『ペテルブルク』(ぺてるぶるく、原題:Петербург)は、ロシアの象徴主義作家アンドレイ・ベールイ(Andrei Bely、本名ボリス・ニコラーエヴィチ・ブガエフ、1880–1934)が1913–1914年に執筆し、1913–1916年に雑誌連載、1916年に単行本として出版された長編小説で、20世紀ロシア文学の最高峰の一つ。
ウラジーミル・ナボコフが20世紀散文の四大傑作(『ユリシーズ』『変身』『失われた時を求めて』に次ぐ)と絶賛した実験的小説であり、都市小説の古典として『ユリシーズ』や『ベルリン・アレクサンダー広場』と並ぶ。1905年の日露戦争直後のペテルブルクを舞台に、革命の動乱と象徴主義の幻想が交錯する。物語は、官僚主義の化身のような父アポリョン・アポリョーノヴィチ・アブレウホフ(元上院議員)と、その息子ニコライ・アポリョーノヴィチの父子関係を中心に展開する。ニコライは革命テロリストから、父を暗殺するための時限爆弾を託される。爆弾は缶詰に入れられ、ニコライの部屋で時を刻む。父はペテルブルクの「石の怪物」として、息子は「黄色い霧」に覆われた街の幻影に苛まれ、青銅の騎士像(ピョートル大帝の像)が街を疾駆する幻覚が繰り返される。革命家ドゥードキンや謎の「党」の影が絡み、心理描写は断片的で、言葉の音韻・リズム・色彩が重視され、従来のリアリズムを破壊した。ペテルブルク自体が「人工の都市」「幻影の都」として描かれ、ロシアの西洋化と東洋的混沌の対立、理性と無意識の衝突が象徴的に表現される。ベールイの文体は極めて音楽的で、繰り返し・擬音・視覚効果が多用され、読者を「霧の中」に引きずり込む。