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 暗い。
 ただ、ひたすら暗かった。
 しとしとしとと、降り注ぐ。
 その先には何も見えない。
 だからと言って、何もする気にならない。
 寒い。
 冷たい。
 息苦しい。


 頭の中はからっぽで、心の中は暗黒で、すっぽりと大切なものが欠けている。
 空しくて、切なくて、やるせない、反響音。

 どこからか、犬の鳴き声がする――。
 どこからか、雨の音がする。
 目に入るもの全てが灰色で、何も味気を感じない。


「なにしてんの?」
 誰かがそう尋ねても、私の何かがそれを拒絶する。 
 煩わしい、そう石ころに書き込んで、心の底に放り込む。
「……」
 喉を震わす力が出ない。
 相手を見据える力が出ない。
 全てが空っぽ。何も存在しない。
 何も存在しない。
 何も存在しない。
 この世界は確かにあるのに、私だけこの場に浮いている。

「傘いりますか?」
「だいじょぶ?」

 手を差し伸べられても、それがなんなのか分からない。
 応えてくれるはずの記憶は、私を無視して沈黙しかしない……。


 闇、闇、闇。
 音が響く。
 聞こえる。
 何も。
 声が聞こえる。
 地面が近づく。
 アスファルトが迫ってくる。
 視界が狭まっていく――気持ちわる――

最終更新:2009年03月30日 18:53