殺されて井戸に捨てられたチート怨霊がイケない勇者とハーレム美少女達にコワーイお仕置きイッパイしちゃうゾ!

登録日:2024/05/06 Mon 14:34:46
更新日:2025/04/15 Tue 22:35:25
所要時間:約 15 分で読めます



『殺されて井戸に捨てられたチート怨霊がイケない勇者とハーレム美少女達にコワーイお仕置きイッパイしちゃうゾ!』は、谷尾銀によるライトノベルである。


以下ネタバレ注意


【目次】




【概要】

2018年8月に「小説家になろう」にて連載、同時にミッドナイトノベルズ版も発表された。書籍版は発売されていないが、2022年8月からはガンガンONLINEにてコミカライズ版が連載中。
小説家になろうでは定番の、悪徳勇者パーティを追いやられた人物による復讐モノ……なのだが、厳密に言うといわゆる「なろう系」のフォーマットを借りて描かれた怨霊もののホラー小説、というのが正確なところ。
主題となっている怨霊と化した聖女・サマラの引き起こす恐ろしい災厄をはじめとして、彼女を惨殺した勇者ナッシュとその仲間たちの常軌を逸した外道ぶりと歪んだ人間関係、ある意味怨念より恐ろしい民衆達の悪意がグロ描写も絡めて容赦なく描かれている。
なろう作品のお約束とも言えるコミカルで長大なタイトルに反し、終始極めて陰鬱かつ陰惨な雰囲気の作品に仕上がっているため、心臓の弱い人や胸糞の悪い描写が苦手な人は要注意。
超健全版(なろう版)は完結済みで話数は全26話、外伝が15~20話と、中編に属する一気に読めるボリュームである。




【各バージョンおよびタイトル】

本作は発表されたメディアによってタイトルが違っている。
  • 『殺されて井戸に捨てられたチート怨霊がイケない勇者とハーレム美少女達にコワーイお仕置きイッパイしちゃうゾ!』(R15)
小説家になろうで連載されたバージョン。通称「超健全版」。
露骨な性的描写は抑えめにされているが、グロ描写やホラー表現、陰鬱な展開などはしっかりと描かれている。
第25話が本編と特に繋がりのない情景描写のみのエピソードとなっているが、これは当該エピソードで当初描かれていた内容が女子高生コンクリート詰め殺人事件と似通ったものになってしまい、作者が自主規制を行ったため。

  • 『殺されて井戸に捨てられたのでチート怨霊となって妊娠確実パコパコスローライフを満喫中の勇者とハーレム美少女達に復讐します』(R18)
ミッドナイトノベルズにて発表されたバージョン。通称「アンリミテッド版」、略称は「妊パコ」
全体的に性描写が増えているが、サービスシーンというよりは嫌な方向の生々しさを引き立てるようなものが多い。
こちらの25話は超健全版初出バージョンの描写をマイルドにしたものとなっている(それでも大概だが)。R18の方がマイルドというのはどういうことなの……

  • コミカライズ版『殺されて井戸に捨てられた聖女がチート怨霊になりました』
前述の通り、2022年8月からガンガンONLINEにて連載。ネーム構成は桜井竜矢、作画は七清水くらげ。単行本は2024年1月の時点で2巻まで発売。
原作と違ってサマラが三人娘の前に頻繁に幻覚を見せて現れるなど行動的になっている他、各キャラクターの細かい描写やオリジナルキャラクターが追加されている。
内容としてはアンリミテッド版寄りだが、アンリミテッド版以上に露骨な性描写が多い。そして当然グロ・ホラー描写にも容赦がない。
長期休載に入る頻度がそれなりに高い

  • 外伝『勇者のいない夜に ~ディオダディ砦の恐怖談義~』
戦いの合間に三人娘と聖女が語る恐怖の体験談。
本編ではあまり詳細な描写のなかった三人娘の過去や内面について深く掘り下げた内容となっている。

  • 外伝『殉教者ウィヌシュカ・バエル』
聖女に心酔した男とその狂気・破滅。




【あらすじ】

勇者ナッシュ・ロウとその仲間たちは些細なことから聖女サマラを惨殺し、さらにその死体をこれでもかと言わんばかりに損壊して井戸に捨てるという暴挙を行った。
それでも彼らは旅の目的であった魔王を討伐して英雄とたたえられ、ナッシュは3人の仲間を嫁にしたハーレムを作り、幸せに暮らすこととなった……




もちろん、そんなわけはなかった。
彼らが忘れていた悪行の復讐を果たすため、聖女は怨霊として目覚める……




【用語解説】

  • 聖女
本作に登場する、「癒し」において一般の治療術師よりも強力な力を発揮する女性。劇中の言葉を借りれば「清らかなる乙女=処女」のみに授けられた能力であり、サマラはその力を旅の間で思う存分発揮することになる。
  • 勇者
この世界に害を及ぼす「魔王」を倒すために、女神に選ばれた人物。
勇者となった人間に与えられる「女神の選定の力」は学習も鍛錬もなしに常人の域を超えた身体能力・戦闘技術・魔術の知識等を得られるという、文字通りのチートと呼ぶべき代物。
戦闘経験などない宿屋の息子だったナッシュが楽々と魔物を相手にできるほどの力を持っていたのも、ひとえにこの選定の力の恩恵によるものである。
  • エリクサー
最上級の回復薬。高額ではあるが勇者としての旅の中で多額の資金を稼いでいたナッシュ一行にとっては安い買い物で、ナッシュは仮にサマラが聖女の力を失ったとしてもこれを買いこめば代わりがきくと考えていた。*1
……というところまでは一般的なファンタジー作品に登場するものとあまり変わらないが、本作におけるエリクサーは高い依存性を持ち、飲み続けると重篤な中毒症状を引き起こすという非常にタチの悪い性質を持つ。
ぶっちゃけてしまえばほぼドラッグ同然の代物であり、劇中でも禁止薬物に指定する国があったほど。
人間の体に豚の頭をした亜人種
多くのオークは魔王のもとで人間たちに対する侵略活動を行っているが、中には争いごとを好まない平和主義者のオークもおり、人知れず村を作って生活する者もいた。
土砂崩れに遭って困窮していた村に旅の途中で立ち寄ったサマラが、怪我をしたオークを治療したこともある。

【主な地名】

  • アッシャー王国
本作の主な舞台で、ナッシュおよびサマラの母国。
ナッシュによる魔王討伐後、一時は平和を謳歌していたものの、サマラの怨念により様々な厄災が次々に降りかかる。
周辺諸国もその巻き添えを食うことを恐れて距離を置き、荒廃と滅亡の一途を辿ることになる。
名前はエドガー・アラン・ポーの小説からと思われる。
  • プルト
アッシャー王国の王都で、ナッシュの故郷。
都らしく国の中では開けており、実家の宿屋を潰した跡に建てられたナッシュの豪邸がある。
サマラによる厄災が続くうちに街自体が困窮を極めていき、世紀末的な惨状を呈するようになる。
  • マグダラ村
プルトの郊外にある、サマラの故郷。
よそ者であるエデルや要領が悪く行き遅れのソフィアを冷遇するなど、元々閉鎖的な環境だった。
二人の間に生まれたサマラが聖女として注目されて以降、治療を受けに来た人々が集まるようになり村も栄えるようになったが、やがて「よそ者のくせに調子に乗っている」などのやっかみが次第に醸成されるようになる。
このサマラ一家に対する妬みが後述の「サマラは魔王と肉体関係を持って勇者たちを裏切った」というデマによって火が付き、最悪の形で爆発することになる。
  • アンルーヘ
とある峠に位置する宿場町で、すべての始まりとなった村。
かつては栄えていたものの、ナッシュ達が訪れた後間もなく、街道が落石で塞がってしまい、町人は別の街に引っ越して廃墟になってしまった。
  • シャルフ
ベルフリンクルという国の片田舎の農村。
かつては近隣の宿場町との共存でそれなりに栄えていたが、宿場町が閉鎖されたことで寂れることとなった。
国を追われたナッシュとレモラが身を寄せることとなった場所。
住人は皆気のいい人物ばかりで村全体が穏やかな雰囲気を持っている。
アッシャー王国を襲った災厄も届いておらず、ナッシュとレモラも平和な時を過ごすことができていたが……


【登場人物】

聖女

  • サマラ
本作の主人公である聖女。名前の由来はハリウッド版『リング』の貞子ポジションのキャラから。
素朴な容貌をしており、三人娘からはやっかみも込めて「地味」「田舎娘」「垢ぬけない」「ブス」などと散々に呼ばれている。
ただバエル公からは「野原にひっそりと咲く純白の鈴蘭」と評されており、本当に容姿が悪いわけではない様子。コミカライズ版でもちゃんと可愛らしい顔立ちに描かれている。
本作の登場人物では珍しい、他人が困っているのを見ると救わずにいられなくなる、とことんまで優しくお人好しな性格。
5歳の頃から優れた回復能力に目覚め、10歳で法王庁から聖女認定を受けるなどの名誉を手にし、一躍有名な存在となる。
16歳の時、疫病に襲われた村を救うために護衛の戦士を雇おうとし、けんもほろろに断られて途方に暮れているところ、勇者としての旅を始めたばかりのナッシュに手を差し伸べられる。
彼の助力を受けて無事に村を救った後、「魔王を倒して大勢の人を幸せにしたい」という純粋な思いから彼の旅に同行することを決めた。
戦闘ではヒーラー役のみならず、人間にとって有害な邪気や瘴気を浄化する役割を受け持つ一方、その合間にも立ち寄った町や村で病人や怪我人の治療を無償で続けていた。

しかしある夜の宿屋で、セックスを迫ろうとしたナッシュを拒絶したことで逆上され、彼から顔の形が変わるほどの暴行を受けてしまう。
その時点では辛うじて瀕死で済んでいたものの、ナッシュはサマラが死んだと思い三人娘に処理を丸投げ。かねてからサマラを嫌っていた彼女たちは、「アンデッド化を防ぐ」という名目でまだ息のあるサマラの心臓に杭を突き立て、首を落とし、死体を燃やし、聖水をまいた後、とどめに井戸に捨てた。
さらに魔王討伐後、ティナが「サマラは魔王と肉体関係を持って自分たちを裏切った」という嘘を広めたことにより、「稀代の毒婦(淫婦)」という汚名を着せられてしまい、両親までも迫害され自殺に追い込まれてしまう。
ナッシュたちがハーレム生活を謳歌している中、サマラの怨念は激しく膨れ上がっていき、以前彼女に助けられたオークが自らの身を捧げたことにより、怨霊として復活
聖女としての力が裏返って負の方向へ進化し、ナッシュたちのみならず国を亡ぼすレベルの厄災をふりまいていく。


勇者パーティ

勇者ナッシュ・ロウを中心に、彼の性処理係仲間となる3人の美少女と、ヒーラー役の聖女サマラからなる一行。
その実態はナッシュが自分好みの女を節操なくかき集めて築いた都合のいいハーレムといったところ。
そもそもナッシュは勇者の名声を利用して女を食い散らかすことにしか興味がなく、三人娘も各々が生い立ちに問題を抱えていたこともあって彼に強く依存しており、内心では互いに蹴落とし合おうとしているなど、その人間関係は非常に歪
そんな中でただ1人純粋な善意から魔王討伐を目指していたのがサマラだったのだが、彼らはそんな彼女に暴行を加えて惨殺した上、遺体を井戸に投棄
さらに死後にまで毒婦の汚名を着せ、意図していなかったとはいえ両親まで自殺に追い込むという鬼畜の所業を働いた。

魔王討伐後は当初こそ幸せなハーレム生活を送っていたものの、ナッシュが次第に三人娘に飽き彼女達を顧みなくなっていったことで関係が悪化。
そこにサマラの怨念の影響も重なり、各々が破滅の一途を辿ることとなる。
大抵の「追放系」なろう小説に登場する「クズ勇者パーティ」ではあるが、劇中で行った所業はクズと呼ぶのも憚れる域に達している
そしてそれはサマラから受ける報復も同様で、自業自得とはいえ「ざまぁ」とは素直に言えなくなってしまうような、哀れで凄惨な末路を迎えていく。

  • ナッシュ・ロウ
本作における勇者にして全ての元凶
「絶世の美男子」とまで呼ばれるほど容姿に恵まれており、左目の下に縦に並んだ2つの黒子がトレードマーク。旅を始めた当時は『人間豚』『変態オーク』と馬鹿にされるほど太っていたが、勇者として旅をするうちに引き締まった体型になった。
元々はプルトの宿屋の一人息子だったが、16歳の誕生日に突然女神によって「魔王を倒す」勇者に選ばれ、魔王討伐の旅に出る。
だが、その実態は勇者としての力と肩書をかさに着て好き放題やってきた外道としか言いようのない人物。
救いようのない女狂いで、気に入った女には手を出さずにはいられない。生粋の女たらしでもあり、神竜のような人外の存在ですら甘言とセックステクニックで籠絡してしまうほど。
しかし内心では自分がセックスすることにしか興味がないため、一度飽きた相手や好みでない相手には徹底して冷淡かつ無責任な態度を取る。
女癖の悪さを抜きにしてもとことん無責任・無反省で、思い通りにならない相手には女性だろうが仲間だろうが構わず暴力を振るい、その結果相手を殺してしまっても罪の意識ひとつ抱かないという、クズの一言では片付けられないほどの極悪人
一方、女神の選定の力が失われてからは、国民からの謂れなき報復や選定の力なしで戦場に出ることを恐れ、三人娘を見捨ててレモラと王城に籠もりきりになるなど、根は小心者でもある。
その肩書きもあって本性に気付くものは少なく、気付いたものも暴力なりセックスなりで屈服させ黙らせてきたため、明るみに出ることはなかった。
サマラも「重病人が出た村への救援を報酬抜きで手伝ってくれた」と言う第一印象が強かったためか、後に自身が強引に迫られるまでは「女好きだが、性根は弱者に優しく善良な人物」と誤解しており、魔王を討伐した後なら関係を持ってもいいとまで思っていた。
アンリミテッド版ではそれも元々サマラの身体目当てで、聖女=処女でなければ癒しの力を使えないという事情を知って諦め、ポーション代を浮かせて娼婦を買う為にサマラの協力の申し出を受けただけだったことが明かされている。

前述の通りセックスを拒んだサマラを暴行し、三人娘に後始末をさせた後、魔王を無事討伐して故郷・アッシャー王国に凱旋。
爵位や財産の代わりに複数の女を妻に迎える権利を獲得し、早速三人娘と結婚。豪邸に移り住み、メイドも交えたハーレム生活を送っていた。
自分を巡る人間関係の破綻とサマラの怨念によってティナとガブリエラが廃人になっても一切顧みず、挙句は彼女達を煩わしく思って屋敷にも帰らなくなり、王女レモラと王宮に引きこもって暮らすようになる。
だがいつしか災厄は王国を滅ぼすほどのものとなり、その末にレモラ共々国を追われ隠遁生活を送る羽目になるが……
「なんで女神はこんな悪人を勇者に選定したんだ?」という当然な疑問が浮かび上がるが、その辺については第24話にて明かされる。



  • ティナ・オルステリア
魔法使い。二つ名は「全能の魔女」。黒のツインテールにつり目に巨乳という恵まれた容姿の持ち主。
幼少時から魔導士の才能があるともてはやされ、魔導師養成施設「賢者の塔」に入学したものの、そこでは結局落ちこぼれてしまい鬱屈した日々を送っていた。
そんな中、賢者の塔を訪れたナッシュに体目当てでスカウトされ、そのままナッシュ(とサマラ)との旅に同行、魔導師としての才能を開花させた。
元々嫉妬深く独占欲が強い性格で、サマラに対してはガブリエラが仲間入りをするきっかけになったこともあり特に強い敵意を抱いていた。サマラの死体処理に上述したような残虐な方法を提案し、死後に汚名を着せたのも彼女である。
コミカライズ版では生理中のサマラの下着を切り裂き、移動中に血を流しながら泣くサマラを見て笑うという陰湿ないじめも行っている。

三人娘の中でも特にサマラへの悪意が際立つ人物だが、外伝『勇者のいない夜に~ディオダディ砦の恐怖談義』ではかなり歪な家庭環境とコンプレックスの中で育ってきたことが描かれており、サマラとの相性の悪さについてはその生い立ちを前提に考えるとある程度致し方のないところがある。
加えて2人の関係の不和の決定打となったガブリエラの仲間入りの一件については、実際サマラがティナの恋愛感情に対して無神経すぎた*2と言わざるを得ない部分もあり、そこはサマラにも非がある。もちろん殺されるほどの謂れにはならない、というのは前提としてだが。
結局のところ、他の三人娘もそうだが、よりによってナッシュなどに惚れてしまったことが彼女にとって最大の不幸だったのだろう。



  • ガブリエラ・ナイツ
戦士。二つ名は傭兵団時代から「血被り姫」。女戦士らしい長身で引き締まったボディに赤のロングヘアの持ち主。
とある戦場で親の顔も知らない乳児の頃に傭兵団に拾われ、そこで武術の腕を開花、男勝りの活躍をしていた。そのため勇者パーティの中では随一の戦闘経験を持っている。
傭兵団とナッシュが一時的に共闘した際にナッシュに一目惚れしたものの、生まれた頃から女としての自分を殺してきた彼女は、どうすることもできずに悶々とした気持ちを抱えていた。
しかしその後祝勝会が開かれることになった際、サマラから数々の助力を受けて周囲からも驚かれるほど美しい晴れ姿を披露。ナッシュの心を射止め、その場で彼から口説かれたのち旅に同行することになった。
生まれたときから戦いの中で生きていたこともあり、良くも悪くも純粋で世間知らず、そして何よりも「勝つ」ことにこだわる性格。
ナッシュには「他の2人より頑丈だから」という理由でほぼ虐待同然の暴力的なプレイを強いられていたが、そのことについて「自分は特別なんだ」と思いむしろ優越感を得ていたほど。
当初は自分とナッシュを引き合わせてくれたサマラに対して好意的だったようだが、周囲に感化されてか*4、あるいは独占欲によるものか、次第に彼女を見下すようになっていったらしい。
ナッシュによる暴行の後にはティナ・ミルフィナ共々ボロボロの彼女を嘲笑い、かつて彼女がオークを助けた際には後から引き返してその家族を惨殺したことを口にしている。
また、後始末の際にサマラがまだ生きていることに気が付き、他2人に蘇生・回復ではなく即座に殺害を指示し、首を落としたのもガブリエラであった。



  • ミルフィナ・ホークウインド
弓使い及び斥候。二つ名は「星落としの射手」。金髪ボブカットの間からエルフ耳を見せている。
エルフとして故郷の森で生活していたものの、日も差さないほど深く生い茂った暗く陰湿な森の生活を嫌っていた。そんな中ナッシュたちと出会い、故郷から飛び出す口実として自分からナッシュを口説いて同行を申し出る。
ガブリエラの出産にも立ち会わず、彼女を放置してレモラに会いに行こうとするナッシュに苦言を呈するなど、三人娘の中では仲間意識が強く、幾分か良識的な感性の持ち主。
サマラにも生前は仲間として素直な感謝の気持ちを示すことがあったり、死後もとことん彼女を貶し続けるティナに対して引いてしまったりと、他2人ほど強烈な悪意や敵意は持っていなかった節がある。
しかしそれは「ナッシュは最後には早く老けるティナやガブリエラより若い自分を選ぶ」という長命種としての余裕と優越感から来るものであり、内心彼女達を見下していた。
暴行されたサマラの後始末にも特にためらいなく加わり、他2人に同調して死んだ彼女を嘲笑っており、結局のところ多少ましとはいえど五十歩百歩、というところではある。
むしろ、さほど極端に嫌っていたわけでもなく、明確に恨む理由もないサマラをナッシュの指示一つで平然と惨殺できてしまうというのは逆にタチが悪いとも言える。
また、廃人になってしまったティナを(一種の優しさともとれるが)見ていられないからいっそ介錯しようと提案する場面もあった。

コミカライズ版ではティナによるサマラへのいじめに嬉々として加担していたり、ナッシュの子を身ごもって浮かれるガブリエラに内心「幸せ自慢ってワケ?」と毒づいたりと、原作よりもやや性格の悪さが強調して描かれている。


アッシャー王国

  • 国王/オットー・ウェストリアス・アッシャー七世*5
文字通りアッシャー王国の国王。
元々勇者や呪いなどの迷信に近いものを信じない性格で、ナッシュのことも大して期待していなかったが、魔王討伐後は手のひらを反すように厚遇しレモラとの関係も黙認するに至っていた。
  • ナッシュ達の本性を見抜けず、ティナに対するサマラの両親の抗議を耳に入れようともせず2人を追い払う
  • 自国に降りかかった厄災のことも楽観視して場当たり的かつ見当違いの対応をとり、結局国を致命的に荒廃させてしまう
など、危機管理能力と人を見る目に関してはかなり問題のある人物。
それでも国を治める者としての責任感は強く、王城に攻め込んできたバエル軍からナッシュとレモラを身を挺して逃し、せめて一矢報いようと単身立ち向かったが……

  • レモラ
アッシャー王国の王女。
押しに弱い性格で、ナッシュと出会った時からすぐに篭絡され、三人娘との結婚式当日にもかかわらずナッシュに無理やりセックスを迫られるほどだった。その後もナッシュと王宮で逢瀬を重ねるようになり、父王黙認の事実上の4人目の妻となっていた。
三人娘のように悪意をもって人を傷つけるような真似は一切しておらず、ナッシュとの浮気関係や、国が困窮していく中で自分たちだけが豊かな生活を送っていることにも罪悪感を覚えるなど、相対的にはかなり良識的な人物。
しかし押しに弱い点と男を見る目のなさに関しては致命的で、ナッシュの放蕩ぶりや小心ぶりに対しては何も言えず、甘やかし続けたことで王国崩壊の遠因を作ってしまってもいた。
災厄が続き、国を追われる中でもナッシュに寄り添い続け、一時期はナッシュを真人間に更生させかかるなど、強い女性として成長していったが……

コミカライズ版ではナッシュに対する認識がやや異なり、彼の好色ぶりと責任感のなさには明確な嫌悪感を示している
内心では彼を「サイテーな男」となじりながらも、そんな彼を女として受け入れてしまったことを「彼以上に最低な女」と自己嫌悪している。

  • エデル
サマラの父。
親の代からプルトで営んでいた花屋を廃業後、農業を営もうとマグダラ村へやってきたが、よそ者であることから村人には疎まれていた。
そんな中、同じく疎まれていたソフィアと結婚し、一人娘のサマラを設けることとなった。
元々信心深くて善良な性格であり、サマラによる治療を無償で引き受け、それでもお金や食料を払う人がいても、(やっかみを買いたくないという理由で)村人におすそ分けするほどだった。
こうした無欲で他人に喜ばれるようにする姿勢が、サマラに影響を与えたことは想像に難くない。


  • ソフィア
サマラの母。
マグダラ村の出身であるが、器量も要領も悪いということで他の村人から疎まれ、27歳になっても夫のいない行き遅れとなっていた。そんな中、よそ者だったエデルと結婚し、夫と一人娘に囲まれた、貧しいながらも幸せな日々を送っていた。


  • ウィヌシュカ・バエル
通称バエル公。
アッシャー王国の東方に領地を持っていた公爵の1人であり、末期に陥っていた王国に反旗を翻し、国を滅ぼした張本人。
王都を攻め落とした後は、支配するでもなくただひたすら虐殺を繰り広げるという凶行に及んだ。
本編中では本人にまともな出番はなく、モノローグにて僅かに語られるだけの人物なのだがその存在感は絶大。外伝では主役を務める。



  • プレラッティ
外伝に登場するバエル公の側近。
元の身分は高く無いが、人柄の良さと秀才振りをバエル公に認められて養子候補にまで取り立てられた。
サマラの裏切りと死について、生前の彼女の人柄をよく知っていたうえ、その経緯や時期があまりにも不明瞭だったことからナッシュ達の証言に疑念を抱き、主君にも秘密で調査を進めていた。

  • ヒュドラ
外伝に登場する魔物。
バエル公爵領で暴れ出し、公爵の兵士20人が犠牲になる程の被害を出していた。
ナッシュとサマラに倒される。



その他

前述の平和主義のオークの村に人知れず住んでいた善良なオークの一人。村が土砂崩れに遭い壊滅的な状態になっていたところをサマラに治療されるが、「ナッシュへのご機嫌取り」と腹を立てたガブリエラの手で家族を惨殺されてしまう。
本人は何とか生き延びたものの、その後の魔王討伐によりオークという種族が存亡の危機に立たされてしまい、迫害を受けながら人目を避けて逃げるようになる。コミカライズ版では両手の指を切られて川に捨てられる描写まである。
助けを求める謎の声に導かれるまま、既に廃村となっていたアンルーヘの井戸までたどり着く。そして古の霊術師の血を引く自らを生贄にする形で、既に怨念に満ち溢れていたサマラを復活させた。

  • 神竜
アッシャー王国の東の果てにある『聖竜の神殿』に住む強大な力を持った竜。性別はメスで人間の美少女に変身することができるが、それが災いしてナッシュの毒牙にかかってしまう。
それでもパーティ全員に強大な力を与え、魔王の居城である空中庭園に連れていくなど、彼らに大きな力添えをした。
コミカライズ版ではナッシュの性戯に溺れ、本来するべきであった勇者としての試練を免除してしまったことが描かれている。
ナッシュのことは「不埒でふしだらな男」と言いながらも「魔王を倒すにはこういう神をも恐れぬ尊大さが必要やも知れぬ」と強引に納得しており、レモラ同様押しに弱く男を見る目が無いところを露呈してしまった。

  • フォックス・マーダー
  • ダナ・スケアリー
両名とも、法王庁第十三課に所属する祓魔官。名前の由来は『Xファイル』の主人公二人組。
アッシャー王国の厄災について調べるうちに、呪いの正体が魔王ではなく聖女であるサマラだと推測し、関係者であるナッシュ達の足取りを追う。
厄災の真相を探ろうとした無数の調査団や祓魔官が呪いにより命を落とす中、真実にたどり着けた貴重な人物。

  • ナギサ・オルステリア
ティナの母。外伝『勇者のいない夜に~ディオダディ砦の恐怖談義』のティナパートの登場人物。
村の呪い師だが、「自分は元宮廷魔術師でティナの実父は貴族だが、父の正妻に浮気がバレて失脚した」と自称している。
ティナに猛勉強を強制する一方、自身は大酒を飲み愛人を家に連れ込むなど荒んだ暮らしをしており、彼女からは恐れられていた。


  • ホメロ
ミルフィナの元恋人。
ミルフィナと出会う暫く前まで森の外で働いていたが、魔王の影響が強くなってきたので帰郷した。
女性慣れしておらず口数も少ないが、誠実な性格の持ち主。ミルフィナからは「ナッシュとは何もかも正反対」と言われている。
猪に襲われていたところを助けて以来仲良くなったミルフィナに外の世界の事を教えたが、「森の外に連れて行ってくれ」と言うミルフィナの頼みを拒絶したために振られてしまう。



  • 魔王クシャナガン
本作における魔王。
物語序盤でナッシュ達にあっさり倒されるなど、扱いは完全に空気。
しかしサマラの引き起こした厄災は民衆から「魔王の怨念が引き起こしたもの」と誤認され、そのことがなおさらナッシュ達とアッシャー王国を追い詰めることとなる。


  • 女神
世界の管理者、ナッシュを勇者に選び力を与えた存在。
確かに存在するはずなのだが、ナッシュにしても直接顔を合わせたわけではない。
サマラの災厄により、人々が滅びに向かう中でもなんの行動も起こさないが……?





追記・修正は、聖女に嫉妬することなく、敬意をもってまともに接することができる人がお願いします。

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最終更新:2025年04月15日 22:35

*1 他にも「敵からの攻撃を受けずにうまく立ち回る」「新しくヒーラーを雇う」という案も考えていた。

*2 悪気はなかったとはいえ、ティナからすれば浮気相手に手助けしたと思って怒るのは当然である。ガブリエラはサマラに協力を願い出る際にナッシュへの恋愛感情について伏せてはいたが、ナッシュの性格上彼がガブリエラに手を出さずにいるとは考え辛くもある

*3 コミカライズ版では明確な暴行にまで及んでおり、彼女たちからも煙たがられていたことが描写されている

*4 コミカライズ版ではこのあたりの心理描写が掘り下げて描かれており、当初はティナとミルフィナのサマラへの悪意や平然と複数の女に手を出すナッシュを異常だと感じていたものの、再び孤独に追いやられることを恐れて波長を合わせるようになってしまったとされている

*5 フルネームは外伝で判明。

*6 そもそもサマラからすれば、彼は自分の無実を信じるどころか着せられた汚名を鵜呑みにして凶行に走ったわけで、むしろ怨念を向ける対象の一人でしかなかった

*7 調査を進めるなかでサマラの怨霊が立てる風切り音を聞いているが、前述のとおりバエル公の狂気はサマラの意志とは無関係のものであるため、彼の死がサマラの怨念によるものであるかは不明

*8 実際、廃棄物を捨てに来たバエル公の部下達も攻撃どころか威嚇すらされなかった