ゆらり、と。
膝立ちの状態から立ち上がり、二人を見定める。
その威圧感に、梨花とサトシは息を飲んだ。
まだ、何も荒事を経験したことのない子供の方が平静を保てたかもしれない。
だが、二人がそれぞれが数々の命のやり取りや冒険を経験してきたからこそ。
相対するメリュジーヌの力を正確に感じ取ってしまった。
膝立ちの状態から立ち上がり、二人を見定める。
その威圧感に、梨花とサトシは息を飲んだ。
まだ、何も荒事を経験したことのない子供の方が平静を保てたかもしれない。
だが、二人がそれぞれが数々の命のやり取りや冒険を経験してきたからこそ。
相対するメリュジーヌの力を正確に感じ取ってしまった。
「さっき邪魔してきたのは……君たちだな」
冷徹。冷淡。冷厳。
聞く者が凍り付くような平坦で冷たい声で、二人にメリュジーヌは尋ねてくる。
それを聞いて、二人の間に緊張と、ある種の希望がほんの僅かに胸に湧く。
即刻襲い掛かって来るものと思ったが、まず話しかけてきた。
対話の余地が全くない相手ではない、二人はそう受け取った。
サトシは僅かに間を置いて、静かに頷いた。
そして再び数秒ほどかけて、メリュジーヌに問う。
聞く者が凍り付くような平坦で冷たい声で、二人にメリュジーヌは尋ねてくる。
それを聞いて、二人の間に緊張と、ある種の希望がほんの僅かに胸に湧く。
即刻襲い掛かって来るものと思ったが、まず話しかけてきた。
対話の余地が全くない相手ではない、二人はそう受け取った。
サトシは僅かに間を置いて、静かに頷いた。
そして再び数秒ほどかけて、メリュジーヌに問う。
「……確か…メリュジーヌって呼ばれてたよな。君は、殺し合いに乗ってるのか」
その問いかけに、メリュジーヌは無言で首肯する。
最初から予想できていた事ではあったが、やはり重々しく伸し掛かる事実だった。
彼の傍らに立つ梨花は輪をかけて心穏やかにはいれなかった。
食って掛かる様に、重ねてメリュジーヌに問いを投げかける。
最初から予想できていた事ではあったが、やはり重々しく伸し掛かる事実だった。
彼の傍らに立つ梨花は輪をかけて心穏やかにはいれなかった。
食って掛かる様に、重ねてメリュジーヌに問いを投げかける。
「沙都子は!あの子もやっぱり……殺し合いに乗っているの!?」
梨花の問いに、メリュジーヌが答えることは無かった。
無言で両の手の手甲を構えて、宣言する。
無言で両の手の手甲を構えて、宣言する。
「……それは、これから死ぬ君たちが知っても意味がない」
メリュジーヌが纏う、殺意のボルテージが一段階上がる。
相対する二人は全身が総毛だつ思いだった。
サトシにとっては伝説のポケモンを前にした時の感覚に近いが、それとはまったく別の濃密な死の予感。
何とか最悪の状況に進むのを阻止しようと、サトシは孫悟空に試みたように、メリュジーヌにも問いかける。
相対する二人は全身が総毛だつ思いだった。
サトシにとっては伝説のポケモンを前にした時の感覚に近いが、それとはまったく別の濃密な死の予感。
何とか最悪の状況に進むのを阻止しようと、サトシは孫悟空に試みたように、メリュジーヌにも問いかける。
「待て!何で君はこんな、殺し合いに───」
「私の大切な人のためだ。これで応えたよ。では、死んでくれ」
「私の大切な人のためだ。これで応えたよ。では、死んでくれ」
答えをあらかじめ用意していたかのような速さで、問いに即答し。
つかつかと、メリュジーヌは二人の方へ歩みよる。
その瞳は、既にサトシと梨花を人として見ていなかった。
まるで、路傍の邪魔な石ころを見る様な瞳。
孫悟空とは何もかも違っていた。
つかつかと、メリュジーヌは二人の方へ歩みよる。
その瞳は、既にサトシと梨花を人として見ていなかった。
まるで、路傍の邪魔な石ころを見る様な瞳。
孫悟空とは何もかも違っていた。
「……っ!?その人は君がこんな事をして喜ぶのかよ……っ!!」
絞り出すような声で、訴える。
どうしてだ、どうして大切な人を想える心があるのに。
どうして他人を平気で殺そうと出来るんだ。
そんな事をして、大切な人が喜ぶと思っているのか。
サトシは、腹の底からそう訴えた。だけど、彼の言葉はメリュジーヌに届かない。
どうしてだ、どうして大切な人を想える心があるのに。
どうして他人を平気で殺そうと出来るんだ。
そんな事をして、大切な人が喜ぶと思っているのか。
サトシは、腹の底からそう訴えた。だけど、彼の言葉はメリュジーヌに届かない。
「───喜ばないだろうね。彼女は、私が何かをして喜ぶことがまずありえない」
「どういう意味だ!?」
「これは全部僕の自己満足、と言う話だよ」
「どういう意味だ!?」
「これは全部僕の自己満足、と言う話だよ」
そして、自己満足であるからこそ、地の果てまでだって戦える。
最後にそう一言零し、メリュジーヌはその手の白刃を煌めかせた。
朝陽に照らされ輝きを放つ刃は、思わず見惚れそうになるほどの美しさだった。
最後にそう一言零し、メリュジーヌはその手の白刃を煌めかせた。
朝陽に照らされ輝きを放つ刃は、思わず見惚れそうになるほどの美しさだった。
───ピカチュウ!でんこうせっか!!
対話は決裂した。
そう確信してからのサトシの指示は疾風の様だった。
指示を告げられたピカチュウも正に阿吽の呼吸で。
凶刃を閃かせるメリュジーヌに向かって最も有効な一手を放つ。
二対の刃を躱し、すり抜け、竜の肩口に突進する。
疾風の様に突進してきたピカチュウの体当たりに、痛痒はないモノの、装甲に包まれた身体が僅かに揺らぐ。
そう確信してからのサトシの指示は疾風の様だった。
指示を告げられたピカチュウも正に阿吽の呼吸で。
凶刃を閃かせるメリュジーヌに向かって最も有効な一手を放つ。
二対の刃を躱し、すり抜け、竜の肩口に突進する。
疾風の様に突進してきたピカチュウの体当たりに、痛痒はないモノの、装甲に包まれた身体が僅かに揺らぐ。
「……成程、大したものだ。これまでよく研鑽を積んできたんだろうね」
息の合った呼吸、練り上げられた突進。
一言で言って、洗練されていた。
小手調べとは言え、大振りとは言え、まぐれで躱せるほど自分の剣は甘くない。
だからこそ、惜しいと思った。
一言で言って、洗練されていた。
小手調べとは言え、大振りとは言え、まぐれで躱せるほど自分の剣は甘くない。
だからこそ、惜しいと思った。
「その芽を摘まなければいけないことが」
言葉を吐くと共に、竜の炉心から魔力を噴出させ、全身に魔力を漲らせる。
そして、その魔力でジェット噴射の様に加速し、再びピカチュウに迫る。
そして、その魔力でジェット噴射の様に加速し、再びピカチュウに迫る。
「躱してアイアンテール!!」
「ピッカァ!!」
「ピッカァ!!」
未来の動きを読んでいたかのように、速度が上がったメリュジーヌに動じず指示を飛ばす。
本当に早い。乃亜の言うハンデが無ければ、視認する事すら困難だったかもしれない。
だが、ハンデ上の速さならタクトのラティオスを初めてとして、戦ったことがない訳ではない速度の相手だ。
ならば、全く勝負にならない相手ではない。
本当に早い。乃亜の言うハンデが無ければ、視認する事すら困難だったかもしれない。
だが、ハンデ上の速さならタクトのラティオスを初めてとして、戦ったことがない訳ではない速度の相手だ。
ならば、全く勝負にならない相手ではない。
「───え?」
サトシのその見立ては、正しかった。
彼のこれまで経験してきた冒険や出会いは、メリュジーヌの強さと比べても見劣りするものではない。
だが、しかし。すべてにおいて正確な訳でもなかった。
メリュジーヌは、彼にとって未知の相手でもあったのだ。
それを示すように。
彼のこれまで経験してきた冒険や出会いは、メリュジーヌの強さと比べても見劣りするものではない。
だが、しかし。すべてにおいて正確な訳でもなかった。
メリュジーヌは、彼にとって未知の相手でもあったのだ。
それを示すように。
“メリュジーヌは、アイアンテールを放とうとするピカチュウを飛び越えた”。
彼女の視線は、今はもうサトシと梨花以外映してはいなかった。
ポケモンを素通りする。敵の想定外の行動に一瞬、サトシの思考が停止する。
メリュジーヌは、ピカチュウがサトシに使役されている存在だと知っていた。
だから、先にトレーナーを仕留めようとしたのだ。
だってこれは、ポケモンバトルではなく、殺し合いだから。
そう、脳が情報を処理するまで、二秒の時を有した。
そして、その二秒の時は、彼にとって余りにも致命的だった。
ポケモンを素通りする。敵の想定外の行動に一瞬、サトシの思考が停止する。
メリュジーヌは、ピカチュウがサトシに使役されている存在だと知っていた。
だから、先にトレーナーを仕留めようとしたのだ。
だってこれは、ポケモンバトルではなく、殺し合いだから。
そう、脳が情報を処理するまで、二秒の時を有した。
そして、その二秒の時は、彼にとって余りにも致命的だった。
彼が意識を引き戻した時には、既にメリュジーヌが眼前まで迫っていた。
サトシの培ったポケモントレーナーとしての経験値が告げている。
この刃は、避けられない。詰みだと。
サトシの培ったポケモントレーナーとしての経験値が告げている。
この刃は、避けられない。詰みだと。
「ピカチュウ───!」
それでも何とか抵抗を試みようとピカチュウに指示を出そうとするも、既に遅い。
言い終わるころには斬り伏せられているだろう。
彼の中の冷静な部分が、そう告げていた。
だが、未来は彼の予期したものとは変わる。良くも悪くも。
言い終わるころには斬り伏せられているだろう。
彼の中の冷静な部分が、そう告げていた。
だが、未来は彼の予期したものとは変わる。良くも悪くも。
「サトシ!!!」
梨花がメリュジーヌとサトシの間に割り込んで。
彼女は、すぐさまその手の銃を構えた。
力の差は理解している。それでも、一歩も退くつもりはないと確固たる姿勢で。
彼女は眼を見開き、メリュジーヌの姿を捉えていた。
梨花が引き金を引く。メリュジーヌが剣を振り下ろす。
両者のタイミングはほぼ同時で、たどり着いた結果は真逆だった。
銃弾は鎧に阻まれ、手甲から伸びた剣は梨花の両腕の肘から先を正確無比に刈り取った。
彼女は、すぐさまその手の銃を構えた。
力の差は理解している。それでも、一歩も退くつもりはないと確固たる姿勢で。
彼女は眼を見開き、メリュジーヌの姿を捉えていた。
梨花が引き金を引く。メリュジーヌが剣を振り下ろす。
両者のタイミングはほぼ同時で、たどり着いた結果は真逆だった。
銃弾は鎧に阻まれ、手甲から伸びた剣は梨花の両腕の肘から先を正確無比に刈り取った。
「───う、ぐ…ぁ………あああああああああああああああああ!!!!!!!!」
切り落とされた両腕からどぼどぼとホースのように血が流れる。
見ただけで、致命傷だと分かった。
痛みに凄絶な悲鳴を上げながら、梨花は膝から崩れ落ちる。
見ただけで、致命傷だと分かった。
痛みに凄絶な悲鳴を上げながら、梨花は膝から崩れ落ちる。
「り、梨花………」
目の前で起きた流血を伴う惨劇に、流石のサトシも怯みを見せる。
夥しい量の血というものは、いやでも本能的な恐怖を思い出させるのだ。
即座に動かなければ、自身も同じ運命を辿ることが分かっていても。
恐怖は、体を凍り付かせる。
そんなサトシに、梨花は叫んだ。
夥しい量の血というものは、いやでも本能的な恐怖を思い出させるのだ。
即座に動かなければ、自身も同じ運命を辿ることが分かっていても。
恐怖は、体を凍り付かせる。
そんなサトシに、梨花は叫んだ。
「───しっかり、しなさい!アンタは……チャンピオンなんでしょ!!」
痛みには慣れている。百年間ずっとずっと付き合ってきたのだ。
拷問されて殺されるよりは、余程マシな痛みだ。
だから、私のことは気にしないで、戦ってほしい。
梨花は視線だけで、サトシにそう訴えた。
致命傷を負ったばかりの少女とは思えない、力強い視線だった。
拷問されて殺されるよりは、余程マシな痛みだ。
だから、私のことは気にしないで、戦ってほしい。
梨花は視線だけで、サトシにそう訴えた。
致命傷を負ったばかりの少女とは思えない、力強い視線だった。
「………っ!……わかった、分かったよ、梨花」
竦んだ体がフリーズから復帰する。凍り付いた戦意が熱を持つ。
仲間の言葉と視線で、チャンピオンは息を吹き返した。
仲間の言葉と視線で、チャンピオンは息を吹き返した。
「チ…ッ」
梨花に続きサトシをも切り裂こうとしていたメリュジーヌが、その動きを止める。
その手の剣に、濃密な魔力の砲弾が着弾したからだ。
手甲でも守られているからダメージはない。しかしその一瞬の隙を切り込むように、彼女の胴に横なぎに衝撃が走った。
その手の剣に、濃密な魔力の砲弾が着弾したからだ。
手甲でも守られているからダメージはない。しかしその一瞬の隙を切り込むように、彼女の胴に横なぎに衝撃が走った。
「ピィ~カ!!!」
ピカチュウが、避けられたアイアンテールで攻撃を行ったのだ。
そして、サトシを守るようにメリュジーヌの前で威嚇を行う。
チラリと後方を見てみれば、先ほど砲撃してきた女魔術師の姿があった。
問答を行っている間に、追いついたらしい。
そして、サトシを守るようにメリュジーヌの前で威嚇を行う。
チラリと後方を見てみれば、先ほど砲撃してきた女魔術師の姿があった。
問答を行っている間に、追いついたらしい。
「ふむ……」
状況を把握し、冷たい眼差しはそのままにメリュジーヌは短く声を漏らした。
後方の女魔術師はピタリとこちらに杖の先の照準をつけている。
前方の黄色いネズミのような幻獣は戦意に満ちた顔つきで、此方を威嚇している。
挟撃の態勢になった上に二対一。数と状況は人間側に利があった。
後方の女魔術師はピタリとこちらに杖の先の照準をつけている。
前方の黄色いネズミのような幻獣は戦意に満ちた顔つきで、此方を威嚇している。
挟撃の態勢になった上に二対一。数と状況は人間側に利があった。
「エレキネット!!」
「ピカッ!!」
「ピカッ!!」
ピカチュウから雷の網が発射される。
10万ボルトではメリュジーヌを補足できない。
そう判断したが故の、広範囲をカバーできる技の選択だった。
それに呼応するように、メリュジーヌの後方に位置するブラックマジシャンガールが魔力砲を発射する。
即席ではあったが、非常に息の合ったコンビネーション、挟撃のアドバンテージを活かした攻撃だった。
10万ボルトではメリュジーヌを補足できない。
そう判断したが故の、広範囲をカバーできる技の選択だった。
それに呼応するように、メリュジーヌの後方に位置するブラックマジシャンガールが魔力砲を発射する。
即席ではあったが、非常に息の合ったコンビネーション、挟撃のアドバンテージを活かした攻撃だった。
「問題ない」
相手が、魔境妖精國において400年間無双を誇った妖精騎士でなければ。
放たれた魔力砲を躱し、全身の魔力を放出。向かう先は、桃色の女魔術師。
即ち、ブラックマジシャンガールの方向に向かって吶喊する。
速度はやはり、人を超えたそれだ。だが、その速度は既にサトシ達も知っている。
だからこそ、メリュジーヌの速度を考慮しても捉えられるであろうエレキネットを選んだのだ。
放たれた魔力砲を躱し、全身の魔力を放出。向かう先は、桃色の女魔術師。
即ち、ブラックマジシャンガールの方向に向かって吶喊する。
速度はやはり、人を超えたそれだ。だが、その速度は既にサトシ達も知っている。
だからこそ、メリュジーヌの速度を考慮しても捉えられるであろうエレキネットを選んだのだ。
「な───!?」
だが、ここで計算違いな事態が起きる。
エレキネットは確かにメリュジーヌであっても避けきれない攻撃だった。
直撃こそしなかったものの、命中はした。
だがそれでも───メリュジーヌが、止まらない。
エレキネットは確かにメリュジーヌであっても避けきれない攻撃だった。
直撃こそしなかったものの、命中はした。
だがそれでも───メリュジーヌが、止まらない。
ぞく。
瞬間、悪寒が駆け抜ける。
「悪くない手だった………でも、密度が薄すぎる」
確かに、命中はした。
だがしかし、命中する一瞬前に、メリュジーヌは全身から魔力を放出していた。
非常に高密度の魔力は、時に強固な鎧となる。
その魔力の鎧で以て、ピカチュウの電撃を反らし、弾いたのだ。
素の耐久力でも耐えられたかもしれないが、ここでは確実性を優先した。
だから、そのお陰で───、
だがしかし、命中する一瞬前に、メリュジーヌは全身から魔力を放出していた。
非常に高密度の魔力は、時に強固な鎧となる。
その魔力の鎧で以て、ピカチュウの電撃を反らし、弾いたのだ。
素の耐久力でも耐えられたかもしれないが、ここでは確実性を優先した。
だから、そのお陰で───、
こうして、電撃を利用できる。
魔力で電撃を逸らし弾いた、ここまではいい。
では、その弾いた電撃を纏った電撃は何処へ向かうのか。
決まっている。最も近い、魔力が指向された先だ。
では、その弾いた電撃を纏った電撃は何処へ向かうのか。
決まっている。最も近い、魔力が指向された先だ。
「………っ!!!」
ブラックマジシャンガールの顔が、痛苦に歪む。
メリュジーヌが逸らした魔力を帯びた電撃が、彼女の柔肌に向かったのだ。
迫りくるメリュジーヌの迎撃の為に向けられていた杖の照準がブレる。
最強の妖精騎士は、その一瞬の陥穽を見逃さなかった。
瞬きに等しい一瞬でブラックマジシャンガールに肉薄し、杖を握るその手を取る。
そして、ごきりと音が響いた。
メリュジーヌが逸らした魔力を帯びた電撃が、彼女の柔肌に向かったのだ。
迫りくるメリュジーヌの迎撃の為に向けられていた杖の照準がブレる。
最強の妖精騎士は、その一瞬の陥穽を見逃さなかった。
瞬きに等しい一瞬でブラックマジシャンガールに肉薄し、杖を握るその手を取る。
そして、ごきりと音が響いた。
「~~~~!!!!!」
声にならぬ叫びを響かせるブラックマジシャンガール。
彼女の腕が肘の辺りであらぬ方向を向いていたのを考えれば、無理からぬ話だろう。
更にそれだけで収まらず、鮮血が舞い、骨が見えていた。
だが、追撃は止まらない。
胸部の服を鷲掴みにして、ぎらりとメリュジーヌは黄色の電気鼠を睨みつける。
サトシとピカチュウ、両者がまさかと思った瞬間、それは成された。
メリュジーヌは、自分より背の高いブラックマジシャンガールを、以前展開されたままのエレキネットに放り投げた。
人を人ではなく、投擲武器として扱う。その非道の策によって。
エレキネットは、皮肉にも味方であるブラックマジシャンガールに向かって威力を発揮した。
彼女の腕が肘の辺りであらぬ方向を向いていたのを考えれば、無理からぬ話だろう。
更にそれだけで収まらず、鮮血が舞い、骨が見えていた。
だが、追撃は止まらない。
胸部の服を鷲掴みにして、ぎらりとメリュジーヌは黄色の電気鼠を睨みつける。
サトシとピカチュウ、両者がまさかと思った瞬間、それは成された。
メリュジーヌは、自分より背の高いブラックマジシャンガールを、以前展開されたままのエレキネットに放り投げた。
人を人ではなく、投擲武器として扱う。その非道の策によって。
エレキネットは、皮肉にも味方であるブラックマジシャンガールに向かって威力を発揮した。
「────!!!」
余波を受けただけだった先ほどと違い、今度のエレキネットは寸分の狂いなく直撃した。
へし折られた腕の傷が電熱によって焼かれ、じゅうじゅうと音を立てる。
最早、戦闘は不可能。それは誰の目から見ても明らかだった。
それでも、尚もメリュジーヌはブラックマジシャンガールに向けて突き進む。
へし折られた腕の傷が電熱によって焼かれ、じゅうじゅうと音を立てる。
最早、戦闘は不可能。それは誰の目から見ても明らかだった。
それでも、尚もメリュジーヌはブラックマジシャンガールに向けて突き進む。
「やめろっ!もう、その人は───!!」
制止の声は、当然聞き入れられる筈もない。
ドスドスドス!!!!と、
肉を抉る音が、三度響いた。
ブラックマジシャンガールの眼窩と、喉と、心臓を正確に穿つ一撃だった。
最早声すら上げられず、女魔術師はその場に崩れ落ちる。
これで、“的”は一つに絞られた。
冷たい殺意と共に、残る障害、黄色い幻獣種を排除するべく行動を開始する。
否、開始しようとした。
ドスドスドス!!!!と、
肉を抉る音が、三度響いた。
ブラックマジシャンガールの眼窩と、喉と、心臓を正確に穿つ一撃だった。
最早声すら上げられず、女魔術師はその場に崩れ落ちる。
これで、“的”は一つに絞られた。
冷たい殺意と共に、残る障害、黄色い幻獣種を排除するべく行動を開始する。
否、開始しようとした。
「………?」
メリュジーヌの足が止まる。
彼女の顔に、影が差す。
表情に、僅かに驚愕の彩が混じる。
差した影の主は、たった今殺したはずの相手の物だったからだ。
ブラックマジシャンガールが、メリュジーヌを羽交い絞めにしていた。
当然、羽交い絞めと言ってもメリュジーヌを何時までも拘束できるはずもない。
例え、ブラックマジシャンガールが致命傷を負っていなくとも、だ。
だから、女魔術師はじっとサトシを見据えて。視線だけで何かを伝えて。
身体に残る魔力を最後の一滴まで用いて、為すべきことを遂行する。
彼女の顔に、影が差す。
表情に、僅かに驚愕の彩が混じる。
差した影の主は、たった今殺したはずの相手の物だったからだ。
ブラックマジシャンガールが、メリュジーヌを羽交い絞めにしていた。
当然、羽交い絞めと言ってもメリュジーヌを何時までも拘束できるはずもない。
例え、ブラックマジシャンガールが致命傷を負っていなくとも、だ。
だから、女魔術師はじっとサトシを見据えて。視線だけで何かを伝えて。
身体に残る魔力を最後の一滴まで用いて、為すべきことを遂行する。
────黒・魔・導・爆・裂・破(ブラック・バーニング)!!!
最後の力を振り絞って。ゼロ距離からの魔力砲。
言い換えれば、自爆だった。
勿論、杖も無い状態で、死にぞこないの苦し紛れの攻撃だ。
その程度で痛痒を覚えていては最強の妖精騎士の称号は冠せない。
だが、捨て身の一撃は、ほんの僅か。数秒ほどの時間を作った。
主(サトシ)が、切り札に至るための、その時間を。
言い換えれば、自爆だった。
勿論、杖も無い状態で、死にぞこないの苦し紛れの攻撃だ。
その程度で痛痒を覚えていては最強の妖精騎士の称号は冠せない。
だが、捨て身の一撃は、ほんの僅か。数秒ほどの時間を作った。
主(サトシ)が、切り札に至るための、その時間を。
「────っ!!」
彼は、例えブラックマジシャンガールがカードから出てきた存在でも。
こんな、犠牲にする様な戦い方をしたくなかった。
だが、ここでショックを受けて、立ち止まってしまえば。
ブラックマジシャンガールの最後の奮戦が無為に終わる。
それだけは、絶対に許しがたい事だった。
彼は歴戦のポケモントレーナーとして、湧き上がってくるあらゆる負の感情を抑え込む。
こんな、犠牲にする様な戦い方をしたくなかった。
だが、ここでショックを受けて、立ち止まってしまえば。
ブラックマジシャンガールの最後の奮戦が無為に終わる。
それだけは、絶対に許しがたい事だった。
彼は歴戦のポケモントレーナーとして、湧き上がってくるあらゆる負の感情を抑え込む。
「行くぞ、ピカチュウ」
「ピカ」
「ピカ」
ピカチュウも、きっと同じ思いで。
だから、そこから先の指示は要らなかった。
ふわりと投げられていたサトシの帽子が、ピカチュウの頭部に収まる。
拳と拳、尻尾と腕でハイタッチ。
同時に、サトシが梨花より譲渡された腕のリング──Zリングに嵌め込まれたZクリスタルから莫大なエネルギーが装填される。
だから、そこから先の指示は要らなかった。
ふわりと投げられていたサトシの帽子が、ピカチュウの頭部に収まる。
拳と拳、尻尾と腕でハイタッチ。
同時に、サトシが梨花より譲渡された腕のリング──Zリングに嵌め込まれたZクリスタルから莫大なエネルギーが装填される。
「───10まんボルトよりでっかい100まんボルト……!」
一目見た瞬間から。
あの騎士を下せる可能性があるとすれば。
この技を置いて他にない。サトシはそう確信していた。
あの騎士を下せる可能性があるとすれば。
この技を置いて他にない。サトシはそう確信していた。
「いや───もっともっとでっかい、俺たちの超全力!」
キョダイマックスしたポケモンのキョダイマックスわざですら、真っ向から打ち破れる。
トレーナーとポケモンが互いの意志を重ねて放つZ技と言う、正真正銘の切り札。
それを切るための布石は、たったいま整った。
ブラックマジシャンガールの放った最後の一手から復帰し、メリュジーヌが噴煙の中から飛び出してくる。
だが、僅かに遅い。最早、この技を止める事などできはしない。
全身の力と、想いの全てを籠めて。彼らは叫んだ。
トレーナーとポケモンが互いの意志を重ねて放つZ技と言う、正真正銘の切り札。
それを切るための布石は、たったいま整った。
ブラックマジシャンガールの放った最後の一手から復帰し、メリュジーヌが噴煙の中から飛び出してくる。
だが、僅かに遅い。最早、この技を止める事などできはしない。
全身の力と、想いの全てを籠めて。彼らは叫んだ。
「ピカチュウ!1000まんボルトォオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」
「ピィカ…ヂュウウウウウゥゥウウウウウウウウウッッッ!!!!!!!!」
「ピィカ…ヂュウウウウウゥゥウウウウウウウウウッッッ!!!!!!!!」
朝日に照らされる街の中を、七色の雷が駆ける。
その巨大さ、力強さは、少年の本当に肩に乗れるサイズの生物が出したか信じがたい規模のものだった。
これを受けるのは不味い。万が一もあり得る。
妖精騎士ランスロット。最古にして最強の竜ですら瞠目する雷撃。
その巨大さ、力強さは、少年の本当に肩に乗れるサイズの生物が出したか信じがたい規模のものだった。
これを受けるのは不味い。万が一もあり得る。
妖精騎士ランスロット。最古にして最強の竜ですら瞠目する雷撃。
「───だが、それを受けるかどうかは別の話だ」
見たところ、雷撃の威力は目を見張るものがある。
しかし、軌道が直線的すぎる。
これならば如何に強力で鋭く、早くとも躱すのはメリュジーヌにとって難しくはなかった。
竜の炉心より生み出された魔力を完全開放。コンマ一秒でトップスピードへと至る。
七本の雷条の僅かな隙間を水のようにすり抜ける。
しかし、軌道が直線的すぎる。
これならば如何に強力で鋭く、早くとも躱すのはメリュジーヌにとって難しくはなかった。
竜の炉心より生み出された魔力を完全開放。コンマ一秒でトップスピードへと至る。
七本の雷条の僅かな隙間を水のようにすり抜ける。
「終わりにしよう」
そして、ピカチュウの脇を軽々と抜き去った。
これで、少年を守る障害は存在しない。
大技を放った以上、直ぐには電気鼠も体勢を立て直せないだろう。
故にここは捨て置く。確実に、最短距離で、司令塔である少年の命脈を断つ。
断つ、ハズだった。
これで、少年を守る障害は存在しない。
大技を放った以上、直ぐには電気鼠も体勢を立て直せないだろう。
故にここは捨て置く。確実に、最短距離で、司令塔である少年の命脈を断つ。
断つ、ハズだった。
「ピカチュウ!」
少年が、よく通る声を発する。
今更何か指示を行おうとしているのか、だが無駄な話だ。
だって、頼みの幻獣は、まだ技を撃つことすら中断できていない───、
今更何か指示を行おうとしているのか、だが無駄な話だ。
だって、頼みの幻獣は、まだ技を撃つことすら中断できていない───、
(待て、まだ?)
違和感が、奔る。
目の前の少年と幻獣のコンビネーションは相当なものだ。
また、戦術眼も一流の評価を与えてもいい。
その彼らが、切り札として直線的に過ぎるこの技をなぜ選んだ?
撃つタイミングは確かに、女魔術師が作り出したこの数秒しかなかっただろう。
だが、もっと此方の体勢を崩してだとか、移動し座標を変えて撃つだとか。
そういった駆け引きがあってもよかったハズだ。
メリュジーヌの中で萌芽した小さな小さな違和感。
チラリと、抜き去った幻獣を一瞥する。
答えは、すぐそこまで迫っていた。
目の前の少年と幻獣のコンビネーションは相当なものだ。
また、戦術眼も一流の評価を与えてもいい。
その彼らが、切り札として直線的に過ぎるこの技をなぜ選んだ?
撃つタイミングは確かに、女魔術師が作り出したこの数秒しかなかっただろう。
だが、もっと此方の体勢を崩してだとか、移動し座標を変えて撃つだとか。
そういった駆け引きがあってもよかったハズだ。
メリュジーヌの中で萌芽した小さな小さな違和感。
チラリと、抜き去った幻獣を一瞥する。
答えは、すぐそこまで迫っていた。
「な───!?」
視線を移した瞬間、七色の雷撃のうちの一色。
紫の光の矢が、すでにすぐそこまで迫っていた。
躱そうと魔力を放出する軌道を変えるが、既に手遅れだった。
紫の光の矢が、すでにすぐそこまで迫っていた。
躱そうと魔力を放出する軌道を変えるが、既に手遅れだった。
「ぐ……っ!」
さっきのエレキネットと名付けられた雷撃とは桁違いの威力の雷が、メリュジーヌの左肩に蛇のように食らいついた。
そして、それだけでは終わらない。
躱したはずの、他の六本の雷撃ですら、メリュジーヌに向けて軌道を変える。
彼女の背後で、囁くようにサトシは呟いた。
そして、それだけでは終わらない。
躱したはずの、他の六本の雷撃ですら、メリュジーヌに向けて軌道を変える。
彼女の背後で、囁くようにサトシは呟いた。
「読んでたよ……君がピカチュウを無視して、俺を殺そうとしてくることは」
Z技、一千万ボルト。
その特性は、普段放つ十万ボルトとは次元が違う規模の威力だけでは、ない。
自由にピカチュウの意志だけで軌道を変更できる、追尾(ホーミング)能力にあった。
そして、サトシはこれまでの戦闘の流れから読んでいた。
メリュジーヌがピカチュウを殺傷するより、自分を殺すことを優先するはずだと。
その特性は、普段放つ十万ボルトとは次元が違う規模の威力だけでは、ない。
自由にピカチュウの意志だけで軌道を変更できる、追尾(ホーミング)能力にあった。
そして、サトシはこれまでの戦闘の流れから読んでいた。
メリュジーヌがピカチュウを殺傷するより、自分を殺すことを優先するはずだと。
(……っ!?読んでいたとしても……っ!指示も出さずに……!!!)
雷条から脱出しようとするも、ハンデの枷を科された体では数秒ではとても不可能だった。
そのまま自身に迫ってくる雷撃を見つめながら、メリュジーヌは考える。
自分の狙いが最初から主(マスター)だと分かっていれば、軌道は限定できるだろう。
だが、タイミングはどうにもならない。
メリュジーヌの戦闘速度は人間の反射神経を置き去りにして余りある。
予めタイミングすらも読んだうえで、殆ど名前以外の指示も出さず。
幻獣の雷を、敵手に向けて命中させる。
少年が、幻獣と夢を刻んだ月日と修練だけが成せる、神業と呼んで相違なかった。
そのまま自身に迫ってくる雷撃を見つめながら、メリュジーヌは考える。
自分の狙いが最初から主(マスター)だと分かっていれば、軌道は限定できるだろう。
だが、タイミングはどうにもならない。
メリュジーヌの戦闘速度は人間の反射神経を置き去りにして余りある。
予めタイミングすらも読んだうえで、殆ど名前以外の指示も出さず。
幻獣の雷を、敵手に向けて命中させる。
少年が、幻獣と夢を刻んだ月日と修練だけが成せる、神業と呼んで相違なかった。
「ぐぅヴうううううあああああああああああああ─────!!!!!!!」
試行している間に、残りの雷が追いつく。
そして、今度こそ───メリュジーヌの全身を蹂躙する。
最強の妖精騎士に、肉体的な痛苦を与える。
同じ妖精騎士であるガウェインやトリスタンですら困難な所業を達成したのは、あろうことか人間の少年だった。
だが、しかし。
そして、今度こそ───メリュジーヌの全身を蹂躙する。
最強の妖精騎士に、肉体的な痛苦を与える。
同じ妖精騎士であるガウェインやトリスタンですら困難な所業を達成したのは、あろうことか人間の少年だった。
だが、しかし。
「─────!!!!!!!!!!」
それで竜を墜とせる、とは限らない。
悲鳴とも咆哮ともとれる、声ならぬ叫びを竜はあげて。
ここで、再びの全開の魔力放出。その目標を変える。
五指を広げ、本能をむき出しにして、ピカチュウに肉薄する。
悲鳴とも咆哮ともとれる、声ならぬ叫びを竜はあげて。
ここで、再びの全開の魔力放出。その目標を変える。
五指を広げ、本能をむき出しにして、ピカチュウに肉薄する。
「オォオオォオオオオオオオオオアアアアアアアアアッッッ!!!!!」
竜は、墜ちぬからこそ竜なのだ。
それを示すように。
大気をビリビリと震わせる規模の絶叫。
サトシがピカチュウに何かを伝えようとするが、それすらもかき消される。
そして、広げた両手の五指でもって、ピカチュウを竜は捉えた。
それを示すように。
大気をビリビリと震わせる規模の絶叫。
サトシがピカチュウに何かを伝えようとするが、それすらもかき消される。
そして、広げた両手の五指でもって、ピカチュウを竜は捉えた。
「ヂュウウウウウウウウウウウウウウウッッッ!!!!」
ピカチュウも必死だった。
声が枯れるほどの声量で叫び、体の力すべてを振り絞るように雷を放つ。
ピカチュウ達にとってもこれで倒せなければ後がない。それを理解しているからこそ。
全力で、ダンテとの決勝戦すら超えるかもしれない出力の雷撃でもって竜を墜とすのを試みる。
声が枯れるほどの声量で叫び、体の力すべてを振り絞るように雷を放つ。
ピカチュウ達にとってもこれで倒せなければ後がない。それを理解しているからこそ。
全力で、ダンテとの決勝戦すら超えるかもしれない出力の雷撃でもって竜を墜とすのを試みる。
「……君は」
そんな時だった。
不意に、穏やかな、優しさを伴った声をピカチュウは聞いた。
同時に、猛烈な浮遊感に体が包まれる。
それは正に、竜が羽撃たいた瞬間だった。
不意に、穏やかな、優しさを伴った声をピカチュウは聞いた。
同時に、猛烈な浮遊感に体が包まれる。
それは正に、竜が羽撃たいた瞬間だった。
「────!!────!!」
眼下で、サトシが何かを叫んでいるのが聞こえた。
だが、上昇時の空気抵抗の音で、かき消される。
二人の距離は開いていく。もう距離的にも、声を届けるのは難しいだろう。
だが、上昇時の空気抵抗の音で、かき消される。
二人の距離は開いていく。もう距離的にも、声を届けるのは難しいだろう。
「……君たちは、本当に強い絆で結ばれているんだね。そして………」
自身を抱きかかえる、メリュジーヌの声すら、もう聞こえない。
ピカチュウの脳裏に浮かぶのは、過去の記憶だった。
サトシとの旅の日々。数々の輝かしい冒険の日々。
オニスズメから守られた日のこと。
サトシをチャンピオンにした日のこと。
ほんの僅かな、数秒ほどの時間で、これまでの日々が駆け抜ける。
やめてくれ、と思った。
だってこれじゃあ、これが最後みたいじゃないか、と。
今こんな時に、こんなことを思い出すなんて、縁起でもない────
そんな風にどれほど、ピカチュウが願っても。
メリュジーヌは、止まらなかった。
ピカチュウの脳裏に浮かぶのは、過去の記憶だった。
サトシとの旅の日々。数々の輝かしい冒険の日々。
オニスズメから守られた日のこと。
サトシをチャンピオンにした日のこと。
ほんの僅かな、数秒ほどの時間で、これまでの日々が駆け抜ける。
やめてくれ、と思った。
だってこれじゃあ、これが最後みたいじゃないか、と。
今こんな時に、こんなことを思い出すなんて、縁起でもない────
そんな風にどれほど、ピカチュウが願っても。
メリュジーヌは、止まらなかった。
「………すまない」
短い浮遊感と共に、ピカチュウの体が、メリュジーヌから発せられた何かに包まれる。
それは、彼女が生み出した魔力だった。
本来自身が身にまとうためのモノだから、数秒で消えてしまうけれど。今はこれで十分。
そして、魔力の膜で包まれたピカチュウを────放り投げた。
それは、彼女が生み出した魔力だった。
本来自身が身にまとうためのモノだから、数秒で消えてしまうけれど。今はこれで十分。
そして、魔力の膜で包まれたピカチュウを────放り投げた。
ピィイイイイイイカアアアアアアアアアアア─────!!!!
300キロは優に超えた剛速球で投げられたピカチュウは、彼方へと消えていく。
普段やなかんじと吹き飛ばしてきたロケット団も、こんな気持ちだったのだろうか。
そんな風に考えながら、数秒。
ピカチュウは、デパートの屋上に設置されていた柵にぶつかり、ぼよんと打ち上げられた。
衝撃は、魔力が吸収していたために痛みはなかった。
普段やなかんじと吹き飛ばしてきたロケット団も、こんな気持ちだったのだろうか。
そんな風に考えながら、数秒。
ピカチュウは、デパートの屋上に設置されていた柵にぶつかり、ぼよんと打ち上げられた。
衝撃は、魔力が吸収していたために痛みはなかった。
「ピカ……」
短く、鳴き声を上げて。
すぐさま、ピカチュウは走りだした。
絶対に、間に合わない。それはわかっていたけど。
それでも。
すぐさま、ピカチュウは走りだした。
絶対に、間に合わない。それはわかっていたけど。
それでも。
───ピカチュウ!お前は、俺の代わりに……みんなを助けてくれ。
あの時、轟音にかき消された、サトシの指示。
唇の動きから伝わってしまった、その言葉を。
否定する方法も、瞼から溢れるものを止める方法も。
今のピカチュウには、ただ走ることしか思い浮かばなかった。
唇の動きから伝わってしまった、その言葉を。
否定する方法も、瞼から溢れるものを止める方法も。
今のピカチュウには、ただ走ることしか思い浮かばなかった。
■ ■ ■
────賭けに負けた。
ピカチュウが放り投げられたのを見た瞬間、サトシは作戦の失敗を悟った。
自分達ならば可能だと信じていた。
しかし、メリュジーヌの強さが、一歩彼等を上回っていたというだけの話だ。
そして、もう、打つ手はない。
ピカチュウが放り投げられたのを見た瞬間、サトシは作戦の失敗を悟った。
自分達ならば可能だと信じていた。
しかし、メリュジーヌの強さが、一歩彼等を上回っていたというだけの話だ。
そして、もう、打つ手はない。
「見事だった」
羽毛の様にふわりと眼前でメリュジーヌが降り立つ。
その瞳には惜しみない賞賛と、だからこそ君たちは此処で殺すという冷たい殺意があった。
彼女の瞳を見て、サトシは己の内側からこみ上げる物を抑えきれない。
その瞳には惜しみない賞賛と、だからこそ君たちは此処で殺すという冷たい殺意があった。
彼女の瞳を見て、サトシは己の内側からこみ上げる物を抑えきれない。
「……何、でだ。本当に何で、君みたいなとても強い子が、こんなことを」
メリュジーヌはその問いにはもう答えたと言いたげな顔で、前に進むことを辞めない。
それでもサトシにはどうしても納得がいかなかった。
こんな事をして、本当に誰かを助けられると思ってるのか。
本当に乃亜が願いを叶えてくれるのか。
願いが叶ったとしても、他ならぬメリュジーヌが幸せになれるのか。
サトシにはどうしても、目の前の少女が本懐を遂げたとしても、笑っている姿が想像できなかった。
だから嘆き、怒り、訴えた。
それでもサトシにはどうしても納得がいかなかった。
こんな事をして、本当に誰かを助けられると思ってるのか。
本当に乃亜が願いを叶えてくれるのか。
願いが叶ったとしても、他ならぬメリュジーヌが幸せになれるのか。
サトシにはどうしても、目の前の少女が本懐を遂げたとしても、笑っている姿が想像できなかった。
だから嘆き、怒り、訴えた。
「随分と買ってくれているようだね。乃亜に甘言に乗った私を
……だけど、それは君の見込み違いだ」
……だけど、それは君の見込み違いだ」
自分は私利私欲の為に殺し合いに乗った。
その在り方は正にかつてオーロラが言ったように、醜い厄災以外の何物でも無い。
尤も、願いの成就か、誰かほかの参加者に打倒されるその瞬間まで。
この生き方を変えるつもりは毛頭なかった。
だから、また一歩。少年を殺すべく歩みを進めて。
その在り方は正にかつてオーロラが言ったように、醜い厄災以外の何物でも無い。
尤も、願いの成就か、誰かほかの参加者に打倒されるその瞬間まで。
この生き方を変えるつもりは毛頭なかった。
だから、また一歩。少年を殺すべく歩みを進めて。
「でも、君は」
続く少年の一言で、足が止まる。
「……君は、ピカチュウを殺さなかった」
殺そうと思えば、殺せる瞬間は幾つもあった。
でも、君はずっと俺達だけを狙ってた。
殺してしまう方が安心なのにさ。
それをしなかったのは………
でも、君はずっと俺達だけを狙ってた。
殺してしまう方が安心なのにさ。
それをしなかったのは………
「君が、自分で言うよりも優しい奴だったからじゃないのか?メリュジーヌ」
だから、どうして嫌だった。
我慢ならなかった。放って置けなかった。
メリュジーヌが、これからも誰かを殺していく事が。
どうしても止めたかった。考え直して欲しかった。
我慢ならなかった。放って置けなかった。
メリュジーヌが、これからも誰かを殺していく事が。
どうしても止めたかった。考え直して欲しかった。
「本当は、分かってるんじゃないのか?こんな事をしても…誰も救われないって
君の大切な人も、メリュジーヌ、君自身も」
君の大切な人も、メリュジーヌ、君自身も」
そう言って今度はサトシの方から一歩を踏み出す。
目の前の相手が自分を殺そうとしているのは分かっていたけど。
それでも、確固たる意志と足取りで前に踏み出した。
メリュジーヌは応えない。微動だにしない。
何かを考えている様子だった。
無言の思索を続ける彼女の姿は、サトシにとってか細い希望となった。
まだ、話せる。説得できるやもしれない、と。
だから、もう一歩踏み出し、メリュジーヌの名前を呼んだ。
目の前の相手が自分を殺そうとしているのは分かっていたけど。
それでも、確固たる意志と足取りで前に踏み出した。
メリュジーヌは応えない。微動だにしない。
何かを考えている様子だった。
無言の思索を続ける彼女の姿は、サトシにとってか細い希望となった。
まだ、話せる。説得できるやもしれない、と。
だから、もう一歩踏み出し、メリュジーヌの名前を呼んだ。
「優しいね、君は」
メリュジーヌが口をきいた。
それに意識を裂かれ、サトシの足が止まる。
そんな彼にふわり、と。蝶のように軽い足取りで彼女は近づき。
それに意識を裂かれ、サトシの足が止まる。
そんな彼にふわり、と。蝶のように軽い足取りで彼女は近づき。
「───サトシ、逃げなさい!!!」
瞬間、横合いから梨花の声が響く。
だけど、その時にはもう全てが遅かった。
ずぶ、という肉を貫く音が大気に乗って広がり。
遅れてサトシは、自分がメリュジーヌに貫かれている事に気が付いた。
だけど、その時にはもう全てが遅かった。
ずぶ、という肉を貫く音が大気に乗って広がり。
遅れてサトシは、自分がメリュジーヌに貫かれている事に気が付いた。
「メリュジー…ヌ、ダメ、だ………」
それでもサトシは諦めようとしなかった。
心臓を一息に貫かれた。もう死ぬという時でも。
それでもメリュジーヌに向かって手を伸ばした。
だが、彼女がその手を取ることは無く、虚しく彼の手は虚空を掻いた。
それが、彼の最期だった。
心臓を一息に貫かれた。もう死ぬという時でも。
それでもメリュジーヌに向かって手を伸ばした。
だが、彼女がその手を取ることは無く、虚しく彼の手は虚空を掻いた。
それが、彼の最期だった。
「───でも、私は、私が救われたい訳ではないんだ」
そう言って事切れた彼の身体を横たえて。
妖精騎士は、もう一人の獲物へと向き直る。
もっとも、もう一人の方ももう失血で死に行くのを待つばかりだが。
妖精騎士は、もう一人の獲物へと向き直る。
もっとも、もう一人の方ももう失血で死に行くのを待つばかりだが。
「………それで?後は私を殺して全部お終いってワケ?」
「…そうだ」
「…そうだ」
血の海に沈む少女の顔には既に死相が浮かんでいた。
放って置いても永くない。だが、苦しみを長引かせることもないだろう。
無言で歩みを進め、倒れ伏す古手梨花と同盟相手が呼んでいた少女を見下ろす。
放って置いても永くない。だが、苦しみを長引かせることもないだろう。
無言で歩みを進め、倒れ伏す古手梨花と同盟相手が呼んでいた少女を見下ろす。
「そう…それじゃ一つ教えて」
梨花には、どうしても知っておかなければならない事があった。
それを聞くまでは、死ぬ訳にはいかない。
目の前の相手は、どうやら冥途の土産を用意してくれそうな手合いであったから。
尋ねるのは勿論、沙都子の事だ。
彼女は、殺し合いに乗っていたのか、と。
これから死に行くとは思えない程の不遜な態度で、少女は尋ねた。
それを聞くまでは、死ぬ訳にはいかない。
目の前の相手は、どうやら冥途の土産を用意してくれそうな手合いであったから。
尋ねるのは勿論、沙都子の事だ。
彼女は、殺し合いに乗っていたのか、と。
これから死に行くとは思えない程の不遜な態度で、少女は尋ねた。
「……あぁ、彼女は殺し合いに乗ってたよ。多分、君の想像してた通りだ。
君が裏切ったのは許せないって、絶対に逃がさない、その為なら殺し合いに優勝するのだって躊躇はない…そう言ってた」
君が裏切ったのは許せないって、絶対に逃がさない、その為なら殺し合いに優勝するのだって躊躇はない…そう言ってた」
ある意味、予想通りの答えだった。実に沙都子らしいスタンスだと思う。
でも、それを知っても梨花にはもうどうする事も出来ない。
古手梨花にとっては、慣れ親しんだ死がもうすぐやって来る。
それはもう変えられない。
でも、それを知っても梨花にはもうどうする事も出来ない。
古手梨花にとっては、慣れ親しんだ死がもうすぐやって来る。
それはもう変えられない。
「……そう、それじゃ沙都子に伝えてくれる?」
だけど、それで運命に屈従して、全てを投げ出すのとは別の話だ。
「きっと、これが私達の終わりじゃない。対主催の誰かが…乃亜を倒す。
そうしたら、多分私達は……アンタの大好きな雛見沢に戻ってるわ」
そうしたら、多分私達は……アンタの大好きな雛見沢に戻ってるわ」
何の根拠もない。けれど、何某かの確信を伴った言葉を。
死に行く少女は力強く紡ぐ。
死に行く少女は力強く紡ぐ。
「沙都子好みの勝負を考え付いたから、それで一度勝負をしましょう。
私が…アンタの大嫌いな聖ルチーアの生活で、アンタを満足させられたら私の勝ち、
そうでなければ、アンタの勝ち」
私が…アンタの大嫌いな聖ルチーアの生活で、アンタを満足させられたら私の勝ち、
そうでなければ、アンタの勝ち」
語る言葉は生命力に満ちていて。
本当にこれが死に行く少女の様相なのかと、メリュジーヌは言葉に出さず驚嘆していた。
本当にこれが死に行く少女の様相なのかと、メリュジーヌは言葉に出さず驚嘆していた。
「もしアンタが勝てば、私は雛見沢から出るのをきっぱり諦める。
それまでの時間は……まぁアンタを唆した奴に融通させなさい…そう伝えて」
それまでの時間は……まぁアンタを唆した奴に融通させなさい…そう伝えて」
だが、流石に少女にも限界の時が迫っていた。
元より今迄生きていたのが不思議なくらいの大出血だったのだ。
視線はおぼつかなくて、ハァハァと呼吸も苦し気なものに変わった。
その様を見て、メリュジーヌが、重苦しく沈黙を保っていた口を開く。
そして、尋ねた。
何故、対主催が勝つと言えるのか、と。
何故、沙都子がその言葉を聞き入れると思うのか、と。
その問いを聞いて、梨花はふっと笑って。
元より今迄生きていたのが不思議なくらいの大出血だったのだ。
視線はおぼつかなくて、ハァハァと呼吸も苦し気なものに変わった。
その様を見て、メリュジーヌが、重苦しく沈黙を保っていた口を開く。
そして、尋ねた。
何故、対主催が勝つと言えるのか、と。
何故、沙都子がその言葉を聞き入れると思うのか、と。
その問いを聞いて、梨花はふっと笑って。
「希望や……奇跡って言うのは、意外としぶといものなのですよ。にぱー」
そして、もう一つ。
これを答えずに死ぬ訳にはいかないと。
梨花は最後の力を振り絞る。
どうして、彼女が私の言葉を聞き入れるか、だって?
これを答えずに死ぬ訳にはいかないと。
梨花は最後の力を振り絞る。
どうして、彼女が私の言葉を聞き入れるか、だって?
「私と沙都子が、友達だからよ」
既に、袋小路を打ち破る糸口は掴んだ。きっと、恐らく、多分。
だから今は。
どんなすれ違いも、衝突も、惨劇も。乗り越えて。
また、何かのなく頃に。
何某かの確信を得たように、彼女はもう一度笑った。
その笑みは、猫を被ったモノではなく。
百年の魔女としての物でもなく。
明日の可能性を信じた、少女の物だった。
そうして。
古手梨花は、死んだ。
だから今は。
どんなすれ違いも、衝突も、惨劇も。乗り越えて。
また、何かのなく頃に。
何某かの確信を得たように、彼女はもう一度笑った。
その笑みは、猫を被ったモノではなく。
百年の魔女としての物でもなく。
明日の可能性を信じた、少女の物だった。
そうして。
古手梨花は、死んだ。
【サトシ@ポケットモンスター(アニメ) 死亡】
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に卒 死亡】
【古手梨花@ひぐらしのなく頃に卒 死亡】
二人分の死体を横たえ。
ランドセルの中の支給品を回収し、一息つく。
古手梨花のランドセルの中にあった、一枚のカード。
水色を基調としたそのカードには、治癒の効果が籠められていた。
それを使用し、電撃で負ったダメージを幾ばくか癒した。
だが、沙都子への報告も兼ねて一先ず休息を取りたかった。
ランドセルの中の支給品を回収し、一息つく。
古手梨花のランドセルの中にあった、一枚のカード。
水色を基調としたそのカードには、治癒の効果が籠められていた。
それを使用し、電撃で負ったダメージを幾ばくか癒した。
だが、沙都子への報告も兼ねて一先ず休息を取りたかった。
古手梨花の最後の言葉を聞いたら、彼女はどんな反応をするかな。
独りになって浮かぶのはそんな考えだった。
当初は、生きたまま沙都子の前に引き渡すことを考えた。
だが、メリュジーヌは別に沙都子の部下になった覚えはない。
むしろ、古手梨花は北条沙都子の悪評を流布するだけでなく。
北条沙都子の視野を極端に狭めてしまう危険因子だった。
それに、古手梨花を拘束したとしても足手纏いを連れて歩く羽目になる。
それならば、殺してしまった方がいい。
メリュジーヌの至った結論だった。
当初は、生きたまま沙都子の前に引き渡すことを考えた。
だが、メリュジーヌは別に沙都子の部下になった覚えはない。
むしろ、古手梨花は北条沙都子の悪評を流布するだけでなく。
北条沙都子の視野を極端に狭めてしまう危険因子だった。
それに、古手梨花を拘束したとしても足手纏いを連れて歩く羽目になる。
それならば、殺してしまった方がいい。
メリュジーヌの至った結論だった。
(私が古手梨花を殺した事を知ったら、彼女は怒るかな)
まぁ怒った所で、と言う話ではあるが。
目指す場所は優勝なのに、この程度で決裂するようなビジネスパートナーは願い下げだ。
むしろ今回の一見は彼女との関係性を試すいい試金石になる。
そう結論付けて、ランドセルから沙都子に譲渡された通信機を取り出し、身に着ける。
目指す場所は優勝なのに、この程度で決裂するようなビジネスパートナーは願い下げだ。
むしろ今回の一見は彼女との関係性を試すいい試金石になる。
そう結論付けて、ランドセルから沙都子に譲渡された通信機を取り出し、身に着ける。
「あぁ、沙都子かい?少し手間取ってね。二人…上手く行けば三人仕留めた。
今から戻って諸々話すよ。場所は何処にいる?………あぁ、分かった」
今から戻って諸々話すよ。場所は何処にいる?………あぁ、分かった」
そんな業務連絡染みた一報を入れて、返事も待たずに通話を打ち切る。
此処ももうじき完全な禁止エリアとなる。一刻も早く脱出しなければならない。
最後に、もう一度殺した少年少女を一瞥する。
自分が持っていない物を確かに持っていた二人だった。
きっと、これからも自分が得ることはできない物を持っていた二人だった。
眩しい二人だった。
この子供達と比べれば、自分は───
此処ももうじき完全な禁止エリアとなる。一刻も早く脱出しなければならない。
最後に、もう一度殺した少年少女を一瞥する。
自分が持っていない物を確かに持っていた二人だった。
きっと、これからも自分が得ることはできない物を持っていた二人だった。
眩しい二人だった。
この子供達と比べれば、自分は───
「結局の所、僕は泥の底から届かない星を追いかける、腐肉でしかないんだろうね」
そう、一言残して。
メリュジーヌが飛び上がる。
地上で幾つか人影を見定めたが、今は無視した。
二人の子供の未来を喰らって、最後の竜はその地から姿を消した。
メリュジーヌが飛び上がる。
地上で幾つか人影を見定めたが、今は無視した。
二人の子供の未来を喰らって、最後の竜はその地から姿を消した。
【G-2 港/1日目/早朝】
【メリュジーヌ(妖精騎士ランスロット)@Fate/Grand Order】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(小)、自暴自棄(極大)、イライラ、ルサルカに対する憎悪
[装備]:『今は知らず、無垢なる湖光』、M61ガトリングガン@ Fate/Grand Order
[道具]:基本支給品×3、イヤリング型携帯電話@名探偵コナン、ブラック・マジシャン・ガール@ 遊戯王DM、
デザートイーグル@Dies irae、『治療の神ディアン・ケト』@遊戯王DM、Zリング@ポケットモンスター(アニメ)
[思考・状況]基本方針:オーロラの為に、優勝する。
0:一旦沙都子の元に帰投する。
1:沙都子の言葉に従う、今は優勝以外何も考えたくない。
2:最後の二人になれば沙都子を殺し、優勝する。
3:ルサルカは生きていれば殺す。
4:カオス…すまない。
5:絶望王に対して……。
[備考]
※第二部六章『妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ』にて、幕間終了直後より参戦です。
※サーヴァントではない、本人として連れてこられています。
※『誰も知らぬ、無垢なる鼓動(ホロウハート・アルビオン)』は完全に制限されています。元の姿に戻る事は現状不可能です。
[状態]:ダメージ(中)、疲労(小)、自暴自棄(極大)、イライラ、ルサルカに対する憎悪
[装備]:『今は知らず、無垢なる湖光』、M61ガトリングガン@ Fate/Grand Order
[道具]:基本支給品×3、イヤリング型携帯電話@名探偵コナン、ブラック・マジシャン・ガール@ 遊戯王DM、
デザートイーグル@Dies irae、『治療の神ディアン・ケト』@遊戯王DM、Zリング@ポケットモンスター(アニメ)
[思考・状況]基本方針:オーロラの為に、優勝する。
0:一旦沙都子の元に帰投する。
1:沙都子の言葉に従う、今は優勝以外何も考えたくない。
2:最後の二人になれば沙都子を殺し、優勝する。
3:ルサルカは生きていれば殺す。
4:カオス…すまない。
5:絶望王に対して……。
[備考]
※第二部六章『妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ』にて、幕間終了直後より参戦です。
※サーヴァントではない、本人として連れてこられています。
※『誰も知らぬ、無垢なる鼓動(ホロウハート・アルビオン)』は完全に制限されています。元の姿に戻る事は現状不可能です。
「クッ……クククク……ツメが甘いのよ……最強の妖精騎士が聞いて呆れるわ………」
派手に吹き飛ばされた。
墜落位置は、温泉の看板が見える事からC-2とD-2の境目あたりだろう。
ハァ…ハァ…と荒い息を吐いて。
仙豆で回復したはずなのに、鋭い痛みが走る身体で、それでもルサルカは窮地を脱した安堵の笑みを浮かべた。
メリュジーヌが振るう、切開剣技という技を受けた影響だった。
彼女の剣技を受けた者は簡単には治らない。
斬りつけられるだけでなく、魂にぞりぞりと鑢をかけられた様な状態だからだ。
それでも、あの怪物から生き延びた事実はルサルカの精神を高揚させた。
墜落位置は、温泉の看板が見える事からC-2とD-2の境目あたりだろう。
ハァ…ハァ…と荒い息を吐いて。
仙豆で回復したはずなのに、鋭い痛みが走る身体で、それでもルサルカは窮地を脱した安堵の笑みを浮かべた。
メリュジーヌが振るう、切開剣技という技を受けた影響だった。
彼女の剣技を受けた者は簡単には治らない。
斬りつけられるだけでなく、魂にぞりぞりと鑢をかけられた様な状態だからだ。
それでも、あの怪物から生き延びた事実はルサルカの精神を高揚させた。
「絶対に…許さない…願いを叶えるのは、この私、何だから……」
自身の愛と確かな決着を付けられたにも関わらず、それ以上を望む欲張りには負けない。
絶対に、私が願いを叶えて見せる。
願いを叶えて、その時はあの愛しい人に───
あれ、だけれど。
その愛しい人とは、果たして誰だったか???
分からなくなった。分からないなりに考えて、一つの名前を導き出す。
絶対に、私が願いを叶えて見せる。
願いを叶えて、その時はあの愛しい人に───
あれ、だけれど。
その愛しい人とは、果たして誰だったか???
分からなくなった。分からないなりに考えて、一つの名前を導き出す。
「メリュジーヌ…貴方に絶対に追いついて、縛り上げて、私の元から去れなくしてあげる。
私が、貴方にとっての……『不変』になる。私は貴女を、手に入れる」
私が、貴方にとっての……『不変』になる。私は貴女を、手に入れる」
支離滅裂な思考だった。
原初の渇望が僅かに顔を覗かせ、そしてあっという間に醜悪な執着に変わっていく。
彼女を知るものが見れば、冷笑を禁じ得ない程見るに堪えない光景であった。
成就した時の光景を夢想して、ルサルカは悦に浸った。
オーロラは愚にもつかない毒婦だったが、何故彼女がメリュジーヌを飼い続けたのかは理解できた気がした。
愛もあるだろう。でもそれと同じくらい、飛んでいってほしくなかったのだ。
自分と同じ大地に這いずり、朽ち果てて行って欲しかったのだ。
置き去りなど、させたくなかったのだ。
あぁ、それは今のルサルカにも共感できる気がした。
だって、私は足が遅いから。
原初の渇望が僅かに顔を覗かせ、そしてあっという間に醜悪な執着に変わっていく。
彼女を知るものが見れば、冷笑を禁じ得ない程見るに堪えない光景であった。
成就した時の光景を夢想して、ルサルカは悦に浸った。
オーロラは愚にもつかない毒婦だったが、何故彼女がメリュジーヌを飼い続けたのかは理解できた気がした。
愛もあるだろう。でもそれと同じくらい、飛んでいってほしくなかったのだ。
自分と同じ大地に這いずり、朽ち果てて行って欲しかったのだ。
置き去りなど、させたくなかったのだ。
あぁ、それは今のルサルカにも共感できる気がした。
だって、私は足が遅いから。
「手に入れて……私から離れられなくしてから殺せば、キモチいいでしょうね。
その上で願いを叶えれば、きっと格別だわ」
その上で願いを叶えれば、きっと格別だわ」
自分は、ブック・オブ・ジ・エンドと言う刀の影響を受けていない。
その証拠に、メリュジーヌも屈服させ、手に入れた後はゴミの様に捨てられる。
切り捨てて、願いの成就を優先できる。
確かに、その視点ではブック・オブ・ジ・エンドの影響を受けていないと言えた。
だが、彼女のもっと深い所……根源たる渇望は、深刻な影響を受けていた。
元より、自壊衝動という魂の寿命限界を迎えつつあり、永遠の刹那を忘却していた彼女が。
ありもしない過去を改変し挟み込むというブック・オブ・ジ・エンドを使用して真に何の影響も受けないなどありえる筈もなかった。
その証拠に、メリュジーヌも屈服させ、手に入れた後はゴミの様に捨てられる。
切り捨てて、願いの成就を優先できる。
確かに、その視点ではブック・オブ・ジ・エンドの影響を受けていないと言えた。
だが、彼女のもっと深い所……根源たる渇望は、深刻な影響を受けていた。
元より、自壊衝動という魂の寿命限界を迎えつつあり、永遠の刹那を忘却していた彼女が。
ありもしない過去を改変し挟み込むというブック・オブ・ジ・エンドを使用して真に何の影響も受けないなどありえる筈もなかった。
「この刀を使って、他の参加者を操れば…シュライバーをぶつけるのもいいかも」
キウルに支給されたブック・オブ・ジ・エンドの説明は記載されていない事項があった。
それは、斬られた対象は数分で効果が解除され、記憶を挟みこまれた事実も認識可能だが。
ブック・オブ・ジ・エンドを握る本人───使用者には、その効果が永続する。
正確には、持ち続けている限り、効果は解除されない。
ブック・オブ・ジ・エンドを手放せば、斬られた対象と同じく十分ほどで効果が解除されるが…
人は、一度手に入れた力と縁を切るのは難しい。
手に入れた力を強力だと認識していれば、猶更だ。
それは、斬られた対象は数分で効果が解除され、記憶を挟みこまれた事実も認識可能だが。
ブック・オブ・ジ・エンドを握る本人───使用者には、その効果が永続する。
正確には、持ち続けている限り、効果は解除されない。
ブック・オブ・ジ・エンドを手放せば、斬られた対象と同じく十分ほどで効果が解除されるが…
人は、一度手に入れた力と縁を切るのは難しい。
手に入れた力を強力だと認識していれば、猶更だ。
今のルサルカ・シュヴェーゲリンをキャンパスとするなら。
掠れた原初の渇望(ねがい)の上から、改変された過去というペンキを塗りたくっている状態だ。
ブック・オブ・ジ・エンドを使用すれば使用する程、
彼女が世界で自分以外に唯一美しいと思った思い出は、■■■■は塗りつぶされていく。
だが、彼女自身がそれに気づけていない。
掠れた原初の渇望(ねがい)の上から、改変された過去というペンキを塗りたくっている状態だ。
ブック・オブ・ジ・エンドを使用すれば使用する程、
彼女が世界で自分以外に唯一美しいと思った思い出は、■■■■は塗りつぶされていく。
だが、彼女自身がそれに気づけていない。
「───今度こそ、置き去りに何か…させないんだから」
魔女は笑う。自分こそ全てを手玉に取る者だと信じて。
自分自身の手で、最も美しかった記憶を犯している事に気づきもしないで。
それこそ、彼女もまた決して交わらない空に浮かぶ星を追いかける、地星であることの証明だったのかもしれない。
自分自身の手で、最も美しかった記憶を犯している事に気づきもしないで。
それこそ、彼女もまた決して交わらない空に浮かぶ星を追いかける、地星であることの証明だったのかもしれない。
【C-2 /1日目/早朝】
【ルサルカ・シュヴェーゲリン@Dies Irae】
[状態]:全身に鋭い痛み (中)、シュライバーに対する恐怖、キウルの話を聞いた動揺(中)、メリュジーヌに対する妄執(大)、ブック・オブ・ジ・エンドによる記憶汚染
[装備]:血の伯爵夫人@Dies Irae、ブック・オブ・ジ・エンド@BLEACH
[道具]:基本支給品、仙豆×1@ドラゴンボールZ
[思考・状況]基本方針:今は様子見。
1:シュライバーから逃げる。可能なら悟飯を利用し潰し合わせる。
2:ドラゴンボールに興味。悟飯の世界に居る、悟空やヤムチャといった強者は生還後も利用できるかも。
3:メリュジーヌは絶対に手に入れて、足元に跪かせる。叶わないなら殺す。
4:ガムテからも逃げる。
5:キウルの不死の化け物の話に嫌悪感。
6:俊國(無惨)が海馬コーポレーションを調べて生きて再会できたならラッキーね。
7:どんな方法でもわたしが願いを叶えて───。
[備考]
※少なくともマリィルート以外からの参戦です。
※創造は一度の使用で、12時間使用不可。停止能力も一定以上の力で、ゴリ押されると突破されます。
形成は連発可能ですが物理攻撃でも、拷問器具は破壊可能となっています。
※悟飯からセル編時点でのZ戦士の話を聞いています。
※ルサルカの魔眼も制限されており、かなり曖昧にしか働きません。
※情報交換の中で、シュライバーの事は一切話していません。
※ブック・オブ・オブ・ジ・エンドの記憶干渉とルサルカ自身の自壊衝動の相互作用により、ブック・オブ・ジ・エンドを使った相手に対する記憶汚染と、強い執着が現れます。
※ブック・オブ・ジ・エンドの効果はブック・オブ・ジ・エンドを手放せば、斬られた対象と同じく数分間で解除されます。
[状態]:全身に鋭い痛み (中)、シュライバーに対する恐怖、キウルの話を聞いた動揺(中)、メリュジーヌに対する妄執(大)、ブック・オブ・ジ・エンドによる記憶汚染
[装備]:血の伯爵夫人@Dies Irae、ブック・オブ・ジ・エンド@BLEACH
[道具]:基本支給品、仙豆×1@ドラゴンボールZ
[思考・状況]基本方針:今は様子見。
1:シュライバーから逃げる。可能なら悟飯を利用し潰し合わせる。
2:ドラゴンボールに興味。悟飯の世界に居る、悟空やヤムチャといった強者は生還後も利用できるかも。
3:メリュジーヌは絶対に手に入れて、足元に跪かせる。叶わないなら殺す。
4:ガムテからも逃げる。
5:キウルの不死の化け物の話に嫌悪感。
6:俊國(無惨)が海馬コーポレーションを調べて生きて再会できたならラッキーね。
7:どんな方法でもわたしが願いを叶えて───。
[備考]
※少なくともマリィルート以外からの参戦です。
※創造は一度の使用で、12時間使用不可。停止能力も一定以上の力で、ゴリ押されると突破されます。
形成は連発可能ですが物理攻撃でも、拷問器具は破壊可能となっています。
※悟飯からセル編時点でのZ戦士の話を聞いています。
※ルサルカの魔眼も制限されており、かなり曖昧にしか働きません。
※情報交換の中で、シュライバーの事は一切話していません。
※ブック・オブ・オブ・ジ・エンドの記憶干渉とルサルカ自身の自壊衝動の相互作用により、ブック・オブ・ジ・エンドを使った相手に対する記憶汚染と、強い執着が現れます。
※ブック・オブ・ジ・エンドの効果はブック・オブ・ジ・エンドを手放せば、斬られた対象と同じく数分間で解除されます。
【JM61Aガトリングガン@ Fate/Grand Order】
狂化した円卓の騎士、ランスロットがかつて第四次聖杯戦争において自身の宝具である『騎士は徒手にて死せず』により宝具化したF-15の装備のガトリングガン。
何故かカルデアの狂化ランスロットの霊基にも刻まれており、宝具使用時にはこのガトリングを乱射する、気に入ったのだろうか。
宝具化によって使用者の魔力量に比例して弾丸を発射できる。
また、黒い魔力に浸食されていることで威力は大幅に向上している。
狂化した円卓の騎士、ランスロットがかつて第四次聖杯戦争において自身の宝具である『騎士は徒手にて死せず』により宝具化したF-15の装備のガトリングガン。
何故かカルデアの狂化ランスロットの霊基にも刻まれており、宝具使用時にはこのガトリングを乱射する、気に入ったのだろうか。
宝具化によって使用者の魔力量に比例して弾丸を発射できる。
また、黒い魔力に浸食されていることで威力は大幅に向上している。
【Zリング@ポケットモンスター(アニメ)】
古手梨花に支給。
トレーナーの気力体力を使って、ポケモンが Zパワーを放てるようにする不思議な腕輪。
このZパワーを用いて放つ技は、通常の技よりも遥かに強力なZワザと呼ばれる。
デンキZのZクリスタルとセットで支給された。
古手梨花に支給。
トレーナーの気力体力を使って、ポケモンが Zパワーを放てるようにする不思議な腕輪。
このZパワーを用いて放つ技は、通常の技よりも遥かに強力なZワザと呼ばれる。
デンキZのZクリスタルとセットで支給された。
【治療の神ディアン・ケト@遊戯王デュエルモンスターズ】
古手梨花に支給。
使用すれば1000ライフポイント回復できる魔法カード。
本ロワでは参加者の回復に用いられ、使えばダメージや疲労を一段階引き下げられる。
例:ダメージ(大)→ダメージ(中)
ただし、対象が致命傷を負ったとみなされる参加者の場合発動は失敗し、不発に終わる。
当然ながら欠損した腕が生えたりもしないし、複数人を一気に回復させることもできない。
一度使用すれば三時間使用不可能となる。
使用すれば1000ライフポイント回復できる魔法カード。
本ロワでは参加者の回復に用いられ、使えばダメージや疲労を一段階引き下げられる。
例:ダメージ(大)→ダメージ(中)
ただし、対象が致命傷を負ったとみなされる参加者の場合発動は失敗し、不発に終わる。
当然ながら欠損した腕が生えたりもしないし、複数人を一気に回復させることもできない。
一度使用すれば三時間使用不可能となる。
【ルサルカ、ディオ、キウル、三人の共通認識】
【海について】
船や何らかの方法で海上に滞在する場合、一時間以上の滞在で起爆…そして地図外に出ても警告が鳴り起爆する。
現状、首輪を外して地図の外へ出ると、どうなるかは不明。
つまり、海上での遅延行動は不可能。
船や何らかの方法で海上に滞在する場合、一時間以上の滞在で起爆…そして地図外に出ても警告が鳴り起爆する。
現状、首輪を外して地図の外へ出ると、どうなるかは不明。
つまり、海上での遅延行動は不可能。
【バトルロワイアル会場について、ルサルカの考察】
数十人を機械や魔術で生きたまま、数日間管理するのは現実的ではなく、恐らく乃亜は自分も含めた電脳世界を異界として再現して、参加者は全員生身のまま招かれたと考えています。
数十人を機械や魔術で生きたまま、数日間管理するのは現実的ではなく、恐らく乃亜は自分も含めた電脳世界を異界として再現して、参加者は全員生身のまま招かれたと考えています。
078:聖少女領域 | 投下順に読む | 080:暴発 |
時系列順に読む | ||
067:暗い水底の精霊達 | メリュジーヌ | 099:DRAGON FLY |
ルサルカ・シュヴェーゲリン | 000:[[]] | |
058:無情の世界 | サトシ | GAME OVER |
古手梨花 | GAME OVER |