壁の向こう側
なぜ生まれたのかわからない。
どうしてここにいるのかわからない。
真っ黒な回廊に響き渡る声。
ごそごそと駆け回るネズミたち。
「まだ生きてんのか?」
どこからか
男子生徒の声が聞こえてくる。
「まだ死なないよ」
別の声が受け答える。
「起きてんのか?」
「まだ眠ってんじゃない?」
男子生徒と
女子生徒の二名は笑ってる。
何がおかしいんだろう。何がおかしい。
目の前で、刃物が舞っている。
目の前で、火花が散っている。じゃばじゃばと水の音が耳元からする。
頭が、腕が、足が、胸が、鼻が、体のあちこちが痛い。
笑ってる。
何がおかしい? 何がおかしいんだろう。
水の滴る音がする。どこからか誰かの悲鳴がする。
痛い、痛い痛い痛い。
叫ぶ声、笑う声。歓喜? 何が? わからない。
「死ねよ、死んでみなよ、痛いならさ」
声が頭の中でかんかんと木霊する。
「泣いてんの? 早く逝けよ」
どうして、私はここにいるんだろう。
どうして、彼女は笑ってるのだろう。
どうして、彼は嬉しそうなのだろう。
苦しい。
鉄のにおいが鼻をくすぐる。
鎖の音がじゃらじゃらと鳴り響く。
「ミンチにでもするー?」
オクターブの高い声が、つまらなそうにつぶやく。
男子生徒がにんまりと口元をゆがませる。
モーターの回る音が響く。男子生徒が両腕を振り上げてる。
何かがバリバリと引き裂かれる音がした。
何かがぐちゃぐちゃと、砕かれてる音がした。
誰かが泣いてるような気がした。
『まだ生きてんのか?』
自分でももう分からなかった。
最終更新:2009年03月06日 23:24