結局、葵はその日学校を休んだ。
 昨日の暑さにまいってしまったらしい。
「なんか、つまんない……」
 いつもなら、まだ美しく感じる、真っ赤な染まった夕焼けが、今日はやけに粗末に感じる。
 屋上から校庭を見渡すと、下校する生徒の数もまばらになってきている。
 これ以上、学校に残っていても仕方がない。
「帰ろう」
 そう思い、振り返った瞬間――わたしはぎょっとした。
「やっほー」
 そう言って手を振ったそいつの体は、まるで空に座っているように見えた。
「な……!」
 わたしがその光景に呆然としていると、そいつは、怪訝そうにわたしを見る。
「あんたも魔人だろ? 驚く必要ないぜ」
「どこにいるの?」
 わたしがそう尋ねると、そいつは嬉しそうにきゃっきゃと笑う。
 人を小ばかにしたようなその笑みに、わたしは内心いらいらした。
「家だよ。姿だけ見せてる」
 家か……。
 むっとそいつを睨むと、そいつは、またあの笑みを浮かべた。
「悪く思うなよ。もし、あんたの目の前に直接出てたら、こうして話もできないぜ」
「ふふふ、むかつくなぁ」
 わたしは微笑む。
「まぁ、そう言うな。この学園には、二人しか魔人がいないって言う話だ。おまえがそれだろ? 仲良くやろうぜ」
「さぁ、何を言ってるのか分からないなぁ」
 私がそう言うと、そいつはにっと頬を吊り上げた。まるで、わたしがそう答えるのを、予見しているようだった。
「何か言いたいことでもある?」
「いや、別に。ただ、」
最終更新:2009年04月11日 14:38
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