成功した。
観柳はメインサーバーの置かれた電算室。
その中で置かれたカードデッキと一枚のフロッピーディスクを手に取る。
そして、フロッピーディスクをメインサーバーへと読み込ませる。
観柳はメインサーバーの置かれた電算室。
その中で置かれたカードデッキと一枚のフロッピーディスクを手に取る。
そして、フロッピーディスクをメインサーバーへと読み込ませる。
「……なんのつもり。ここにV.V.が居るとでも言いたいの?」
一足遅れて電算室へと足を踏み入れた梨花は観柳へと軽口を叩く。
もちろん、観柳がなにかしらの切り札を手にとったことは承知している。
現に、観柳の握るカードデッキを見て息を呑んだ。
強制的に殺し合いの観客とさせられた梨花はカードデッキの恐ろしさを良く知っているからだ。
もちろん、観柳がなにかしらの切り札を手にとったことは承知している。
現に、観柳の握るカードデッキを見て息を呑んだ。
強制的に殺し合いの観客とさせられた梨花はカードデッキの恐ろしさを良く知っているからだ。
観柳が手に持つデッキは仮面ライダーライアのデッキ。
しかし、そこには紋章は浮かんでいない灰色のデッキだ。
すなわち、このデッキはミラーモンスターと契約を交わしていないということになる。
しかし、そこには紋章は浮かんでいない灰色のデッキだ。
すなわち、このデッキはミラーモンスターと契約を交わしていないということになる。
「変身ッ!」
それでも観柳は変身する。
変身すればライダーには遠く及ばないが、それでも人間を超える力を手に入れることができる。
すなわち、一度の攻撃で倒れるような真似はしない。
耐久力の増加は好ましい。
変身すればライダーには遠く及ばないが、それでも人間を超える力を手に入れることができる。
すなわち、一度の攻撃で倒れるような真似はしない。
耐久力の増加は好ましい。
「来い、悪魔ども!」
そして、仲魔を召喚してメインサーバーコンピュータへと向き合う。
キーボードを素早く叩き、悪魔召喚プログラムを立ち上げた。
同時にフロッピーディスクに備え付けられたデータを悪魔召喚プログラムへと叩きこむ。
契約の儀式をプログラム言語に置き換え、悪魔召喚プログラムがその真価を発揮した。
キーボードを素早く叩き、悪魔召喚プログラムを立ち上げた。
同時にフロッピーディスクに備え付けられたデータを悪魔召喚プログラムへと叩きこむ。
契約の儀式をプログラム言語に置き換え、悪魔召喚プログラムがその真価を発揮した。
「戻れ、ゾンビども! お前たちにやるマグネタイトはもったいないんだよ……!」
フロッピーディスクに仕込まれた悪魔を召喚する前に、観柳はゾンビ兵を送還する。
すなわち、マグネタイトの確保。
これから召喚する悪魔はゾンビやジャックフロストなどのような下級悪魔とは違う。
すなわち、マグネタイトの確保。
これから召喚する悪魔はゾンビやジャックフロストなどのような下級悪魔とは違う。
「来い……ッ!」
神話に記された、怪物。
人では太刀打ち出来ない本物の悪魔だ。
人では太刀打ち出来ない本物の悪魔だ。
「ケルベロスッ!」
雪原めいた白に青の装飾を加えた毛並み。
剥き出しの牙は日本刀を優に超える美しい刃物。
ゆらゆらと揺れる尻尾はそれだけで人を撲殺できそうな力強さを感じる。
神話級の怪物、ケルベロスがそこに居た。
剥き出しの牙は日本刀を優に超える美しい刃物。
ゆらゆらと揺れる尻尾はそれだけで人を撲殺できそうな力強さを感じる。
神話級の怪物、ケルベロスがそこに居た。
「ケルベロス、パワーブレスだ!」
観柳の言葉と同時にケルベロスが咆哮を挙げる。
そして、不可思議な吐息が観柳と仲魔を包む。
これこそが力強さを増すタルカジャとスピードを増すスクカジャの効果を持つケルベロスの特技、パワーブレスだ。
そして、不可思議な吐息が観柳と仲魔を包む。
これこそが力強さを増すタルカジャとスピードを増すスクカジャの効果を持つケルベロスの特技、パワーブレスだ。
パワーブレスによって身体能力を強化されたコボルトとケットシーはレナと圭一を圧倒する。
マハブフとマハラギの嵐は魅音と詩音の銃撃を防いでいく。
沙都子のトラップはダンプカーのように走り回るケルベロスの動きを弱めることしか出来ない。
マハブフとマハラギの嵐は魅音と詩音の銃撃を防いでいく。
沙都子のトラップはダンプカーのように走り回るケルベロスの動きを弱めることしか出来ない。
「テメエの命は金で買えねえが、金はテメエの命なんかよりもよっぽど重要なものなんだよッ!」
すでに戦況を一変していた。
スペックが大きく劣るブランク体とは言えライアへと変身し、ケルベロスを召喚した観柳。
観柳は瞬時に梨花との距離を詰め、紙幣のつまったバッグを手に取って大きく振りかぶった。
スペックが大きく劣るブランク体とは言えライアへと変身し、ケルベロスを召喚した観柳。
観柳は瞬時に梨花との距離を詰め、紙幣のつまったバッグを手に取って大きく振りかぶった。
「昨日の金儲けは今日の為に!
今日の金儲けは明日の為に!
明日の金儲けは未来の為に!
未来の金儲けは……全て、私の栄光の為に!」
今日の金儲けは明日の為に!
明日の金儲けは未来の為に!
未来の金儲けは……全て、私の栄光の為に!」
観柳は紙幣が詰まったバッグを梨花の丹田へと叩きつける。
金の重みと匂いによって観柳の脳はリミッターを解除し、人の限界を超える。
梨花の小さな身体が浮き上がり、大きく後方へと吹き飛ばされる。
金の重みと匂いによって観柳の脳はリミッターを解除し、人の限界を超える。
梨花の小さな身体が浮き上がり、大きく後方へと吹き飛ばされる。
「所詮『オトモダチ』なんてこんなものかぁ……!
最後に頼れるのはやっぱりお金様だけだなぁ、おい!」
最後に頼れるのはやっぱりお金様だけだなぁ、おい!」
仮面ライダーライア・ブランク体という強化された身体で梨花へと詰め寄る。
前衛である圭一とレナが間に入ろうとするが、コボルトとケットシーによって阻まれた。
詩音と魅音が散弾銃によって止めようとするが、マハラギとマハブフが目眩ましとなって命中率が極端に下る。
観柳は梨花へと黄金銃を放つ。
先ほどとは真逆の状況となり、梨花を凶弾が襲う。
前衛である圭一とレナが間に入ろうとするが、コボルトとケットシーによって阻まれた。
詩音と魅音が散弾銃によって止めようとするが、マハラギとマハブフが目眩ましとなって命中率が極端に下る。
観柳は梨花へと黄金銃を放つ。
先ほどとは真逆の状況となり、梨花を凶弾が襲う。
が、沙都子が人知れずに仕掛けたピアノ線トラップによって、僅かに銃弾は逸れた。
しかし、それはフェイク。
観柳の本命は片手の指で弾いた小銭だ。
強化された肉体から弾き出される小銭はさながら銃弾そのもの。
何よりも観柳の信じる金の力によって観柳自身の脳のリミッターが解除されて威力は極大だ。
肉体そのものは人間である梨花の身体には大きなダメージが与えられる。
それでも耐えられるのは、守護霊のように梨花に隣接する羽入の存在が故。
しかし、それはフェイク。
観柳の本命は片手の指で弾いた小銭だ。
強化された肉体から弾き出される小銭はさながら銃弾そのもの。
何よりも観柳の信じる金の力によって観柳自身の脳のリミッターが解除されて威力は極大だ。
肉体そのものは人間である梨花の身体には大きなダメージが与えられる。
それでも耐えられるのは、守護霊のように梨花に隣接する羽入の存在が故。
「これで五百円の損失だ……わかるか?
この時代の五百円は大した金じゃないがらしいが、五百円って聞くだけで大金って思っちまうんだよ!
やってくれるじゃねえか!」
「……ッ、アンタが勝手に壊したんでしょ」
この時代の五百円は大した金じゃないがらしいが、五百円って聞くだけで大金って思っちまうんだよ!
やってくれるじゃねえか!」
「……ッ、アンタが勝手に壊したんでしょ」
上級悪魔であり強力な補助特技を持つケルベロスの存在によって状況は不利に押しやられた。
梨花のアルター能力はそこまで強くはない。
それは目覚めたばかりということもあるが、梨花の信じる部活メンバーがあくまで常人の範囲にあるからだ。
梨花が強く信じれば信じるほど、超常の力は現実に沿って行く。
しかし、強く信じれば信じるほど。
それは目覚めたばかりということもあるが、梨花の信じる部活メンバーがあくまで常人の範囲にあるからだ。
梨花が強く信じれば信じるほど、超常の力は現実に沿って行く。
しかし、強く信じれば信じるほど。
『奇跡』を起こした仲間と共に、『奇跡』を起こすことが出来る。
梨花はすでに『奇跡』を知っているのだから。
梨花はすでに『奇跡』を知っているのだから。
「ケルベロォス!」
観柳はケルベロスへと攻撃を促した。
その体当たりはすでにそれだけで必殺の技。
沙都子というアルター能力による幾つものトラップによってその威力は殺されるが、梨花にケルベロスの体当たりが命中する。
梨花は紙くずのように吹き飛ばされる。
しかし、それでも梨花は睨むように前を向いた。
光が溢れ、ケルベロスの前へと圭一とレナが出現する。
さながら瞬間移動のような速度、ケルベロスと言えども反応ができない。
その瞬間を逃さず、圭一とレナはケルベロスへと殴りかかった。
死には至らない攻撃だが、鼻っ柱を殴られたケルベロスは怯んで攻撃を緩めた。
そして、光が溢れる。
アルター能力である圭一たちが再び光りに包まれた。
その体当たりはすでにそれだけで必殺の技。
沙都子というアルター能力による幾つものトラップによってその威力は殺されるが、梨花にケルベロスの体当たりが命中する。
梨花は紙くずのように吹き飛ばされる。
しかし、それでも梨花は睨むように前を向いた。
光が溢れ、ケルベロスの前へと圭一とレナが出現する。
さながら瞬間移動のような速度、ケルベロスと言えども反応ができない。
その瞬間を逃さず、圭一とレナはケルベロスへと殴りかかった。
死には至らない攻撃だが、鼻っ柱を殴られたケルベロスは怯んで攻撃を緩めた。
そして、光が溢れる。
アルター能力である圭一たちが再び光りに包まれた。
「私は覚えている」
圭一たちは姿を消し、光は強まっていく。
さしものケルベロスも強烈な光に目をやられ、動きを止めた。
しかし、ただの目眩ましではないはずだ。
アルター使いにとっての光とはすなわちアルター能力発動のキーだ。
さしものケルベロスも強烈な光に目をやられ、動きを止めた。
しかし、ただの目眩ましではないはずだ。
アルター使いにとっての光とはすなわちアルター能力発動のキーだ。
――――新たな力が、発動する予兆なのだ。
「何度もやり直して、何度も失敗して」
「奇跡を、見た」
七人の輝きが、一つに纏わりつき。
「奇跡は……!」
弾丸となって、観柳へと向かっていった。
「仲間と一緒にある!」
――――ケットシー、腹部をえぐり取られ撃墜。
――――コボルト、低く構えた体勢のまま脳髄を吹き飛ばされ撃墜。
――――ジャックフロスト、その学生服を真っ白な雪に染めて撃墜。
――――ウコバク、腕に持った杖で防御姿勢をするも杖もろとも破壊され撃墜。
――――ケルベロス、悪魔の本能でその危機を察知し回避、しかし、その右半身を大きく傷つけられる。
低級悪魔を撃破していき、ついには観柳へと弾丸が襲い掛かる。
武田観柳は受け止めるようにして右手を突き出した。
光の弾丸は武田観柳へと直撃する。
武田観柳は受け止めるようにして右手を突き出した。
光の弾丸は武田観柳へと直撃する。
――――光が奔流するように世界を照らす。
「フフ……フハハ!」
そして、武田観柳――――
「生きている! 生きているぞ!」
――――生存!
「私は生きている……そして、ケルベロスも!」
「………ッ!」
「………ッ!」
観柳の右腕からは血を流し、額からも微量の血が滴り落ち、黄金銃も破壊された。
確かなダメージを与えたが、しかし、その生命は未だに失われていない。
そして、武器であるケルベロスも生きている。
梨花は膝から崩れ落ちながら、それでも観柳を強く睨みつける。
確かなダメージを与えたが、しかし、その生命は未だに失われていない。
そして、武器であるケルベロスも生きている。
梨花は膝から崩れ落ちながら、それでも観柳を強く睨みつける。
「私の勝ちだ、金の勝利だ!
くだらない感情など、金という現実の前にはなんの意味も持たないということですよ!」
くだらない感情など、金という現実の前にはなんの意味も持たないということですよ!」
興奮、同時に優越感。
観柳の口調が紳士然としたものへと変わっていった。
勝利を前にした余裕だろう
観柳の口調が紳士然としたものへと変わっていった。
勝利を前にした余裕だろう
「さぁ、ケルベロス! 殺すのです、その少女をね!」
観柳は歪な笑みを浮かべ、ケルベロスへと命令する。
自身は片腕を失くしたが、それでもV.V.の技術ならばなんの問題もないだろう。
大事なことは生きていることだ。
金至上主義者である観柳でも命を買い戻すことが出来ないことは心得ている。
憎き抜刀斎の言葉が、記憶に削り込まれている。
だからこそ、目の前の敵へと金ですら取り戻せない死を与える必要があると踏んだのだ。
自身は片腕を失くしたが、それでもV.V.の技術ならばなんの問題もないだろう。
大事なことは生きていることだ。
金至上主義者である観柳でも命を買い戻すことが出来ないことは心得ている。
憎き抜刀斎の言葉が、記憶に削り込まれている。
だからこそ、目の前の敵へと金ですら取り戻せない死を与える必要があると踏んだのだ。
「……」
「……? どうした、ケルベロス。なぜ動かない?」
「……? どうした、ケルベロス。なぜ動かない?」
しかし、ケルベロスは一向に梨花へと襲い掛からない。
それどころかケルベロスはのっしりとした動作で振り返り、観柳を睨みつけた。
悪魔が与える恐怖に、観柳は自然と背後へと退いていた。
ケルベロスはそんな観柳の動作に満足したように、ニヤリと笑みをつくった。
それどころかケルベロスはのっしりとした動作で振り返り、観柳を睨みつけた。
悪魔が与える恐怖に、観柳は自然と背後へと退いていた。
ケルベロスはそんな観柳の動作に満足したように、ニヤリと笑みをつくった。
「ウシロ ヲ ミテミロ」
「……なっ!?」
「……なっ!?」
ケルベロスの言葉に反応するように、観柳は恐る恐ると言った様子で背後へと振り返る。
そこには、悪魔召喚プログラムが搭載されたメインサーバーが破壊されていた。
いくら端末のキーを打ち込もうとも、本体のプログラムが破壊されれば契約は破棄されたと同義。
そこには、悪魔召喚プログラムが搭載されたメインサーバーが破壊されていた。
いくら端末のキーを打ち込もうとも、本体のプログラムが破壊されれば契約は破棄されたと同義。
――――悪魔召喚プログラムが手を離された時、その存在は仲魔から悪魔へと戻る。
ケルベロスは大きく口を開いた。
観柳にとっては、地獄の釜の蓋が開く、とでも言うべきか。
観柳にとっては、地獄の釜の蓋が開く、とでも言うべきか。
「やめろ……!ヤメロ!」
「イライラ ダゼ …… ! ハザマ モ オマエ モ セマイ トコロ ニ トジコメテ …… !」
「イライラ ダゼ …… ! ハザマ モ オマエ モ セマイ トコロ ニ トジコメテ …… !」
ケルベロスはグシャリと音を立てながら、観柳の腹部を噛みちぎる。
まるで生かしながら食うように、重要な器官を避けて痛みだけを与えていく。
腹部から流れ落ちる腸の姿を見て観柳は恐慌し、そして、その腸をウインナーのように食べるケルベロスの姿に発狂する。
しかし、仮面ライダーライア・ブランク体へと変身した観柳は奇跡的に命を保っていた。
だからこそ、地獄が続いてしまう。
まるで生かしながら食うように、重要な器官を避けて痛みだけを与えていく。
腹部から流れ落ちる腸の姿を見て観柳は恐慌し、そして、その腸をウインナーのように食べるケルベロスの姿に発狂する。
しかし、仮面ライダーライア・ブランク体へと変身した観柳は奇跡的に命を保っていた。
だからこそ、地獄が続いてしまう。
――――グキャリ。
脚。
脚。
――――グキャリ。
腕。
腕。
――――グキャリ。
性器。
性器。
――――グキャリ。
内臓。
内臓。
――――グキャリ。
脳髄。
脳髄。
楽しむように顎と喉を動かすケルベロス。
やがて、ケルベロスの白い毛皮は血に染まり、観柳はようやく絶命した。
やがて、ケルベロスの白い毛皮は血に染まり、観柳はようやく絶命した。
粗雑な食べ残し(観柳)を残して、ケルベロスは梨花へと向き直った。
「オマエ モ オレ ヲ キズツケタ …… コロス」
ニヤリと笑みを深めてケルベロスは梨花へと向き合った。
そして、その牙を見せつけるようにして大きく口を開いた。
思い出す。
何度なく経験した、踊り食いのメインディッシュとなる状況。
死。
まさしく古手梨花の知る死そのものだった。
そして、その牙を見せつけるようにして大きく口を開いた。
思い出す。
何度なく経験した、踊り食いのメインディッシュとなる状況。
死。
まさしく古手梨花の知る死そのものだった。
「アッ!」
観柳にしたように、生かしながら殺すためにケルベロスは梨花の腕を食いちぎった。
右腕が切り取られ、地面に落ちる。
それをわざと口にせず、次に腹部へと大きく噛み付く。
右腕が切り取られ、地面に落ちる。
それをわざと口にせず、次に腹部へと大きく噛み付く。
「アッアァ!クゥ……カ、ア、アアアア……!」
耳に飛び込んでくる音は、余りにも聞き慣れた自身の呻き声。
幻聴のようにひぐらしの鳴き声まで聞こえてくる。
自身の肉を貪るケルベロスの音と、自身の苦悶の声が合唱する。
何度も聞いた、死へと誘う歌だ。
幻聴のようにひぐらしの鳴き声まで聞こえてくる。
自身の肉を貪るケルベロスの音と、自身の苦悶の声が合唱する。
何度も聞いた、死へと誘う歌だ。
「そ、んな……うぅ……ッ!」
死が迫る。
古手梨花は、ケルベロスに食われ、ここで死ぬのだ。
それ以上の意味はない。
羽入が消えた今、やり直しは効かない。
全ては、ここで終わる。
古手梨花は、ケルベロスに食われ、ここで死ぬのだ。
それ以上の意味はない。
羽入が消えた今、やり直しは効かない。
全ては、ここで終わる。
「それじゃ……夢……だったと……言うの……?」
全ては夢へと変わってしまう。
今までの奇跡は、梨花が見た走馬灯めいた夢。
本当は羽入なんて存在も居ない。
梨花はループなど行なっていない。
今までの奇跡は、梨花が見た走馬灯めいた夢。
本当は羽入なんて存在も居ない。
梨花はループなど行なっていない。
――――ただ、苦しみを続けただけの夢。
「悪い夢……」
死が待つ。
ケルベロスは梨花の肉体を食い千切らんとする。
その時だった。
ケルベロスは梨花の肉体を食い千切らんとする。
その時だった。
「メギド」
突然、ケルベロスの頭部が吹き飛ばされた。
梨花は知らないが、見るものが見ればわかる力だった。
それは力の奔流、万能の力。
梨花は目を逸らす。
梨花は知らないが、見るものが見ればわかる力だった。
それは力の奔流、万能の力。
梨花は目を逸らす。
そこには白い制服に身を包んだ一人の少年が立っていた。
孤独が抜け出し、それでもなお苦しみからは逃れられない少年。
魔人皇ハザマイデオが、そこに居た。
涙が溢れる。
孤独が抜け出し、それでもなお苦しみからは逃れられない少年。
魔人皇ハザマイデオが、そこに居た。
涙が溢れる。
――――梨花は知っている。
この少年が殺し合いに乗ろうとしていたことを。
誰かを殺そうとしていたことを。
その中で、少しだけ気持ちに素直になったことを。
自分の友達と、友達になってくれたことを。
思えば、それだけで十分だった。
誰かを殺そうとしていたことを。
その中で、少しだけ気持ちに素直になったことを。
自分の友達と、友達になってくれたことを。
思えば、それだけで十分だった。
「いえ……」
――――梨花ちゃん、君を助けに来た!
――――私を信じて……
――――だから、もっと生きるためにあがいてごらんなさいませ! 今度は、私があなたを導く番ですわ! さぁッッ!!
――――信じるのは難しいけど、信じなきゃはじまらないって……誰かが言っていた気がします……信頼に答えなきゃ、奇跡を信じる資格なんてありませんからね
――――なら、その運命とやらを俺がブチ壊してやろうじゃねぇか。
「良い、夢だった……」
後悔はない。
例え、夢のように消えてしまっても。
あんなに頑張ったのに無くなってしまっても。
過去は嘘じゃない。
梨花は、本当の絆を手に入れ、奇跡を見た。
奇跡はここにある。
例え、夢のように消えてしまっても。
あんなに頑張ったのに無くなってしまっても。
過去は嘘じゃない。
梨花は、本当の絆を手に入れ、奇跡を見た。
奇跡はここにある。
――――私の想い出は夢に変わってしまったけど。
「貴方の約束は……」
――――夢で終わらせないで。
『……頑張って』
確かに一人の少女、竜宮レナを生んだ。
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に 死亡】
【武田観柳@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 死亡】
【武田観柳@るろうに剣心 -明治剣客浪漫譚- 死亡】
◆ ◆ ◆
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169:第五回放送 | V.V. | |
志々雄真実 | 170:ハカナキ者達の宴-Aurora Dream- Ⅲ |