哭倉村

登録日:2024/05/05 Sun 08:25:00
更新日:2025/03/30 Sun 22:45:37
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哭倉村(なぐらむら)とは、『鬼太郎誕生 ゲゲゲの謎』 の舞台となる架空の村である。

【概要】

とある県の山奥にある、哭倉トンネルという名のトンネルを抜けた先に存在しており、自然豊かな集落だがまるで外界から断絶されたような印象を持つ。
集落の中央部にある大きな湖に浮かぶ島を「禁域」と伝えるなど、村の人達は土着の崇拝や因習を忠実に守る。
村の外から来る人達を余所者呼ばわりしたりと排他的な所もあり、富豪向けの外商等わずかな人間を除けば、麓に住む人間すら近づこうとしない。
また湖からは時折「龍哭」と呼ばれる、遠吠えにも似た不気味な音が聞こえてくるので土着の崇拝や因習も「単なる迷信の類」と一蹴出来ない。

一方で日本の政財界を裏で牛耳る龍賀一族の本家があるためか、意外とインフラが整備されている。
市街地から離れれば一本たりとも存在しなくとも珍しくない街灯付きの電柱が無数に立ち並んでいたり、1950年台においては最新鋭設備と言えるアイスキャンデーを売っている駄菓子屋があったり、旅館や青果店などのお店があったり。
作品の舞台となった昭和31年(1956年)当時の、人が立ち入ることすら困難な山奥の辺鄙なド田舎町であることを考慮すると、その充実ぶりは異常ですらある。

龍賀一族は製薬業、特に特別な客だけに卸している「M」と呼ばれる血液製剤で成功した一族で、この秘薬を摂取した人は、物凄い力を発揮しながら疲れもせず、何日でも飲まず食わずで昼夜働く事ができるので作業効率が高まる。
日清・日露戦争時にはこの「M」が日本の勝利に大きく貢献したともいわれ、また戦後復興にも貢献したとされているため、朝鮮戦争にも出荷されたようである。
その時に得た巨万の富を哭倉村に還元しているため、上記のようにインフラが整備されているのであろう。

ちなみに龍賀一族はこの村の長として、また崇拝の神主として聖俗双方に君臨しており、村の中に一際大きな屋敷を構えている。
つまり良くも悪くも龍賀一族さまさまな村であるといえる。


しかし70年後の2026年*1には廃村となっており、かつての長閑な街並みは跡形もなく消え去っている。
廃村する理由のよくある理由としては若者達が仕事や遊びなどのために都市部に移住していくため、徐々に人が減り最終的に誰もいなくなるというものだが、この村に関してはまた別の理由があるそうで……?






ここからはネタバレです。
まだ知りたくない人は引き返して下さい。
……警告はしましたよ?
















「この村は人も妖怪も何か秘密を隠している」




















【実態】




「村人を生贄にしたのか……」



「村の者達は屍人にする人間を攫ってきて世話をするのが役目」





物語終盤になって明らかになる真実。
それは多数の幽霊族と村の外の人間達の犠牲によって成り上がった村である。
巨万の富を得るきっかけとなったMであるが、これの製造方法は村の地下にある施設にて
血を吸う桜を使って幽霊族から死ぬまで血液を永遠に搾り取る
→その血液を村の外の人間に接種し生ける屍にする
→生ける屍となった人間から更に血を採取し精製する
という全くといっていいほど倫理観のない極悪非道なものである。
人手不足な今と違ってむしろ人口過剰なご時世とはいえさすがにその製造方法を世間に知られると大バッシングでは収まらないことは確実なので、哭倉村で生まれ育ったごく一部の人にしか知られないようになっている。
故に龍賀一族の一員且つ龍賀製薬社長の龍賀克典ですら、元々村の外からやってきた余所者の人間だったために(東京で行われる精製工程以前の)製造方法を全く知らなかった。

そしてさらに恐ろしいのが屍人となった村の外の人間達はこの村の住民である裏鬼道の人達が拉致してきたという事実である。
実際に上記のやり取りの直後に咳をする一際小さな屍人とその隣で心配そうに見つめる屍人のシーンが入るが、この2人は序盤の列車内で日本人形を持ちながら咳をしている少女とその母親の成れの果てではないかと視聴者から指摘されている。
  • 施設に捨てられていた日本人形が少女の持っていた日本人形と顔形が一致している
  • そもそも親子の座っている席の隣にカッパ頭が特徴的な裏鬼道の男が怪しい目付きで2人を見つめていた
上記2点が説の根拠として挙げられている。

強引に拉致したのか、或いは何らかの方法でこの村に来させるよう上手く誘導したのかは定かではないが、どちらであっても村の外の人達の尊厳を踏み躙った行為であることは間違いない。
この所業を知ったゲゲ郎(鬼太郎の父)は「重い因果を背負わせたものじゃ…」と呟いた。
また水木の上司の口から以前この村に派遣された血液銀行の行員が突如消息を絶ったことが示唆されているが、これもまた村の人達の手で無理やり屍人となってしまったからではないかと考察されている。
ちなみに本編ではカットされてしまったが、水木が村に行くまでに立ち寄った温泉街でたくさんの訪ね人の張り紙が貼られてあるシーンも予定されていたそうな。もしかしたらこの訪ね人達もまた裏鬼道の人達に拉致され屍人となった可能性を示唆しているだろう。

そして「村人は屍人の世話をするのが役目」という言葉の通り、地下施設で作業をするモブの村人の中には村で見かける老女の姿もあり、哭倉村の人間達もこの事実を知っても尚Mの製造業に従事していたということになる。
ただしそれはどの範囲までなのか、幼子達もその事実を把握してるのかどうかは不明だが、今の生活を保つために幽霊族と屍人達の甘い汁を吸い続けてきた村民がかなりの数いたというのは紛れもない事実だ。

視聴者達からは「史上最悪の因習村」との声が挙がっている。


【末路】



「時貞翁……アンタつまんねぇな!!」



ゲゲ郎やゲゲ郎の妻を助けるため、そして龍賀時貞の野望を終わらせるために、彼が狂骨を御すために使う髑髏を水木が壊したことで、幽霊族の怨念を糧に生まれ続けた狂骨の支配が解かれ暴走。
時貞はもちろんの事、今まで自分達を犠牲にしてのうのうと暮らしてきた村の人間達の復讐のために男女年齢関係なく虐殺、そして村を完膚なきまでに破壊していった。
こうして哭倉村は一夜にして崩壊、廃村となったのであった。





「ツケは払わなきゃな」





そして70年の時が経った現代、村に繋がるトンネルは立ち入り禁止の看板やフェンスが置かれておらず、規制線も張られていないため誰でも立ち入ることができる状態となっている。
上述したように村は再建されることなく荒れ放題で、雑誌記者の山田は偶然にも屋敷の地下施設の跡にも踏み入れている。
もしかしたら村民は皆殺しにされたor幸運にも生き残った村民もいたが、惨劇のトラウマから二度と村に戻ろうとしなかったために荒れ果てたままだったのかもしれない。
立ち入り禁止の案内など1つもなく誰でも村に入れる状態になっていたということと、山田がこの山奥に廃村があったということに驚く様子を見せたため、あの惨劇や哭倉村が廃村になったことが世間に一切知られることなく年月が経っていった可能性がある。
また、村には成仏できなかった村人の霊がいるのか、山田が村に入って懐中電灯を照らした際に、幽霊らしき姿が一瞬だけ確認されている。


終盤では鬼太郎が村を彷徨う狂骨を全て成仏させ、最後の1体と対峙する。
だが、そこで目玉おやじはその狂骨がかつての姿だった頃に出会った時弥であると気づく。
70年の時を越えて再び出会い、目玉おやじに諭された時弥は涙を流しながら鬼太郎に遺言を残す。

「忘れないで…僕ここにいたよ!」

「忘れない 君の想いは僕が受け継いでいくよ」

鬼太郎がそう聞き入れたことで「アリ…ガトウ…」と呟いた彼の魂は成仏し、その際に少女の姿をした霊が彼の魂を迎えに来た。

一部始終を見た山田は、この村で何が起こったのか、何故鬼太郎は人間を助けてくれるのか、と改めて鬼太郎達に話を聞かせて欲しいと頼み込み、「僕が書き残し必ず語り伝えます!」と真摯な思いを伝える。
この熱意を受け取った目玉おやじは、70年前に哭倉村で起こった全ての出来事である長い物語を話すのであった…。



【余談】

この作品を手がけた古賀監督によると「哭倉村は実在しない架空の村だが制作するうえでなんとなくのモデルがある」と語っている。
また、キャラクターデザイナーの谷田部は以前東京から鳥取旅行に行った時に立ち寄ったとある自然豊かな地域をイメージしているそうだ。
考察班からは夜行列車に乗った水木が着いた時には翌日の昼だったからその距離的な意味で岡山県、あるいは鳥取県説、神社に串刺しになったウサギがあるから長野県説が挙げられているが、それらの要素をミックスした全く架空の場所で、岡山、鳥取、長野いずれかを完全に舞台にしているというわけではないかもしれない。

かつては幽霊族達がそこでひっそりと暮らしていたが龍賀時貞達に乗っ取られたうえに、私欲のために犠牲となってしまったという胸糞な考察もある。





「では語ろうかのぉ…わしとあの男がいかに出会い、そしてこの村で起こった全ての追記・修正を」

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最終更新:2025年03月30日 22:45

*1 ゆえに本作の現代パートは、第6シリーズ最終話で犬山まなが鬼太郎を含む妖怪の記憶を失っていた「空白の10年間」のうちに起きた出来事であると思われる。