SCP-2478

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SCP-2478 - (2017/10/05 (木) 23:14:52) のソース

&font(#6495ED){登録日}: 2017/02/05 Sun 15:58:16 
&font(#6495ED){更新日}:&update(format=Y/m/d D H:i:s) &new3(time=24,show=NEW!,color=red)
&font(#6495ED){所要時間}:約 10 分で読めます

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#center(){&font(b,i,red){ゐおん様は彼の蓮華座、死せる神の胎へ帰られた。ゐおん様は我らの7重の生が終わるまでにお戻りになり、その尋常ならざる力を全てに向けられる。}}



SCP-2478はシェアード・ワールド[[The SCP Foundation]]に登場する[[オブジェクト>オブジェクト(The SCP Foundation)]] (SCiP) 。
[[オブジェクトクラス>オブジェクトクラス(The SCP Foundation)]]はEuclid。
項目名は『Ordinary Japanese People (一般的[[日本>日本国]]人)』。


#contents()

*概要の前に
このオブジェクトは項目名からもわかる通り日本のオブジェクトなのだが、
番号からわかる通り本部のオブジェクトである。

著者のMrWrong氏は日本のことについてすごく詳しい方であり(あとデレマスとラブライブサンシャインが好きみたいで)、
このオブジェクトの舞台設定も日本である(発見場所は後述の理由で中国だが)。
というか氏の多くのオブジェクトが日本に因むものである。
&font(l){一方で本部のヘッドカノンでは「負号部隊」も「蒐集院」も「財団日本支部」も存在していない。}
後にMrWrong氏が「負号部隊」と「蒐集院」を本家に逆輸入した。日本支部はないが蒐集院の設定に矛盾は出にくいので問題はないだろう。

また時代背景が時代背景なのでかなりセンシティブな要素を多分に含む。
アニヲタwikiでは基本的に禁止されているとは言え、改めて&font(b){政治的な議論はコメント欄では控えていただくようお願いしたい。}

以下「IJA」は「大日本帝国陸軍」、「IJAMEA」は準[[要注意団体>要注意団体(The SCP Foundation)]]「[[大日本帝国異常事例調査局>大日本帝国異常事例調査局(The SCP Foundation)]]」のことを指す。
陸軍でいいだろと思うかもしれないがあくまで本家記事の記述に則る。

*概要
このオブジェクトは項目名からもわかる通り人型実体なのだが、「Homo sapiens sapiens(ヒト)の異なる表現型」とされている。
どういうことなのかというと、DNA的には紛れもなく「ヒト」なのだが、見た目はヒトとはかけ離れているからである。

SCP-2478は「14の足」と「14の腕」、「7組の内蔵セット」、「7つの頭」そして「7つの生殖器」を持つ意志を持つ実体群である。
唯一脳味噌だけがひとつで胴体の位置にあり、故に7つの口は同時に同内容を話す。
日本に生きているだけあって、飛騨方言に堪能であり、標準的な日本語を解することができる。

…という見た目をしているのだが、そういう見た目をしていると正しく「認識」できるのは、
「自分が日本人の血統を引いているという自覚がない人」、つまり日本人の血が流れていないか、
流れていてもそのルーツを認知していない人でなくてはならず、ハーフであると「違和感」を覚えるにとどまる。
そして一般的な日本人からは、SCP-2478実体群は「巨人症であること以外は普通の人間」にしか見えない。
所謂認識災害を「対日本人限定」で有するのである。

はじめてSCP-2478が財団に観測されたのは1926年、大連でのことである。
SCP-2478実体群は大日本帝国関東軍の兵士として徴兵に志願し、中国-ビルマ-インド戦線において軍事行動に従事した。
関東軍の兵士たちからは普通の帝国臣民として扱われており、あるSCP-2478実例に対してIJAMEAはこのような記録を残している。

>中国で戦闘中のいくつかの小隊において、飛騨山脈の████出身の兵士たちは彼らの意思で浮遊させた銃剣と刀に取り巻かれている。彼らは我々の側に立ち、多くの中国人を殺した。彼らの先祖は、推測するに、我々の一員であったに違いない。████出身者はやはり、戦国の世の混乱に端を発する一族であると述べた。

浮遊している、とあるが何のことはない、SCP-2478自身は14の手のそれぞれに銃剣や刀を握っていただけである。
日本人からは「2本の腕」以外は認知できないので、浮いているように見えるのである。
IJAMEAはあくまで、彼らが「浮遊させる能力」を有することだけを異常と見なしていたようであり、
彼らの外見については「巨人症」としか認識していない。

SCP-2478たちが住んでいた村は飛騨地方にあり、記録ではどうやら穢多の人がたくさん住んでいた「穢多村」であったようだ。
だがその穢多たちはある外国人宣教師が村を訪れた後、忽然と姿を消しており、
穢多がいない以上はその村はもはや「穢多村」ではなかった。

変わってアメリカ人を超えるであろう巨躯を誇る住民たちが農業や畜産業に従事しており、素晴らしい能率を見せ、
大和魂溢れるその姿を「模範的な臣民である」と記録されている。

IJAがSCP-2478は決して異常だと捉えていなかったことの一例として、
第二次日中戦争時SCP-2478全実体群は自ら志願し従軍していたが、
IJAには『妖怪大隊』と呼ばれる異常存在だけで構成された大隊が存在していたにもかかわらず、
異常存在であるSCP-2478各実例はいずれも配置されていなかった。
…まず妖怪大隊ってなんだよ。財団世界の枢軸国はドイツといい日本といいファンタジー過ぎない?

彼らの実例のうちのひとつ、「ばかたち・ゐおん」に対するインタビューがある。
#openclose(show=▷ インタビューログ){
>質問者: ジェームズ・チャン研究員
>
>回答者: SCP-2478-01(ばかたち・ゐおん)
>
>はしがき: 以下のインタビューは日本語で行われました。
>
><記録開始>
>
>チャン研究員: あなたを何と呼べばいいですか?
>
>SCP-2478-01: ████のばかたち・ゐおんだ。どうして俺たちをここに留めているんだ、中国人?
>
>チャン研究員: ばかたち、我々はあなたたちが何であるか知っています。7つの頭、14本の腕と脚... どう見ても普通の人間ではありません。日本人はあなたたちがそうであると考えていますが-
>
>SCP-2478-01: 俺たちは普通の人間だ!同胞として受け入れられることを望んでいるだけなのに、俺たちは穢れていて、人間ではなかった。お上を尊ぶ連中は俺たちを否定する、かつて将軍がそうしたように。俺たちは1人で普通の人間の7分の1の価値しかないのだ。俺たちは呪われていた。
>
>チャン研究員: あなたたちはどうやって今のようになったのですか?
>
>SCP-2478-01: 我らの菩薩、ゐおん様から霊験を授かったのだ。彼のお方は我々の村に来訪し、我々の苦境に慈悲をもたれた。肉と皮を分かち、死体を地へと還す、我々の同胞が嘲るその生業を誉めてくださった。ゐおん様は我らの肉を7つに裂き、我らを受け入れられる日本人へと作り直してくださった。
>
>チャン研究員: それについてどう感じています?
>
>SCP-2478-01: 社会の一員になれるなら、何も問題ではない。俺たちは今世でも来世でも受け入れられると、ゐおん様は仰った。
>
>チャン研究員: すみません。今世、来世とはどういう意味ですか?
>
>SCP-2478-01: ゐおん様は来るべき真の浄土のこと、そして俺たちが共に努めることでそこに居場所を持てると仰った。浄土が降りてくるまで、俺たちは今世での苦業に耐えねばならない。きっと彼のお方は我らの地に現れた弥勒様なのだ。
>
>チャン研究員: ゐおんが今どこにいるか知っていますか?
>
>SCP-2478-01: ゐおん様は彼の蓮華座、死せる神の胎へ帰られた。ゐおん様は我らの7重の生が終わるまでにお戻りになり、その尋常ならざる力を全てに向けられる。
>
><記録終了>
}
インタビューによれば、「ゐおん様(先程記録で言及された外国人宣教師と思われる)」は、
村の穢多たちを他の日本人に同胞として扱ってもらえるように作り変えた、
そしてゐおん様は浄土においてもこの姿で受け入れられるようになると言ったという。

彼らはゐおん様に恩義を感じており、ゐおん様を祀る「ゐおん祭り」なる儀式を執り行う。
彼らの収容への協力を取り付けるために財団もゐおん祭りには協力的であり、
実際その儀式は異常性を有さない形式的なものに過ぎないが、
どうやら[[サーキック・カルト>サーキック・カルト(The SCP Foundation)]]の儀式に非常に似ているようだ。
…ん? サーキック? ゐおん?


*考察
ここからはすこしSCP-2478について考察しよう。

多分多くの人はわかったと思うが、SCP-2478の正体は、飛騨地方の穢多村に住んでいた住民たちである。
彼らは7人でようやく一人前と見なされるほど当時差別されていたと考えられる。
そんな彼らの前に、突如宣教師が現れる。…といってもそれはキリスト教の宣教師ではなく、
サーキック・カルトのオジルモーク(最高位にして崇拝対象、アディトゥムの魔術師王)、崇高なるカルキスト・イオンその人だったのだろう。

彼が恐らく肉体を繋ぎ合わせる何らかの術式を執り行い、結果住民は「7人で一人前」の通り、
「7人ずつでひとつの新たな実体」に置き換わったのだろう。

ただしSCP-2478自体にサーキック・カルトという宗教そのものは理解できず、
故にあくまでオジルモークたるカルキスト・イオンを「弥勒様」と仏教の枠組みで理解してしまった。
そのため、儀式自体に危険性がなくなったのだろうと思われる。

そして彼らは常に日本人限定の認識災害を齎すため日本人からは同胞たる一般の臣民として扱われ、
SCP-2478もそう受け入れてもらえることを喜んでいた、というのがことの全容である。

これが項目名の『一般的日本人』の意味するところである。
結構皮肉の聞いた項目名だが、SCP-2478は「俺達は普通だ」と願い、
日本の中で普通と扱ってもらえたのは幸せだったようだ。




…ちなみにサーキック・カルトと対立していた[[ダエーバイト>ダエーバイト文明(The SCP Foundation)]]は中国にまで影響を及ぼしていたことが
『[[SCP-392]] - A Plant Now Found in Site-103, and Formerly Found in the Households of Nobility (昔は貴族の館で、今はサイト-103で見られる植物)』
から判明しているが、こちらが発見されたのも桂離宮であった。
どうやら中国はダエーバイトからSCP-392の種子を奪取して歴代皇帝が繁栄の象徴として育てており、
その種子のひとつを隋王朝の煬帝が遣隋使・小野妹子に下賜したというのが歴史のようだ。
こちらの作者もMrWrong氏。

ダエーバイトとサーキック・カルトの戦争は案外我々にとって近いところではじまるのかもしれない…。

*余談
SCP-2478-01の名前『ばかたち・ゐおん』の「ばかたち」は恐らく「かたちんぼ」
(本来2つあるべき部位の片方を欠損した者。)から来ていると思われる。
実際に障害者だったわけではないだろうが、7つで一人前なんていう扱いを受けていたことを考えると
そういう扱いであってもおかしくないかもしれない。

…なおかたちんぼということばは現代では差別用語なので使用しないように。

また穢多が「7人で一人の扱い」なのは『七分の一の命事件』を元にしていると思われる。
こちらは江戸山谷の若者と穢多の若者が衝突し、穢多が一人死んだ際に、訴えを聞いた北町奉行が
『およそ穢多の身分は平民に比して七分の一に相当するから、今六人の穢多を殺して後、相当の処刑をなすべし』と言ったとされる伝説である。
ただしこちらは史料がないにもかかわらず喧伝によって広まったという部分があり、不正確な歴史として扱われる。


追記・修正をお願いします。

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#right(){SCP-2478 - Ordinary Japanese People
by  MrWrong
www.scp-wiki.net/scp-2478
scpjapan.wiki.fc2.com/wiki/SCP-2478
この項目の内容は『[[クリエイティブ・コモンズ 表示 - 継承3.0ライセンス>https://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0/deed.ja]]』に従います。
}
#include(テンプレ2)
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#vote3(time=600,6)
}
#include(テンプレ3)

#center(){&sizex(5){&font(b,red){政治的な議論はアニヲタwikiにおいて禁止されています。&br()また、日本支部を含めた特定の支部・コミュニティに対する誹謗中傷も禁止されています。}}}

#openclose(show=▷ コメント欄){
#areaedit()
- 日本の土着する宗教観に、外来の観念が統合されていったのは当時では普通だったしな。 外界から隔絶された環境はサーキックにとって好都合だったんだろうが、宗教観からの歪みも無く、結果的に地元民を助けただけってのが救いだ  -- 名無しさん  (2017-02-08 09:52:07)
- リセットしました。  -- 名無しさん  (2017-02-08 10:27:19)
- このゐおん様はあのイオンと同一人物なんだろうか・・・  -- 名無しさん  (2017-02-09 01:18:20)
- 日本に来た時点で八百万の神か仏になってしまいます  -- 名無しさん  (2017-02-10 20:57:16)
- あのサーキックカルトでさえ日本の宗教観の魔の手から逃れられないという。 これとは別に善良な可能性のあるサーキックカルト集団のSCPが最近翻訳されたっけ  -- 名無しさん  (2017-02-24 15:08:15)
- ディスカッションで宣教師の正体は色んな見方ができるようにボカしてるって書かれてるんだけどなー、イオン本人って断言しちゃうのは解説としてよろしくない  -- 名無しさん  (2017-03-13 01:25:05)
- まさかの蒐集院・負号部隊がIJAMEAと本部で関連付けられたので少々修正が必須かもしれない  -- 名無しさん  (2017-05-06 19:52:43)
- http://www.scp-wiki.net/ijamea-hubだっせえロゴだな!  -- 名無しさん  (2017-05-07 01:16:22)
- ↑暗黒メガコーポの社章かなにか?(ヘッズ並感)  -- 名無しさん  (2017-05-07 20:32:09)
- 肉や病に親しむサーキックの目には、死骸を解体・加工する生業が「好ましいもの」として映ったとしても何らおかしくはないから、もしかしたらこのオブジェクトは何かのじゃあくな企みの一環とかではなく、単なる善意や憐み(但しサーキック基準)から出たものかも知れないな。  -- 名無しさん  (2017-05-20 11:16:59)
- 多分にセンシティブな内容ではあるけど、こういうモノを取り上げて不謹慎にならない程度にアレンジして自分の創作に加える外人の作者さんすげぇ  -- 名無しさん  (2017-05-20 11:52:58)
- センスが違いすぎてある意味布教失敗してるってオチはちょっと微笑ましいかも知れない  -- 名無しさん  (2017-05-21 01:16:31)
- ↑2まあこの話は海外の言ってみれば関係のない人たちだから書けた記事だと思う。それで言ったら自国の問題だった出来事を題材にしたSCP-1851-EXの方が凄いと思う  -- 名無しさん  (2017-05-21 15:36:18)
- 「ばかたち」は普通に「馬鹿たち」なんじゃないのか。蔑まれてきた者たちの集合体の名前としてはそうおかしなものではない。自称するのはどうかと思うけどw  -- 名無しさん  (2017-05-30 14:29:23)
- ↑3日本人その辺手ごわいよな。どんな布教されても自分たちの宗教を完全には棄てやがらねえ  -- 名無しさん  (2017-07-05 21:26:23)
- 6つの脳みそはどこに行ったんですかね……サーキック流善意はこれだから  -- 名無しさん  (2017-07-13 10:10:16)
- ↑ 人間はそれぞれの手で別の動作を同時に行使することが基本的に出来ないので、各部位の操作に割く脳のリソースを  -- 名無しさん  (2017-08-01 17:50:52)
- (誤送信失礼。続き)確保する為に脳も統合してるんじゃないかな?まあ、脳をただの演算素子かウェットウェア扱いしてるって点ではかなりキテるな  -- 名無しさん  (2017-08-01 17:53:11)
- 『七分の一の命事件』なんて、日本人の自分でも知らない事件を知っているなんて、どんだけなんだよWrong氏。もうこうなったら、彼が実は日系米国人だったと聞いても驚かないぞ(汗  -- 名無しさん  (2017-08-01 19:13:59)
- というかWrong氏は英語使える日本人ってだけのオチの可能性もじゅうぶん考えられる  -- 名無しさん  (2017-08-01 19:25:53)
- ↑Wrongさんは中華系シンガポール人だったはず  -- 名無しさん  (2017-08-01 22:07:38)
- なんかこう、伝奇っぽい雰囲気が凄いよね。京極夏彦とか荒俣宏とか夢枕獏的な。そしてこれが海外発ってのがまた驚き  -- 名無しさん  (2017-08-04 01:31:57)
#comment
#areaedit(end)
}