巴武蔵司令官

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巴武蔵司令官 - (2015/07/26 (日) 19:35:46) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2011/03/04(金) 12:19:23
更新日:2024/04/11 Thu 20:51:15
所要時間:約 5 分で読めます




かつて少年は、侵略者から人々を守る巨大ロボットと出会った。
そのロボットに乗る事を切に願い、その願いが果たされ、彼は正義の味方として2人の戦友と共に戦火の中を駆け抜けた。
そして少年は、戦友を、愛する人々の未来と平和を守る為に独り敵陣へ赴き、偉大な遺産を遺してこの世を去る。

気の遠くなるような歳月が流れた遥か宇宙の果て、その辺境の星に成長した少年の姿があった。


彼の名は巴武蔵

大佐と呼ばれる彼は多くの人間の兵を引き連れて、かつての戦友の一人息子の危機に颯爽と駆けつけ、満面の笑みでこう言うのだった。


「待ってたぜ ゲッターロボ!!」





巴武蔵司令官はゲッターロボアークに登場する主要人物の一人である。

死んだはずの人間が、未来の世界においてその姿を現し、主人公のピンチを救う。
漫画の展開としてはかなり燃えるシチュエーションであると共に、往年のファンにとっても最高のファンサービスだったであろう。

しかし、そんな幻想はいとも簡単に崩れ去る。

彼が現地で行っていた事は、

大量虐殺 と 侵略行為

であったのだ。


無力化した敵をさも当然のように殺し、その星に住む一億三千万もの命と共に都市を消滅させた際には
「虫ケラを殲滅するのはこの方法が一番だ」
「これは聖戦なのだ 宇宙にははびこる悪を一掃する聖戦なのだ!!」
と、悪びれた様子など微塵も感じさせず、その姿は正に悪の侵略者そのものであった。

現状を把握できないでいる主人公達に対し、これまで起きた出来事を映像を込みで説明しはじめる。

主人公達の世代から何世代か後に、人類は外宇宙にとび出していった事
外宇宙の星々を植民地化し、あらゆる宇宙に人類が広がっていった事
それは人間にとって輝かしい未来、新しい進化と言ってもいい出来事であった事
外宇宙へ進出した事で未知の文明と遭遇し、これまで経験した事の無い大戦争となった事

宇宙での戦いの掟に、人類はまさに滅ぼされようとしていた事

そして、忘れ去られようとしていた太陽系より、巨大な宇宙戦艦ゲッターエンペラーが出撃していき未知の敵を殲滅していった事
人類はゲッターの庇護の下、またその勢力を宇宙に伸ばしていった事


ゲッター軍団として

「見てみようではないか」
「ゲッターの行き着く先を そこに結論が待っているやもしれぬ!」
「なぜ人類が存在するのか」
「宇宙はゲッターに何を求めているのか」
「かつて人類がそうであったように」

ゲ ッ タ ー の 進 化 は と ま ら ぬ !!

これ以上を知る必要はなく、知りすぎる危険もあるということで彼の説明は終了となる。

そして現在、敵が時空を越えて過去の世界=主人公達の世界へ飛び、ゲッターの根源を絶とうとしているため、それを阻止するべくここにいる事。
過去の人間に未来の人間が手を出したら危険のため、同じ世代である主人公達に仕上げを任せるためにサポートする事を付け加えて説明した。

武蔵は敵をいぶりだす為に、星の全てを腐らせる兵器を使用する。
文明の欠片一つも残さず、数十年後にはこの惑星を人類の植民地に出来るというのだ。

敵もゲッターから逃れるべく必死に抵抗してくる。
敵から発射された光子弾に対し、自分達の力と敵の無力さを見せ付けるため彼はあえてバリヤーを張って防御しようとはしなかった。

「奴らの攻撃などゲッター軍艦にはなんの効果もないことを思い知らせてやれ!!」
光子弾はメインデッキを直撃。無数の破片が彼の額に突き刺さり巴武蔵は死んでしまう。またかよ武蔵……。

しかし、周囲の部下達はなんら焦る事はなく、淡々とこう述べた。

「新しい武蔵指令官を起動させます」


無数のカプセルの中に先ほど死んだ武蔵とまったく同じ容姿の人間が入っており、一つのカプセルが起動し新しい巴武蔵が誕生した。
「お待たせ!! 前任の俺の間違いは二度とせぬ!!」

過去の世界で死んだはずの巴武蔵の正体は
ゲッターエンペラーの記憶に基いて造られた、純粋な人間遺伝子を受け継いだ人造人間だったのである。
そして死んだ武蔵司令官から記憶も全て新しい武蔵司令官へ受け継がれるとの事。

クローン技術もびっくりのこのシステムには、子どもの時にゲッターロボを読んで武蔵の最期に涙した事のあるファンからすれば正にトラウマ物である。

主人公達に出撃を求める武蔵であったが、主人公達は未来のゲッター軍団に疑念を抱き暫く誰も動かなかった。

そんな彼らに対し武蔵は
「どうした!? 地球の生存は君達にかかっているんだぞ」
と、半ば強制するように出撃を促す。
疑念を抱きつつも出撃する主人公達であったが、主人公達の世代のゲッターでは敵に叩きのめされると言う事で、戦闘の全ては未来のゲッター軍団が請負い自分達は過去の人間を殺す為だけに誘導される。
敵を一方的に蹂躙していく未来のゲッター軍団に対し、自分で闘ってる気がしないと呟く主人公であったが、ゲッター軍団の一人より恐ろしい言葉が返ってくる。

自分などという個はどうでもいい
ゲッターは大いなる意思の戦いなのだ!!
それでなくては宇宙に存在するゲッターの意味が無いのだ!!
本能に身をゆだねれば全てがわかってくる!!
生物が、人間が何故存在するのか、宇宙が……何故……存在するのか!!

[そして お前たちがなぜ殺し合うのか!]




これしか道は…… 無いことも……




作者の石川賢はこう述べている。

人類が「進化」して宇宙に飛びだしてった場合、それは「正義」なのか「悪」なのか
主人公=「善」では無い
ゲッター=「絶対悪」のイメージを持っていた

正義か悪かを問う作品は数多く存在する。結果、どちらともが「正義」で「悪」なのだと結論付けられる事が多い。

しかしこのゲッターロボ、経緯が少し異なる。
最初こそは真の正義の味方として誕生した作品であるのだが、時を経て時代と向き合った事で作者の明確な意思により「絶対悪」へと変貌しているのである。
当時の子ども達が憧れた正義の味方、ゲッターロボの姿はどこにも無かったのだ。

絶対悪を具現化したものがゲッターエンペラーであるのなら
「正義」から「悪」への変貌を具現化したものが巴武蔵司令官なのであろう。
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