かけひき(怪談)

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かけひき(怪談)」を以下のとおり復元します。
&font(#6495ED){登録日}:2018/08/19 Sun 17:04:16
&font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red)
&font(#6495ED){所要時間}:約 4 分で読めます

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かけひき(本によっては「駆け引き」・「謀りごと」とも。)は小泉八雲編纂の『怪談』にて紹介された怪談で、原題もそのまんま“Diplomacy”である。原作は日本民話とされている。


所謂ショートショートに分類される長さであり、内容も割とわかりやすいものになっている。



≪お は な し≫


ある上級武士が自分の屋敷にて罪を犯した使用人の男を打ち首にしようとしていた。


男は&font(#ff0000){「この罪を犯したのは自分が愚かだったから」「愚かだったからという理由で打ち首にされるのはおかしい」}と言った命乞いをしていたが主人の侍は聞き入れず、首を切る為に刀を抜いた。

どうあっても死は逃れられないと悟った男は言った。


&font(#ff0000){「自分を殺せばこの屋敷そのものを呪ってやります!」}


侍本人も強い恨みを抱いて殺された者が怨霊となり殺した者に復讐することを信じていた為、その上で彼にある提案を持ち掛けた。


&font(#0000ff){「本気で言っているのならば儂が首を切ってから目の前にある飛び石に噛り付いて見ろ。噛み付くことが出来れば、その恨みの程に怯える者も現れるだろう。」}


誰の目にも明らかな徴発だったが男は怒りを込めつつ&font(#ff0000){「必ず噛り付いてみせます!」}と答えた。



そして実行される手打ちの儀。
庭の砂の上に転がり落ちる男の首だったが、&bold(){&font(#ff0000){その首は侍が示した飛び石へと転がり、宣言通りに噛り付き、最終的に力尽きてそこから落ちた。}}

男が自分の怨念を証明した。その事実に家臣たちは震え上がったが、何故かその徴発を言い出した張本人である侍は全く意に介せずにいた。




それからの数か月間、男の復讐の念を信じた家臣たちは男の亡霊がいつ自分達に復讐にやってくるのかと怯えながら暮らすことになった。
その結果、彼らは竹林に吹く風の音、庭にある影と言った傍目からは些細なものに恐怖を見出すようになったのだ。


とうとう堪え切れなくなった家臣達は相談して主人の侍に施餓鬼供養をして何とかする事を嘆願。
しかし侍はあっさりと&font(#0000ff){「その必要はない」}と言い、彼らに理由を話した。


&font(#0000ff){「確かに死後の怨霊は恐ろしいが、その為には死の際の強い恨みの念が要る。」}

&font(#0000ff){「しかしあの男は儂の挑発に乗って死の瞬間に『石に噛り付く』事に念を移してしまった。」}

&font(#0000ff){「つまり、男の呪いは『石に噛り付く形』で既に成就したのだ。」}


呪いは恐ろしいがその成就の要件は「自分達に恨みの念を向けたまま死ぬこと」。
しかし矛先は死の瞬間自分達には向けられていなかった。つまりあの男の呪いが自分達に降りかかる事はないし、自分達も彼のことを心配する必要などないのだった。


一見するとただの挑発に思えた侍の言葉は&font(#ff0000){彼の恨みに対する見事な「かけひき」だったのだ}。
(しかも「石に噛り付けば怯える者も出るだろう」と言う点もドンピシャに当てている。もっともあの状況ならばそうなるのはごく自然だが。)
事実男の死後はただ家臣たちが男の怨念に怯え、慌てふためいていただけで&font(#ff0000){実際には何の危害も起きていない}。


そしてそれはその後も変わらず、石に噛り付いた男の怨霊は出てこないのだった。



物語はここで終わる。







ここまで見た人は分かっただろうが、この話は「&bold(){ホラーに見せかけたとんち話}」なのだ。


ホラーと思って見に来た人には少々物足りない話かもしれないが、そのラストは納得のいくものであるだろう。


大事なのは「侍は男の呪いの矛先を変えることで難を逃れた」と言うのであって「呪いそのものは否定していない」点である。
事実物語の中では呪いの存在を信用し、実際に呪いが形になっているので物語のジャンルとしては間違いなく「怪談」に分類できる。
が、そのラストは直前までの不気味な雰囲気をひっくり返す非常にウィットに富んだものになっており、&font(#ff0000){怪談でありながらホラーではない}話へと見事に着地させているのだ。


日本の怪談のテンプレの様な舞台から淡々と話が進められ、意外性のあるオチへ話を展開していく手法は現代のショートショートなどで用いられる叙述技法が見事に発揮されていると言えるだろう。


なお本筋とは関係のない話だが、「もし石に噛り付いていなかったらどうなっていたのだろうか?」と思う人もいるかもしれないだろうが、恐らくその場合そもそも家臣は怯えなかった可能性が高いし、もし怯える者がいて本編通りになっても侍は&font(#0000ff){「石に噛り付けないのならば、男の怨念も我々が恐れるほどのものではなかったのだろう。」}と捨て置くことで結局は同じ結果に至っただろう。

唯一侍が恐れる展開があったとすれば、それは挑発に耳を貸さずに恨むことにのみ念を込めていた場合だが、男は挑発に乗って噛り付くことを宣言してしまった。

つまりこの「かけひき」、&font(#ff0000){挑発に乗った時点で既に男にの呪いが成就することはなかったのである。}



男の言葉に対してその一念を肯定したうえで100%とは言えないまでもかなり部のいい「かけひき」を提案して呪いを回避する辺り、この侍はかなり聡明と言えるだろう。




追記・修正は&font(#ff0000){死んだら項目荒らしをしてやる}と息巻く者に対して&font(#0000ff){死ぬ際にその一念を逸らさせた}うえでお願いします。


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- 本来の不満の対象から目を逸らさせてそっちを攻撃させる事で不満の大本を放置したまま満足させるって手法は為政者がよく使う手でもある……  -- 名無しさん  (2018-08-19 17:28:14)
- ↑そして、そうやって対象をカテゴライズしてあたかも相当してるかのごとく批判するのは、テロリストがよく使う手だな。  -- 名無しさん  (2018-08-19 20:44:42)

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