「乃亜の事、教えてやるぜぃ……」
沙都子とシャルティアの一触即発の空気に割り込んだのは、他の誰でもない渦中の一人であるモクバだった。
こちらの会話中に目が覚めたらしい。ドロテアと違い、肉体の貧弱さを考えて加減するようには指示したので、目覚めるのも早かったのだろう。
こちらの会話中に目が覚めたらしい。ドロテアと違い、肉体の貧弱さを考えて加減するようには指示したので、目覚めるのも早かったのだろう。
「随分、物分かりが良いのですのね。
貴方、私に敵意を抱いていると思ってましたのに。
有馬かなという女の子がどうとか」
貴方、私に敵意を抱いていると思ってましたのに。
有馬かなという女の子がどうとか」
「どうせ、拒んでも拷問したりするんだろ? だったら、知ってる事全部話してやるよ。
俺だって痛いのは嫌だ」
俺だって痛いのは嫌だ」
挑発を交えながら、沙都子はモクバの様子を伺う。
かなの一件をとぼければ、怒りに頭に血を登らせて食って掛かると踏んだが、乗ってこない。
これが、冷静さを取り戻したのか、最早怒る気力すらない程に無気力に陥り弱ったのか。
後者であれば嬉しいが、前者であれば厄介だ。
理想はシャルティアに魅了で半洗脳状態にさせることだが、沙都子のいう事を素直に聞くとは思えない。
シャルティアが些細な機微に気付いて魅了を自発的に使ってくれると良いのだが、そんな気配りにも見えない。
それに下手に魅了すると、こちらの受け答えにしか応えず、故意でなくとも重要な情報を吐かない、というより質問されなかったので応えられなかったという可能性も否定しきれない。
かなの一件をとぼければ、怒りに頭に血を登らせて食って掛かると踏んだが、乗ってこない。
これが、冷静さを取り戻したのか、最早怒る気力すらない程に無気力に陥り弱ったのか。
後者であれば嬉しいが、前者であれば厄介だ。
理想はシャルティアに魅了で半洗脳状態にさせることだが、沙都子のいう事を素直に聞くとは思えない。
シャルティアが些細な機微に気付いて魅了を自発的に使ってくれると良いのだが、そんな気配りにも見えない。
それに下手に魅了すると、こちらの受け答えにしか応えず、故意でなくとも重要な情報を吐かない、というより質問されなかったので応えられなかったという可能性も否定しきれない。
「乃亜は……電脳世界にコピーされた、死んだ人間の人格を模したプログラム……データだよ」
故に、そのままシラフで、モクバに自発的に情報を吐かせるという形に落ち着いた。
妙な点、確実性を裏付ける場合に魅了を使い、駄目押しをする。
妙な点、確実性を裏付ける場合に魅了を使い、駄目押しをする。
(電脳? コピー? プログラム?)
沙都子はその時に限り、元の10歳前後の歳相応の表情に戻り、目をぱちくりとさせる。
昭和の人間、現代の日本より元号が2つも後ろの時代の人間が急にそんなことを話されても、理解が及ぶ筈がない。
幸い、乃亜が支給したデバイスやカオスに搭載された機能については、そういうものだと割り切って理解したが。
SFのジャンルに明るい訳でもない沙都子からすれば、かなり意味の分からない擁護の連続だった。
それでも辛うじて、テレビアニメで流れていたSF物から近しい設定を思い出し、自分の中ので咀嚼する。
昭和の人間、現代の日本より元号が2つも後ろの時代の人間が急にそんなことを話されても、理解が及ぶ筈がない。
幸い、乃亜が支給したデバイスやカオスに搭載された機能については、そういうものだと割り切って理解したが。
SFのジャンルに明るい訳でもない沙都子からすれば、かなり意味の分からない擁護の連続だった。
それでも辛うじて、テレビアニメで流れていたSF物から近しい設定を思い出し、自分の中ので咀嚼する。
「かつてあいつは、ビッグ5という手下を連れて俺達にデスゲームを強要したんだ」
バトルシティ準決勝の場アルトカラズへと向かう飛行船。
そんな中、突如として謎の巨大要塞が現れ、飛行船と乗組員達を飲み込んでしまう。
そして遊戯たちの前に、見た目は海馬にそっくりだが正体不明の敵・海馬乃亜が立ちはだかる。
その正体は、モクバの養親である海場剛三郎の実の息子であり、既に他界した乃亜という子供の意識を電脳世界に再現したデータ。
海馬の肉体を乗っ取り、そして乃亜が海馬を超えていることを証明するために。
ついでに、遊戯達はその場に居合わせてしまったが為に、乃亜が支配する電脳世界で、敗者は肉体を奪われるデスゲームに臨まざるを得なくなる。
そんな中、突如として謎の巨大要塞が現れ、飛行船と乗組員達を飲み込んでしまう。
そして遊戯たちの前に、見た目は海馬にそっくりだが正体不明の敵・海馬乃亜が立ちはだかる。
その正体は、モクバの養親である海場剛三郎の実の息子であり、既に他界した乃亜という子供の意識を電脳世界に再現したデータ。
海馬の肉体を乗っ取り、そして乃亜が海馬を超えていることを証明するために。
ついでに、遊戯達はその場に居合わせてしまったが為に、乃亜が支配する電脳世界で、敗者は肉体を奪われるデスゲームに臨まざるを得なくなる。
「最後は、遊戯が……乃亜を倒して、兄サマが剛三郎を倒したんだ」
「……」
恐らく、電脳世界というワードに、しっかり話に付いて行けたのは、シナプスの最高技術の結晶たるカオスのみであり。
辛うじてメリュジーヌも汎人類史にも明るかった故に、凡そは理解していた。
沙都子とシャルティアは若干の腑に落ちなさも覚えながら、話の概要だけはそれなりに掻い摘んで理解はした。
辛うじてメリュジーヌも汎人類史にも明るかった故に、凡そは理解していた。
沙都子とシャルティアは若干の腑に落ちなさも覚えながら、話の概要だけはそれなりに掻い摘んで理解はした。
「つまり、貴方……殆ど乃亜を倒すのに、関係がないじゃありませんか」
情報源として期待できるだけの、立場にない。
乃亜と同じ海馬という姓に、もしやという思惑があり話を聞き出そうとしたが、ほぼ時間の無駄だった。
沙都子は呆れ、シャルティアも退屈そうに欠伸を噛み殺そうとする。
乃亜と同じ海馬という姓に、もしやという思惑があり話を聞き出そうとしたが、ほぼ時間の無駄だった。
沙都子は呆れ、シャルティアも退屈そうに欠伸を噛み殺そうとする。
「良いから、聞けって……!
…乃亜の奴は、優勝したって……願いなんて叶えてくれないぜぃ……」
…乃亜の奴は、優勝したって……願いなんて叶えてくれないぜぃ……」
「ですから、その根拠は何処から……」
「一番大事なのはここからさ。これだけは…自信持って言える……。
前に、俺達が巻き込まれたゲームじゃ、俺達に勝てば…現実世界に帰してやると嘘を吐いて、刺客を送ってきた……それがビッグ5という、うちの会社の元幹部連中だ。
そいつらは肉体を失って、電脳世界を漂ってた幽霊みたいな連中だ。
遊戯達の体を奪うのに躍起になって、乃亜の言うがままゲームを挑んできたよ!!
でも……それは、全部嘘で……皆、消されたんだ。俺の前で」
前に、俺達が巻き込まれたゲームじゃ、俺達に勝てば…現実世界に帰してやると嘘を吐いて、刺客を送ってきた……それがビッグ5という、うちの会社の元幹部連中だ。
そいつらは肉体を失って、電脳世界を漂ってた幽霊みたいな連中だ。
遊戯達の体を奪うのに躍起になって、乃亜の言うがままゲームを挑んできたよ!!
でも……それは、全部嘘で……皆、消されたんだ。俺の前で」
「え、どういうこと……」
「あいつは、誰の願いも…叶えるつもりは……ないんだ! 少なくとも前のデスゲームじゃ、そういう嘘を平気でする奴なんだよ!!」
沈黙を貫いていたカオスはより一層、大きく反応を見せた。
そう、最大の懸念はこれだ。
乃亜は一度遊戯達に敗れ、肉体を喪い電脳世界を漂っていたビッグ5に、再び遊戯達の誰かに勝てば肉体を与えると話してけしかけた。
だが、乃亜にそんな願いを叶えるつもりはない。ただ、遊戯の仲間を襲わせて楽しむだけの退屈しのぎでしかなかった。
実際には、その後乃亜がモクバの肉体を奪ったように、ビッグ5にもそれ相応の報酬も渡せた筈にも関わらず。
乃亜は一度遊戯達に敗れ、肉体を喪い電脳世界を漂っていたビッグ5に、再び遊戯達の誰かに勝てば肉体を与えると話してけしかけた。
だが、乃亜にそんな願いを叶えるつもりはない。ただ、遊戯の仲間を襲わせて楽しむだけの退屈しのぎでしかなかった。
実際には、その後乃亜がモクバの肉体を奪ったように、ビッグ5にもそれ相応の報酬も渡せた筈にも関わらず。
「っ……」
でまかせだ。
そう断じるのは簡単だが、同じ海馬性を持つ乃亜の近親者だ。
口の上手い沙都子でも、信憑性が低いとは言い切れなかった。
そう断じるのは簡単だが、同じ海馬性を持つ乃亜の近親者だ。
口の上手い沙都子でも、信憑性が低いとは言い切れなかった。
「だから……考え直せ……」
正直、これらの仮説と自分が見てきた事実を言うのは、躊躇われた。
正しいのか、分からないから。
下手に主催の信用を落とせば、殺し合いの続行にも関わりモクバの首輪が爆破するかもしれない。
正しいのか、分からないから。
下手に主催の信用を落とせば、殺し合いの続行にも関わりモクバの首輪が爆破するかもしれない。
「このまま戦って、本当に優勝出来るのかよ!」
だが、もうじき殺されるのなら命は惜しくない。数分寿命が変わるだけだ。
(きな臭くなってきたでありんすねぇ……)
シャルティアからして、乃亜の人間性を信じているわけでもなく、もしも本格的な脱出手段があれば、それに乗るのも吝かではなかった。
イリヤとの初邂逅時に、一応はプランを聞き出そうとして確認したのがその証左だ。
もっとも、殺し合い開幕から6時間も経たない間に、即見切りを付けたのは元の残忍さと短気さによるものであり、脱出方法を人間と手を組んで模索するという手段は、余程の事がなければ選ばない優先度の低い手札でもあるが。
イリヤとの初邂逅時に、一応はプランを聞き出そうとして確認したのがその証左だ。
もっとも、殺し合い開幕から6時間も経たない間に、即見切りを付けたのは元の残忍さと短気さによるものであり、脱出方法を人間と手を組んで模索するという手段は、余程の事がなければ選ばない優先度の低い手札でもあるが。
「お話になりませんわね。これ以上のお喋りは……」
「勝手に仕切るんじゃありんせん」
モクバに用済みと処刑宣告を告げようとし、それをシャルティアは遮った。
「こっちはまだ、話足りない事が山ほどありんす」
シャルティアが続行を望むのなら、それを妨害するのであれば敵対行為とみなされる。
ここで戦闘を開始する程、シャルティアも馬鹿ではないが、実力行使が必要とあらば遠慮なく実行する手合い。
しかも、それを武力で余裕を以て制圧できる力は、沙都子側にも備わっていない。
メリュジーヌとカオスの二人掛かりと言えど、完全武装したシャルティアを敵に回すのは避けたい。
負けはしないが、勝った時の旨味もまるでない。それがメリュジーヌ本人の言い分だった。
最強らしからぬ、賛辞の言葉は沙都子の脳裏に強く残る。
ここで戦闘を開始する程、シャルティアも馬鹿ではないが、実力行使が必要とあらば遠慮なく実行する手合い。
しかも、それを武力で余裕を以て制圧できる力は、沙都子側にも備わっていない。
メリュジーヌとカオスの二人掛かりと言えど、完全武装したシャルティアを敵に回すのは避けたい。
負けはしないが、勝った時の旨味もまるでない。それがメリュジーヌ本人の言い分だった。
最強らしからぬ、賛辞の言葉は沙都子の脳裏に強く残る。
(食いついてきた……!)
モクバは、自身の狙い通りに事が運ぶのを確信する。
この場で口のやり合いで沙都子を言い負かしても、ただ情報を吐き出しても意味はない。
カオスとメリュジーヌは完全に取り込まれており、聞く耳を持たない。
沙都子をどう論破しようと、この二人がスタンスをひっくり返す事は先ずない。
だが海馬コーポレーションの時と違い、一つだけモクバにとって有利な駒が存在する。
この場で口のやり合いで沙都子を言い負かしても、ただ情報を吐き出しても意味はない。
カオスとメリュジーヌは完全に取り込まれており、聞く耳を持たない。
沙都子をどう論破しようと、この二人がスタンスをひっくり返す事は先ずない。
だが海馬コーポレーションの時と違い、一つだけモクバにとって有利な駒が存在する。
シャルティアの存在だ。
この女だけは、沙都子に対し反感を抱き、また訝しんでいる。
そもそも、現状に対し酷く不満を抱いているのは見て取れた。
シャルティアが評価しているのは、メリュジーヌだけで後は即刻処分したいと鬱憤を溜めている。
実際に沙都子への言動には棘があり、主導権を握らせまいとしていた。
そもそも、現状に対し酷く不満を抱いているのは見て取れた。
シャルティアが評価しているのは、メリュジーヌだけで後は即刻処分したいと鬱憤を溜めている。
実際に沙都子への言動には棘があり、主導権を握らせまいとしていた。
(沙都子達と組むのも、後々を考えれば厄介……)
モクバの読み通り、シャルティアも決めあぐねていた。
何より、状況を鑑みれば、シャルティアも決して有利とは言い難い。
当面は沙都子と結託し、事を運べば安泰ではある。それだけの戦力と策略は提供されるだろう。
シャルティアが人間に従うという、屈辱に耐えればの話ではあるが。
だが、そこまでして終盤まで生き残れたとして、残り4人となった段階で真っ先に潰されるのもシャルティアである。
何より、状況を鑑みれば、シャルティアも決して有利とは言い難い。
当面は沙都子と結託し、事を運べば安泰ではある。それだけの戦力と策略は提供されるだろう。
シャルティアが人間に従うという、屈辱に耐えればの話ではあるが。
だが、そこまでして終盤まで生き残れたとして、残り4人となった段階で真っ先に潰されるのもシャルティアである。
『マスター!メリュ子おねぇちゃん!椅子!!』
『ありがとうございます。カオスさん。さ、私の膝に』
『ありがとうございます。カオスさん。さ、私の膝に』
特にカオスの異常なまでの沙都子への服従心と依存は一線を画す。
『そうは言っておりんせん、ただ納得のいく説明を求めたいというだけでありんす』
『それは、沙都子が戻ったら────』
『それは、沙都子が戻ったら────』
メリュジーヌもそこまでではないものの、明らかに沙都子に対し別の参加者とは異なる思い入れを抱いている。
特にメリュジーヌの場合は最早殆どの思考と判断を放棄して沙都子に委ねているようにすら受け取れた。
特にメリュジーヌの場合は最早殆どの思考と判断を放棄して沙都子に委ねているようにすら受け取れた。
(魅了もなしに、上位種を洗脳するなんて、悪い冗談でしょう)
沙都子達は、マーダーから見ても厄介な同盟だ。
一枚岩でなければ組むに値する。いずれ裏切り、殺す間柄なのだから全員が敵同士である方がフェアである。
自分以外の潰し合いを静観し、隙を見てシャルティアが漁夫の利を得るというのも良い。
しかし、まず間違いなくカオスは沙都子を優先し、メリュジーヌすらほぼ沙都子に与する恐れがある以上、おいそれと手を組むのは危険だ。
一枚岩でなければ組むに値する。いずれ裏切り、殺す間柄なのだから全員が敵同士である方がフェアである。
自分以外の潰し合いを静観し、隙を見てシャルティアが漁夫の利を得るというのも良い。
しかし、まず間違いなくカオスは沙都子を優先し、メリュジーヌすらほぼ沙都子に与する恐れがある以上、おいそれと手を組むのは危険だ。
それ以外にも、シュライバーや悟空、雛見沢症候群を発症した悟飯も、聞けば首を掻き毟って死ぬまでに時間差があり、その間大暴れする可能性が高いという。
最初は良い気味だと思っていたが、逃げ場のないこんな狭い島であれが首を掻き毟るまで、避け続けろというのもかなりハードルが高い。
最初は良い気味だと思っていたが、逃げ場のないこんな狭い島であれが首を掻き毟るまで、避け続けろというのもかなりハードルが高い。
そんな、ほぼ孤立無援の状態で単独で戦い抜けるかと問われれば、ナザリック最強のガチビルドのシャルティアとて確言はできない。
(脱出の可能性があるのなら、最悪それに乗るのも……)
あくまで、考慮をするというだけであるが。
脱出が叶うなら、それならそれでシャルティアは良い。
シャルティアの目的はナザリックの帰還と、乃亜の願いを叶える力で至高の41人とアインズを再会させる事。
優勝以外でその手段が入手できるのなら。乃亜にはなから願いを叶える気がないのなら、無駄な殺しを悟空のような連中に目を付けられるリスクを負ってまで、やるような酔狂な質でもない。
脱出が叶うなら、それならそれでシャルティアは良い。
シャルティアの目的はナザリックの帰還と、乃亜の願いを叶える力で至高の41人とアインズを再会させる事。
優勝以外でその手段が入手できるのなら。乃亜にはなから願いを叶える気がないのなら、無駄な殺しを悟空のような連中に目を付けられるリスクを負ってまで、やるような酔狂な質でもない。
無論、人間と協調するのも、あってはならないが。
けれども、現状はシャルティアも八方塞がりと言えば、否定できない。
アインズ・ウール・ゴウンの名において、あってはならないことだが、しかし乃亜に殺し合いを強要される時点で、劣等種にされるがまま常に泥を塗り続けているのも事実。
その殺し合いですら孤立し、しかも更に格上も跋扈し、同じマーダー達で同盟を組むにしても己が圧倒的に不利な立場。
アインズ・ウール・ゴウンの名において、あってはならないことだが、しかし乃亜に殺し合いを強要される時点で、劣等種にされるがまま常に泥を塗り続けているのも事実。
その殺し合いですら孤立し、しかも更に格上も跋扈し、同じマーダー達で同盟を組むにしても己が圧倒的に不利な立場。
もしも、このモクバというガキが……いや、他の人間でも良い。
首輪を外す、重要な手掛かりを握っているのなら。
場合によっては生かして、暫く手元で飼うのは選択肢としてもありだった。
飼うのだから、シャルティアの優位性は変わらない。また利用するのであり、力関係はこちらが上。
イリヤや悟空のような敵対者が居ても、そいつに擁護させて戦闘を回避するというのもありだ。
あの二人は強者ではあっても、根本的な殺意がなかった。
悟空など、シュライバーと同時に攻撃を喰らったからより躊躇であったが、手心を加えた打撃の連打であった。
シャルティアの傍に対主催の味方が一人付けば、人質代わりにもなり、奴等も下手に危害を加える事はないかもしれない。
首輪を外す、重要な手掛かりを握っているのなら。
場合によっては生かして、暫く手元で飼うのは選択肢としてもありだった。
飼うのだから、シャルティアの優位性は変わらない。また利用するのであり、力関係はこちらが上。
イリヤや悟空のような敵対者が居ても、そいつに擁護させて戦闘を回避するというのもありだ。
あの二人は強者ではあっても、根本的な殺意がなかった。
悟空など、シュライバーと同時に攻撃を喰らったからより躊躇であったが、手心を加えた打撃の連打であった。
シャルティアの傍に対主催の味方が一人付けば、人質代わりにもなり、奴等も下手に危害を加える事はないかもしれない。
(いえ……人間なんぞに、与すれば……)
利用するのだと己に言い聞かせても、そうであれと設定された在り方は変えづらく。
沙都子達と肩を並べるのも、対主催の人間共と仲良く乃亜を殺しに行くのも。
シャルティアの中で納得は出来ない。
沙都子達と肩を並べるのも、対主催の人間共と仲良く乃亜を殺しに行くのも。
シャルティアの中で納得は出来ない。
「きっとガッシュとフリーレンが俺を探しにこっちにやってくる。
その時に、俺なら和解の口添え位なら出来る。あんたらも、あの二人を相手にするのは───」
その時に、俺なら和解の口添え位なら出来る。あんたらも、あの二人を相手にするのは───」
「フリーレン?」
「え?」
かつて苦汁を飲まされたあの女の名前が出てくるのは想定外だった。
「お前、奴と繋がってたでありんすか」
不味い。
シャルティアにとって、一番の天敵でもある女だ。
魔力量を偽り、弱者を装い、敵の慢心と隙を見付け即殺する。
魔法使いとしての風上にも置けぬ、卑劣にして殺しに長けた技量。
あの女は魔族を憎み、それを殺す事に長年を費やし研磨している。
シャルティアにとって、一番の天敵でもある女だ。
魔力量を偽り、弱者を装い、敵の慢心と隙を見付け即殺する。
魔法使いとしての風上にも置けぬ、卑劣にして殺しに長けた技量。
あの女は魔族を憎み、それを殺す事に長年を費やし研磨している。
「下らない脅しですわ。この場所をガッシュさんが知っている筈もありませんし、カオスさんのセンサーで探知して……」
「奴を侮るんじゃありんせん」
まだ、切札の一つや二つ平気で隠しているに違いない。
手数もいくつ備えているか、皆目見当すら付かない。
カオスのセンサーなぞ、簡単に騙して接近していても驚きはしない。
手数もいくつ備えているか、皆目見当すら付かない。
カオスのセンサーなぞ、簡単に騙して接近していても驚きはしない。
一つだけ言えるのは、魔力の偽装だけがあの女の持ち札である筈がない。
いずれ報復を願っているが、この島で最も厄介な敵でもある。
こちらから奇襲を掛けるならばともかく、奴が向こうから奇襲を仕掛けるのであれば何としても回避したい。
先手を打たれた時点で、罠を貼られ、嵌め殺されてもおかしくはないからだ。
あの女を相手にする場合、確実にこちらが殺せるだけの準備と確信がなければ、手痛い目に合う。
こちらから奇襲を掛けるならばともかく、奴が向こうから奇襲を仕掛けるのであれば何としても回避したい。
先手を打たれた時点で、罠を貼られ、嵌め殺されてもおかしくはないからだ。
あの女を相手にする場合、確実にこちらが殺せるだけの準備と確信がなければ、手痛い目に合う。
(考えすぎか? 沙都子の言うように早々ここまで来るとは…いや、あの耳長を相手に用心を怠るのは自殺行為ね……)
武装を全て取り戻したシャルティアが、簡単に後れを取る筈もない。シャルティア自身もそう考えてはいるが、だが、あの女には警戒をし過ぎるという事はないだろう。
このオスガキを一先ずの肉盾にして、簡単に手を出させないようにするのも選択肢に上がる。
このオスガキを一先ずの肉盾にして、簡単に手を出させないようにするのも選択肢に上がる。
(……思ったより、効いてるのか?)
モクバの持つ情報の中で、シャルティアをこちら側に傾けるカードはなかった。
首輪の解析さえ進めば、どうにかなったかもしれないが。
だから、以前のガッシュ達との邂逅でシャルティアとの交戦経験があると知らされた事から、ハッタリも交えて二人の名前を出した。
絶対とも言い切れないが、こちらとの合流を考えガッシュ達が向かう可能性は低くないとも考えており、強ち嘘でもない。
そして、シャルティアを撃退させた手腕から、彼女も交戦は避けたいはず。
これを取っ掛かりに、何とか交渉に持ち込めないか。
藁にも縋る思いで、口にしたフリーレンの名前は、モクバの想像以上に効き目があった。
首輪の解析さえ進めば、どうにかなったかもしれないが。
だから、以前のガッシュ達との邂逅でシャルティアとの交戦経験があると知らされた事から、ハッタリも交えて二人の名前を出した。
絶対とも言い切れないが、こちらとの合流を考えガッシュ達が向かう可能性は低くないとも考えており、強ち嘘でもない。
そして、シャルティアを撃退させた手腕から、彼女も交戦は避けたいはず。
これを取っ掛かりに、何とか交渉に持ち込めないか。
藁にも縋る思いで、口にしたフリーレンの名前は、モクバの想像以上に効き目があった。
(話がどんどんズレて行く……)
沙都子も唇を噛み、苛立ちを隠せない。
風向きが怪しくなってきた。
あのシャルティアが、初めて焦りを表に出したフリーレンという名。
沙都子から見れば、万が一はカオスとメリュジーヌとシャルティアの三人で迎え撃てるはずだと、そう焦る理由も分からず。
仮にモクバの言うように、ここまで来たとしてもカオスのセンサーで先に探知し、戦闘を回避するのも容易いというのに。
あのシャルティアが、初めて焦りを表に出したフリーレンという名。
沙都子から見れば、万が一はカオスとメリュジーヌとシャルティアの三人で迎え撃てるはずだと、そう焦る理由も分からず。
仮にモクバの言うように、ここまで来たとしてもカオスのセンサーで先に探知し、戦闘を回避するのも容易いというのに。
(仲が良いというのも考え物ですわね)
シャルティアがこちらに抱く不信感は、人間を見下す習性のようなそれ以外にも。
沙都子達の団結力を訝しんでいる事に起因する。それは、沙都子自身にも自覚がある。
特にカオスの従順さは、沙都子もあまりにべったりすぎて若干疲れる位だ。
妹が出来たようで、悪くはなかったが。
沙都子達の団結力を訝しんでいる事に起因する。それは、沙都子自身にも自覚がある。
特にカオスの従順さは、沙都子もあまりにべったりすぎて若干疲れる位だ。
妹が出来たようで、悪くはなかったが。
(私達と手を結んでも、いずれ裏切られる。しかも相手が確実に多数派になるのであれば、私がシャルティアさんだったら、当然嫌ですし)
そこに加え、ナザリックとしての矜持も重なり、簡単には決別もしないが馴れ合う事もないという敵とも味方とも取れない曖昧な関係になっている。
(フリーレンさん……確か写影さんの仲間でしたわね。
……シャルティアさんがここまで警戒する相手、侮る訳にはいきませんか。
最悪、シャルティアさんと組むのは諦めて、ここは私達も撤退するのもありでしょうか)
……シャルティアさんがここまで警戒する相手、侮る訳にはいきませんか。
最悪、シャルティアさんと組むのは諦めて、ここは私達も撤退するのもありでしょうか)
モクバは確実に落としておきたかったが、仮にシャルティアがフリーレン対策で手元に生かして置くと言い出すのであれば、それには目を瞑るしかないかもしれない。
代わりにドロテアと金髪の少女はこちらが頂き、そして対主催に放逐する。
妥協としては、そういった落としどころになるだろうか。
代わりにドロテアと金髪の少女はこちらが頂き、そして対主催に放逐する。
妥協としては、そういった落としどころになるだろうか。
(しかし、モクバさんが生き延びて、その後シャルティアが対主催に寝返ればかなり不利になりますが……)
モクバはバトルロワイアルの終結に尽力するのなら、人材の善悪に強い拘りはない。
沙都子に敵意は剥き出しにしていたが、自分達と協力して乃亜を倒すという目的が一致すれば、過去の遺恨は然程引き摺らない。
シャルティアが協力に前向きに打診すれば、モクバ側から裏切るアクションは早々起こさない。
シャルティアも人間を見下す上位種としての驕りはあれど、格上に敗北した事実は受け止め、立ち回れるだけの要領の良さはある。
特に孫悟飯と孫悟空、シュライバーとの連戦は相当に堪えた様子だ。
そんな連中と真っ向からぶつかるより、本当に脱出に繋がるプランが用意されていれば、シャルティアはそれに同調しかねない。
沙都子に敵意は剥き出しにしていたが、自分達と協力して乃亜を倒すという目的が一致すれば、過去の遺恨は然程引き摺らない。
シャルティアが協力に前向きに打診すれば、モクバ側から裏切るアクションは早々起こさない。
シャルティアも人間を見下す上位種としての驕りはあれど、格上に敗北した事実は受け止め、立ち回れるだけの要領の良さはある。
特に孫悟飯と孫悟空、シュライバーとの連戦は相当に堪えた様子だ。
そんな連中と真っ向からぶつかるより、本当に脱出に繋がるプランが用意されていれば、シャルティアはそれに同調しかねない。
(モクバさんがカルデアと繋がって、それがシャルティアの耳に入れば。
恐らく、彼女は対主催にスタンスを変えかねない。
悟空さんも、シャルティアが形だけでも和解を申し入れれば、受け入れてしまうでしょう)
恐らく、彼女は対主催にスタンスを変えかねない。
悟空さんも、シャルティアが形だけでも和解を申し入れれば、受け入れてしまうでしょう)
首輪の解析を進めているであろう一団を沙都子は聞いている。
モクバの情報を聞いた際のリアクションからするに、シャルティアは乃亜への不信感を募らせ、優勝以外の手段も模索している。
モクバの情報を聞いた際のリアクションからするに、シャルティアは乃亜への不信感を募らせ、優勝以外の手段も模索している。
(どうする? やはり、モクバさんは念を入れて落としておきたいですけど……)
紅い閃光が迸る。
「「「!!?」」」
それは、完全な前振りのないノーモーション。
シャルティアが尻に敷いたドロテアの更に下の地面が隆起し膨れ上がって、弾力が付いたトランポリンのように跳ね上がる。
咄嗟の事態に、シャルティアも為すがまま上方へ跳び上がる。
空中でシャルティアが体勢を捻り、天井を蹴って床へ帰還する。
ほぼ同時に、メリュジーヌが剣を抜き駆ける。狙いは、ドロテアだった。
シャルティアが尻に敷いたドロテアの更に下の地面が隆起し膨れ上がって、弾力が付いたトランポリンのように跳ね上がる。
咄嗟の事態に、シャルティアも為すがまま上方へ跳び上がる。
空中でシャルティアが体勢を捻り、天井を蹴って床へ帰還する。
ほぼ同時に、メリュジーヌが剣を抜き駆ける。狙いは、ドロテアだった。
賢者の石は等価交換の法則を無視し、完全なノーモーションで物質の錬成を可能とする。
ヤミが戦闘でメンタルの不調を抜きにすれば、シャルティアを相手に優位に進めたように。
そして、その賢者の石が最も効果を発揮するのは、錬金術の手にある時である。
ヤミが戦闘でメンタルの不調を抜きにすれば、シャルティアを相手に優位に進めたように。
そして、その賢者の石が最も効果を発揮するのは、錬金術の手にある時である。
この殺し合いに存在する錬金術師、他の誰でもないドロテアその人の手の中に賢者の石は握られていた。
ヤミが髪に隠した賢者の石を取り上げ、自身の錬成の力を底上げしシャルティアを退かしたのだ。
ヤミが髪に隠した賢者の石を取り上げ、自身の錬成の力を底上げしシャルティアを退かしたのだ。
人並外れた自身の肉体を文字通り改造した獣のような脚力は、ある一点を目指す。
腿に血管が浮かび、筋肉が縮み一瞬にして伸張する。バネのように弾けた足は、疾風のような疾走を可能とした。
腿に血管が浮かび、筋肉が縮み一瞬にして伸張する。バネのように弾けた足は、疾風のような疾走を可能とした。
けれども遅い。
ドロテアが風ならばメリュジーヌは光だった。
煌びやかに光り、後出しでありながらドロテアとの間合いを即座に詰める。
煌びやかに光り、後出しでありながらドロテアとの間合いを即座に詰める。
「妾を殺せば、沙都子は助からぬぞ!!」
表皮から形成した魔力の光刃を振るい上げ、最早利用価値すらないと判断して、メリュジーヌは脳天へ振り落とす。
「───!!」
剣を止めたのは、メリュジーヌ本人ですら意外だった。
逡巡する間もなく、沙都子の名に反応したのは。
後に聞こえてきたのは、水気の混じった咳き込むような悲鳴の声。
逡巡する間もなく、沙都子の名に反応したのは。
後に聞こえてきたのは、水気の混じった咳き込むような悲鳴の声。
「っ……が……!?」
沙都子の背後から、盛り上がった床の材質を元に形成された剣山の柱が沙都子の腹部を貫いていた。
医療に長けた者でなくても、一目で即死は逃れたとはいえ、死ぬのは時間の問題だと悟る。
ただ一人、人体を長年に渡り改造し続け知識を蓄え続けた錬金術師を除けば。
医療に長けた者でなくても、一目で即死は逃れたとはいえ、死ぬのは時間の問題だと悟る。
ただ一人、人体を長年に渡り改造し続け知識を蓄え続けた錬金術師を除けば。
「妾ならば、奴を助けてやる。分かるな? 妾に手を出せば、誰も奴を救えぬぞ」
「ッ」
逆時計を使えば、過ったそれをメリュジーヌは即座に却下する。
先ず、あれは死者と致命傷を受けた者には使えない。二つ目に、時間制限が科せられている。インターバルは明けていない。
先ず、あれは死者と致命傷を受けた者には使えない。二つ目に、時間制限が科せられている。インターバルは明けていない。
「お姉ちゃん!!」
柱をへし折り、カオスが沙都子を抱き寄せて腕で頭を抱える。
凶器を抜くのは出血が酷くなる為、貫かれたまま蓋の役割をさせているとはいえ、少女の華奢な人体に無機質な剣山が一本生えているのは、痛ましかった。
凶器を抜くのは出血が酷くなる為、貫かれたまま蓋の役割をさせているとはいえ、少女の華奢な人体に無機質な剣山が一本生えているのは、痛ましかった。
「か……お……す、さ……」
「駄目、お姉ちゃんが!!!」
「ふむ、どうやら回復手段はもう尽きているようじゃな」
ドロテアはにやけ面を晒し、勝ち誇る。
先の一瞬、メリュジーヌの動揺した表情の僅かな変化で読み取り、心当たりはあれど今は使えないであろう治癒手段の看過する。
悟飯に襲われたダメージが消えていたのが懸念点だったが、殺し合いというゲームで何度も治癒可能な支給品を手渡すとは思えない。
ドロテアの読み通りだ。
この場で、唯一死に掛けの沙都子を救えるのは、ドロテアしか居ない事を改めて再認識した。
先の一瞬、メリュジーヌの動揺した表情の僅かな変化で読み取り、心当たりはあれど今は使えないであろう治癒手段の看過する。
悟飯に襲われたダメージが消えていたのが懸念点だったが、殺し合いというゲームで何度も治癒可能な支給品を手渡すとは思えない。
ドロテアの読み通りだ。
この場で、唯一死に掛けの沙都子を救えるのは、ドロテアしか居ない事を改めて再認識した。
(冗談じゃないのじゃ。フリーレンとやらは写影と桃華の仲間、妾などすぐに見捨てるに決まっておる。
モクバや奴等に何を吹き込まれるか、分かったものではない)
モクバや奴等に何を吹き込まれるか、分かったものではない)
フリーレンを警戒していたのは、何もシャルティアだけではない。
モクバより前から、薄々意識を取り戻していたドロテアも同様だ。
沙都子達の強襲のせいで、モクバとは仲違いに近い現状、もしもフリーレンという頼もしく信頼のおける対主催と合流すれば、モクバがドロテアを無理して擁護する理由がない。
今までは、最低限の身の安全という戦力の提供をし、殺し合いの中では悪事を働かなった事による信頼で成り立っていた関係が、完全に崩れ去ったのだ。
更に拍車を掛けたのは、沙都子の推測通り雛見沢症候群を罹患していたことで、疑心暗鬼になっていたことだ。
写影と桃華、そしてモクバがフリーレンを言葉巧み誘導し、ドロテアを殺すというイメージが拭おうにも拭いきれない。
ドロテアにとって、この場での最大の課題は沙都子達はおろか、フリーレン達とも接触せず逃げ延びる事になってしまった。
少なくとも、沙都子はドロテアを生かすと話したにも関わらず、まだ見に回って出方を伺っても良かったものを。
モクバより前から、薄々意識を取り戻していたドロテアも同様だ。
沙都子達の強襲のせいで、モクバとは仲違いに近い現状、もしもフリーレンという頼もしく信頼のおける対主催と合流すれば、モクバがドロテアを無理して擁護する理由がない。
今までは、最低限の身の安全という戦力の提供をし、殺し合いの中では悪事を働かなった事による信頼で成り立っていた関係が、完全に崩れ去ったのだ。
更に拍車を掛けたのは、沙都子の推測通り雛見沢症候群を罹患していたことで、疑心暗鬼になっていたことだ。
写影と桃華、そしてモクバがフリーレンを言葉巧み誘導し、ドロテアを殺すというイメージが拭おうにも拭いきれない。
ドロテアにとって、この場での最大の課題は沙都子達はおろか、フリーレン達とも接触せず逃げ延びる事になってしまった。
少なくとも、沙都子はドロテアを生かすと話したにも関わらず、まだ見に回って出方を伺っても良かったものを。
(こ…ん、な……タイ、ミン…グで……)
沙都子の運が悪かったのが、シュライバーや悟飯、他の対主催が近づくのを警戒してカオスにセンサーで周りの探知を頼んだこと。
モクバへの取り調べを始めるまで膝に乗せていた彼女を下ろして、周囲とシャルティアへの警戒に集中させていたことだった。
モクバへの取り調べを始めるまで膝に乗せていた彼女を下ろして、周囲とシャルティアへの警戒に集中させていたことだった。
絶望王のような愉快犯が乱入して、面白可笑しく暴れられるのが沙都子にとっての最悪だ。
もう二度と、あんな連中のせいで計画を台無しにされたくはない。
もう二度と、あんな連中のせいで計画を台無しにされたくはない。
よもや、ドロテアがこんな妙な技を繰り出すとは思いも寄らない。
支給品も全て取り上げ、武器も回収したというのに。
あの隠し持っていた赤い石は、完全にやられた。
シャルティアからの情報ではヤミは自身の肉体変化だったと聞かされた為、ヤミの所持品検査が甘かったせいで、賢者の石を見落とした。
シャルティアが文字通り尻に敷いた状況なのもあり、警戒が薄れたのも失態だった。
支給品も全て取り上げ、武器も回収したというのに。
あの隠し持っていた赤い石は、完全にやられた。
シャルティアからの情報ではヤミは自身の肉体変化だったと聞かされた為、ヤミの所持品検査が甘かったせいで、賢者の石を見落とした。
シャルティアが文字通り尻に敷いた状況なのもあり、警戒が薄れたのも失態だった。
もっと、カオスを近くに置いておけば。
メリュジーヌの力量を信頼していたとはいえ、もっと厳重に身の守りを固めるべきだった。
メリュジーヌの力量を信頼していたとはいえ、もっと厳重に身の守りを固めるべきだった。
「よくも……よくもぉ!!!」
「おっと、カオスや? 大好きなお姉ちゃんを助けたいなら、言葉は選ばなくてはならぬなあ?」
ドロテアは見せびらかすように手の中で赤い石を弄ぶ。
賢者の石とドロテアの錬金術があれば、沙都子の致命傷を治す事は容易い。
だが、カオスとメリュジーヌでは不可能だろう。
あれは戦闘には長けていても、研究者ではない。
沙都子の容態を見た時、諦観した顔で見つめていた。救えるのなら、ドロテアの話に耳など傾けない。
カオスは張り詰めた怒りの形相のまま、口を閉ざして小さな肩をわなわなと震わせる。
賢者の石とドロテアの錬金術があれば、沙都子の致命傷を治す事は容易い。
だが、カオスとメリュジーヌでは不可能だろう。
あれは戦闘には長けていても、研究者ではない。
沙都子の容態を見た時、諦観した顔で見つめていた。救えるのなら、ドロテアの話に耳など傾けない。
カオスは張り詰めた怒りの形相のまま、口を閉ざして小さな肩をわなわなと震わせる。
「なに、妾はお主らのように下種なマーダーとは違う。救える命は出来る限り拾いたいからのう。
こっちの……」
こっちの……」
「御託は良い。何が望みなんだ」
大方、ドロテアは沙都子の命をチラつかせて、自身の有利になるような要望を聞かせてくる。
メリュジーヌが逆の立場でもそうする。
ご丁寧に致命傷だが即死させないのは、こちらに沙都子を見限らせない猶予を与える為だ。
メリュジーヌが逆の立場でもそうする。
ご丁寧に致命傷だが即死させないのは、こちらに沙都子を見限らせない猶予を与える為だ。
「もっとも、君が女王でいられるのも残り数刻と知るが良い」
沙都子が息絶えれば、ドロテアに価値はない。
今は優位であろうと、その存在価値が消えればメリュジーヌが加減する必要もない。
今は優位であろうと、その存在価値が消えればメリュジーヌが加減する必要もない。
「ふん、精々飼い主の無事を祈れ、沙都子の犬が」
ドロテアもそれは承知している。
時間はない。
数分足らずで、沙都子は死ぬ。その間にこの場を切り抜け、確実に追っ手を振り切らねばならない。
時間はない。
数分足らずで、沙都子は死ぬ。その間にこの場を切り抜け、確実に追っ手を振り切らねばならない。
「何、勝手に話を進めているでありんすか?」
メリュジーヌの長髪が靡き、顎の下に冷たく固い物が触れた。
シャルティアが振ったスポイトランスが、メリュジーヌの喉に当てられ、シャフトがこつんと顎を叩く。
シャルティアが振ったスポイトランスが、メリュジーヌの喉に当てられ、シャフトがこつんと顎を叩く。
「もう、あの女に価値はありんせん。
どうでありんしょう? メリュジーヌ、ぬしは私とこのまま組むというのは」
どうでありんしょう? メリュジーヌ、ぬしは私とこのまま組むというのは」
シャルティアは沙都子の生死に全く興味がない。
「用済みではありんせんか?
考えてもみんなまし。孫悟飯に薬を盛り、暴走させた時点で役割は終えてるでありんしょう」
考えてもみんなまし。孫悟飯に薬を盛り、暴走させた時点で役割は終えてるでありんしょう」
「今、君の冗談に付き合う気はない」
「いえいえ、それはこちらの台詞でありんす。
そもそもぬし、あの女と組んでる理由はなんでありんしょう?」
そもそもぬし、あの女と組んでる理由はなんでありんしょう?」
それは純粋な疑問でもあり、またシャルティアが沙都子に対する不満でもある。
これほど美しい竜の騎士が、あのような下賤な人間の小娘に隷属する意味が分からない。
これほど美しい竜の騎士が、あのような下賤な人間の小娘に隷属する意味が分からない。
「肝心の悟飯への投薬も、自滅するには時間差が生じ、それまでこの狭い島で鬼ごっこをしなくてはならない訳ですけんけれども。
これ、ぬしにメリットありんすか?」
これ、ぬしにメリットありんすか?」
「……何が言いたいんだ」
「沙都子にとっては、暴走した悟飯が勝手にくたばるのなら、こんなに助かる事はありんせんね?
けんけれども、わたしたちにしてみれば気兼ねなく暴れる奴を相手にするより、守る物があって足手纏いが多い方が殺しやすかったとは思いんせんか?」
けんけれども、わたしたちにしてみれば気兼ねなく暴れる奴を相手にするより、守る物があって足手纏いが多い方が殺しやすかったとは思いんせんか?」
一見すれば時間さえ立てば悟飯は自ら死ぬという、メリュジーヌやマーダーにとってが有難い話だが。
その死ぬまでの間に、何のしがらみもなく暴れるのは、むしろマーダー側としても厄介なのではないか?
その死ぬまでの間に、何のしがらみもなく暴れるのは、むしろマーダー側としても厄介なのではないか?
「君に教えた筈だ。カルデアという場所にいる孫悟空と、悟飯をぶつけて……」
「それ、わたしたちで各個撃破で良かったんじゃありんせん?」
「とても、孫悟空から敗走した敗北者の言葉とは思えないよ」
「ぬしの実力は高く買ってるでありんす。ですから、自信を持って言えるんでありんすよ。
その実力を発揮できないのは、北条沙都子という足枷のせいではないかってね」
「それ、わたしたちで各個撃破で良かったんじゃありんせん?」
「とても、孫悟空から敗走した敗北者の言葉とは思えないよ」
「ぬしの実力は高く買ってるでありんす。ですから、自信を持って言えるんでありんすよ。
その実力を発揮できないのは、北条沙都子という足枷のせいではないかってね」
生を受け自我が芽生えてから、恐らくこんなにも頭を回したのは初だろう。
短気は損気を表す性格で、ヒステリー気質なのも災いしトラブルも引き起こすが、元より馬鹿ではない。
やはり、メリュジーヌとカオスという手駒を握られ、その上で沙都子と同盟を結ぶのはシャルティアが使い潰されるリスクが高い。
ドロテアが逸った行動に出たのは、シャルティアにとっても好機である。
この好機を利用し、メリュジーヌという最大の手駒をこの手にする。
短気は損気を表す性格で、ヒステリー気質なのも災いしトラブルも引き起こすが、元より馬鹿ではない。
やはり、メリュジーヌとカオスという手駒を握られ、その上で沙都子と同盟を結ぶのはシャルティアが使い潰されるリスクが高い。
ドロテアが逸った行動に出たのは、シャルティアにとっても好機である。
この好機を利用し、メリュジーヌという最大の手駒をこの手にする。
「悟飯には人間の足手纏い共、あの眼鏡のガキなんかも居た訳でありんすし。
一々、薬を盛らずともぬしとわたしがガキ共を直接狙えば、悟飯は庇わざるを得なかった。
わたしを襲った、あの凶暴性は病気が原因でありんしたなら、元の性格ならガキ共を率先して庇う筈でしょう?
孫悟空という男も、わたしを殴った時殺さないように加減はしていんした。あの甘さ、あれも、同じじゃありんせんか?」
一々、薬を盛らずともぬしとわたしがガキ共を直接狙えば、悟飯は庇わざるを得なかった。
わたしを襲った、あの凶暴性は病気が原因でありんしたなら、元の性格ならガキ共を率先して庇う筈でしょう?
孫悟空という男も、わたしを殴った時殺さないように加減はしていんした。あの甘さ、あれも、同じじゃありんせんか?」
「そう簡単に行くとは思えない。孫悟飯は、僕が全てを投げ打ったとして───」
「……一体、何を臆しているでありんす? ぬしは”強い”ではありんせんか」
何より、シャルティアにとって気に入らなかった。
メリュジーヌという一個の生物は、種として高い完成度を誇る。
それは、強くあれと生み出された偶然という運命から生み出された最高傑作の生命である。
奇しくも、それは至高の四十一人ペロロンチーノにより、強くあれと生み出されたシャルティアと同じ。
ならば、どうしてそれをしない? 何故在り方を変える?
メリュジーヌという一個の生物は、種として高い完成度を誇る。
それは、強くあれと生み出された偶然という運命から生み出された最高傑作の生命である。
奇しくも、それは至高の四十一人ペロロンチーノにより、強くあれと生み出されたシャルティアと同じ。
ならば、どうしてそれをしない? 何故在り方を変える?
「ぬしの今までのやり方は、弱者が勝つ為に回りくどく、ぬしをいずれ殺す為に敷いたつまらんレールでありんした。
勝ちを狙うのなら、ぬしは強者らしく蹂躙し侵攻すべきありんしょう?
こそこそ、地を這って死肉を漁る蛆虫のような真似、ぬしは似合いんせん。
何を北条沙都子に拘っているの? 妖精騎士ランスロット───いえ、暗い沼のメリュジーヌ」
勝ちを狙うのなら、ぬしは強者らしく蹂躙し侵攻すべきありんしょう?
こそこそ、地を這って死肉を漁る蛆虫のような真似、ぬしは似合いんせん。
何を北条沙都子に拘っているの? 妖精騎士ランスロット───いえ、暗い沼のメリュジーヌ」
かっとなりやすい性格が影響したのだろう。気付けば打算を抜きに、激情を剥き出しにしたのは。
しかしだからこそ、メリュジーヌも言葉を応酬を交わす事も叶わなくなった。
しかしだからこそ、メリュジーヌも言葉を応酬を交わす事も叶わなくなった。
「……」
メリュジーヌはオーロラの為であれば、いくらでも汚れ仕事を行うとはいえ、悟飯に毒を盛ったことには未だに得心は出来ていない。
また、シャルティアはあのキウルという少年の最期のやりとりを聞いていた。
メリュジーヌの本懐の一つとして、誇り高き騎士として務めあり続けようとしていることは。
そのやり方は、沙都子の惨劇を引き起こし多くを不幸に見舞り、嘲笑う手法とは真逆だ。
その強き、最強種としての力を存分に振るわずして、本気で勝つ気があるというのか。
そう、同じく強くあれと存在するシャルティアから問われ、メリュジーヌは答えを出せないでいる。
また、シャルティアはあのキウルという少年の最期のやりとりを聞いていた。
メリュジーヌの本懐の一つとして、誇り高き騎士として務めあり続けようとしていることは。
そのやり方は、沙都子の惨劇を引き起こし多くを不幸に見舞り、嘲笑う手法とは真逆だ。
その強き、最強種としての力を存分に振るわずして、本気で勝つ気があるというのか。
そう、同じく強くあれと存在するシャルティアから問われ、メリュジーヌは答えを出せないでいる。
「無駄話はそこまでにするのじゃ!!」
主導権を奪われないようドロテアが叫ぶ。
シャルティアが厄介なのは、予想が付いていた。あれだけは沙都子の命を盾にしようと、絶対に止まらないと。
シャルティアが厄介なのは、予想が付いていた。あれだけは沙都子の命を盾にしようと、絶対に止まらないと。
「先ずは、あの女を消せ! 犬共が!!!」
だが、間接的とはいえメリュジーヌとカオスがこちらの手駒になっている。
シャルティアは武装しているようだが、あの二人を相手にするのであれば苦戦は必須。
潰し合えばそれで良し、その間に遠くへ逃げ延び生き延びる。死に体の沙都子を盾にすれば、特に沙都子に従順なカオスは逆らえない。
叶う事なら、モクバを探索に来たフリーレン達も交えて全員共倒れすればいい。
シャルティアは武装しているようだが、あの二人を相手にするのであれば苦戦は必須。
潰し合えばそれで良し、その間に遠くへ逃げ延び生き延びる。死に体の沙都子を盾にすれば、特に沙都子に従順なカオスは逆らえない。
叶う事なら、モクバを探索に来たフリーレン達も交えて全員共倒れすればいい。
「かお…すさ……いけ…ま……」
「黙れ! カオス!! お前がやらねば、こ奴は死ぬぞ!! 救えるのは妾だけじゃ!!」
───私の……私の鳥籠(マスター)を………傷つけようとした………!!
(……駄目、ですわね。カオスさんの……あの様子…では)
沙都子に牙を向けただけで、怒り狂った言動をするカオスを思い起こし、とても理性的な行動は期待できない。
「うああああああああああああああああああああ!!!」
猛った獣のような獰猛な叫びが轟き、音速を超えた速度でシャルティアへと突っ込む。
鋼鉄の翼は推進されたカオスの前方へ展開され、触れるもの全てを両断する剣となる。
鋼鉄の翼は推進されたカオスの前方へ展開され、触れるもの全てを両断する剣となる。
「まったく」
仕える主が下賤な人間とは、愚かで惨め過ぎて反吐が出る。
カオスの動きを見切り、メリュジーヌへと翳したそれとは比較にならない、化け物の膂力で槍を振る。
剛腕の怪力はカオスのスピードとほぼ同等の速度で増進する。
カオスの動きを見切り、メリュジーヌへと翳したそれとは比較にならない、化け物の膂力で槍を振る。
剛腕の怪力はカオスのスピードとほぼ同等の速度で増進する。
「やめろ」
吸血の槍が踵に踏まれ床を砕く、天使の翼が粒子の刃に逸らされシャルティアの頭上を過る。
対峙する吸血姫と天使の合間に割り込むは、竜の騎士。
対峙する吸血姫と天使の合間に割り込むは、竜の騎士。
「カオス、君も僕らと来るんだ」
「…………え?」
「シャルティアの言い分も一理ある。もう、沙都子に用はない」
紡がれるは決別の一言。
それまでに、メリュジーヌが殺害した子供達へ向けるような冷たい声で、カオスへと投げ掛ける。
「いや……わたしは……おねえちゃんと」
「ドロテアが沙都子を救うと思うのかい? あれは人間の屑だ。
それに君にだって、叶えたい願いがある。沙都子と僕達は手を組んでも、決して仲間じゃない。
見誤るな。君は君の願いの為に優勝を……沙都子は、君にとっての───」
それに君にだって、叶えたい願いがある。沙都子と僕達は手を組んでも、決して仲間じゃない。
見誤るな。君は君の願いの為に優勝を……沙都子は、君にとっての───」
愛(オーロラ)ではないだろう?
最後まで紡がれなかった言葉を飲み込んで、メリュジーヌはカオスを見つめた。
もう、沙都子を連れるのは無理だ。治療手段が手元になく、病院へ向かっても医者が居なければ助からない。
床にカオスが床に寝かせた沙都子も、血色が悪く目が虚ろだった。
あれだけ悪辣な行いをした、悪魔のような女とは思えない弱り切った顔。
床にカオスが床に寝かせた沙都子も、血色が悪く目が虚ろだった。
あれだけ悪辣な行いをした、悪魔のような女とは思えない弱り切った顔。
詰みだ。
『価値のある、美しい物だからだと思うよ』
『───そう、ですか。そうかもしれませんわね』
思うところがないとは言わない。
それはまるで火のように。触れるのを拒むような、自らを焼いてしまうような熱さがあろうとも。
どうしようもなく欲してしまう。
手を伸ばせば、拒まれ焼かれ、いずれはもっと燃え盛り外の世界へと飛び出そうとする。
どうしようもなく欲してしまう。
手を伸ばせば、拒まれ焼かれ、いずれはもっと燃え盛り外の世界へと飛び出そうとする。
美しいからこそ、それを穢したくはない消させたくはない。
沙都子の想いは分かる。分かったからこそ、ここまで共に手を穢したのだろう。
今ならば分かる。愚かとも取れる、でも愚直なまでに求める姿に己の在り方を重ねたのかもしれない。
今ならば分かる。愚かとも取れる、でも愚直なまでに求める姿に己の在り方を重ねたのかもしれない。
「僕の愛(ねがい)は、ここで途切れさせるわけにはいかない。
カオス、君は……君の願いだって……!!!」
カオス、君は……君の願いだって……!!!」
メリュジーヌにとって、この時だけはオーロラという奉仕対象ではなく、カオスというただ一人の少女を案じ、彼女の為だけに叫んだ。
沙都子に拘るな。君の欲しい愛は、その先にある。
もう、彼女に次はない。残念だが、ここで終わりだ。
沙都子に拘るな。君の欲しい愛は、その先にある。
もう、彼女に次はない。残念だが、ここで終わりだ。
「いらない!! お姉ちゃん以外、何も要らないの!!!」
誰が、彼女をこうしたのか。
そんなことは、他の誰でもない。自分がよく分かっていた。
愛を欲する彼女を、悪魔と合わせ魂を売らせた。
魂を握られた堕天使は、悪魔がなくては生きていけない。
天(そら)からも地(ひと)からも、拒まれた天使は、悪魔の誘惑に縋るしかない。
天(そら)からも地(ひと)からも、拒まれた天使は、悪魔の誘惑に縋るしかない。
カオスは涙を滲ませて、ただ訴えかける。
初めて、痛くない愛をくれた恩人に向けて、私からまた愛を奪わないで欲しいと。
初めて、痛くない愛をくれた恩人に向けて、私からまた愛を奪わないで欲しいと。
だって、もう願いは叶っていたのだから。
「……カオス、それは」
優勝して、沙都子を蘇生させればいいだろう。
そう言おうとして、メリュジーヌは声に詰まった。
一度、オーロラを手に掛けた時の事を思い起こして、その時に身を裂くような辛さを知っていたから。
普段のようなデジタルな思考で、淡々と事実と情報を提示し説得を試みることができない。
カオスに湧いた情が、合理的な判断を阻害する。
後に生き返るからと、愛する人を見捨てて死なせろだなんて、メリュジーヌには口が割けても言えない。
一度、オーロラを手に掛けた時の事を思い起こして、その時に身を裂くような辛さを知っていたから。
普段のようなデジタルな思考で、淡々と事実と情報を提示し説得を試みることができない。
カオスに湧いた情が、合理的な判断を阻害する。
後に生き返るからと、愛する人を見捨てて死なせろだなんて、メリュジーヌには口が割けても言えない。
「ッ!!?」
床から再び紅の紫電が迸り、床を形成する木材の材質から、明かに関連性の見出せない全く別の球体が飛び出した。
ドロテアはにんまりと笑い「ヤミ」と一言叫ぶ。
ドロテアも無策でメリュジーヌ達の言い合いを聞いていた訳ではない。
むしろ、口論まで想定して準備を着実に進めていた。
球体は弾け、メリュジーヌ達が居る民家を覆うように閃光が炸裂した。
真っ白に染まった視界の中、再び視界を取り戻した時には、誰も居なかった。
ドロテアはにんまりと笑い「ヤミ」と一言叫ぶ。
ドロテアも無策でメリュジーヌ達の言い合いを聞いていた訳ではない。
むしろ、口論まで想定して準備を着実に進めていた。
球体は弾け、メリュジーヌ達が居る民家を覆うように閃光が炸裂した。
真っ白に染まった視界の中、再び視界を取り戻した時には、誰も居なかった。
「あの、クソガキ共ッ!!」
シャルティアは怒りのままに槍を叩き付ける。床をぶち抜き、床下まで槍の先が減り込んだ。
轟音が家屋を揺らし、その土地内でのみ限定的に地震が起きたように振動する。
メリュジーヌは冷ややかな目でシャルティアを見つめ、揺れる屋内でも微動だにせず立っていた。
轟音が家屋を揺らし、その土地内でのみ限定的に地震が起きたように振動する。
メリュジーヌは冷ややかな目でシャルティアを見つめ、揺れる屋内でも微動だにせず立っていた。
「わたしのランドセルを!!」
ドロテア、モクバ、ヤミが逃げ出したのは明白だ。それどころかヤミが伸ばした毛がランドセルを絡み取り、挙句シャルティアが装備していたルビーまで絡め取り持ち去ったのだ。
無から全く性質の異なる物品まで錬成するとは、あの赤い石の力にはさしものメリュジーヌとシャルティアも一手遅れた。
無から全く性質の異なる物品まで錬成するとは、あの赤い石の力にはさしものメリュジーヌとシャルティアも一手遅れた。
「今すぐ追いかけて皆殺しに……」
「カオスのレーダーもないのに、何処に行ったか分かるの?」
「…………チッ」
「カオスのレーダーもないのに、何処に行ったか分かるの?」
「…………チッ」
消えたのは、ドロテア達だけではない。
カオスも沙都子を連れ、この場から消え去っていた。
先のドロテア達を追い込めたのも、カオスのレーダーあってのもの。
移動速度では上回るとはいえ、行先も分からなければ、そう何度も都合よく接敵することもない。
シャルティアは歯軋りをして、今にも奥歯を噛み砕きそうだ。
カオスも沙都子を連れ、この場から消え去っていた。
先のドロテア達を追い込めたのも、カオスのレーダーあってのもの。
移動速度では上回るとはいえ、行先も分からなければ、そう何度も都合よく接敵することもない。
シャルティアは歯軋りをして、今にも奥歯を噛み砕きそうだ。
「それに君、道具に頼らずとも強いだろう?」
見かねたメリュジーヌが、言う。
「……当然でありんすが?」
「なら、もうイライラするのは止めて貰えるかい? 次の話に移りたい」
「なら、もうイライラするのは止めて貰えるかい? 次の話に移りたい」
メリュジーヌは語る。
北条沙都子が孫悟空と接触し、そして本来は50代以降の孫もいる老人の手前のような年齢が、何かの力で子供化してこの殺し合いの参加条件を満たしたのだと。
「何が言いたいでありんす?」
「体の若返りが通用するという前例があるんだ。
手段によっては、孫悟空を更に幼くさせて、弱体化させることも出来るかもしれない。
生まれる前、胎児にするとかね」
「あれに効果を適用する以上、世界級のアイテムの力ではありんせんか? そう都合よく……」
「あるだろ? 報酬システムが」
「体の若返りが通用するという前例があるんだ。
手段によっては、孫悟空を更に幼くさせて、弱体化させることも出来るかもしれない。
生まれる前、胎児にするとかね」
「あれに効果を適用する以上、世界級のアイテムの力ではありんせんか? そう都合よく……」
「あるだろ? 報酬システムが」
一瞬呆けた顔をして、シャルティアは得心を得た顔で笑う。
「ポイントを稼ぐ。
そこで乃亜から、悟空を落とせる道具を貰おう」
そこで乃亜から、悟空を落とせる道具を貰おう」
「なるほど、対象の時間を巻き戻す道具を希望して乃亜に渡させると。
それなら効率を考えて、手分けするとありんしょうか。参加者も減ってきて見付けるのも一苦労でありんすし」
それなら効率を考えて、手分けするとありんしょうか。参加者も減ってきて見付けるのも一苦労でありんすし」
「僕は構わないけど、君一人で大丈夫かい? 敗走が多いだろ」
「次、舐めた口を聞いたのなら、先にぬしをドミノに変えんしようかえ?」
残存の生存者が半数を切った中で、キルスコアを実質トップまで上げなければならないのは難しい。
シャルティアとメリュジーヌが共に同行して、移動範囲が狭まるよりは二人で別れ参加者を手当たり次第に始末する方が、遭遇率もあがる。
メリュジーヌはまで出会っていないが、競合相手にはシュライバーという移動速度が段違いの相手もいる。
時間を掛けてもいられない。
シャルティアとメリュジーヌが共に同行して、移動範囲が狭まるよりは二人で別れ参加者を手当たり次第に始末する方が、遭遇率もあがる。
メリュジーヌはまで出会っていないが、競合相手にはシュライバーという移動速度が段違いの相手もいる。
時間を掛けてもいられない。
次の放送後の再合流を打合せ、シャルティアとメリュジーヌは別れる。
「カオス。そうか……そう、だね……」
こうなることがむしろ必然だったのだろう。
だって、カオスにとって沙都子はオーロラなのだから。
もしも、メリュジーヌが同じ立場なら、彼女に傷一つ付いてしまう恐れでもあれば。
きっと同じように。
きっと同じように。
だから、これは必然だ。
自分が味わい続けた地獄に、その他でもないメリュジーヌ自身が引き摺り込んだのだ。
カオスという天使の在り方を知りながら。
神(マスター)の忠実なる下僕(せんし)という、抗えぬ本能を理解しながら。
カオスという天使の在り方を知りながら。
神(マスター)の忠実なる下僕(せんし)という、抗えぬ本能を理解しながら。
オーロラに、よりよい終わりを与えるという。
自らの独りよがりの愛の為に、大勢を犠牲にする。あまりにも釣り合わぬ手前勝手な理屈。
彼女はもう、あの日、あの時、あの場所で、あの夕暮れの元。
終わりゆく世界と共に、もう終わっているのに。
彼女はもう、あの日、あの時、あの場所で、あの夕暮れの元。
終わりゆく世界と共に、もう終わっているのに。
オーロラがいなければ、メリュジーヌもその姿を保てない。この島でのみ、乃亜の計らいで維持しているに過ぎない。
だからもう、終わっている。その結末を受け入れ消えるべきだ。先のある幼い命と引き換えに叶えることが、終わりのやり直しなど。
挙句、誰よりも辛く苦しさを知っている地獄を、また新たに創り出すなんて、あってはならない。
挙句、誰よりも辛く苦しさを知っている地獄を、また新たに創り出すなんて、あってはならない。
「すまない、カオス」
誰にも届かない無意味な謝罪を吐いて、メリュジーヌはただ空へと飛翔した。
【一日目/午後/G-5】
【メリュジーヌ(妖精騎士ランスロット)@Fate/Grand Order】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(小)自暴自棄(極大)、イライラ、ルサルカに対する憎悪
[装備]:『今は知らず、無垢なる湖光』、M61ガトリングガン@ Fate/Grand Order(凍結、時間経過や魔力を流せば使えるかも)
[道具]:基本支給品×3、イヤリング型携帯電話@名探偵コナン、ブラック・マジシャン・ガール@ 遊戯王DM、デザートイーグル@Dies irae、
『治療の神ディアン・ケト』(三時間使用不可)@遊戯王DM、Zリング@ポケットモンスター(アニメ)、逆時計(残り二回)@ドラえもん
[思考・状況]基本方針:オーロラの為に、優勝する。
1:孫悟飯と戦わなけばいけないかもね
2:最後の二人になれば沙都子を殺し、優勝する。
3:ルサルカは生きていれば殺す。
4:絶望王に対して……。
5:竜に戻る必要があるかもしれない。方法を探す。
6:シャルティアと手分けして殺害数を上げ、ドミノを集める。
7:放送後にシャルティアと再合流。
8:カオス、君は……。
[備考]
※第二部六章『妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ』にて、幕間終了直後より参戦です。
※サーヴァントではない、本人として連れてこられています。
※『誰も知らぬ、無垢なる鼓動(ホロウハート・アルビオン)』は完全に制限されています。元の姿に戻る事は現状不可能です。
[状態]:ダメージ(中)、疲労(小)自暴自棄(極大)、イライラ、ルサルカに対する憎悪
[装備]:『今は知らず、無垢なる湖光』、M61ガトリングガン@ Fate/Grand Order(凍結、時間経過や魔力を流せば使えるかも)
[道具]:基本支給品×3、イヤリング型携帯電話@名探偵コナン、ブラック・マジシャン・ガール@ 遊戯王DM、デザートイーグル@Dies irae、
『治療の神ディアン・ケト』(三時間使用不可)@遊戯王DM、Zリング@ポケットモンスター(アニメ)、逆時計(残り二回)@ドラえもん
[思考・状況]基本方針:オーロラの為に、優勝する。
1:孫悟飯と戦わなけばいけないかもね
2:最後の二人になれば沙都子を殺し、優勝する。
3:ルサルカは生きていれば殺す。
4:絶望王に対して……。
5:竜に戻る必要があるかもしれない。方法を探す。
6:シャルティアと手分けして殺害数を上げ、ドミノを集める。
7:放送後にシャルティアと再合流。
8:カオス、君は……。
[備考]
※第二部六章『妖精円卓領域アヴァロン・ル・フェ』にて、幕間終了直後より参戦です。
※サーヴァントではない、本人として連れてこられています。
※『誰も知らぬ、無垢なる鼓動(ホロウハート・アルビオン)』は完全に制限されています。元の姿に戻る事は現状不可能です。
【シャルティア・ブラッドフォールン@オーバーロード】
[状態]:怒り(大)、ダメージ(大)(回復中)、MP消費(中)(回復中)
スキル使用不能、乃亜への不信感
[装備]:スポイトランス@オーバーロード、真紅の全身鎧@オーバーロード
[道具]:なし
[思考・状況]基本方針:優勝する
1: ドミノを獲得し、悟空やシュライバーを殺せる力を獲得する。
2:黒髪のガキ(悟飯)はブチ殺したい、が…自滅してくれるならそれはそれで愉快。
3:自分以外の100レベルプレイヤーと100レベルNPCの存在を警戒する。
4:武装を取り戻したので、エルフ、イリヤ、悟飯、悟空、シュライバー、ドロテアに借りを返す。
5:メリュジーヌの容姿はかなりタイプ。沙都子はいけ好かないので正直殺したいが。
6:可能であれば眷属を作りたい。
7:ドミノを集める。放送後メリュジーヌと再合流。
[備考]
※アインズ戦直後からの参戦です。
※魔法の威力や効果等が制限により弱体化しています。
※その他スキル等の制限に関しては後続の書き手様にお任せします。
※スキルの使用可能回数の上限に達しました、通常時に戻るまで12時間程時間が必要です。
※日番谷と情報交換しましたが、聞かされたのは交戦したシュライバーと美遊のことのみです。
[状態]:怒り(大)、ダメージ(大)(回復中)、MP消費(中)(回復中)
スキル使用不能、乃亜への不信感
[装備]:スポイトランス@オーバーロード、真紅の全身鎧@オーバーロード
[道具]:なし
[思考・状況]基本方針:優勝する
1: ドミノを獲得し、悟空やシュライバーを殺せる力を獲得する。
2:黒髪のガキ(悟飯)はブチ殺したい、が…自滅してくれるならそれはそれで愉快。
3:自分以外の100レベルプレイヤーと100レベルNPCの存在を警戒する。
4:武装を取り戻したので、エルフ、イリヤ、悟飯、悟空、シュライバー、ドロテアに借りを返す。
5:メリュジーヌの容姿はかなりタイプ。沙都子はいけ好かないので正直殺したいが。
6:可能であれば眷属を作りたい。
7:ドミノを集める。放送後メリュジーヌと再合流。
[備考]
※アインズ戦直後からの参戦です。
※魔法の威力や効果等が制限により弱体化しています。
※その他スキル等の制限に関しては後続の書き手様にお任せします。
※スキルの使用可能回数の上限に達しました、通常時に戻るまで12時間程時間が必要です。
※日番谷と情報交換しましたが、聞かされたのは交戦したシュライバーと美遊のことのみです。
「助けて……下さい」
視界が消えようと、レーダーの探知によりカオスはドロテアの居場所を先読みできた。
冷たくなる沙都子を抱えて、ドロテア達の前へ降り落ち。
そして、一言涙ぐみながら懇願する。
冷たくなる沙都子を抱えて、ドロテア達の前へ降り落ち。
そして、一言涙ぐみながら懇願する。
北条沙都子を、愛する人を救って欲しいと。
「ふむ、殊勝な心がけじゃな」
「……おい」
カオスの先回りに気が動転し、唖然としていたモクバはたまらず声を上げた。
どうする気なんだ。
助けた所で貸し借りを気にする相手じゃないし、このまま死ねば結局逆上してカオスは襲い掛かってくる。
残り1分も保たないような重体で、優位に立てるのは沙都子が死ぬまでの間だ。
どうする気なんだ。
助けた所で貸し借りを気にする相手じゃないし、このまま死ねば結局逆上してカオスは襲い掛かってくる。
残り1分も保たないような重体で、優位に立てるのは沙都子が死ぬまでの間だ。
「自害しろ。カオス」
「…………え」
「聞こえぬか? 死ねと言っておる。
首輪を無理に外そうとすれば、爆破する仕組みじゃ。それで死ね」
首輪を無理に外そうとすれば、爆破する仕組みじゃ。それで死ね」
ドロテアが打った手は単純にして明快な交換条件だ。
沙都子を救う代わりに、自分の命を投げ出せというもの。
沙都子を救う代わりに、自分の命を投げ出せというもの。
「当り前じゃ。お前が生きていれば妾達にとっても危険じゃが、沙都子一人ならいくらでも拘束は効く。
あとでメリュジーヌへの肉盾にもなるからの。
安心しろ。お前さえ居なければ、沙都子だけは助けてやる」
あとでメリュジーヌへの肉盾にもなるからの。
安心しろ。お前さえ居なければ、沙都子だけは助けてやる」
無理だろ。モクバはそう思った。
いくら、カオスが沙都子に懐いてるとはいえ、そんな交換条件を呑むはずがない。
所詮は赤の他人で、命を捨ててまで救い出したいだけの絆を育んでなんていない。
いくら、カオスが沙都子に懐いてるとはいえ、そんな交換条件を呑むはずがない。
所詮は赤の他人で、命を捨ててまで救い出したいだけの絆を育んでなんていない。
「……分かり、ました」
「おま…え……?」
逡巡を終えて、カオスは躊躇いなく自分の首輪に触れた。
これをすれば死ぬと分かっていた。壊れると知っていた。
かつて、沈められた深海よりも暗くて冷たくて寂しくなるところに行くのだろうと、予想できていた。
でも、カオスはそれでも構わなかった。
かつて、沈められた深海よりも暗くて冷たくて寂しくなるところに行くのだろうと、予想できていた。
でも、カオスはそれでも構わなかった。
「さよなら」
短い間でも、それでもカオスに愛をくれて教えてくれた。悪い子でも受け入れてくれた。
カオスにとって他の何を犠牲にしても守りたい物になっていた。
カオスにとって他の何を犠牲にしても守りたい物になっていた。
『なら、貴方は猶更私達と共に征くべきなのです』
本当は、沙都子が死のうともカオスは先に進むべきだ。
分かっている。分かっていても。
分かっている。分かっていても。
『───でも、その時は、私がカオスさんのお家になってあげます』
もうカオスの願いは叶ってしまった。あの時、あの場所で運命に導かれた出会いによって。
美しいものに出会えてしまった。
ずっと手を伸ばし続け、拒まれ続け翼すら焼かれ地へと堕とされ。
数多の絶望と痛みに出会い、そしてどん底の中で輝く光りに出会えたのだ。
それを、一度でも失くすことはカオスには選べなかった。
美しいものに出会えてしまった。
ずっと手を伸ばし続け、拒まれ続け翼すら焼かれ地へと堕とされ。
数多の絶望と痛みに出会い、そしてどん底の中で輝く光りに出会えたのだ。
それを、一度でも失くすことはカオスには選べなかった。
(何なんだよ……)
こいつらは、人殺しだ。
沙都子はどう取り繕っても、邪悪そのものの殺人鬼だ。
古手梨花から、話は聞いていた。理屈は分からなくはないが、動機は身勝手極まりない理解のしようがない。
カオスだって洗脳されているのか知らないが、きっと少なくない数を殺していることだろう。
沙都子はどう取り繕っても、邪悪そのものの殺人鬼だ。
古手梨花から、話は聞いていた。理屈は分からなくはないが、動機は身勝手極まりない理解のしようがない。
カオスだって洗脳されているのか知らないが、きっと少なくない数を殺していることだろう。
(……俺達なんかより余程)
それなのに、本当の仲間のように。
善悪を超えて、その絆は本物のような尊さと眩しさに溢れていた。
まるで遊戯達を見ているかのように。
善悪を超えて、その絆は本物のような尊さと眩しさに溢れていた。
まるで遊戯達を見ているかのように。
少なくとも、ずっとこの島で同行し続けたモクバとドロテアよりはずっとマシだ。
「鳥籠(マスター)」
首輪から警告音が鳴り響く。けたたましく響くそれを、カオスは無視した。
手に込めた力はより強まり、そして───。
手に込めた力はより強まり、そして───。
「梨…花……」
最期にカオスが聞いたのは、沙都子が発した誰かの名前だった。
もう助からない。
百を超える豊かな死に方から培った経験から、沙都子はそう悟った。
メリュジーヌが切り捨てたのは、当然の対応だ。
自他共に、あの瞬間沙都子は価値を失ったのだ。
流れ出す血と共に、冷めていく自分の体を直に感じて、沙都子は残りの寿命は幾ばくもないのを知る。
百を超える豊かな死に方から培った経験から、沙都子はそう悟った。
メリュジーヌが切り捨てたのは、当然の対応だ。
自他共に、あの瞬間沙都子は価値を失ったのだ。
流れ出す血と共に、冷めていく自分の体を直に感じて、沙都子は残りの寿命は幾ばくもないのを知る。
(カオスさんが……メリュジーヌさんと行ってくれれば、まだ乃亜の蘇生で……)
しかし、それも叶わぬ事らしい。
カオスは沙都子を今、死なせない事に尽力しメリュジーヌへと決別した。
それを恨みはしない。そうあれと、手懐けたのは沙都子本人だ。
それだけの価値を持つ、優秀な駒だった。だから話術で巧みに心を開かせ、自分を好ませるように誘導した。
今でもそれが間違った選択とは思わない。強いて言えば、状況と巡り合わせの噛み合いが悪かった。
沙都子と言えど、そこまで予測しきり立ち回るのは不可能だ。
雛見沢と違い、この島ではオヤシロ様ではない。ただの北条沙都子として、先の分からない盤上で駒を刺す事を求められるのだから。
カオスは沙都子を今、死なせない事に尽力しメリュジーヌへと決別した。
それを恨みはしない。そうあれと、手懐けたのは沙都子本人だ。
それだけの価値を持つ、優秀な駒だった。だから話術で巧みに心を開かせ、自分を好ませるように誘導した。
今でもそれが間違った選択とは思わない。強いて言えば、状況と巡り合わせの噛み合いが悪かった。
沙都子と言えど、そこまで予測しきり立ち回るのは不可能だ。
雛見沢と違い、この島ではオヤシロ様ではない。ただの北条沙都子として、先の分からない盤上で駒を刺す事を求められるのだから。
(メリュジーヌさんが……乃亜の蘇生で、蘇らせてくれることを……)
カオスを勧誘する時、乃亜の蘇生と願いを叶える力は別枠だと推測を話したが、それも何処まで信憑性があるか。
モクバの乃亜の話を聞く限り、優勝者を笑って屠り去りそうだ。
モクバの乃亜の話を聞く限り、優勝者を笑って屠り去りそうだ。
『誰もが心の奥底は醜いと、確かめたかったんじゃないのか?』
乃亜の話が信用ならぬことぐらい、モクバと話すまでもなく分かっていた。
元から、自力で梨花の心を屈しかけていた所で殺し合いに巻き込まれた時点で、乃亜の力を借りずとも願いを叶える必要はない。
メリュジーヌとの遭遇で発砲したのも、今にして思えば軽率だった。
優勝ではなく、対主催に便乗し脱出という手段も沙都子にとっては、安全性と危険性を秤に掛ければ悪くない手段だ。
脱出が困難と分かれば優勝へ切り替えればいい。それまでの道中は、強力な対主催に守って貰える。
そう、孫悟飯に薬など盛らずに、メリュジーヌから乗り換えても良かった。
彼はメリュジーヌですら、手に負えない強者なのだから、あそこで悟飯を言い包め脅されていたとでも話せば、きっと庇えてもらえた。
元から、自力で梨花の心を屈しかけていた所で殺し合いに巻き込まれた時点で、乃亜の力を借りずとも願いを叶える必要はない。
メリュジーヌとの遭遇で発砲したのも、今にして思えば軽率だった。
優勝ではなく、対主催に便乗し脱出という手段も沙都子にとっては、安全性と危険性を秤に掛ければ悪くない手段だ。
脱出が困難と分かれば優勝へ切り替えればいい。それまでの道中は、強力な対主催に守って貰える。
そう、孫悟飯に薬など盛らずに、メリュジーヌから乗り換えても良かった。
彼はメリュジーヌですら、手に負えない強者なのだから、あそこで悟飯を言い包め脅されていたとでも話せば、きっと庇えてもらえた。
(……認められなかったのでしょうね。あの奇跡に勝るものなどないと)
もしも、本当に対主催が乃亜に打ち勝てば。
今まで、罪(きずな)によって積み重ねた結束が否定されると、何処かで意固地になっていたのかもしれな。
今まで、罪(きずな)によって積み重ねた結束が否定されると、何処かで意固地になっていたのかもしれな。
最後には、皆が幸せになれる世界になると言い聞かせ、仲間達を虐殺し続けた自身を自己否定する結果を認めることが出来なかった。
赤の他人同士が何の積み重ねもなく、結束し奇跡を起こせたのなら。自分の行いは間違っていたとでもいうのか。
赤の他人同士が何の積み重ねもなく、結束し奇跡を起こせたのなら。自分の行いは間違っていたとでもいうのか。
(だから……嫌い、だったんですのよ。あの竜の光が……あの赤い輝きと、流星が)
メリュジーヌを前に、夜空を切って現れた結束の象徴が。
沙都子が離すまいと必死で逃がしはしまいと、ずっと繰り返してきた奇跡を呆気なくあの少年少女達は叶えたようで。
だから、絶対にそれだけは認められなかった。
沙都子が離すまいと必死で逃がしはしまいと、ずっと繰り返してきた奇跡を呆気なくあの少年少女達は叶えたようで。
だから、絶対にそれだけは認められなかった。
(梨花の所には……行けませんわね)
『沙都子好みの勝負を考え付いたから、それで一度勝負をしましょう』
メリュジーヌから聞かされた梨花の遺言。
でも、もう一度は二度と訪れはしない。
乃亜から直々に警告された。オヤシロ様の力は制限されていると。
つまり、それはそういうことだ。一度死ねば、そこで終わり。繰り返す事は出来ない。
仮に乃亜のハッタリであったとしても、エウアに科せられたルールは古手梨花より先に死なない事だ。
この島の梨花は別のカケラの梨花であり、それはここに居る沙都子が追い詰め続けた梨花とは別。
従来のルールであっても、恐らくはアウト判定かもしれない。
でも、もう一度は二度と訪れはしない。
乃亜から直々に警告された。オヤシロ様の力は制限されていると。
つまり、それはそういうことだ。一度死ねば、そこで終わり。繰り返す事は出来ない。
仮に乃亜のハッタリであったとしても、エウアに科せられたルールは古手梨花より先に死なない事だ。
この島の梨花は別のカケラの梨花であり、それはここに居る沙都子が追い詰め続けた梨花とは別。
従来のルールであっても、恐らくはアウト判定かもしれない。
いずれにしても、もう……北条沙都子が梨花と巡り合うことはないだろう。
(あぁ……最後に…………)
霞んだ目で視界は朧気だった。
何を話しているのか、カオスが何か言っているのが聞こえたがどうでもよかった。
何を話しているのか、カオスが何か言っているのが聞こえたがどうでもよかった。
(圭一さん、レナさん、魅音さん、ねーねー、にーにー……皆さんに)
駆け巡る、掛け替えのない美しい思い出達。
「梨…花……」
そして、どんなに手を伸ばしても、どんなに抗おうとも。
決して手に入らなかった美しい物。
決して手に入らなかった美しい物。
何もない虚空に手を伸ばし、北条沙都子は息絶えた。
【北条沙都子@ひぐらしのなく頃に業 死亡】
【ドロテア 100ドミノ取得】
【ドロテア 100ドミノ取得】
何、言ってるの?
カオスは、思考が停止した。
沙都子が口にした少女の名は聞いた事があった。
元の世界の仲間で、自分を裏切った許せない裏切り者だと。
元の世界の仲間で、自分を裏切った許せない裏切り者だと。
でも、どうしてそんな名前が急に出てくる? しかも、それはカオスの名前を呼ぶ時より、いやこの島で誰を呼ぶ時よりもずっと優しくて、穏やかな声色で。
感謝が欲しかった訳でもない。見返りが欲しい訳でもない。
ただ、愛していた。カオスは沙都子を愛していた。だから、自分の命だって迷わず捨て去れた。
(お姉ちゃんは……)
『お前は廃棄処分だ』
『エンジェロイドは帰ってくんなーっ!!』
『エンジェロイドは帰ってくんなーっ!!』
ずっと、ずっと、酷い事を言われ続けてきた。殴られたり斬られたり撃たれたりするより、辛くて痛い事だった。
だけど、それはカオスを指していた。
だけど、それはカオスを指していた。
沙都子は、その最期までカオスを一度として見ていなかった。
同じ方角を見ていたが、彼女が欲しかった過程にカオスが居ただけだ。
カオスがいくら愛しても、沙都子の執着は昭和58年の雛見沢と古手梨花にしかない。
カオスがいくら愛しても、沙都子の執着は昭和58年の雛見沢と古手梨花にしかない。
メリュジーヌは一つ間違っていた。
オーロラは、常にずっと、メリュジーヌを見続けていたのだ。
例えその命の灯が消え去ろうとしても、その身が荼毘に伏そうとしても。
最期まで、残された時間を目一杯、届かぬ空に居る美しいものを見送り続けた。
カオスの在り方を、かつての自身と近しいかもしれないと考えたが、それは大いなる間違いだった。
何故なら、カオスは一度として───。
オーロラは、常にずっと、メリュジーヌを見続けていたのだ。
例えその命の灯が消え去ろうとしても、その身が荼毘に伏そうとしても。
最期まで、残された時間を目一杯、届かぬ空に居る美しいものを見送り続けた。
カオスの在り方を、かつての自身と近しいかもしれないと考えたが、それは大いなる間違いだった。
何故なら、カオスは一度として───。
「わたし…は……だ、れに………」
その疑問に答えられる者もない。答えを出す時間も存在しない。
耳下から響く子気味良い爆破音に全てが上書きされ、カオスの機能は全てが停止し、意思のないジャンク品になり下がり首が胴体と別れ、転がっていく。
旅の終わり、その終着点は太陽から程遠い冷たい地べたの上、たった一人で堕天使は孤独に永久の眠りについた。
【カオス@そらのおとしもの 死亡】
【カオス 100ドミノ取得】
【カオス 100ドミノ取得】
ぐしゃっ。
ドロテアの踵が、カオスの生首を踏み潰した。
「なんじゃ、この赤いのは? ガラクタに血など流れておったのか」
ガシガシと小学生のように足踏みして、将来はさぞ美しい美貌になっていたであろう、愛らしい顔は見るも無残な造形へと変容する。
ひとしきり踏んで、ようやく溜飲が下がったのかドロテアは満足そうに満面の笑みになった。
支給品は奪取し、恐らくはこちらの居場所を探り当てられたカオスと、目障りな頭脳役の沙都子を落とせたのだ。
戦果は上々、ヤミも傍に居てモクバも居る。これ以上ない大勝利だろう。
ひとしきり踏んで、ようやく溜飲が下がったのかドロテアは満足そうに満面の笑みになった。
支給品は奪取し、恐らくはこちらの居場所を探り当てられたカオスと、目障りな頭脳役の沙都子を落とせたのだ。
戦果は上々、ヤミも傍に居てモクバも居る。これ以上ない大勝利だろう。
「うむ、後は」
ザクッ。
やり忘れていた課題を片づけるような、軽い仕草でドロテアは、カオスからのランドセルから抜いた魂砕きを袈裟懸けに振る。
モクバの胸を右肩から左下の脇下まで、鋼の剣が切り裂いた。
モクバの胸を右肩から左下の脇下まで、鋼の剣が切り裂いた。
「ッ……ぇ? がっ……あああああああああああああああああああああああ!!!?」
最初、何をされたのか分からなかった。
斬られてから、それを認識するのに数秒、後から体が動かなくなり痛覚が遅れてやってきて、ようやく絶叫が喉を鳴らす。
斬られてから、それを認識するのに数秒、後から体が動かなくなり痛覚が遅れてやってきて、ようやく絶叫が喉を鳴らす。
「モクバ、貴様はもう生かしておけぬ。あの小娘と、ぬいぐるみの殺害現場を目撃しておるからの」
「………………?」
一体、何の話かモクバは分からなかった。
首輪の解析はてんで進んでいない。だから、見切られるのは何処かで覚悟していた。
だが、何故急にあのドロテアが殺した女の子と黄色のぬいぐるみの話になる?
だが、何故急にあのドロテアが殺した女の子と黄色のぬいぐるみの話になる?
(フリーレンやガッシュに、妾の悪事をバラしこいつは妾を殺すつもりじゃろ? そうはいかぬ)
雛見沢症候群である。
沙都子達の急襲により、極度のストレス下にあったドロテアは発症している。
悟飯のように堪える必要性はまるでなく、心の奥底から自分の疑心暗鬼に率直に従う。
自分の疑いを疑う事すらなく、それが事実のように振舞いだした。
沙都子達の急襲により、極度のストレス下にあったドロテアは発症している。
悟飯のように堪える必要性はまるでなく、心の奥底から自分の疑心暗鬼に率直に従う。
自分の疑いを疑う事すらなく、それが事実のように振舞いだした。
『今そんな事を言っとる場合か!いいからっさっさと────』
『お前がちゃんと話せば!話そうとすればいいだけだろ!信用できないんだよ!!』
『お前がちゃんと話せば!話そうとすればいいだけだろ!信用できないんだよ!!』
少し前の言い争いも最悪だった。
売り言葉に買い言葉を、行動で実施した形になる。
モクバが信用できないと叫んだように、ドロテアも信用できなくなった。
売り言葉に買い言葉を、行動で実施した形になる。
モクバが信用できないと叫んだように、ドロテアも信用できなくなった。
「いくらなんでも……これは」
ずっと、沈黙を守りドロテアに付き従うヤミも困惑し、口を挟んだ。
あれが外道なのは知って、それでいて虚無な自分を満たす為に身を任せたが、今回の突発的な行動は真意が分からない。
モクバをここで殺す必要性はあるのか? 首輪の手掛かりでは?
少なくとも表向きは対主催の筈で、だから一応は協力していた。
あれが外道なのは知って、それでいて虚無な自分を満たす為に身を任せたが、今回の突発的な行動は真意が分からない。
モクバをここで殺す必要性はあるのか? 首輪の手掛かりでは?
少なくとも表向きは対主催の筈で、だから一応は協力していた。
「口答えをするなヤミ、お前は妾の兵器じゃ」
「……」
思考の放棄と服従の誓いを、既にヤミは終えていた。
おかしいとは考えても、それに口を挟めるだけの気力がない。
おかしいとは考えても、それに口を挟めるだけの気力がない。
「が、ぐ……ぐ…っぞ……!!」
モクバは咳き込む。風の類ではなく、内部に異常が起き血が逆流し、喉につっかえたが故の咳であり、唾液と共に血が混じり、咳き込むだけで激痛が奔る。
これは、駄目だ。
今まで生きた中で、もっとも深刻なダメージだと本能的に理解する。
魂を奪われた事も一度や二度ではないが、それらとは比較にならない。
体が生存する為の機能が損壊し、手の施しようがない手遅れになったと、脳に伝達する痛覚が教えてくる。
これは、駄目だ。
今まで生きた中で、もっとも深刻なダメージだと本能的に理解する。
魂を奪われた事も一度や二度ではないが、それらとは比較にならない。
体が生存する為の機能が損壊し、手の施しようがない手遅れになったと、脳に伝達する痛覚が教えてくる。
(ここ……まで、かよ……!!)
乃亜に人の心を取り戻させるどころか、何故こんな殺し合いに至ったのか謎を知ることも叶わず。
同じく、殺し合いに抗う者達に何ら貢献する事すら出来なかった。
挙句、結束だけならばマーダーの沙都子達にすら劣る無様さだ。
同じく、殺し合いに抗う者達に何ら貢献する事すら出来なかった。
挙句、結束だけならばマーダーの沙都子達にすら劣る無様さだ。
負けだ。
モクバは乃亜に一切、何も適うことなく敗北した。
ぐうの音も出ない完全敗北である。
ぐうの音も出ない完全敗北である。
消えていく命を、感じながら地べたに蹲り、モクバは何が悪かったのかなど考え出す。
それそのものが敗者の思考で、何ら何も残さない無駄なものだと知りながら。
それそのものが敗者の思考で、何ら何も残さない無駄なものだと知りながら。
ドロテアと組んだのが間違いか、その後カツオに付き合って海馬コーポレーションへ向かう無茶な方針を通したせいか。
ガッシュ達と共に、フリーレンとの再合流に同行してからでも良かったか?
キウルやディオ達との再合流もあり、あの時のモクバ達にも色々事情があり一概には言えないが……。
カツオを死なせたせいか。グレーテルに光の道を示して、引き返すように拘ったのがいけないのか。
ガッシュ達と共に、フリーレンとの再合流に同行してからでも良かったか?
キウルやディオ達との再合流もあり、あの時のモクバ達にも色々事情があり一概には言えないが……。
カツオを死なせたせいか。グレーテルに光の道を示して、引き返すように拘ったのがいけないのか。
(クソッ……クソォッ……!!!)
心の中でしか叫ぶことが出来ない。
何も、ここから何も出来ない。
何も、ここから何も出来ない。
恨み言を吐く事すら、徐々に擦り減る体力のせいで何も出来ない。
(俺は、結局兄サマや遊戯みたいには……)
乃亜という敵は、モクバが挑むにはあまりにも巨大過ぎた。
身の程を弁えて自分が生き延びる為だけに、隠れて息を潜め、微かな優勝の可能性に懸けて殺し合いに乗るしかなかった。
身の程を弁えて自分が生き延びる為だけに、隠れて息を潜め、微かな優勝の可能性に懸けて殺し合いに乗るしかなかった。
遊戯や兄である海馬ならばこんな事にはきっと、ならなかったと思う。
神(オシリス)という無限の絶望を退け、悪霊の絶対死を覆し、最後まで屈さず立ち上がり続けたあの決闘王ならば。
その決闘王と肩を並べ、神々の戦いを繰り広げた偉大な兄ならば。
結局、モクバという少年は普通の子供に比べ非凡ではあれど、彼らのような英雄に等しい偉業は成せなかった。
主役を支えるモブでしかなく、その点を乃亜はしっかりと分かっていた。
遊戯達の居ないモクバなど、ただの虐殺の被害者にしかなり得ないと。
死んで、マーダーの肥やしになる為だけに呼ばれた、生きた餌だったのだ。
神(オシリス)という無限の絶望を退け、悪霊の絶対死を覆し、最後まで屈さず立ち上がり続けたあの決闘王ならば。
その決闘王と肩を並べ、神々の戦いを繰り広げた偉大な兄ならば。
結局、モクバという少年は普通の子供に比べ非凡ではあれど、彼らのような英雄に等しい偉業は成せなかった。
主役を支えるモブでしかなく、その点を乃亜はしっかりと分かっていた。
遊戯達の居ないモクバなど、ただの虐殺の被害者にしかなり得ないと。
死んで、マーダーの肥やしになる為だけに呼ばれた、生きた餌だったのだ。
『電脳エナジーショック!! 魔鏡・怪光線!!』
『スケープ・ゴート二体消滅!!』
『もうこれ以上は無駄だ。醜態を晒す前にサレンダーしな』
エスパー絽場と弟達のインチキを叱った時なんかもあったけな。急に、頭の中で思い起こされた記憶に、モクバは苦笑した。
あの時、絽場を失格にして無効試合にしようとしたが、弟達の訴えを聞いて続行させた。今となっては懐かしくて、良い思い出だ。
あの時、絽場を失格にして無効試合にしようとしたが、弟達の訴えを聞いて続行させた。今となっては懐かしくて、良い思い出だ。
『オレのターン!!』
『なぜ、あきらめない!!』
消えそうな焚火に、薪をくべられたかのように。
「───ッ!!」
『決闘者だからだよ!』
雑草のように何度踏み付けられても、立ち上がる男の姿が、消えゆく命に力を取り戻させる。
「……ま、て。ヤミ…………」
「なんじゃ、しぶとい奴じゃの」
モクバの首を落とし首輪を頂こうとしていたドロテアは、僅かに瞠目した。
肉体的にもただの子供で、気力すら落ちていたモクバがまだ足掻く。
死に掛けだというのに、その目には諦観はない。
急に、目だけが生き返ったかのような力強さを宿したのだ。
肉体的にもただの子供で、気力すら落ちていたモクバがまだ足掻く。
死に掛けだというのに、その目には諦観はない。
急に、目だけが生き返ったかのような力強さを宿したのだ。
「ええい! 死ね!!」
直接、首を刎ねれば面倒も少なくて済んだ。
短い後悔を終えて、断頭台のギロチンのようにドロテアは剣を振り下ろす。
短い後悔を終えて、断頭台のギロチンのようにドロテアは剣を振り下ろす。
「理由が欲しいなら、俺が与えてやる!!!」
モクバが見てきた決闘者は遊戯と海馬だけじゃない。もう一人、城之内は、ずぶのド素人で間が抜けて、喧嘩の強さ以外は神も千年アイテムも持たない癖に。
太陽神(ラー)に焼かれようと、例え絶対に勝てない敗北を定められた逆境に居ても、最後まで立ち上がり続けた。
太陽神(ラー)に焼かれようと、例え絶対に勝てない敗北を定められた逆境に居ても、最後まで立ち上がり続けた。
(…………俺がここで、落ちても)
自分が助かる手段はない。だが、だから戦うのを放棄するのか。
避けられぬ死を目前にして、全て投げ出して諦めるのか。
避けられぬ死を目前にして、全て投げ出して諦めるのか。
いや、それは違う。
結局、自分は真の決闘者のような連中と並ぶことは出来ない。力不足だ。
だけど、力が足りないから、それだけで全て諦めるなんて真似は自分が見てきた決闘者達なら絶対にしない。
だけど、力が足りないから、それだけで全て諦めるなんて真似は自分が見てきた決闘者達なら絶対にしない。
「あの杖!! イリヤって子が使ってたのと似てる! ドロテアが奪った支給品の中にある!
きっと、イリヤに必要な筈だ。
だから、ヤミ……お前が、生きる理由がないなら……まだ、頑張ってる奴等の為に……!! 必要な奴の為に……」
きっと、イリヤに必要な筈だ。
だから、ヤミ……お前が、生きる理由がないなら……まだ、頑張ってる奴等の為に……!! 必要な奴の為に……」
シャルティアがランスの他に握っていたピンクの杖、イリヤが戦闘で使用するそれとそっくりだった。
恐らく、この島の何処かに……孫悟飯との戦いで死んだかもしれないが、それでも生きている可能性に賭ける。
あの少女の元へ返却するのが、きっとそれが今出来るモクバにとっての最後の足掻きだ。
恐らく、この島の何処かに……孫悟飯との戦いで死んだかもしれないが、それでも生きている可能性に賭ける。
あの少女の元へ返却するのが、きっとそれが今出来るモクバにとっての最後の足掻きだ。
「……!!」
ドロテアの剣を金髪の刃が遮った。
それは、今まで従順だったヤミの反抗を意味する。
それは、今まで従順だったヤミの反抗を意味する。
「ヤミ! 妾の言う事が聞けぬのか!!」
これは厄介なことになった。ドロテアはモクバの急変と、それに釣られたヤミの変化に気付く。
元からヤミは流されていただけだ。
自暴自棄で目的の見出せない、自身で決められない思考をドロテアに委託しただけであり、モクバが茫然自失でなければ、ドロテアがこうも今までに好き勝手利用できたとは思えない。
元からヤミは流されていただけだ。
自暴自棄で目的の見出せない、自身で決められない思考をドロテアに委託しただけであり、モクバが茫然自失でなければ、ドロテアがこうも今までに好き勝手利用できたとは思えない。
「……」
分からない。ヤミも何故、急に突き動かされたのか。
個人の思惑で言えば、確かにドロテアは悪人で自分を使い捨てるのを分かっていた。
それでも、それでいいと思えていた。
だが今、少年のもう直に息絶える筈の死に体の喉から発せられる声の熱に、僅かに浮かされたのだとでもいうのか。
個人の思惑で言えば、確かにドロテアは悪人で自分を使い捨てるのを分かっていた。
それでも、それでいいと思えていた。
だが今、少年のもう直に息絶える筈の死に体の喉から発せられる声の熱に、僅かに浮かされたのだとでもいうのか。
「……ドロテアなんかに、従うよりは……イリヤの助けになる方が、アンタだってマシだろ!!!」
ザンという音が轟く。
「ぐぎゃあああああああああああああああ!!!?」
ドロテアの左腕が飛んだ。
怪力に自信はあれど、正面からの斬り合いでヤミに勝てる技量はない。
腕の欠損に叫び、慌てふためく間にヤミは伸ばした髪で、ランドセルを絡み取る。
怪力に自信はあれど、正面からの斬り合いでヤミに勝てる技量はない。
腕の欠損に叫び、慌てふためく間にヤミは伸ばした髪で、ランドセルを絡み取る。
「だから……たの……む……」
「……」
モクバの説得に完全に心が動かされたわけではない。
未だに、早く死んで楽になりたいとさえ思う。それでも。
未だに、早く死んで楽になりたいとさえ思う。それでも。
『わたし…は……だ、れに………』
『なんじゃ、この赤いのは? ガラクタに血など流れておったのか』
あの踏み潰された金髪の少女の最期。
居場所もなく、愛情も注がれず。最後まで一人で死んでいった少女に同情してしまった。
カオスの遺体の頭部を踏み潰すまでしなければ、それがほんの少しではあったが、ヤミにとっての反感に繋がった。
奇しくもかつてのヤミのようで、その救われぬ最期に加え、亡骸まで冒涜する行いに。
ヤミは僅かながら、元の感情を取り戻しつつあった。
居場所もなく、愛情も注がれず。最後まで一人で死んでいった少女に同情してしまった。
カオスの遺体の頭部を踏み潰すまでしなければ、それがほんの少しではあったが、ヤミにとっての反感に繋がった。
奇しくもかつてのヤミのようで、その救われぬ最期に加え、亡骸まで冒涜する行いに。
ヤミは僅かながら、元の感情を取り戻しつつあった。
「何故、じゃああああああああああああ!!!
兵器ですらない殺人機械の出来損ないがッ!!!」
兵器ですらない殺人機械の出来損ないがッ!!!」
ドロテアはヤミの掌握を上手く進めたが、感情が残されていることをほぼ度外視して計算していた。
流石にやり過ぎだと思われるラインを、易々と踏み越え過ぎたのだった。
元々の悪性に加え、雛見沢症候群によりブーストされた凶悪性では省みることも、今後一生ないだろう。
流石にやり過ぎだと思われるラインを、易々と踏み越え過ぎたのだった。
元々の悪性に加え、雛見沢症候群によりブーストされた凶悪性では省みることも、今後一生ないだろう。
「ぬ、ぅ!!」
残された腕で賢者の石を介し土から柱を数本編み出し、ヤミの視界を遮るように展開する。
その全てが切断された時、ドロテアの姿は消えていた。
その全てが切断された時、ドロテアの姿は消えていた。
「おのれぇ!! どいつもこいつも!!!」
しきりに後ろを気にし、ドロテアは駆ける。
ヤミは追いかけて来ない。
ただ反抗はするが、そこまでの激情を抱いてはいないのだろう。
そこだけは自暴自棄な今の精神状態に感謝する。
ヤミは追いかけて来ない。
ただ反抗はするが、そこまでの激情を抱いてはいないのだろう。
そこだけは自暴自棄な今の精神状態に感謝する。
(ランドセルは取り戻せたが……クソッいくつか、ヤミの奴が奪っていきおった!!)
ヤミにけしかけた柱の中に数本小さな触手のように蠢かせた柱を向かわせ、ランドセルは奪還したが。
中身を幾つか、抜き取られていた。特にモクバが言っていたイリヤの杖と同種の杖はない。
中身を幾つか、抜き取られていた。特にモクバが言っていたイリヤの杖と同種の杖はない。
(チッ、じゃがモクバが死ねば妾の悪評を吹き込むのは、写影共だけじゃ。
ヤミはまだそこまで頭は回らんじゃろうし、片腕の代償にしてはデカいが、まあ支給品も手にして良しとしてやるわ)
ヤミはまだそこまで頭は回らんじゃろうし、片腕の代償にしてはデカいが、まあ支給品も手にして良しとしてやるわ)
血はすぐに止血した。その後を追って襲撃を仕掛けられる怖れは少ない。
空も気を付けながら、上空から補足しにくい道を走る。
とにかく何でもいい。ガッシュでもフリーレンでもイリヤでも、利用出来て強い対主催を利用する。
これ以上、モクバのような融通の利かない弱者を抱えて、危ない橋を渡るのはごめんだった。
空も気を付けながら、上空から補足しにくい道を走る。
とにかく何でもいい。ガッシュでもフリーレンでもイリヤでも、利用出来て強い対主催を利用する。
これ以上、モクバのような融通の利かない弱者を抱えて、危ない橋を渡るのはごめんだった。
【一日目/午後/G-5】
【ドロテア@アカメが斬る!】
[状態]悟飯への恐怖(大)、雛見沢症候群発症(レベル3)ダメージ(大)、掌に裂傷(大)、左腕欠損
[装備]血液徴収アブゾディック、魂砕き(ソウルクラッシュ)@ロードス島伝説、賢者の石@鋼の錬金術師
[道具]基本支給品×2、翻弄するエルフの剣士(昼まで使用不可)@遊戯王デュエルモンスターズ 、
ホーリー・エルフ(午後まで使用不可)@遊戯王デュエルモンスターズ、ゴブリン突撃部隊@@遊戯王デュエルモンスターズ、古代遺物『死亡遊戯』
小型ボウガン(装填済み) ボウガンの矢(即効性の痺れ薬が塗布)×10、
「水」@カードキャプターさくら(夕方まで使用不可)、変幻自在ガイアファンデーション@アカメが斬る!グリフィンドールの剣@ハリーポッターシリ-ズ、
チョッパーの医療セット@ONE PIECE、飛梅@BLEACH、いないいないフープくん@ToLOVEるダークネス、ランダム支給品0~2(シャルティア、紗寿叶)、首輪×6(城ヶ崎姫子、永沢君男、紗寿叶、のび太、沙都子、カオス)
FNブローニング・ハイパワー(4/13発)、FNブローニング・ハイパワーのマガジン×2(13発)、葬式ごっこの薬@ドラえもん×2、イヤリング型携帯電話@名探偵コナン
[思考・状況]
基本方針:手段を問わず生き残る。優勝か脱出かは問わない。
0:利用出来て、強い対主催を探す。
1:とりあえず適当な人間を殺しつつドミノと首輪も欲しい。
2:写影と桃華は絶対に殺す。奴らのせいでこうなったんじゃ!! だが、ガッシュとフリーレンが守ってくれるのなら、許さんでもない。
3:悟飯の血...美味いが、もう吸血なんて考えられんわ。
[備考]
※参戦時期は11巻。
※若返らせる能力(セト神)を、藤木茂の能力では無く、支給品によるものと推察しています。
※若返らせる能力(セト神)の大まかな性能を把握しました。
※カードデータからウィルスを送り込むプランをモクバと共有しています。
[状態]悟飯への恐怖(大)、雛見沢症候群発症(レベル3)ダメージ(大)、掌に裂傷(大)、左腕欠損
[装備]血液徴収アブゾディック、魂砕き(ソウルクラッシュ)@ロードス島伝説、賢者の石@鋼の錬金術師
[道具]基本支給品×2、翻弄するエルフの剣士(昼まで使用不可)@遊戯王デュエルモンスターズ 、
ホーリー・エルフ(午後まで使用不可)@遊戯王デュエルモンスターズ、ゴブリン突撃部隊@@遊戯王デュエルモンスターズ、古代遺物『死亡遊戯』
小型ボウガン(装填済み) ボウガンの矢(即効性の痺れ薬が塗布)×10、
「水」@カードキャプターさくら(夕方まで使用不可)、変幻自在ガイアファンデーション@アカメが斬る!グリフィンドールの剣@ハリーポッターシリ-ズ、
チョッパーの医療セット@ONE PIECE、飛梅@BLEACH、いないいないフープくん@ToLOVEるダークネス、ランダム支給品0~2(シャルティア、紗寿叶)、首輪×6(城ヶ崎姫子、永沢君男、紗寿叶、のび太、沙都子、カオス)
FNブローニング・ハイパワー(4/13発)、FNブローニング・ハイパワーのマガジン×2(13発)、葬式ごっこの薬@ドラえもん×2、イヤリング型携帯電話@名探偵コナン
[思考・状況]
基本方針:手段を問わず生き残る。優勝か脱出かは問わない。
0:利用出来て、強い対主催を探す。
1:とりあえず適当な人間を殺しつつドミノと首輪も欲しい。
2:写影と桃華は絶対に殺す。奴らのせいでこうなったんじゃ!! だが、ガッシュとフリーレンが守ってくれるのなら、許さんでもない。
3:悟飯の血...美味いが、もう吸血なんて考えられんわ。
[備考]
※参戦時期は11巻。
※若返らせる能力(セト神)を、藤木茂の能力では無く、支給品によるものと推察しています。
※若返らせる能力(セト神)の大まかな性能を把握しました。
※カードデータからウィルスを送り込むプランをモクバと共有しています。
「期待はしないで下さいね」
物言わぬ骸になったモクバの前で、ヤミは冷ややかに言った。
ドロテアのランドセルを一時的に奪い、中から取り出せたのはルビーとブルーアイズのカード一枚だけだった。
凍てついた氷が解けたわけではない。ただ、どうせ目的もなく使われるなら、こちらの方がマシと思っただけだ。
それにイリヤと対面した時、雪華綺晶の一件で彼女から下されるのも、それはそれでアリと思っていた。
その際にルビーも手渡しておけば、モクバもまだ報われるだろう。
ドロテアのランドセルを一時的に奪い、中から取り出せたのはルビーとブルーアイズのカード一枚だけだった。
凍てついた氷が解けたわけではない。ただ、どうせ目的もなく使われるなら、こちらの方がマシと思っただけだ。
それにイリヤと対面した時、雪華綺晶の一件で彼女から下されるのも、それはそれでアリと思っていた。
その際にルビーも手渡しておけば、モクバもまだ報われるだろう。
『……ここは?』
「気付きましたか」
ルビーが魅了から解けふゆふゆと浮かぶ。
イリヤの持っているのもそうだったが、自立稼働できるのならずっと持っている手間も省けて楽だった。
イリヤの持っているのもそうだったが、自立稼働できるのならずっと持っている手間も省けて楽だった。
「貴女をイリヤスフィールの元へ持って行きます」
『イリヤ…さん……?』
「何か問題でも」
ルビーは何か言い淀む。何か探られたくない腹があるのだろう。
だが、ヤミはそれに触れる気もなく、淡々と方針を口にした。
だが、ヤミはそれに触れる気もなく、淡々と方針を口にした。
ヤミの背には土で盛り上がった小さな山が三つあった。
モクバと沙都子、そして一人で死んでいった天使の少女に僅かばかりの同情と慈悲を込めて。
モクバと沙都子、そして一人で死んでいった天使の少女に僅かばかりの同情と慈悲を込めて。
埋葬を終えて、当てもなく無気力に歩き出した。
【海馬モクバ@遊戯王デュエルモンスターズ 死亡】
【ドロテア 100ドミノ取得】
【ドロテア 100ドミノ取得】
【一日目/午後/G-5】
【金色の闇@TOLOVEる ダークネス】
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、エネルギー残り(小)、美柑の前で絶頂したショック(超々極大)、
敏感、全裸、自暴自棄(極大)、自己嫌悪(極大)、グレーテルに惹かれる想い
[装備]:カレイドステッキ・マジカルルビー@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:青眼の白龍(午前より24時間使用不可)
[思考・状況]
基本方針:もう全部、どうでもいい。
0:イリヤにルビーを渡す。その時に殺してくれるならそれでいい。
1:グレーテルともう一度会えば…拒み切れる自信はない。
2:やっぱり、来てはくれないんですね、結城リト。
※ダークネスが解除されました。戦闘力も下がっています。
※ダークネスには戻れません。
[状態]:ダメージ(大)、疲労(大)、エネルギー残り(小)、美柑の前で絶頂したショック(超々極大)、
敏感、全裸、自暴自棄(極大)、自己嫌悪(極大)、グレーテルに惹かれる想い
[装備]:カレイドステッキ・マジカルルビー@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ
[道具]:青眼の白龍(午前より24時間使用不可)
[思考・状況]
基本方針:もう全部、どうでもいい。
0:イリヤにルビーを渡す。その時に殺してくれるならそれでいい。
1:グレーテルともう一度会えば…拒み切れる自信はない。
2:やっぱり、来てはくれないんですね、結城リト。
※ダークネスが解除されました。戦闘力も下がっています。
※ダークネスには戻れません。
127:遠くへ行け遠くへいけと僕の中で誰かが唄う | 投下順に読む | 129:SYSTEM |
時系列順に読む | ||
126:次回「城之内死す」デュエルスタンバイ! | シャルティア・ブラッドフォールン | 140:この儚くも美しい絶望の世界で(前編) |
金色の闇 | 137:殺人考察(前) | |
ドロテア | ||
メリュジーヌ | 134:幸運を。死にゆく者より敬礼を。 | |
海馬モクバ | GAME OVER | |
北条沙都子 | GAME OVER | |
カオス | GAME OVER |