0日目
普段と変わらない一日だ。朝の6時30分に起きて洗面所に向かい、顔を洗い、寝癖を直す。部屋に戻って制服に着替えて階段を下りる。今朝の朝食は焼き鮭の定食だった。ご飯に乗せる用の海苔、あれはおそらく私の地元のものだろう。洗面所に行き、歯を磨いたら部屋で鞄を手にして学校へ向かう。
午前中は高校生としての教養を身に着けるための授業があった。数学、あれは考えたら考えるほど頭が痛くなる。それに対して地理、あれは楽しい。歴史で学んだことや実際に観てきたものが活かされる。
お昼はカフェテリアの窓際のカウンター席で食べた。外の木々の様子を見ながら自分のペースで食事できるあの空間は私にとって天国だ。今日のメニューは小松菜のシチューだった。冷えていく身体に温かいシチューが沁みていく。食後は無糖のアイスコーヒーを飲む。午後の授業の為のルーティンだ。
午後はウマ娘としての専門の授業だ。今日の授業はレース座学だった。
放課後。今日は委員会の仕事がないのでそのまま部室へ向かった。相変わらず、この空間は混沌としている。ロッカーに鞄を置き、ジャージを取り出して奥の更衣室へ向かう。制服を脱いでジャージに袖を通す。トレーニングをしようと身が引き締まる。
部室を出てコースにいるトレーナーのもとに向かう。今日のトレーニングは坂路だ。でもその前に軽く走る。軽くとはいえ、時速60km。顔や身体に風が当たる。まるで自分が風になったような気分で心地よい。自分の足で走り、芝と風の匂いを感じ取り、自由に駆ける。しばらくして坂路のトレーニングに移った。トレーナーと話し合った方法で坂を登る。うん、上りやすい。これなら中山でもまた勝てるかもしれない。
日も落ちて月が見え始めた頃にトレーニングは終わった。一旦部室に戻る。更衣室と側にあるシャワールームに行き、汗だくのジャージと体操服を脱ぐ。シャワーのお湯で身体にまとわりついた汗が流されていく。タオルで身体を拭き、制服に着替える。部室の椅子に座っていたトレーナーと今日のトレーニングの振り返りをする。帰る時、「また明日」と言おうとしたらトレーナーから「明日は6時くらいに起きて。その為に今日は早く寝てね」と言われた。どういうことなのだろう。
部屋に戻って鞄を置き、下の階で夕飯を食べる。生姜焼き、私の大好物だ。何度もお代わりする。食後、部屋に戻って今日の宿題をする。幸い、私の得意な教科ばかりだった。すぐに終わらせて大浴場へ向かう。今日もだいぶ脚を使っていたようで、湯船に浸かった瞬間、すぐに疲れが抜けていくのを感じた。身体を拭き、部屋着に着替えて部屋に戻る。今日はトレーナーの言う通りいつもよりも早く寝る。あれはどういうことだったのだろうか?明日になればわかることなのだろう。
普段と変わらない一日だ。朝の6時30分に起きて洗面所に向かい、顔を洗い、寝癖を直す。部屋に戻って制服に着替えて階段を下りる。今朝の朝食は焼き鮭の定食だった。ご飯に乗せる用の海苔、あれはおそらく私の地元のものだろう。洗面所に行き、歯を磨いたら部屋で鞄を手にして学校へ向かう。
午前中は高校生としての教養を身に着けるための授業があった。数学、あれは考えたら考えるほど頭が痛くなる。それに対して地理、あれは楽しい。歴史で学んだことや実際に観てきたものが活かされる。
お昼はカフェテリアの窓際のカウンター席で食べた。外の木々の様子を見ながら自分のペースで食事できるあの空間は私にとって天国だ。今日のメニューは小松菜のシチューだった。冷えていく身体に温かいシチューが沁みていく。食後は無糖のアイスコーヒーを飲む。午後の授業の為のルーティンだ。
午後はウマ娘としての専門の授業だ。今日の授業はレース座学だった。
放課後。今日は委員会の仕事がないのでそのまま部室へ向かった。相変わらず、この空間は混沌としている。ロッカーに鞄を置き、ジャージを取り出して奥の更衣室へ向かう。制服を脱いでジャージに袖を通す。トレーニングをしようと身が引き締まる。
部室を出てコースにいるトレーナーのもとに向かう。今日のトレーニングは坂路だ。でもその前に軽く走る。軽くとはいえ、時速60km。顔や身体に風が当たる。まるで自分が風になったような気分で心地よい。自分の足で走り、芝と風の匂いを感じ取り、自由に駆ける。しばらくして坂路のトレーニングに移った。トレーナーと話し合った方法で坂を登る。うん、上りやすい。これなら中山でもまた勝てるかもしれない。
日も落ちて月が見え始めた頃にトレーニングは終わった。一旦部室に戻る。更衣室と側にあるシャワールームに行き、汗だくのジャージと体操服を脱ぐ。シャワーのお湯で身体にまとわりついた汗が流されていく。タオルで身体を拭き、制服に着替える。部室の椅子に座っていたトレーナーと今日のトレーニングの振り返りをする。帰る時、「また明日」と言おうとしたらトレーナーから「明日は6時くらいに起きて。その為に今日は早く寝てね」と言われた。どういうことなのだろう。
部屋に戻って鞄を置き、下の階で夕飯を食べる。生姜焼き、私の大好物だ。何度もお代わりする。食後、部屋に戻って今日の宿題をする。幸い、私の得意な教科ばかりだった。すぐに終わらせて大浴場へ向かう。今日もだいぶ脚を使っていたようで、湯船に浸かった瞬間、すぐに疲れが抜けていくのを感じた。身体を拭き、部屋着に着替えて部屋に戻る。今日はトレーナーの言う通りいつもよりも早く寝る。あれはどういうことだったのだろうか?明日になればわかることなのだろう。
1日目
午前6時。
起きたと同時にトレーナーから電話がかかってきた。
「今から5日間旅行に行こう。1時間後の7時に寮の前の道路に車を停めて待っている。事情は後で話すから準備して来て。あ、スマホとかは持って来ないで。カメラはいいけど。」
電話が切れた。あまりに突然だ。今日も学校があるというのにどういうことだ。まぁでも、突然言うからにはトレーナーに何かしらの考えがあるのだろう。とにかく急いで準備を進めた。
午前7時。
荷物を持って下に降りて寮の入り口につくとトレーナーが自家用車の前で立っていた。トレーナーの車は少し古いが洒落たものだ。
「おはよう、トキ。突然旅行とか言ってごめんねー」
「どういうことなんですか。事情を説明してください!」
「説明するからとりあえず乗って」
言われるがまま助手席に座って説明を聞く。トレーナー曰く、私の休養の為だという。自分のデジタルデトックスとか気分転換とか幾つか理由はあるが、一番は私がこれまでレースで思い切り走ってきたので旅行をして、ゆっくり休んで欲しいのだという。トレーニングはともかく、授業とか外泊とかどうするのかと聞いた。トレーナーが言うには、トレーニングとしての休養ということで公欠扱いにしてもらっていて、外泊届もちゃんと事前に出しているから心配ないとのこと。授業内容は私の普段の授業態度から鑑みて後日個別で教えるということで大丈夫だそうだ。それを聞いてちゃんと毎日出席はしておいてよかったと感じた。最大の疑問だった今朝、突然旅行に行くと言った理由を聞いた。すると、私にドッキリを仕掛けて反応を見たかったのだという。驚きはしたものの、正直なところ、私のことをとにかく考えてくれているのだということで嬉しさのほうが大きかった。
「私が突然言っちゃったから朝ごはん食べる時間なかったでしょ。今から食べに行こう」
スムーズにシフトレバーとクラッチペダルを操作しながらトレーナーが言った。
午前8時半。
車をしばらく走らせて街道沿いのチェーン店に寄った。朝からマフィンのハンバーガーとコーヒー。普段は食パンかロールパンを朝食で食べる私にとってそれだけでも非日常の体験だった。こんな朝食を食べたのはいつぶりだろうか。
午前9時半。
鍵を回して出発する。いつもなら教室で授業を受けている時間だ。今はおそらく古典の時間だろう。それなのに私はトレーナーの車に乗りながら外の景色を見ている。サボっているわけではないけど背徳感がある。カーラジオを聞くことにした。機械からは英語の音声と古今の洋楽が流れる。往年の曲と車の雰囲気、窓から見える景色がよく合う。
正午。
「一旦休憩しようか」というトレーナーの案に乗り、山間のパーキングエリアに寄る。車の外に出ると少し肌寒い。トレーナーが自販機の缶コーヒーを買ってくれた。手で持ってみるととても熱かった。蓋を開けて一口飲む。身体の芯が温まってきた。
午後1時。
高速道路を下りてすぐのところにある定食屋に入った。蕎麦とカツ丼のセットを注文する。料理が運ばれてわさびを自分で下していく。蕎麦にのっけて一口食べる。美味しい。水が美味しい地域だからなのだろう、シンプルだけど上質でわさびの辛さが蕎麦の美味しさを引き立てる。
午後2時半。
昼食を食べ終わって店を出る。トレーナーが車を走らせる。窓から見える景色は長閑で平和なものだ。いつも住んでいるところでは見られないような景色。不思議と心が落ち着く。
午後4時。
山道を上り、湖畔にあるホテルに着いた。古風でありながら洒落た佇まいだ。チェックインをして部屋に向かう。部屋はトレーナーと二人で過ごすには十分すぎる広さだった。部屋の奥にあるバルコニーに出て椅子に座る。湖と山の景色を見渡すことが出来る。夕飯の時間までまだ時間がある。少し仮眠をとることにした。上着を脱ぎ、トレーナーとベッドで横になる。午後4時半、貴方の手は温かかった。
午後6時半。
目を覚まして夕食に行く準備をする。私は持ってきたドレスを着てトレーナーと夕食会場に向かう。席について私はリンゴジュースを、トレーナーはワインを注文した。料理が来るまでの間、飲み物を飲みながら他愛のない会話をした。スープやメインの魚料理と肉料理、サラダが運ばれてくる。トレーナーも食べ慣れているのだろう、食べ方が綺麗だ。食べて味を愉しむ。すごく落ち着いたひと時を過ごすことが出来た。
午後8時半。
夕食を食べ終わってトレーナーと会場のレストランのそばにあるバーに入って飲み直す。トレーナーはエスプレッソ・マティーニを、私はバージン・メアリーを飲んだ。どちらも自身が着ている服の色によく合っていた。特に何か話していたわけでもなく自分の飲みたいものを互いに楽しんでいた。
午後10時。
部屋に戻って風呂に入る。私が先に入り、トレーナーが後に入った。トレーナーが風呂から上がり、二人でベッドに横になる。ツインベッドだったのでそれぞれ別のベッドに入り、向き合いながら寝た。
午前6時。
起きたと同時にトレーナーから電話がかかってきた。
「今から5日間旅行に行こう。1時間後の7時に寮の前の道路に車を停めて待っている。事情は後で話すから準備して来て。あ、スマホとかは持って来ないで。カメラはいいけど。」
電話が切れた。あまりに突然だ。今日も学校があるというのにどういうことだ。まぁでも、突然言うからにはトレーナーに何かしらの考えがあるのだろう。とにかく急いで準備を進めた。
午前7時。
荷物を持って下に降りて寮の入り口につくとトレーナーが自家用車の前で立っていた。トレーナーの車は少し古いが洒落たものだ。
「おはよう、トキ。突然旅行とか言ってごめんねー」
「どういうことなんですか。事情を説明してください!」
「説明するからとりあえず乗って」
言われるがまま助手席に座って説明を聞く。トレーナー曰く、私の休養の為だという。自分のデジタルデトックスとか気分転換とか幾つか理由はあるが、一番は私がこれまでレースで思い切り走ってきたので旅行をして、ゆっくり休んで欲しいのだという。トレーニングはともかく、授業とか外泊とかどうするのかと聞いた。トレーナーが言うには、トレーニングとしての休養ということで公欠扱いにしてもらっていて、外泊届もちゃんと事前に出しているから心配ないとのこと。授業内容は私の普段の授業態度から鑑みて後日個別で教えるということで大丈夫だそうだ。それを聞いてちゃんと毎日出席はしておいてよかったと感じた。最大の疑問だった今朝、突然旅行に行くと言った理由を聞いた。すると、私にドッキリを仕掛けて反応を見たかったのだという。驚きはしたものの、正直なところ、私のことをとにかく考えてくれているのだということで嬉しさのほうが大きかった。
「私が突然言っちゃったから朝ごはん食べる時間なかったでしょ。今から食べに行こう」
スムーズにシフトレバーとクラッチペダルを操作しながらトレーナーが言った。
午前8時半。
車をしばらく走らせて街道沿いのチェーン店に寄った。朝からマフィンのハンバーガーとコーヒー。普段は食パンかロールパンを朝食で食べる私にとってそれだけでも非日常の体験だった。こんな朝食を食べたのはいつぶりだろうか。
午前9時半。
鍵を回して出発する。いつもなら教室で授業を受けている時間だ。今はおそらく古典の時間だろう。それなのに私はトレーナーの車に乗りながら外の景色を見ている。サボっているわけではないけど背徳感がある。カーラジオを聞くことにした。機械からは英語の音声と古今の洋楽が流れる。往年の曲と車の雰囲気、窓から見える景色がよく合う。
正午。
「一旦休憩しようか」というトレーナーの案に乗り、山間のパーキングエリアに寄る。車の外に出ると少し肌寒い。トレーナーが自販機の缶コーヒーを買ってくれた。手で持ってみるととても熱かった。蓋を開けて一口飲む。身体の芯が温まってきた。
午後1時。
高速道路を下りてすぐのところにある定食屋に入った。蕎麦とカツ丼のセットを注文する。料理が運ばれてわさびを自分で下していく。蕎麦にのっけて一口食べる。美味しい。水が美味しい地域だからなのだろう、シンプルだけど上質でわさびの辛さが蕎麦の美味しさを引き立てる。
午後2時半。
昼食を食べ終わって店を出る。トレーナーが車を走らせる。窓から見える景色は長閑で平和なものだ。いつも住んでいるところでは見られないような景色。不思議と心が落ち着く。
午後4時。
山道を上り、湖畔にあるホテルに着いた。古風でありながら洒落た佇まいだ。チェックインをして部屋に向かう。部屋はトレーナーと二人で過ごすには十分すぎる広さだった。部屋の奥にあるバルコニーに出て椅子に座る。湖と山の景色を見渡すことが出来る。夕飯の時間までまだ時間がある。少し仮眠をとることにした。上着を脱ぎ、トレーナーとベッドで横になる。午後4時半、貴方の手は温かかった。
午後6時半。
目を覚まして夕食に行く準備をする。私は持ってきたドレスを着てトレーナーと夕食会場に向かう。席について私はリンゴジュースを、トレーナーはワインを注文した。料理が来るまでの間、飲み物を飲みながら他愛のない会話をした。スープやメインの魚料理と肉料理、サラダが運ばれてくる。トレーナーも食べ慣れているのだろう、食べ方が綺麗だ。食べて味を愉しむ。すごく落ち着いたひと時を過ごすことが出来た。
午後8時半。
夕食を食べ終わってトレーナーと会場のレストランのそばにあるバーに入って飲み直す。トレーナーはエスプレッソ・マティーニを、私はバージン・メアリーを飲んだ。どちらも自身が着ている服の色によく合っていた。特に何か話していたわけでもなく自分の飲みたいものを互いに楽しんでいた。
午後10時。
部屋に戻って風呂に入る。私が先に入り、トレーナーが後に入った。トレーナーが風呂から上がり、二人でベッドに横になる。ツインベッドだったのでそれぞれ別のベッドに入り、向き合いながら寝た。
2日目
午前6時半。
目が覚める。ベッドから起き上がり、洗面所で寝癖を直す。トレーナーが起きてきた。一緒に着替えて朝食会場に向かう。私は和食を、トレーナーは洋食を食べた。時々、互いの食べ物を交換した。食後のコーヒーは少し熱かった。
午前8時。
朝食を食べ終わり、部屋に戻る。トレーナーと少しの間、持ってきた本を読むことにした。部屋の中は外の木々の音だけが聞こえるとても静かな空間だった。
午前10時。
私達は近くの山を散歩がてら登ることにした。一人だったらさっさと進みそうな道もトレーナーと話しながら進んでいたのでかなりゆっくりだった。途中、休憩所の自販機でコーンスープを買う。舌をやけどしそうになったが、すぐに飲みやすい温度になった。
午後1時。
私達は山頂にたどり着いた。かなり登ったようで、ホテルのそばの湖も小さく見えた。思い出にトレーナーとツーショットを撮る。かなりくっついて撮っていたのでお互いに顔を赤らめた。山頂に小さな祠があったので手を合わせる。私はトレーナーの幸せを願った。トレーナーは何を願ったのだろうか。
午後4時。
下山をして部屋に戻る。疲れていたので椅子に座って休んでいた。気づいたら寝落ちしていた。
午後6時半。
トレーナーが私を起こす。夕飯を食べに行こうと言ってきた。昨日と違って今日は外で食べるので比較的ラフな格好に着替えた。ホテルの前の道を歩いて行く。湖畔の道路沿いにはいくつかのホテルや飲食店が並んでいる。私達はそのうちの一つの居酒屋に入った。中は多くの人で賑わっていた。おそらく地元の人達なのだろう。奥の窓際の席に通された。湖の反対側の町の光と月光が水面にうっすら反射している。トレーナーは瓶ビールを、私は緑茶を飲む。しばらくして注文したもつ鍋が来た。普段なかなか食べないが、私の好物のひとつだ。冷えた身体に野菜ともつ、だしがよく沁みる。その他にも唐揚げや枝豆を食べる。昨日の夕飯とは全然違うが、こういう食事もまたおいしいのである。
午後9時。
食べ終わり、ホテルに戻る。今日は部屋の風呂ではなく、最上階にある露天風呂にトレーナーと行くことにした。身体を洗い流して内風呂から露天風呂へ向かう。冬というのは恐ろしいもので、ほんの一瞬外に出ただけで全身が凍える。露天風呂は身体にやさしい温度で、一瞬の身体の冷えが徐々に取れていった。お湯からはほのかに硫黄の香りがする。ずっと浸かっていたいがのぼせるので内風呂に戻りシャワーを浴びて脱衣所に戻る。風呂上がり、部屋に戻る前にトレーナーと瓶の牛乳と最中アイスを口にする。せっかく温まったのに、と言いたいところだがこれらも風呂上がりの楽しみだ。どちらも良く冷えていて美味しい。
午後11時。
部屋に戻る。歯を磨き、寝る前にテレビで深夜番組を見る。普段見ないような内容で新鮮で、一歩大人になったような気分だった。
午前0時半。
いつもなら夜更かしだと言われる時間だ。今日はトレーナーと一つのベッドに入る。普段なら絶対に出来ないことであり、背徳感がある。掛け布団の中は誰にも邪魔されない二人だけの楽園であった。
午前6時半。
目が覚める。ベッドから起き上がり、洗面所で寝癖を直す。トレーナーが起きてきた。一緒に着替えて朝食会場に向かう。私は和食を、トレーナーは洋食を食べた。時々、互いの食べ物を交換した。食後のコーヒーは少し熱かった。
午前8時。
朝食を食べ終わり、部屋に戻る。トレーナーと少しの間、持ってきた本を読むことにした。部屋の中は外の木々の音だけが聞こえるとても静かな空間だった。
午前10時。
私達は近くの山を散歩がてら登ることにした。一人だったらさっさと進みそうな道もトレーナーと話しながら進んでいたのでかなりゆっくりだった。途中、休憩所の自販機でコーンスープを買う。舌をやけどしそうになったが、すぐに飲みやすい温度になった。
午後1時。
私達は山頂にたどり着いた。かなり登ったようで、ホテルのそばの湖も小さく見えた。思い出にトレーナーとツーショットを撮る。かなりくっついて撮っていたのでお互いに顔を赤らめた。山頂に小さな祠があったので手を合わせる。私はトレーナーの幸せを願った。トレーナーは何を願ったのだろうか。
午後4時。
下山をして部屋に戻る。疲れていたので椅子に座って休んでいた。気づいたら寝落ちしていた。
午後6時半。
トレーナーが私を起こす。夕飯を食べに行こうと言ってきた。昨日と違って今日は外で食べるので比較的ラフな格好に着替えた。ホテルの前の道を歩いて行く。湖畔の道路沿いにはいくつかのホテルや飲食店が並んでいる。私達はそのうちの一つの居酒屋に入った。中は多くの人で賑わっていた。おそらく地元の人達なのだろう。奥の窓際の席に通された。湖の反対側の町の光と月光が水面にうっすら反射している。トレーナーは瓶ビールを、私は緑茶を飲む。しばらくして注文したもつ鍋が来た。普段なかなか食べないが、私の好物のひとつだ。冷えた身体に野菜ともつ、だしがよく沁みる。その他にも唐揚げや枝豆を食べる。昨日の夕飯とは全然違うが、こういう食事もまたおいしいのである。
午後9時。
食べ終わり、ホテルに戻る。今日は部屋の風呂ではなく、最上階にある露天風呂にトレーナーと行くことにした。身体を洗い流して内風呂から露天風呂へ向かう。冬というのは恐ろしいもので、ほんの一瞬外に出ただけで全身が凍える。露天風呂は身体にやさしい温度で、一瞬の身体の冷えが徐々に取れていった。お湯からはほのかに硫黄の香りがする。ずっと浸かっていたいがのぼせるので内風呂に戻りシャワーを浴びて脱衣所に戻る。風呂上がり、部屋に戻る前にトレーナーと瓶の牛乳と最中アイスを口にする。せっかく温まったのに、と言いたいところだがこれらも風呂上がりの楽しみだ。どちらも良く冷えていて美味しい。
午後11時。
部屋に戻る。歯を磨き、寝る前にテレビで深夜番組を見る。普段見ないような内容で新鮮で、一歩大人になったような気分だった。
午前0時半。
いつもなら夜更かしだと言われる時間だ。今日はトレーナーと一つのベッドに入る。普段なら絶対に出来ないことであり、背徳感がある。掛け布団の中は誰にも邪魔されない二人だけの楽園であった。
3日目。
午前7時。
目が覚める。目の前にトレーナーがいない。上半身を起こすとトレーナーがバルコニーの椅子に腰かけているのが見えた。起きたばかりなのだろう、髪が乱れていた。「おはよう、トキ」トレーナーが声をかける。「おはようございます、トレーナーさん」そよ風が優しく吹く平和な朝だった。
午前8時。
トレーナーと昨日行った朝食会場へ向かう。今日は私が洋食を、トレーナーは和食を食べた。近くで採れたであろう山の幸が美味しく仕上がっていた。食後のコーヒーを飲む。やけどしないように飲む姿をトレーナーは微笑んで見ていた。
午前10時。
荷物をまとめてチェックアウトする。短い間だったが、とても快適に過ごすことが出来た。願わくばまた訪れてみたいと思った。トレーナーが私に「私の車を運転してみない?」と聞く。私が免許を持っていることを知っていての発言ではあるが、いかんせんトレーナーの車はそんな簡単に手に入るようなものではないし、壊したらいけないので遠慮しようとした。しかしトレーナーは私の心の底にあった運転してみたいという思いをわかっていたようで、次に休憩をするまで私が運転することになった。若葉マークを付けて運転席に座ってみると見事なことに私にとって大きすぎず小さすぎず丁度いい広さだった。鍵を回して出発する。最初は緊張していたが、徐々に慣れて楽しくなってきた。
正午。
高速道路のパーキングエリアで昼食をとることにした。二人でかけそばを食べる。素朴な味だが丁寧に作られているのがよくわかる。食後の缶コーヒーを飲み、トレーナーが車を運転する。今、どこに向かっているのか聞いてみる。山に行ったので今度は海に行くと答えた。助手席の窓から景色を眺める。山を抜けると田園が見えてくる。かと思えば再び山間部に入る。市街地も通っていく。日本の景色は本当に面白い。長いトンネルを抜けると一面に青い海が広がる。夏の時ほど青くはないが快晴なので綺麗に見える。
午後4時。
海から近い旅館に着く。チェックインをして部屋へ向かう。先ほどとはうって変わって和室だった。といっても広々としており、広縁からは海が見える。荷物を置いて少し外を散策することにした。トレーナーが持ってきてくれたビーチサンダルを履いて海辺を散歩する。太陽が水平線の向こうに沈んでいく。その様子を防波堤に座りながら見ていると、隣にいたトレーナーが「波打ち際まで下りてみようよ」と言った。二人で砂浜に下りて足首が波に当たるくらいまで海に入る。冬の海水は冷たいが、思っていたほどではなかった。何を思ったのだろうか、わずかではあるが私はトレーナーに海水を浴びせた。「こーらー!そんなことしていいのかな?」口では怒っていたが、表情は満面の笑みで仕返しをしてきた。今が冬だなんてことを私たちはすっかり忘れてしまった。日の光が私たちを照らすのをやめるまで夢中で遊んでいた。
午後6時。
部屋に戻って浴衣に着替える。散歩に行っている間に夕飯の用意が出来ていた。紙で出来た鍋の中では海鮮や野菜がぐつぐつ煮えている。二人でそれぞれの鍋をつついて食べる。上品な味であり、出汁が丁寧に仕上がっていた。トレーナーは珍しく日本酒を飲んでいた。曰く、折角の旅館での和食だから久々に飲もうと思ったそうだ。
午後8時。
夕食を食べ終わって部屋にあるコインタイマーがついている(使うことは出来なさそうだ)テレビをつける。テレビからは見たことのない地方のローカル番組が流れている。それを特に考えることなくぼーっと見ていた。
午後9時。
テレビを消してトレーナーと旅館の露天風呂に向かうことにした。館内着を脱いで身体を洗ってから内風呂に入る。ぽかぽかする。一日の疲れが取れていくようにだんだん心地よくなっていく。ある程度温まったところで外の露天風呂に向かう。一歩外に出た途端、一気に体の熱を奪われる。なんとか冷える前に風呂に入る。海の近くだからだろうか、少ししょっぱい味がした。奥の方でかすかに波と砂の擦れる音がする。木々の風が当たる音もする。まるで自然の奏でるメロディーに耳を傾けているようだった。しばらく浸かって風呂から出て浴衣に着替える。頭を乾かしてからまだトレーナーが出ていなかったようなので近くのお土産屋で時間をつぶすことにした。名産のお菓子、伝統工芸品、おもちゃなどが売っていた。私は売り場の一角にあった木刀に目をやる。木刀、修学旅行の時に他のお菓子とか大して買わずにクラスで私だけが木刀を買っていたっけ。そんなことを思い出していると、トレーナーがやってきた。
「木刀かー。修学旅行の時に買ったなぁ~。そういえば、前にもこんな話したっけ。しおりのお土産の一覧に載っていたのに自分以外誰も買ってなくて恥ずかしい思いをしたって」
「聞きました聞きました!のちに私も木刀を買ったときになんか気まずい思いをしましたよ~。私だけ⁉ってなっちゃって。木刀は思い出の品としていつまでも残るのになーって思っていましたね」
「わかるわかる!やっぱ買うなら記念になるものを買わないとね~」
そんな話をしながらのんびり店の中を見ていた。
午後11時。
トレーナーとちょっとしたお土産を買った。他の誰にあげるわけでもない、二人だけで食べるお菓子を。部屋で戻る途中の自販機で買ってもらったペットボトルの緑茶を飲む。テレビをつけると深夜番組で映画をやっていた。今の時代ではかなり珍しい大人向けの内容だった。物珍しさでまじまじと観る。
午前0時。
就寝の時間になったのでテレビと部屋の電気を消して畳の上に敷いた布団の中に入る。トレーナーの布団とはくっつけている。二人で向き合い、手をつないで眠る。
午前7時。
目が覚める。目の前にトレーナーがいない。上半身を起こすとトレーナーがバルコニーの椅子に腰かけているのが見えた。起きたばかりなのだろう、髪が乱れていた。「おはよう、トキ」トレーナーが声をかける。「おはようございます、トレーナーさん」そよ風が優しく吹く平和な朝だった。
午前8時。
トレーナーと昨日行った朝食会場へ向かう。今日は私が洋食を、トレーナーは和食を食べた。近くで採れたであろう山の幸が美味しく仕上がっていた。食後のコーヒーを飲む。やけどしないように飲む姿をトレーナーは微笑んで見ていた。
午前10時。
荷物をまとめてチェックアウトする。短い間だったが、とても快適に過ごすことが出来た。願わくばまた訪れてみたいと思った。トレーナーが私に「私の車を運転してみない?」と聞く。私が免許を持っていることを知っていての発言ではあるが、いかんせんトレーナーの車はそんな簡単に手に入るようなものではないし、壊したらいけないので遠慮しようとした。しかしトレーナーは私の心の底にあった運転してみたいという思いをわかっていたようで、次に休憩をするまで私が運転することになった。若葉マークを付けて運転席に座ってみると見事なことに私にとって大きすぎず小さすぎず丁度いい広さだった。鍵を回して出発する。最初は緊張していたが、徐々に慣れて楽しくなってきた。
正午。
高速道路のパーキングエリアで昼食をとることにした。二人でかけそばを食べる。素朴な味だが丁寧に作られているのがよくわかる。食後の缶コーヒーを飲み、トレーナーが車を運転する。今、どこに向かっているのか聞いてみる。山に行ったので今度は海に行くと答えた。助手席の窓から景色を眺める。山を抜けると田園が見えてくる。かと思えば再び山間部に入る。市街地も通っていく。日本の景色は本当に面白い。長いトンネルを抜けると一面に青い海が広がる。夏の時ほど青くはないが快晴なので綺麗に見える。
午後4時。
海から近い旅館に着く。チェックインをして部屋へ向かう。先ほどとはうって変わって和室だった。といっても広々としており、広縁からは海が見える。荷物を置いて少し外を散策することにした。トレーナーが持ってきてくれたビーチサンダルを履いて海辺を散歩する。太陽が水平線の向こうに沈んでいく。その様子を防波堤に座りながら見ていると、隣にいたトレーナーが「波打ち際まで下りてみようよ」と言った。二人で砂浜に下りて足首が波に当たるくらいまで海に入る。冬の海水は冷たいが、思っていたほどではなかった。何を思ったのだろうか、わずかではあるが私はトレーナーに海水を浴びせた。「こーらー!そんなことしていいのかな?」口では怒っていたが、表情は満面の笑みで仕返しをしてきた。今が冬だなんてことを私たちはすっかり忘れてしまった。日の光が私たちを照らすのをやめるまで夢中で遊んでいた。
午後6時。
部屋に戻って浴衣に着替える。散歩に行っている間に夕飯の用意が出来ていた。紙で出来た鍋の中では海鮮や野菜がぐつぐつ煮えている。二人でそれぞれの鍋をつついて食べる。上品な味であり、出汁が丁寧に仕上がっていた。トレーナーは珍しく日本酒を飲んでいた。曰く、折角の旅館での和食だから久々に飲もうと思ったそうだ。
午後8時。
夕食を食べ終わって部屋にあるコインタイマーがついている(使うことは出来なさそうだ)テレビをつける。テレビからは見たことのない地方のローカル番組が流れている。それを特に考えることなくぼーっと見ていた。
午後9時。
テレビを消してトレーナーと旅館の露天風呂に向かうことにした。館内着を脱いで身体を洗ってから内風呂に入る。ぽかぽかする。一日の疲れが取れていくようにだんだん心地よくなっていく。ある程度温まったところで外の露天風呂に向かう。一歩外に出た途端、一気に体の熱を奪われる。なんとか冷える前に風呂に入る。海の近くだからだろうか、少ししょっぱい味がした。奥の方でかすかに波と砂の擦れる音がする。木々の風が当たる音もする。まるで自然の奏でるメロディーに耳を傾けているようだった。しばらく浸かって風呂から出て浴衣に着替える。頭を乾かしてからまだトレーナーが出ていなかったようなので近くのお土産屋で時間をつぶすことにした。名産のお菓子、伝統工芸品、おもちゃなどが売っていた。私は売り場の一角にあった木刀に目をやる。木刀、修学旅行の時に他のお菓子とか大して買わずにクラスで私だけが木刀を買っていたっけ。そんなことを思い出していると、トレーナーがやってきた。
「木刀かー。修学旅行の時に買ったなぁ~。そういえば、前にもこんな話したっけ。しおりのお土産の一覧に載っていたのに自分以外誰も買ってなくて恥ずかしい思いをしたって」
「聞きました聞きました!のちに私も木刀を買ったときになんか気まずい思いをしましたよ~。私だけ⁉ってなっちゃって。木刀は思い出の品としていつまでも残るのになーって思っていましたね」
「わかるわかる!やっぱ買うなら記念になるものを買わないとね~」
そんな話をしながらのんびり店の中を見ていた。
午後11時。
トレーナーとちょっとしたお土産を買った。他の誰にあげるわけでもない、二人だけで食べるお菓子を。部屋で戻る途中の自販機で買ってもらったペットボトルの緑茶を飲む。テレビをつけると深夜番組で映画をやっていた。今の時代ではかなり珍しい大人向けの内容だった。物珍しさでまじまじと観る。
午前0時。
就寝の時間になったのでテレビと部屋の電気を消して畳の上に敷いた布団の中に入る。トレーナーの布団とはくっつけている。二人で向き合い、手をつないで眠る。
4日目。
午前7時。
起床する。ふと広縁のほうに目を向けるとトレーナーが朝日に照らされながら椅子に座って本を読んでいる。私に気が付いたようで私に「おはよう」と声をかけた。私も「おはようございます」と言った。寒くて布団から出たくない。もう少しこのままでもいいか。
午前8時。
朝食会場に向かう。用意された席に座り、御膳を見る。つやつやした白米と赤みその味噌汁、焼き魚、煮物、野菜の和え物、漬物が並んでいる。手を合わせたのち、口に運ぶ。美味しい。今まで食べた中でもかなり美味しい。トレーナーも自然な笑顔だ。
午前10時。
部屋に戻ったのち、町を散策することにした。けっして大きい町ではないが、人が多く活気がある。商店街や大通りを通ると人や車の往来が激しくなる。時々、道沿いにある店に入ったりして工芸品を見る。
正午。
お昼の時間になり、町の多くの飲食店は混雑してきた。私達もぶらぶらしながら店を探し、少し外で並んで店内に入った。壁にメニューが貼られている。海が近いからだろうか、海鮮が多い。注文してしばらく待つと、私達の注文した海鮮丼の定食が届いた。様々な魚介が入っているうえにボリュームもあり、私でも満足のいく内容だった。トレーナーは昼からビールを飲んでいる。他の人のことを気にする必要のない中で飲むビールはそれはそれは美味しいだろう。
午後1時半。
私達は店を出て少しの間、個別で散策することにした。歩いてしばらくすると猛烈に甘いものを食べたい気分になっていた。魅力的な甘味処がたくさんありゃ、流石に我慢は出来ない。私は勘に従って決めた店に入り、抹茶クリームあんみつとコーヒーを注文する。レトロな店内では落ち着いた音楽が流れている。持ってきた本を読みながら待っているとあんみつとコーヒーが運ばれてきた。アイスを一口食べる。とても美味しいが、口の中がどんどん冷たくなってくる。やけどしないようにコーヒーを一口飲む。ちょうどよい味であんみつの味とのバランスが取れている。一口ずつ味わいながら食べていく。ちょっと体重は増えるかもしれないが、今の私にとっては問題なかった。
午後4時。
事前に決めておいた場所で待ち合わせをする。私が抹茶クリームあんみつを食べたことを話すと、トレーナーもおやつに団子を何種類か食べていたらしい。お互い様だねと笑いながら歩いて行く。海の中へ細長く突きだした防波堤があったので歩いてみる。しかし周りの景色に気をとられてしまい、私は危うく海に落ちそうになった。トレーナーが急いで私の下に入り込み、なんとか落ちずに済んだ。不幸中の幸い、どちらにもけがはなかった。当然私は
「よそ見しちゃダメでしょ!前をちゃんと見て!」
と言われてしまった。その後に、
「あのね、覚えておいて、トキ。私はトキの身と幸せを守る為ならなんだってするから。私、トキの為なら死んでもいいよ」
と言われた。言葉の重みは間違いなくあったが、すべては私を想っての言葉だった。その後は二人で手をつないで落ちないように防波堤を歩いた。昨日の砂浜にも行った。周りに誰もいないことを確認して二人で走る。もちろん私はトレーナーのペースに合わせて走る。ただただ穏やかで自由で平和な時間が流れていった。
午後6時。
少し早いが夕飯の時間だ。今日は旅館ではなく、外で食べる。海沿いに並んでいた飲食店のうちの一つの居酒屋に行く。中は人でいっぱいだった。私たちは刺身の盛り合わせや唐揚げなど色々注文した。トレーナーは珍しく一杯目は私と同じウーロン茶を飲んでいる。ビールじゃないんですねと私が言うと、今はそういう気分なんだ~と答えた。料理がテーブルに並ぶ。昼に食べた海鮮とは違って刺身もまた美味しかった。しばらくしてやはりトレーナーはビールを飲んでいた。美味しそうに飲むので見ている私も気分が良かった。
午後8時。
夕飯を食べ終わり、旅館に戻るまでの間海岸沿いを歩く。上を見上げると満天の星空だった。しかも今日は見事なまでの満月だった。ふとトレーナーに
「月が綺麗ですね」
と言う。それに対してトレーナーは
「ほんとだ。凄く綺麗だね」
と言った。明日で最終日か。そう思うとだんだん気分が落ち込んでくる。現実とは非情なものである。私はまだこの夢の世界に居続けたい。この幸せな時間がずーっと続けばいいのに。
午後8時半。
部屋に戻って支度をして露天風呂に向かう。昨日と同じようにまずは内風呂に入る。昼間に歩いた分、足に疲れがたまっていたので凄く気持ちが良い。壁に寄りかかってぼーっとしているとシャワーのエリアが視界に入る。今日は露天風呂に移る前に先にシャワーを浴びてしまおうか。そう思った。髪をシャワーで濡らしてシャンプーをつける。髪を傷つけないように優しく泡立てる。シャンプーと言ったら私がうんと小さい時に家族で旅行に行った際にシャワーを浴びている祖母の頭にシャンプーを垂らしまくって困らせたっけ。そんなことを思い出しながらシャンプーを流してリンスで髪のケアをしておく。身体も洗ってから露天風呂に向かう。昨日と変わらず、今日も寒い。落ち着いて風呂に入る。やはり外の音を聞きながらの風呂は格別である。月がよく見える。今の状況を月見風呂と言うらしい。月見というには季節が少し遅いがそれでもいい。しばらくの間、満月と波の音を楽しむ。月には海と呼ばれる場所がある。実際は濃い色の玄武岩で覆われた月の平原だが、もしも水で出来た海だったらこんな音が聞こえてくるんだろうなぁと妄想を膨らませる。風呂を出て体を乾かして浴衣に着替える。髪も乾かして出ると今日はトレーナーが先に上がっていた。二人で瓶の牛乳を買う。良く冷えていて美味しい。今では街中はおろか、温泉や銭湯でも瓶のタイプはあまり見かけないので貴重な経験だった。
午後10時半。
露天風呂から部屋に戻る。トレーナーも私も少し火照っていた。「そうだ」と言ってトレーナーが備え付けの冷蔵庫からおもむろに何かを取り出す。
「それは...一体?」
「りんごのサイダー。トキと一緒に飲みたくてさっき個別行動していた時に買っちゃった!もちろんアルコールは入ってないけど......雰囲気だけでもどう?」
私が少し大人の気分を味わいたいというのをトレーナーもよく知っていたのだろう。でもちゃんとトレーナーは真面目だ。私でも飲めるものを用意してくれた。
「いいですね!そこの広縁で飲みません?」
「お、いいね」
冷蔵庫から冷やしていたグラスを2つ取り出して広縁の椅子に座る。広縁にただひとつ灯る常夜灯は、ふたりの影をそっと寄り添わせながら揺らめいていた。外では冬の海が、遠くでひっそり息をしている。日中の喧騒や肩書きや立場は、すべて波にさらわれたようで、ここにはただ、素顔のふたりだけ。トレーナーさんがサイダーを手に、やわらかく微笑んでいる。
「それじゃあトキ、注ぐからグラスを傾けて」
「はーい」
私がグラスを傾けると中に黄金色のしゅわしゅわ弾ける液体が注がれた。注がれていく黄金色のしずくが揺れるたび、とくん、と胸がかすかに跳ねる。それが緊張なのか、期待なのか、自分でもうまく言葉にできない。月光を取り込んだその液体は美しく輝いていた。トレーナーさんも自身のグラスにサイダーを注いで二人でチンと軽くグラスを当てる。
「「乾杯」」
ひと口ふくむと、炭酸が舌先でかすかにはじけていく。りんごの甘すぎない上品な香りが、喉から胸の奥へゆっくりと沈んでいった。その様子を確かめるようにトレーナーさんが私を見る。私も自然と笑みがこぼれる。言葉はいらなかった。この時、私は子供の世界からから大人の世界へ少しだけ歩みを進めて、その味を心の底から大好きな人と分け合った。
午前0時。
寝る前に布団の上で割座になる。
「今日はジュースだったけど、トキがお酒飲めるようになったらまたこういうところで二人で飲もうね。もちろんその時はビールだけどね」
そう私の耳元で囁く。
「ふふ、もちろんですよトレーナーさん、約束ですよ?」
また貴方と一緒に旅行出来るのですか。私は幸せだ。最高に幸せだ。それとともに想いが募る。
「トレーナーさん」
「んー?どうした、トキ?」
「あの...その...トレーナーさん、私、トレーナーさんのこと愛しています。担当としてトレーナーさんへの尊敬もあるんですけど、それ以上に...恋、愛というか、その、パートナーとして...大好きなんです、愛しているんです。ずっと一緒にいたい、トレーナーさんと生涯を共にしたい...んです。上手く綺麗に喋れないですが、トレーナーさんのことを愛しているんです。」
話しながら私の瞳からぽたぽたと涙を出しているとトレーナーさんがやさしく両手で包み込んで私の頭を撫でた。
「うんうん、トキ、うんうん、そうだったんだね、教えてありがとう。よしよし...実はね私もずっと言えなかったんだけどね、トキのこと私も愛しているの。もちろんパートナーとしてね。三年間一緒に過ごしているうちに段々恋愛感情が芽生えてきてね、願わくばずーと一緒に居たいなって思って。なんとなくトキも私に特別な感情を向けているのかなというのは感じていたの。でも勘違いだったらどうしよう、今まで築いてきたものが壊れたらどうしよう、告白して嫌われたらどうしようって怖かったの。第一、トレーナーと担当の間柄だったしね。でもよかった、トキが同じ感情で。心が軽くなったよ」
「トレーナーさんも...、トレーナーさんもだったんですね!嬉しい、嬉しいです!私も心が軽くなりましたよ」
二人で感情がぐちゃぐちゃになる。トレーナーさんも安心と喜びで涙が出ている。お互いに溜めていた想いが出てくる。二人でこれからもずっと一緒に居られることがわかり、私たちは喜び合った。
「トレーナーさん...」
「トキ...」
私たちは互いの顔を見ると手を背中に回して軽く口づけをする。涙でしょっぱかったがそれは紛れもなく愛の味だった。一瞬顔を離すが、すぐに近づけて二回目の口づけをする。その後のことを詳しく覚えていない。ただ覚えているのは倒れこむように布団に横になったことだけだ。そこには二人いたが、月光によって出来た影は一つだけだった。
午前7時。
起床する。ふと広縁のほうに目を向けるとトレーナーが朝日に照らされながら椅子に座って本を読んでいる。私に気が付いたようで私に「おはよう」と声をかけた。私も「おはようございます」と言った。寒くて布団から出たくない。もう少しこのままでもいいか。
午前8時。
朝食会場に向かう。用意された席に座り、御膳を見る。つやつやした白米と赤みその味噌汁、焼き魚、煮物、野菜の和え物、漬物が並んでいる。手を合わせたのち、口に運ぶ。美味しい。今まで食べた中でもかなり美味しい。トレーナーも自然な笑顔だ。
午前10時。
部屋に戻ったのち、町を散策することにした。けっして大きい町ではないが、人が多く活気がある。商店街や大通りを通ると人や車の往来が激しくなる。時々、道沿いにある店に入ったりして工芸品を見る。
正午。
お昼の時間になり、町の多くの飲食店は混雑してきた。私達もぶらぶらしながら店を探し、少し外で並んで店内に入った。壁にメニューが貼られている。海が近いからだろうか、海鮮が多い。注文してしばらく待つと、私達の注文した海鮮丼の定食が届いた。様々な魚介が入っているうえにボリュームもあり、私でも満足のいく内容だった。トレーナーは昼からビールを飲んでいる。他の人のことを気にする必要のない中で飲むビールはそれはそれは美味しいだろう。
午後1時半。
私達は店を出て少しの間、個別で散策することにした。歩いてしばらくすると猛烈に甘いものを食べたい気分になっていた。魅力的な甘味処がたくさんありゃ、流石に我慢は出来ない。私は勘に従って決めた店に入り、抹茶クリームあんみつとコーヒーを注文する。レトロな店内では落ち着いた音楽が流れている。持ってきた本を読みながら待っているとあんみつとコーヒーが運ばれてきた。アイスを一口食べる。とても美味しいが、口の中がどんどん冷たくなってくる。やけどしないようにコーヒーを一口飲む。ちょうどよい味であんみつの味とのバランスが取れている。一口ずつ味わいながら食べていく。ちょっと体重は増えるかもしれないが、今の私にとっては問題なかった。
午後4時。
事前に決めておいた場所で待ち合わせをする。私が抹茶クリームあんみつを食べたことを話すと、トレーナーもおやつに団子を何種類か食べていたらしい。お互い様だねと笑いながら歩いて行く。海の中へ細長く突きだした防波堤があったので歩いてみる。しかし周りの景色に気をとられてしまい、私は危うく海に落ちそうになった。トレーナーが急いで私の下に入り込み、なんとか落ちずに済んだ。不幸中の幸い、どちらにもけがはなかった。当然私は
「よそ見しちゃダメでしょ!前をちゃんと見て!」
と言われてしまった。その後に、
「あのね、覚えておいて、トキ。私はトキの身と幸せを守る為ならなんだってするから。私、トキの為なら死んでもいいよ」
と言われた。言葉の重みは間違いなくあったが、すべては私を想っての言葉だった。その後は二人で手をつないで落ちないように防波堤を歩いた。昨日の砂浜にも行った。周りに誰もいないことを確認して二人で走る。もちろん私はトレーナーのペースに合わせて走る。ただただ穏やかで自由で平和な時間が流れていった。
午後6時。
少し早いが夕飯の時間だ。今日は旅館ではなく、外で食べる。海沿いに並んでいた飲食店のうちの一つの居酒屋に行く。中は人でいっぱいだった。私たちは刺身の盛り合わせや唐揚げなど色々注文した。トレーナーは珍しく一杯目は私と同じウーロン茶を飲んでいる。ビールじゃないんですねと私が言うと、今はそういう気分なんだ~と答えた。料理がテーブルに並ぶ。昼に食べた海鮮とは違って刺身もまた美味しかった。しばらくしてやはりトレーナーはビールを飲んでいた。美味しそうに飲むので見ている私も気分が良かった。
午後8時。
夕飯を食べ終わり、旅館に戻るまでの間海岸沿いを歩く。上を見上げると満天の星空だった。しかも今日は見事なまでの満月だった。ふとトレーナーに
「月が綺麗ですね」
と言う。それに対してトレーナーは
「ほんとだ。凄く綺麗だね」
と言った。明日で最終日か。そう思うとだんだん気分が落ち込んでくる。現実とは非情なものである。私はまだこの夢の世界に居続けたい。この幸せな時間がずーっと続けばいいのに。
午後8時半。
部屋に戻って支度をして露天風呂に向かう。昨日と同じようにまずは内風呂に入る。昼間に歩いた分、足に疲れがたまっていたので凄く気持ちが良い。壁に寄りかかってぼーっとしているとシャワーのエリアが視界に入る。今日は露天風呂に移る前に先にシャワーを浴びてしまおうか。そう思った。髪をシャワーで濡らしてシャンプーをつける。髪を傷つけないように優しく泡立てる。シャンプーと言ったら私がうんと小さい時に家族で旅行に行った際にシャワーを浴びている祖母の頭にシャンプーを垂らしまくって困らせたっけ。そんなことを思い出しながらシャンプーを流してリンスで髪のケアをしておく。身体も洗ってから露天風呂に向かう。昨日と変わらず、今日も寒い。落ち着いて風呂に入る。やはり外の音を聞きながらの風呂は格別である。月がよく見える。今の状況を月見風呂と言うらしい。月見というには季節が少し遅いがそれでもいい。しばらくの間、満月と波の音を楽しむ。月には海と呼ばれる場所がある。実際は濃い色の玄武岩で覆われた月の平原だが、もしも水で出来た海だったらこんな音が聞こえてくるんだろうなぁと妄想を膨らませる。風呂を出て体を乾かして浴衣に着替える。髪も乾かして出ると今日はトレーナーが先に上がっていた。二人で瓶の牛乳を買う。良く冷えていて美味しい。今では街中はおろか、温泉や銭湯でも瓶のタイプはあまり見かけないので貴重な経験だった。
午後10時半。
露天風呂から部屋に戻る。トレーナーも私も少し火照っていた。「そうだ」と言ってトレーナーが備え付けの冷蔵庫からおもむろに何かを取り出す。
「それは...一体?」
「りんごのサイダー。トキと一緒に飲みたくてさっき個別行動していた時に買っちゃった!もちろんアルコールは入ってないけど......雰囲気だけでもどう?」
私が少し大人の気分を味わいたいというのをトレーナーもよく知っていたのだろう。でもちゃんとトレーナーは真面目だ。私でも飲めるものを用意してくれた。
「いいですね!そこの広縁で飲みません?」
「お、いいね」
冷蔵庫から冷やしていたグラスを2つ取り出して広縁の椅子に座る。広縁にただひとつ灯る常夜灯は、ふたりの影をそっと寄り添わせながら揺らめいていた。外では冬の海が、遠くでひっそり息をしている。日中の喧騒や肩書きや立場は、すべて波にさらわれたようで、ここにはただ、素顔のふたりだけ。トレーナーさんがサイダーを手に、やわらかく微笑んでいる。
「それじゃあトキ、注ぐからグラスを傾けて」
「はーい」
私がグラスを傾けると中に黄金色のしゅわしゅわ弾ける液体が注がれた。注がれていく黄金色のしずくが揺れるたび、とくん、と胸がかすかに跳ねる。それが緊張なのか、期待なのか、自分でもうまく言葉にできない。月光を取り込んだその液体は美しく輝いていた。トレーナーさんも自身のグラスにサイダーを注いで二人でチンと軽くグラスを当てる。
「「乾杯」」
ひと口ふくむと、炭酸が舌先でかすかにはじけていく。りんごの甘すぎない上品な香りが、喉から胸の奥へゆっくりと沈んでいった。その様子を確かめるようにトレーナーさんが私を見る。私も自然と笑みがこぼれる。言葉はいらなかった。この時、私は子供の世界からから大人の世界へ少しだけ歩みを進めて、その味を心の底から大好きな人と分け合った。
午前0時。
寝る前に布団の上で割座になる。
「今日はジュースだったけど、トキがお酒飲めるようになったらまたこういうところで二人で飲もうね。もちろんその時はビールだけどね」
そう私の耳元で囁く。
「ふふ、もちろんですよトレーナーさん、約束ですよ?」
また貴方と一緒に旅行出来るのですか。私は幸せだ。最高に幸せだ。それとともに想いが募る。
「トレーナーさん」
「んー?どうした、トキ?」
「あの...その...トレーナーさん、私、トレーナーさんのこと愛しています。担当としてトレーナーさんへの尊敬もあるんですけど、それ以上に...恋、愛というか、その、パートナーとして...大好きなんです、愛しているんです。ずっと一緒にいたい、トレーナーさんと生涯を共にしたい...んです。上手く綺麗に喋れないですが、トレーナーさんのことを愛しているんです。」
話しながら私の瞳からぽたぽたと涙を出しているとトレーナーさんがやさしく両手で包み込んで私の頭を撫でた。
「うんうん、トキ、うんうん、そうだったんだね、教えてありがとう。よしよし...実はね私もずっと言えなかったんだけどね、トキのこと私も愛しているの。もちろんパートナーとしてね。三年間一緒に過ごしているうちに段々恋愛感情が芽生えてきてね、願わくばずーと一緒に居たいなって思って。なんとなくトキも私に特別な感情を向けているのかなというのは感じていたの。でも勘違いだったらどうしよう、今まで築いてきたものが壊れたらどうしよう、告白して嫌われたらどうしようって怖かったの。第一、トレーナーと担当の間柄だったしね。でもよかった、トキが同じ感情で。心が軽くなったよ」
「トレーナーさんも...、トレーナーさんもだったんですね!嬉しい、嬉しいです!私も心が軽くなりましたよ」
二人で感情がぐちゃぐちゃになる。トレーナーさんも安心と喜びで涙が出ている。お互いに溜めていた想いが出てくる。二人でこれからもずっと一緒に居られることがわかり、私たちは喜び合った。
「トレーナーさん...」
「トキ...」
私たちは互いの顔を見ると手を背中に回して軽く口づけをする。涙でしょっぱかったがそれは紛れもなく愛の味だった。一瞬顔を離すが、すぐに近づけて二回目の口づけをする。その後のことを詳しく覚えていない。ただ覚えているのは倒れこむように布団に横になったことだけだ。そこには二人いたが、月光によって出来た影は一つだけだった。
最終日
午前5時半。
ふと目が覚める。トレーナーさんは横で寝ている。
「……ん?」
首筋が少し痛い。寝違えたのだろうか。昨夜は色々あったから、少し変な姿勢で眠ってしまったのかもしれない。その時、自分の帯が緩んでいることに気付いた。
「あれ……?」
昨日、きちんと結んだはずなのに。やはり寝相が悪かったのだろうか。そう思いながら帯をきつく結び直し、広縁の椅子に腰かける。窓からは夜明け前の海が見える。私が起きたのに気が付いたのか、トレーナーさんも目を覚ます。
「おはよう、トキ」
「おはようございます、トレーナーさん」
トレーナーさんも自身の帯を結び直して私の隣の椅子に腰かける。
「まだ星が綺麗に見えますね」
静かな時間だった。昨日までとは少し違う。でも、不思議と嫌ではない。むしろ、心の奥が温かかった。
「そうだね~。あ、見て!」
トレーナーさんが空に向かって指を指す。その先に明けの明星があった。
「明けの明星だ...綺麗...」
「うん、とても綺麗に輝いているね。まるで私たちみたい」
「ふふ、確かに私とトレーナーさんみたいですね」
夜明けまでの間、私たちは静かに外の景色を眺めていた。
午前7時半。
私たちは少しの間の二度寝から起きて朝食会場に向かう。今日はビュッフェだったようで窓際の席に案内された後、各々好きなものを皿に盛りつけた。私は混ぜご飯や煮物、卵焼き、小鉢に入った納豆など和のものを中心によそった。緑茶を飲みながらトレーナーと朝食を楽しむ。窓からは日光に照らされた海が見えた。
午前9時。
朝食を食べ終わり、部屋に戻る。荷物をまとめて出発の準備をする。チェックアウトの予定時間まで少し時間があったので最後に広縁の椅子に座って景色を眺める。明日からケの日だと思うと少し切ない気分になる。だがそれがあるからこそ次の旅が楽しみにも感じられる。
午前10時。
チェックアウトをする。ここにもまた来たいと思う。トレーナーの運転する車に乗る。トレーナーの運転する様は自身の愛している人を安心させる。車の窓を開けると海の香りをのせた風が入ってくる。この香りを私は忘れることはないだろう。
正午。
休憩兼昼食でサービスエリアに寄る。フードコートに向かうと色んな店が並んでいた。私はステーキを、トレーナーはお好み焼きを食べた。時々、互いの食べ物を交換する。二人で濃い味の料理食べてるねと笑っていた。食後はサービスエリアのお土産売り場をのぞいた。なかなか美味しそうなお菓子が並んでいるのでいくつか買ってみる。もちろん二人で食べきれる量を購入する。車に戻り、少しの間午睡をする。トレーナーさんの顔がすぐそばにある。軽く口づけをしてから目を閉じる。
午後2時半。
セットしていたタイマーが鳴って目が覚める。目覚めの一杯として二人でコーヒーを買って再度車に戻る。飲みながらサービスエリアを出発した。海や山がメインだった景色が徐々に町の景色に変わっていく。旅の終わりが近づいてきた。
午後5時。
寮の前に車が着く。トレーナーさんが
「一旦車を停めて部屋に荷物置いてくるよ。また後でね」と言う。
「また後で、トレーナーさん」
そういうとトレーナーさんはウインクして発進した。ちょうど黄昏時、夕日がよく見える。寮の周辺はトレセン学園生達がちらほらいた。自室に戻って荷物を片付ける。4日前、トレーナーさんに旅に行こうと言われた時はどうなるのか予想もつかなかったが、自分の心身と向き合う最高の旅だった。
午後6時半。
寮の前でトレーナーさんと待ち合わせる。一緒に近くの焼肉店に向かう。店内では学校帰りの学生や家族連れなど多くの客層が見られた。私はウーロン茶を、トレーナーさんはビールを注文した。
「「無事に旅行出来ました、乾杯!」」
無事を祝って二人で一気に飲む。ウーロン茶は冬の風のように私の喉を瞬く間に冷やした。注文した肉が次々と届き、焼いていく。よく焼けた肉をたれにくぐらせ、白飯と共に食べる。あつあつだが美味しい。すかさず、先ほどのウーロン茶を口にする。口の中の温度が良くなる。トレーナーさんと焼肉を食べると面白い。というのも焼き方はどちらも同じなのだが、二人とも焼肉奉行なので両者とも肉を焼きたくなる。次々と肉が焼かれていく様は確かに待つ心配がないという利点はあるが、全くもって休まらない。そんなことをトレーナーさんと話していた。その後も焼きながら話しては食べ、飲み、また焼くという繰り返しをしていた。二人でお腹いっぱいまで食べて合計金額を見ると過去一の金額になっており、思わず笑ってしまった。
午後9時。
帰る途中で公園に寄る。周りに人がいないことを確かめ、抱擁をして口付けをする。そこの公園には一人のウマ娘とそのトレーナーがいた。私たちは誰よりも互いを愛していた。
午後9時半。
寮の前に戻ってトレーナーさんと別れの挨拶をする。
「おやすみなさい、トレーナーさん。また明日」
「おやすみ、トキ。また明日ね」
私は部屋に戻ったのち、大浴場へ向かう。湯船に浸かって旅の思い出を振り返る。またあんな旅がしたいな、今度はどこに行こうかなと考える。身体を拭き、部屋着に着替えて部屋に戻る。寝る前に今の気持ちを軽くしたためておく。
午前5時半。
ふと目が覚める。トレーナーさんは横で寝ている。
「……ん?」
首筋が少し痛い。寝違えたのだろうか。昨夜は色々あったから、少し変な姿勢で眠ってしまったのかもしれない。その時、自分の帯が緩んでいることに気付いた。
「あれ……?」
昨日、きちんと結んだはずなのに。やはり寝相が悪かったのだろうか。そう思いながら帯をきつく結び直し、広縁の椅子に腰かける。窓からは夜明け前の海が見える。私が起きたのに気が付いたのか、トレーナーさんも目を覚ます。
「おはよう、トキ」
「おはようございます、トレーナーさん」
トレーナーさんも自身の帯を結び直して私の隣の椅子に腰かける。
「まだ星が綺麗に見えますね」
静かな時間だった。昨日までとは少し違う。でも、不思議と嫌ではない。むしろ、心の奥が温かかった。
「そうだね~。あ、見て!」
トレーナーさんが空に向かって指を指す。その先に明けの明星があった。
「明けの明星だ...綺麗...」
「うん、とても綺麗に輝いているね。まるで私たちみたい」
「ふふ、確かに私とトレーナーさんみたいですね」
夜明けまでの間、私たちは静かに外の景色を眺めていた。
午前7時半。
私たちは少しの間の二度寝から起きて朝食会場に向かう。今日はビュッフェだったようで窓際の席に案内された後、各々好きなものを皿に盛りつけた。私は混ぜご飯や煮物、卵焼き、小鉢に入った納豆など和のものを中心によそった。緑茶を飲みながらトレーナーと朝食を楽しむ。窓からは日光に照らされた海が見えた。
午前9時。
朝食を食べ終わり、部屋に戻る。荷物をまとめて出発の準備をする。チェックアウトの予定時間まで少し時間があったので最後に広縁の椅子に座って景色を眺める。明日からケの日だと思うと少し切ない気分になる。だがそれがあるからこそ次の旅が楽しみにも感じられる。
午前10時。
チェックアウトをする。ここにもまた来たいと思う。トレーナーの運転する車に乗る。トレーナーの運転する様は自身の愛している人を安心させる。車の窓を開けると海の香りをのせた風が入ってくる。この香りを私は忘れることはないだろう。
正午。
休憩兼昼食でサービスエリアに寄る。フードコートに向かうと色んな店が並んでいた。私はステーキを、トレーナーはお好み焼きを食べた。時々、互いの食べ物を交換する。二人で濃い味の料理食べてるねと笑っていた。食後はサービスエリアのお土産売り場をのぞいた。なかなか美味しそうなお菓子が並んでいるのでいくつか買ってみる。もちろん二人で食べきれる量を購入する。車に戻り、少しの間午睡をする。トレーナーさんの顔がすぐそばにある。軽く口づけをしてから目を閉じる。
午後2時半。
セットしていたタイマーが鳴って目が覚める。目覚めの一杯として二人でコーヒーを買って再度車に戻る。飲みながらサービスエリアを出発した。海や山がメインだった景色が徐々に町の景色に変わっていく。旅の終わりが近づいてきた。
午後5時。
寮の前に車が着く。トレーナーさんが
「一旦車を停めて部屋に荷物置いてくるよ。また後でね」と言う。
「また後で、トレーナーさん」
そういうとトレーナーさんはウインクして発進した。ちょうど黄昏時、夕日がよく見える。寮の周辺はトレセン学園生達がちらほらいた。自室に戻って荷物を片付ける。4日前、トレーナーさんに旅に行こうと言われた時はどうなるのか予想もつかなかったが、自分の心身と向き合う最高の旅だった。
午後6時半。
寮の前でトレーナーさんと待ち合わせる。一緒に近くの焼肉店に向かう。店内では学校帰りの学生や家族連れなど多くの客層が見られた。私はウーロン茶を、トレーナーさんはビールを注文した。
「「無事に旅行出来ました、乾杯!」」
無事を祝って二人で一気に飲む。ウーロン茶は冬の風のように私の喉を瞬く間に冷やした。注文した肉が次々と届き、焼いていく。よく焼けた肉をたれにくぐらせ、白飯と共に食べる。あつあつだが美味しい。すかさず、先ほどのウーロン茶を口にする。口の中の温度が良くなる。トレーナーさんと焼肉を食べると面白い。というのも焼き方はどちらも同じなのだが、二人とも焼肉奉行なので両者とも肉を焼きたくなる。次々と肉が焼かれていく様は確かに待つ心配がないという利点はあるが、全くもって休まらない。そんなことをトレーナーさんと話していた。その後も焼きながら話しては食べ、飲み、また焼くという繰り返しをしていた。二人でお腹いっぱいまで食べて合計金額を見ると過去一の金額になっており、思わず笑ってしまった。
午後9時。
帰る途中で公園に寄る。周りに人がいないことを確かめ、抱擁をして口付けをする。そこの公園には一人のウマ娘とそのトレーナーがいた。私たちは誰よりも互いを愛していた。
午後9時半。
寮の前に戻ってトレーナーさんと別れの挨拶をする。
「おやすみなさい、トレーナーさん。また明日」
「おやすみ、トキ。また明日ね」
私は部屋に戻ったのち、大浴場へ向かう。湯船に浸かって旅の思い出を振り返る。またあんな旅がしたいな、今度はどこに行こうかなと考える。身体を拭き、部屋着に着替えて部屋に戻る。寝る前に今の気持ちを軽くしたためておく。
[今日が終わってほしくない。布団に潜らずに目を閉じなかったらこの特別な日々は続いたままなのかな。でも私はトレーナーさんと約束をした。「また明日会おう」と。だから明日に一歩進まないとトレーナーさんは私と会えずに一人ぼっちになってしまう。特別な日々とは普通の日があるからこそ輝くものだ。トレーナーさんと会うために、次の特別な日々の為に目を閉じて明日を迎えようと思う。]
書き終えると、私はノートを閉じて机の上に置いた。部屋には静かな夜だけが残っている。布団の中へ潜り込み、ゆっくりと目を閉じる。今日という日は終わる。だけど、私たちが約束した明日は、もう始まっている。こうして私の日常に挟まれた特別な日々は幕を閉じたのだった。
おやすみなさい、心から愛する貴方。また明日、お会いしましょう。
おやすみなさい、心から愛する貴方。また明日、お会いしましょう。
トレーナー視点は温泉旅行(トキヲコエテトレーナー視点)へ