SCP-3125

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SCP-3125 - (2017/08/23 (水) 22:27:28) の編集履歴(バックアップ)


登録日:2017/06/02 (金) 21:27:02
更新日:2024/04/20 Sat 23:05:15
所要時間:約 5 分で読めます





死ぬほどノベルティで、狂うほどアクティブで、理解不能なほどスペクタクル。


SCP-3125とは、怪異創作コミュニティサイト「The SCP Foundation」に登場するオブジェクトの一つである。
項目名は『The Escapee(逃亡者)』。
オブジェクトクラスは堂々の「Keter」。

特別収容プロトコル

さて、実はこの報告書、概要部分が秘匿され、ヒントなしのパスワードロックがかけられている。
普通にアクセスした場合に見られるのは、特別収容プロトコルの部分のみである。

それによれば、このオブジェクトはサイト-41にある認識災害収容ユニット-3125の内部に保管されているという。
この収容場所は鉛、防音壁、テレパシー遮断壁によって三重に囲われている。
アクセス方法も非常に限られており、ユニットの一角にあるエアロックを介して行われる。
加えてこのエアロック、ユニット内には一度に一人しか存在できないようブログラムされており、誰かが中にいて、退出しない限りロックされる。

そして、如何なる状況でも一貫性のある情報を収容ユニットから持ち出してはならない。
この「一貫性のある情報」とは、手書きおよび電子的なメモ、写真、音声および動画の記録、物音、電磁気および粒子に基づく信号、そしてPSI放射=テレパシーが含まれている。そして退出サイクルにおいては、エアロックに装備された浄化システムを介して記憶処理ガスをエアロック内に3分間流し込み、内部に入った職員の記憶を処理する。
要するに「収容ユニット内部の情報を外に出すな!」ということである。

ミーム部門の上級スタッフメンバーは、SCP-3125を42日ごとに訪れなければならない、とされている。




厳重ではあるが、かみ砕けば単純なプロトコル。要はとにかく、情報の伝達を防げ、ということである。
つまり、これはミーマチックエフェクトを持った何かであることが伺える。

これにアクセスできる唯一の端末は収容ユニット内部に存在するのだが、パスワードについてはヒントがない。
というわけで総当たりである。


























承認










上記の特別収容プロトコルは事実だが、オブジェクトそのものにかかわる部分が意図的に省かれている。
掻い摘むと、収容ユニットの内部はSCP-3125の影響力を排除することに成功した、知られている限り唯一の空間である。そしてこのSCP-3125は「逆転収容プロトコル」、RCPの対象であり、明確に影響力が除去されたポイントを除く、基底現実のあらゆる場所に遍在する概念のようなものであるとされる。

これらの情報を拡散しないため、「SCP-3125」のエントリには別の文書を割り当て、そこにはSCP-3125の収容ユニットの機械的構造と、収容維持のために財団職員が何をせねばならないか、という部分のみを記すことになっている。

そこまでして情報を隠さねばならないSCP-3125とは何なのか?
それを、これから説明する。


概要

コイツが何かというと、基底現実の外部に起源を持ち、報告書の執筆時点では部分的に基底現実に入り込んでいる、非常にでっかい+極めて攻撃的かつ侵略的な転移性を含むミーム複合体である。
SCP記事に親しんでいるならミームについては何となく理解しているだろう。このオブジェクトがどんなものかよくわからないのであれば、「ガン細胞ミーム」と理解していただければ良い。

ミームとしての内容がどんなものかは具体的には語れない。それを知ることは即ちコイツの餌食になるということだからである。
一つだけ言えるのは、SCP-3125とナンバリングされたこのミームは、我々の知る既存のいずれのそれよりも積極的な「アイデア」である。
このミームは、人間の頭の中にある、人間が持っている、あるいは生物学的に持つことが可能なあらゆる着想の集まり……要するに基底現実における通常のミームよりも、極めて敵対的・暴力的な観念的生態系の生存に適応している。

わからないのであれば、こう理解してもらいたい。
つまりSCP-3125の起源である=このミームの出所であるどこかの世界(だろうと思われる、多分)は、我々の社会よりも、人の関係性がきわめて敵対的・暴力的なのだ。どっかの世紀末救世主の活躍の舞台から、救世主だけ取っ払ったような世界なのだ、多分、きっと、恐らく。
そんな社会の通念となっているミームが、基底現実に入り込んでいる、というわけである。当然、こんなアイデアに適応するような進化は基底現実では行われていないため、基底現実の人間はSCP-3125への精神的耐性が全くない。


さて、問題なのはこのミーム複合体が持つ影響である。財団世界的な意味でのミームとは、人から人へ、心から心へと伝わり、移り変わっていく情報同士の結びつき、そこから生じる概念のことである。
伝染性を持つ情報は多かれ少なかれミーマチックエフェクトを含んでいると言えるが、コイツの場合はミームそのものである上に、構築している概念が非常に積極的、かつ攻撃的でしかも敵対的である。当然、拡散能力は他のオブジェクトの比ではない。

もしも、コイツに人間が曝露してしまった場合、既存のアイデアを楽しむことが出来なくなり、代わりにSCP-3125に従属、その中枢概念を広めようとし始めるのだ。まるでどっかのねこのようですよろしくおねがいしてる場合じゃない。
加えて外見的な変化がないにも関わらず、曝露者は外部からは人間と認識できなくなる。

不幸中の幸い……というには幸いの割合が低すぎるが、SCP-3125は基底現実に完全に表れているわけではない。
しかし、仮に基底現実に完全に到達してしまった場合、人間の知識交換システムの構造から考えて、要はミームが伝わる経路を考えると、4時間足らずで全人類の思考を侵食、包括、支配、置換してしまう。
こうなると、概念としての「人類」は、それに付随する全ての概念と共に存在しなくなる。MK-クラス:世界終焉シナリオである。

財団とて無力ではなく、こういういわゆる「情報災害」や「ミーム汚染」に対する備えはいくつも用意されている。しかし、SCP-3125は、これらの試み全てを自律的防御応答/境界層によって完全ブロックしている。

さらに面倒極まることに、このミーム複合体の全景を理解し、想像できるようになると、このミームの方から観測者を知覚できるようになる。で、知覚された観測者はミーム複合体からの、一部は物理的な攻撃により殺されることになる。
加えて厄介なのは、この殺された観測者と考え方の似ている他者も含まれている。つまり、その誰かが研究者であれば、同じグループのほぼ全員が抹殺ターゲットになってしまうのだ。

そしてこの攻撃には、世界からSCP-3125およびその攻撃に対する知識を消し去るという影響が含まれる。
つまりこれがある限り、SCP-3125が完全に顕現する際に検出されることがないのである。

日本支部のオブジェクトで例えればねこですと緋色の鳥を合わせ、それぞれの厄介な部分を抜き出して組み合わせたような特性を備えていることになる。



故人であるバーソロミュー・ヒューズ博士の提唱した「非現実増幅装置」なるデバイスを使えば、このミーム複合体は完全に無力化することが可能だということが判明している。
ではなぜそうしないのかと言うと、実はこの装置、未完成なのである。加えて起動するためには装置の構造を起動者が理解せねばならず、そのためにはSCP-3125の全景を理解せねばならない、という本末転倒な条件が必要になる。
かてて加えて構築自体にも物的資源が大量に必要であり、唯一これらの情報を無事に観測できる収容ユニット内部の物資では構築不可能となっている。
ダメだこりゃ。



来歴と影響

カンのいい諸兄はお分かりだろうが、この概念、感染力が絶大なミーム複合体にも拘わらず、自身を理解した人間を殺して情報を消すという反ミーム的特性まで備えた問題児である。
こんな特性を持っているもんだから、財団がどうやってこれらの情報を確認し、収容ユニットを建造したのかは財団自身にも全くわかっていない。

収容ユニット内部の情報は外部から持ち込まれたものだが、オブジェクトの特性上直接的に結びつく情報はない。
その上で、入れ代わり立ち代わりやって来る研究者たちの調査と推測によってこんな仮説が立てられている。

まず、このミーム複合体はまだ完全に顕現していない。設備の整ったミーム研究部門ならば、前兆となるオブジェクトを捕捉・確認すること自体は容易である。

次に、ミーム学という研究部門は、現在かなり衰退している。最盛期にはアマチュアを含め400以上の団体が存在したが、現在ではSCP財団内部にしか存在しない。この衰退の原因は未だ不明であるが、逆説的に、これらの団体は全てSCP-3125の餌食となったであろうことが伺える。

さらに、SCP財団内部においても、反ミーム部門がどんどん縮小しており、このままでは2015年末に部門のスタッフがいなくなる、という結論が出ている。
おまけにサイト-167にあったはずの部門の本部は、SCP-3125の攻撃を食らって消滅してしまっている。

要するにこのミームは感染力が非常に強いが、全貌を理解すると殺される、という意味不明な特性なのだ。


他のことは打ち捨てて、知れ。知ったら、死ね。


そういうことなのである。
こんなトンデモミームを生み出した社会というのは、一体どんなところだったのだろうか?




補遺


ところで、実はもう一つ、特筆すべき事項がある。
この収容ユニットと同一の構造であり、規模だけが大きく上回るユニットがサイト-41の地下に存在していることが、内部のデータで判明している。
建造にかかわるデータは全て意図的に排除されており、ユニットそのものも封印されたままになっている。

だが、その来歴はわかっている。
このもう一つのユニットは、ヒューズ博士の提唱した「非現実増幅装置」を建造するために作られたのだ。当然そのための職員が配置されている。
その長期的プロジェクトのため、反ミーム部門の研究者たちは、時間を稼ぐために可能な限りゆっくりと負け続けた。

そこまでやってもなお、彼らが稼いだ時間では足りなかった。ユニット内部の職員たちがまだ誰もユニットの封印を解いていないということは、考えうる最悪の事態が起きたということになる。

これらの情報を残した反ミーム部門の主任、マリオン・ホイーラー博士は、エアロックを超えて情報を持ち出し、第二ユニットの装置を起動させようとしている(Taleとして描かれているが、2017年6月現在未翻訳)。

しかし、問題なのはこの文書が確認されている状況。
ホイーラー博士のメッセージの後半はこうなっている。

しかし、これを生きて読むことができるあなたが何者であるにせよ、私には肯定的な印象が持てません。このシナリオでは装置は存在せず、ヒューズは失踪し、私は死亡し、サイトは破壊されているというのに、あなたは一体どうやってここまで辿り着いたんです? あなたが財団職員という可能性はあるでしょうか? あなたに意識はありますか? この文書の一単語でも理解できていますか?

あなたはSCP-3125が浸透してしまった世界で生きている。その状況は制御不能です。私には存在しない人を救うことはできません。

ホイーラー博士が行動したということは、最悪の事態が起きたこととほぼ同義である。そのシナリオにおいては、既に打つ手は失われている。
ならば、サイト-41にたどり着き、この文書を見ているのはどこの誰なのか?


そしてさらに、その文書が閲覧された後にシェルターを訪れた、彼女の夫と思しき、「侵入者アダム・ホイーラー」なる人物による補遺がある。
彼の得た証拠から推測されるのは、サイト-41は「唯一の」反ミーム部門ではなかった、ということである。
物理的に不可視となっているだけで、恐らくはまだそこに存在している。

サイト-41の地上と地下に存在するユニットと同じ構造、かつ地下ユニットと同等の規模を持った情報遮断シェルターは、サイト-167にも存在している。SCP-3125による情報攻撃(物理)を食らったおかげで廃墟と化した上に実在性があいまいになっているため、恐らくホイーラー博士はこれを見逃してしまったのだろう、とアダムは推察している。

変わりつつある世界の中、また自身が無駄死にするかもしれないという可能性を示唆し、その上でこれを読んでいるのが、対抗策の立てられる誰かであってくれ、というメッセージを最後に、アダムによる補遺は終わっている。





結論

お分かりだろうか?
上記には「2015年末には反ミーム部門のスタッフはいなくなる」と記していたが、ホイーラー博士のメッセージはまさにその時期である2015年11月末に記されたものである。

さらに侵入者アダムのメッセージは、2017年5月4日のものだ。
この時点で、既にSCP-3125は完全に顕現しつつある。我々の世界という概念は崩壊しつつあったのだ。
ならば、このメッセージを財団世界で読んでいるのは誰だろうか?




財団の明日は真っ暗だ。




余談

このオブジェクトの元記事は、Taleハブの一つ「反ミーム部門」の新しい章「ファイブ・ファイブ・ファイブ・ファイブ・ファイブ」の第一部である。
現在はこの記事のみで続きは書かれていないが、ホイーラー博士の行動については別のTaleで描写されている。


追記・修正はミスター・ほんやくの健闘に期待しつつお願いします。


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