SCP-802-JP

「SCP-802-JP」の編集履歴(バックアップ)一覧に戻る

SCP-802-JP - (2017/11/18 (土) 11:44:42) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2017/05/24 (水) 23:44:02
更新日:2024/04/09 Tue 22:12:16
所要時間:約 5 分で読めます




SCP-802-JPとは、怪異創作コミュニティサイト「The SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。
項目名は『粗雑なコピー機』。
オブジェクトクラスは「Neutralized」。


概要

コイツが何かというと、読んで字のごとくコピー機である。
構造そのものは普通のオフィス用コピー機と変わらない。

その異常な特性は、立体センサーで物体を読み取った時に発生する。このコピー機は、読み取った物質の複製をそのまんま「出力」してしまうのである。
ただし、「粗雑な」コピー機というだけあって、模倣は不完全で、劣化したものになる。

また、本来使用者への案内用表示が出るはずのディスプレイには数字が表示されている。これは使用回数1回ごとに1加算され、報告書執筆現在では27である。

特性そのものは財団が把握している限りでは本当にこれだけで、特筆事項も特になかった。
というわけで、実験記録を見てみよう。
コイツで読み取った物体と、出てきた物体についてである。


  • その1
読み取ったもの:未使用のUSBメモリ。容量32GB。
出てきたもの:未使用のUSBメモリ。容量4GB。
メーカーは同じだったが、商品としては実在していなかった。それにしても、容量が1/8になるとはずいぶんと劣化したもんである。

  • その2
読み取ったもの:とある書籍
出てきたもの:同じタイトルの書籍
社会学の古典的名著だったものが、陰謀論と偏見的視点に満ちたものに改悪されていた。実験後に焼却。

  • その3
読み取ったもの:精米されたコガネヒカリ200グラム
出てきたもの:銘柄不明の精米されたコメ200グラム
遺伝子解析の結果、コガネヒカリの原種に当たるコシヒカリの古米だったことが判明。焼却されている。

  • その4
読み取ったもの:生きたモルモット1体
出てきたもの:死んだモルモット1体
DNAはほぼ一致したものの、出てきた方には先天的な疾患がいくつか見受けられた。

  • その5
読み取ったもの:財団標準12mmショックブラスター(ディフェンダー・タロン)
出てきたもの:オートマチックの9mm拳銃
財団のセキュリティ部門で昔使われていたものだった。これは保管されている。


とまあ、コピーというよりそれよりも劣化した類似品を吐き出す装置と見た方がいいだろう。
ところが、これでは終わらなかった。
実験を繰り返していたところ、おかしなことが起きたのだ。

最初の実験で使用した32GBのUSBメモリをコピーにかけたところ、4GBの同型メモリが出てきたのだ。
これ自体は前の実験と同じなのだが、問題は予定されていた実験。
それは、最初の実験で出た4GBのメモリを繰り返し繰り返し複製し、1度のコピーで具体的にどれくらい劣化するのかを確認するためのものだった。

つまり、予定と違う実験が当たり前のように行われたのである。
しかも、開始時点で21だった使用回数が、実験後は27に増加。さらに、コピー機周辺で未使用の32GBメモリが発見されたが、これは実験用の予備とのことだった。

表示されている数字が正しいのなら、実験は6回行われた。つまり、生成物である4GBの方があと5つなければならないのだが、そうはなっていない。
つまり、このコピー機が壊れたのか、あるいは現実改変が起きたのか、ということになる。
後者ならばSRAなりを使えば何とかなるかも知れないが、前者だった場合Neutralized認定となる。「確保・収容・保護」を理念とする財団にとって、Neutralizedは保護の使命の失敗に等しい。

一体どうなっているのか、と財団はさらなる実験を予定していたが、この実験の後SCP-802-JPは完全に機能を停止。
分析・再稼働の試みはすべて失敗し、結局2カ月後にNeutralized認定となった。残念無念。










ところで、Neutralizedクラスのオブジェクトにも特別収容プロトコルは存在する。
その一つであるSCP-062-JP「生存権」なら、監視員を配置して見張る、というように、ものにもよるが簡素ながら収容が成されているものだ。
で、このコピー機の場合はというと、

SCP-802-JPは現在収容されていません。回収された場合、隔離実験室に一時収容します。ただちに再稼働実験とオブジェクトクラス再評価実験を行って下さい。実験手順はSCP-802-JP再評価プロトコルに従います。

……なんかおかしくないだろうか?
無力化されたオブジェクトに対するプロトコルとしては物騒すぎる。これはむしろ、KeterかEuclidだと言われた方がしっくり来る内容である。


実は、オブジェクトクラスの再認定の直後、こんな事案が発生していたのである。

事案記録と真相

オブジェクトクラスの変更後、SCP-802-JPは保管庫に戻された。
その直後、このコピー機をとある初老の研究員が調べに来たのだが、巡回していたセキュリティ担当者との会話の中で、その研究員はこんなことを言ったのだ。

いやいや、ガラクタだなんてとんでもない。こいつを使えば、オリジナルとコピーが交換されたことに誰も気づかないのだよ。改良されたコピーの方を、ずっと前から存在しているオリジナルだと思い込んでしまうからね。まあ、もう終わった話だが。

さらに、担当者に向けてはこんな会話が。

研究員:ありがとう。ところで君の郷里は長野だったね。
セキュリティ担当者:え? ああ、そうです。山奥も山奥ですよ。
研究員:うむ、良かった……たまには苦労も報われるものだな。

……。
長野。山奥。何かを思い出さないだろうか?
その前に、この研究員の正体を明かしておこう。

(初老の男性研究員が1人、保管庫でSCP-802-JPを調べている。IDカードの姓は"犀賀"と読める)

犀賀六巳
要注意団体のひとつ「犀賀派」を率いる現実改変者である。
この御仁、研究者に成りすましてSCP-920-JPを搬出、何処かへ持ち去ってしまったのだ。

この行動は映像記録として残っており、当然ながら事態を把握した日本支部は大騒ぎ。
犀賀の発言が事実ならば、このコピー機の特性は財団の認識とは真反対だったことになるからだ。


つまり、このオブジェクトの正体は、「読み取った物体よりも優れたコピーを生み出し、そのコピーこそが最初から世の中に出回っていたオリジナルだと現実を改変する」超問題児だったのである。
これを踏まえると、行われた実験の結果はこのように逆転する。


  • その1
読み取ったもの:未使用のUSBメモリ。容量は4GB
出てきたもの:未使用のUSBメモリ。容量は32GB
メーカーは同じだが、商品としては実在していなかった。それにしても、容量8倍とはまた随分と強化されたものである。

  • その2
読み取ったもの:とある書籍
出てきたもの:同じタイトルの書籍
陰謀論と偏見的視点に満ちた内容が、社会学の古典的名著に改善されていた。

  • その3
読み取ったもの:精米されたコシヒカリの古米200グラム
出てきたもの:精米されたコガネヒカリの新米200グラム
どうやら植物の場合、品種改良された子孫を吐き出すようだ。

  • その4
読み取ったもの:死んだモルモット1体
出てきたもの:生きたモルモット1体
DNAはほぼ一致したが、出力された方は先天的疾患などの改善が見られた。

  • その5
読み取ったもの:財団標準9mmオートマチック拳銃
出てきたもの:12mmショックブラスター(ディフェンダー・タロン)
恐らく、未来の財団において制式採用された武器だと思われる。


しかし、財団が把握している限り、犀賀の言う「優れたコピー」の方が世の中で普通に流通していることは確かである。
もしも彼の言葉が事実であれば、大規模極まる過去改変および現実改変が行われたことになる。
要注意団体の言葉を鵜呑みにすることは出来ないが、何しろ相手が相手だ、逆に嘘っぱちだと撥ねつけることもできない。

そういうわけで現在、財団はSCP-802-JPの回収を急いでいるわけである。
しかし、このトンデモコピー機、一体どういうルートで財団の目に留まったのだろうか?



犀賀六巳の狙い

実は、このコピー機は元々犀賀の持ち物である。
セキュリティ担当者との会話を見て、カンのいい諸兄は察したことだろう。

彼は、「長野の大ウツロ」ことあのスーパーデンジャラスブラックホール、SCP-280-JP「縮小する時空間異常」をどうにかしようと考えていた。その手段としてこのコピー機に目を付けたのである。
犀賀が動き出した時点で、あのブラックホールはもはや隠蔽不能な規模にまで拡大していた。

具体的にこのコピー機をどう使ったのかは不明だが、恐らくは過去改変により、財団があのブラックホールに手を出す前の状態まで戻してしまおうと考えたのだろう。
ところが、過去改変を繰り返した結果、SCP-280-JPをどうにかするより先に、いつの間にかコピー機の方がSCP-802-JPとして財団の手に渡ってしまった。
犀賀はこれを取り返そうと考えたが、財団が実験のためにコピー機を何度も動かした=過去改変を繰り返した結果、バタフライ・エフェクトが発生。結果、SCP-280-JPは拡大の事実が過去にさかのぼってリセットされ、報告書の最初の部分と同じ、つまり「縮小用海水注入プロトコル」が実行される前の状態に戻っていた。

これを確認した犀賀だったが、短期間に何度も改変を繰り返したおかげで安全装置が作動しコピー機は停止。
研究員に化けて、「もはやこの世界に必要ない事物」であるコピー機を奪還したのである。



つまり?

犀賀さんが長野のブラックホールをどうにかしようと過去改変コピー機を持ち出したが、解決する前にコピー機が過去改変の煽りを食って財団に。取り返そうとした矢先に、財団による実験=過去改変がバタフライエフェクトを起こしてブラックホールが初期化。
安全装置が起動して役目を終えたコピー機を、研究員に化けた犀賀さんが引き取りに来ました。



要するに、
特別収容プロトコル:SCP-280-JPは現状のまま維持されます。収容不能な規模にまで拡大した場合、SCP-802-JPを起動して過去改変を行い、縮小するまでこの作業を実行してください。
てなわけである。


追記・修正は長野の大ウツロをどうにかしてからお願いします。


SCP-802-JP - 粗雑なコピー機
by spikebrennan
http://ja.scp-wiki.net/scp-802-JP

この項目の内容は『 クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス 』に従います。

この項目が面白かったなら……\ポチッと/