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元凶の事情

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「見つけたぞ!清王朝のダイヤモンド!数々の悲劇と混乱の元凶、死ねよやー!」

 私の隣でカレーを食べていた透明感のある美女、ダイさんは後頭部を殴られた後、パラパラと破片を落としながら振り返った。

「いってえなあ、頭が割れちゃったや」

 彼女が欠けた頭に手をやりながら平然と振り返ると、鉄パイプを持ったチンピラがガクガクと震えている。

「ひーっ、頭割れたのにピンピンしてる!清王朝のお宝恐るべし!」
「何を言ってるか分かんねえけど、オイラ、全身ダイヤモンドのジュエル星人だっての!アンドレ!カンドレ!」

 ダイさんがチンピラに向かってワンツーを放つと、チンピラはビューンと飛んで壁に埋まり動かなくなった。それを見届けた私は再びカレーを食べ進める。

「さてと、カレーの続きっと」

 他に刺客がいない事を確認した彼女も、カレーを食べる作業に戻る。欠けた頭の回復分も含め多めに食べる。私から遅れる事二分、十四皿のカレーを平らげた時、背後に人の気配を感じて彼女は振り向いた。

「や」
「なんだ、解決屋チンチンマン(珍朕萬)か」

 背後に立った人が味方だと分かった彼女は、振り上げた拳をそっと降ろした。

「君がカレーを十皿食べた辺りから来てたんだけど、相変わらずカレーを食べてる間は無防備よね」
「オイラにとってカレーは、地球星人にとっての睡眠みてーなもんよ。この星の人間は寝るって行為すると、その間隙だらけなんだろ?だから、カレーはこうして隠れ家でしか食わねえのよオイラ」
「その隠れ家も、もう使えないわね」

 壁に埋まったチンピラを見ながら、チンチンマンは指摘する。そうだ。何でバレたのかは分からないけど、バレたからにはこの隠れ家は使えない。

「くっそー、まーた引っ越ししなきゃならねえのか。今年三度目だぞ」
「大変ねえ。お金や引っ越しのアテはあるの?」
「ねえ!だから、チンチンマンが用意してくれよ!こないだみたく!」

 彼女は無一文だった。全身ダイヤモンドな彼女を働かせてくれる場所なぞ無い。誰もが彼女を見るなり破壊しようとするか生け捕りにしようとする(ダイヤモンドに良い思い出が無い私は別だけど)ので、自分で稼ぐのは不可能。チンチンマンみたいに匿ってくれる善意の人に甘えて、何とか生きてきたのだろう。知らんけど。

「都合が良いわね。私、今日は貴方に仕事を持って来たのよ。はい、これ」

 そう言って、チンチンマンはスカートの中へ手を入れて指令書を取り出した。

「ほほー、なになに?…清王朝のダイヤ探しぃ?チンチンマン、オイラ何でも屋してるけどよぉ、人や物探しは苦手なの知ってるだろ?」
「探索については、元から期待はしてないわ。戦力として頭数を揃えたいから、私の知り合いに片っ端から声を掛けてるだけよ。でも、仕事の成否問わず、隠れ家と食料を提供するから」

 そう言われて、ダイさんは仕方ねーなとばかりに頷いた。彼女にそっぽ向かれたら、また何年あるいは何十年も掛けて親切な地球星人を探さなきゃならないからだろう。知らんけど。

「わーった。やるよ。だから、家と飯よろしくな」
「はーい、契約成立ね。新しいお家の地図と、依頼内容はその紙に書いてあるからしっかり確認しておいてね。じゃ、私は次の仕事があるから」

 そう言って、チンチンマンは出て行った。ダイさんも必要なだけの荷物を持って隠れ家の外へ出ると右手を太陽の方へと伸ばした。

 ゑゑ!?

「おーい、ダイさんちょっと待」
「アンドレー!・カンドレー!」

 私の声も届かずビ〜ム。

 私が横でカレー食べてたのをど忘れした彼女が隠れ家を焼き払う為にビ〜ムしやがった。

「ファ、ファイアー!」

 私は慌てて魔人能力で口から炎を吐いてビ〜ムを相殺しながら、デザートのシャーベットを抱えて燃え盛る隠れ家から転がり出た。

「うわっちゃちゃちゃ!ちょっとダイさーん?まだ私が食べてたんですけどー?」

 ホント、何やってるのこの人!私が火属性キャラじゃ無かったら危なかったぞ!

「わりい」

 謝りながら、もっかいビ〜ム。

 太陽光を集中させて発射したレーザーは、隠れ家を容易く焼き尽くした。私は火葬されたチンピラに手を合わせてから、デザートのシャーベットを口へ入れる。

「よーし、しっかり痕跡は消せたな。そんじゃ、新しい隠れ家へ向うか。アンドレ!カンドレ!」

 彼女は手足の角度を調整して、ダイヤそのもの形状となり転がっる。

「ファイアー!」

 私も口から火を吹く反動で低空飛行して並走する。

「えーと、ふむふむ。『清王朝時代のダイヤ。時価数千億円とも言われ、【魔幇】のボスがその証として所有していた。現在は強奪され所在不明となっている。実物を見た者が誰もおらず、そもそも清王朝以前の物だとか、組成がダイヤではないとも言われるが詳細は不明。だが、一目見れば誰もがこれだと思う程の存在であるらしい』
おいおい、こんなのある訳ねえっての」
「だよねー」

 資料に目を通した私達は、それをガセ情報だと決めつけ笑い合う。

「オイラ四百年前に宝物庫の番してたけど、そんなもん無かったもん」
「そうそう。少なくとも、今噂に上がってる清王朝のダイヤモンドは四百年前のとは別物だと思うよ」

 ダイさんの話がどこまで本当かは分からない。彼女が人間よりずっと長生きで以前も中国に居た事があるのは知っでるけど、流石に清王朝の宝物庫に入ったとはにわかには信じ難い。

 だけど、清王朝のダイヤモンドなんて実在しないという点では同意見だ。ダイさんの話を信じた訳じゃないが、私には別の確かなソースがあった。

 今から四百年前の清王朝に一人の宦官が居た。ある日、彼は反乱者を減らすための策を時の皇帝に告げた。それは、あらゆる願いが叶うとされる宝玉が宝物庫に眠っているというデマを流す事だった。こうする事で、反乱を企む者達はまずは皇帝から宝玉を奪おうと考える。その存在しない宝玉こそが、現在『清王朝のダイヤモンド』と呼ばれているものの正体なのだ。

 で、何で私がそんな事を知っでるかと言うと、デマを流してた宦官の子孫だからなんだよね。デマ流した宦官にはチンチン取る前に作った子が居て、その子供は清王朝の崩壊前にヨーロッパ方面へ逃れてそこで家庭を持った。それでその子孫が私って訳。

 だけど、私のご先祖様から代々聞いてる話の通りなら、今の上海で語られてる『清王朝のダイヤモンド』って一体何なのか?マフィアが箔をつける為に昔の伝説を持ち出したのか、四百年の間に偽物が作られて本物として伝わったのか、私の家に伝わる話が間違ってるのか、私はそれを確認して自分の先祖がキッカケとなった混乱を収める為にここへ来た。

「よーし、隠れ家からこんだけ逃げれば十分だな!こっからは普通に走るか!」
「そだねー。じゃ、私はこれで」
「ん?あー、ギャル曽根はチンチンマンから依頼受けてる訳じゃ無かったっけ」
「うん。私は好きに動くから」

 チンチンマンには私もお世話になったが、清王朝のダイヤモンドは存在せず、そう呼ばれる全てが無価値な偽物と考える私と彼女ではいつか対立する。だから、隠れ家周辺の見回りとダイさんの監視という仕事は引き受けたけど、そこから先は自由にして良いって感じの契約にして貰っていた。

「それじゃアバヨ!アンドレ・カンドレー!」

 私に別れを告げて、目的地へ走り出すダイさん。その背中は次第に小さくなって行き…、

ペカー。

「ええーっ!ダ、ダイさーん!」

 突如謎の光が天より降り注ぎ、ダイさんは光に包まれ消えてしまった。

【ダンゲロスSSタイムスリップ第一話へ続く】

「ダイさんが私とお別れした直後に謎の光でペカって消えた!敵対マフィアの仕業!?…まあいいや。私は自分の目的を果たそう。ファイアー!」

 ダイさんの事は忘れて私は清王朝のダイヤモンドがあると噂されている候補地の一つへと向かうのだった。

【ダンゲロスSS上海第一話へ続く】
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