概要
戦闘に至るまでの背景
サムルトン、
パレスは既に滅亡、
リアムスも外交圧力により
クルーディア帝国に屈するのは時間の問題であった。
こうして、
六柱将の国における戦乱の時代は終わりを遂げたかに見えたが、いまだに帝都では、皇帝
ファルスに関する不穏な噂が後を絶たず、物資不足や根拠のない噂に惑わされた民衆の暴動が続いた。
これらは、何者かが意図的に帝国を混乱させているのは明白であったが、その噂の元が突き止められずにいた。
そんな情勢下で、突如として一つの大事件が帝都で起きた。
帝国元帥である
フェリサスが皇帝
ファルスを暗殺、病死として発表し、自らが後継者に任命されたと帝位の継承(簒奪)を発表、
カスター、
ゼクト、
フレイズといった、彼の息のかかった将が、それらに賛同したのである。
この暗殺の伏線は、11年前にまで話が遡る。
ラドリザン6885年、
ファルスは、本来なら帝位を継ぐ者ではなかったが、兄達を次々と毒殺して皇帝の地位を手に入れた。
その事実を知った神官は、皇帝の証である
カオスクラウンを
ファルスに継承することを拒否、これに対して
ファルスは権力で強引に神官の娘
アルディナを皇后に迎える。
盛大な皇帝の婚儀が行われ、何も知らない民衆の多くは、近いうちに
カオスクラウンが
ファルスに戴冠される為、より絆を強める為のめでたい婚儀だと思っていたが、事実を知る者からすれば、これは完全な人質であった。
しかし、皇后
アルディナは、
ファルスの内に眠る残虐性に気付き、この男に帝位は危険すぎると、単身
カオスクラウンを持って帝都から逃げ出した。
国境で
アルディナが捕らえられた時、
カオスクラウンは既に従者によって別の場所に移っていた、
カオスクラウンの場所を吐かせようとした
ファルスだが、
アルディナは一切口を割らず、怒った
ファルスによって激しい拷問の末に殺害された。
アルディナが必死に守った
カオスクラウンは、従者が山賊に襲われたことから、完全に行方不明となる。
ファルスは、結局
カオスクラウンの戴冠式を行うことができず、更に皇后の突然の死(病死として発表された)が重なり、これを不審に思った民衆も少なからずいたが、年月が経つ間にそれらのことも風化させていった。
この
アルディナこそが、
フェリサスの姉であり、このときから彼は
ファルスへの復讐だけを糧に成長してきた。
面従腹背を貫き、自身が皇帝と戦えるまでの力を持つまで耐え抜き、そして水面下では3年かけて帝都にて
ファルスの悪い噂を流し、民衆を扇動していた。
帝都を混乱させていたのは、それを取り締まる筈の治安維持部隊を掌握する
フェリサス派閥(具体的には
カスターの領分である)の自作自演であった為、犯人が捕まる筈がなかった。
両軍の戦力
カオスクラウン防衛戦
カオスクラウンと
ケルカ皇太子という二つの切り札を持った
ラディナだが、
カスターの追撃隊に追いつかれてしまう。
しかし、間一髪で
グラスシードが追いつき、両軍は対陣。
その戦場に、狂信者となった
パレスの残党が乱入するが、
ホワンから「自分が亡き後、信者が暴走したらこれを止めてほしい。ただし、仕事料はグラスシードから受け取る様に」と密かに依頼を受けていた傭兵
ヴォルガが現れ、
グラスシード陣営に加わる。
パレス残党と
カスターの追撃隊をかろうじて撃退した
グラスシード陣営は、
カオスクラウンと
ケルカ皇太子を得た上に、六国発祥の地である旧
サムルトン王都から軍を起こすという演出も加え、自らが正統
クルーディア帝国であることを主張した。
更に、帝都から脱出した
ケルカ皇太子は怪我を負っていた為、一時的に
グラスシードに帝位を預けると語った。
ラグ、
ラディナをはじめとする諸将もこれに賛同、「皇太子成人の時に帝位を返上する」という誓約書を書くことで形だけでも
グラスシードに帝位に就いてもらう様に説得、彼もこれを承諾する。
ただし、幼少の皇太子にその様な言葉が本当に発することができたのか、
グラスシードの簒奪だったのではないかという説も未だ根強い。
こうして
クルーディア帝国内に、二人の皇帝が生まれる。
グラスシードは、
アレイナを
リアムス国に派遣、自らの正当性と利害を解き仲間につける様に命令するが、その際「
リアムスが難色を示すのなら領土を与えてもいい」と発言、この時既に自分が皇帝として、帝国領の所有権をもっているという意識を明確にしている。
こうして、偽帝討伐を旗印とした
グラスシードは、
ラグを先発させ自らも出陣する。
その姿を見て
シルフィは、「たったいま、あなたは私の届かないところへ行ってしまった」と呟いたという。
ラゴッサの戦い
フェリサス軍は、帝都を掌握している利点をいかして、他の帝国将軍たちを抱きこみ、長期的な包囲作戦で
グラスシード軍を疲弊させるつもりだったが、
リアムス軍が
グラスシード側に傾いたこと、
グラスシードが
ケルカ皇太子を擁して正当性を主張した為、追随すると思っていた他の将軍たちがサボタージュをはじめた事により、基本構想が瓦解した。
これに対して、
グラスシードは早期決戦を覚悟すると、どちらにつくか決めかねている他部隊を敵に回さない為、
グラスシード軍は早期決戦を覚悟し、一気に進軍を開始した。
シングリア川の戦い
フェリサスは、
グラスシード軍の進軍に対して、帝都付近に接近するまでこれといった手を打ってない。
グラスシード軍が想像以上の軍勢を味方につけた為、当初の予定と大幅に狂い軽率に出陣できなくなったこともあるが、
グラスシード軍が帝都に入るために通る大河シングリアに差し掛かった時、
フェリサス軍はついに出陣する。
この決戦に勝利すれば、日和見を決めている周囲の勢力を味方につけることができると、
フェリサス自らが出陣を決意するが、
カスターがこれを止め、代わりに帝国元帥の地位を授かり、
フレイズ、
ラヴァを従えて出陣する。
カスターが総指揮官に任命された人事には疑問が残る。
彼がこれまで長年かけて巧妙に腰巾着を努めたため、
フェリサスをもってしても彼の才能を勘違いしていた(
ランドヴァルク作戦における失態も、
サムルトンの裏切りが原因だった為、誰が指揮をとっていても同じであったと考えられていた)という説もあれば、
フェリサスにとって人生とは姉の仇を討つまでであり、その後の人生計画は一切存在せず、部下を失うことも帝都の民衆を戦火に巻き込む事をまったく意に介していなかったのだろうと、戦略面ではなく心理面を指摘する説もある。
六柱将の六国のうち、この戦乱に関与していないルスタル、マルキア、ニルスの3国は「いずれの国の味方もしない」という絶対中立宣言を発令していた、しかし、
フェリサスの興した
神聖クルーディア帝国は、その六国に該当しないという判断により、ルスタル帝国は別動隊の渡河を許した。
また、この時
アレイナによって選抜されたルスタル帝国を説得する使者を兼ねた別動隊のメンバーは、全員
クルーディア帝国に籍を置いていない者であり、より「
グラスシードに私心なし」を印象付けることができた。
帝都クルーディア攻略戦
戦いの結末と戦乱の終わり
戦いは終わり、
クルーディア帝国の運命は
グラスシードが握ることとなる。
ケルカ皇太子は、脱出の際の怪我が原因で数日後に没する。
グラスシードによる暗殺の可能性も指摘されているが、とにかくもこれにより、仮であった筈の
グラスシードの帝位は、正式なものとなる。
だが、その戴冠式の直前、
シルフィを失い、心を壊した
リーナは、姉を失った全ての元凶は
グラスシードの野心であると、彼の背中を刺した。
リディとの関係修復は不可能と思い、彼女を避けようとする
グラスシードは、政略結婚を画策し、ルスタル帝国の皇太子の元へと送り出す。
それから10年、
グラスシードは領土拡大のため西へと兵を進めるが、数年にわたる戦いの末に挫折し、失意のうちに病にかかり世を去った。
グラスシードには子供がいなかったため、その後の
クルーディア帝国は内乱状態となる。
このとき、ルスタル帝国后妃となっていた
グラスシードの唯一の血族となる
リーナは、「血」の繋がりを主張して、自らの息子を
クルーディアの跡継ぎとする。
そして数年後、再び
六柱将の六国は戦いをはじめ、ルスタル帝国が併合、統一国家となる。
時代の変革を告げるため、新たな国名として、かつて国家統一論を唱えた宗派の名から「統一国家
パレス」と名付けられることとなった。
「
カオスクラウンの戦い」とは、何だったのか。
グラスシードは、姉でありながら血が繋がっていないと知った
シルフィに恋慕した。
リーナは、
グラスシードの実の妹でありながら、自分を包み込んでくれる
シルフィを信頼し、彼女を奪おうとする
グラスシードに反抗心を持った。
シルフィは、弟の気持に気付きながら、姉、弟、妹の関係を壊したくなくてあえてそれを受け流した。
フェリサスは、
シルフィに自分の姉の姿を重ね合わせ、復讐だけを糧として疲れ果てた自分の心の癒しを求めた。
そこにあるのは、帝国の覇権をかけた戦いというより、若者達の愛憎劇であったとも言われている。
最終更新:2024年07月24日 01:28