アットウィキロゴ
 
上位種は極偶に気まぐれを起こす。
それは閉塞感ゆえの危惧か、はたまた倦怠感ゆえの遊戯か、それとは別の何かなのか。

かつて宇宙は一つであり、世界は断絶することなく、永遠に続いていた。
それがいつの頃からか、互いに行き来が乏しくなり、世界はいつしか無限に分岐した。
結果、可能性と共に人々に植えつけられたのは、世界との断絶感であり、孤独感だった。

上位種はやがて、人々に『鍵』をばら撒き始めた。
世界と世界を繋ぎ、宇宙と宇宙を一つにし、次元と次元を統一する、橋渡しとして。
『鍵』は無限にばら撒かれたが、同様に世界も無限に存在した。

その中で『鍵』を拾い、それを所有した者の一人が「マダマテ」という魔人だった。

マダマテは『鍵』を使い、様々な世界を繋ぎ、またあるときは、消し去った。
そんな中で、マダマテは「皇すらら」という少女に出会った。
マダマテは、知らなかった。
何も知らずに彼女に惹かれ、何かに感づきながらも、彼は無知を望んだ。

魂は連続している。
ある世界では、善人であったものが、別の世界では、殺人鬼として極刑に処せられる。
断続的に魂はコピーされ、そのどれもがオリジナルとして生を受けるべく、次の世界に送り込まれる。

「皇すらら」は少なくとも普通の少女だった。
しかしその魂は、度重なるコピーによって、少しずつ少しずつ、疲弊していった。
ある時からか、すららの魂は、エラーによって自らの存在を認識できなくなっていった。
自分がどこにいて、何をして、何を思う(べき)なのか、分からなくなっていた。
マダマテが組み込んだプログロムも、徐々に効力を無くし、「皇すらら」はこの世から消えた。

「皇すらら」と魂を同じくする何かは、自身の中に渦巻く負の感情を暴走させた。
怒り、憎しみ、悲しみ、恐怖、彼女の中に存在したそれらは、ただ一点、自らを生み出した存在へと向けられた。

その肉を喰らい、その能力を取り込む中で、負の感情は変質し、嫉みに取って代わった。
他者を嫉み、自身を呪う。

名も無き魔人は、ただぼんやりと降りしきる雨の中、暗雲の向こうを見つめていた。
最終更新:2009年04月05日 23:49