衛宮士郎が悪しき一歩を踏み出す。
眼前の少女を葬る為に。この決闘に優勝し願いを叶える為に。
可能ならこの子の妹も救いたいと思いつつ、一番重いものの捨てる気はない。
だから同類を殺そうとする。
その直後だった。
眼前の少女を葬る為に。この決闘に優勝し願いを叶える為に。
可能ならこの子の妹も救いたいと思いつつ、一番重いものの捨てる気はない。
だから同類を殺そうとする。
その直後だった。
『プレイヤー諸君―――君たちに朗報がある』
神を名乗るゲームマスター、檀黎斗の姿が空中に現れ、放送が始まったのは。
突如現れた真なる主催に、思わず動きを止める二人。
放送を無視して攻撃を仕掛けることは可能だが、殺し合いは目の前の相手を倒せば終わるものではない。
むしろこれは始まりだ。
ならば、まだ始まったばかりで重要な情報源を聞き逃すわけにはいかない。
お互いそう考えたからこそ、二人は身じろぎ一つすることなく放送を聞いていたのだ。
突如現れた真なる主催に、思わず動きを止める二人。
放送を無視して攻撃を仕掛けることは可能だが、殺し合いは目の前の相手を倒せば終わるものではない。
むしろこれは始まりだ。
ならば、まだ始まったばかりで重要な情報源を聞き逃すわけにはいかない。
お互いそう考えたからこそ、二人は身じろぎ一つすることなく放送を聞いていたのだ。
『彼女の名前は美遊。私達が人質として捕えた少女だが―――君たちがラスボスであるこの私を倒した場合、解放してやってもいい』
そして放送は終わる。
どちらも考えること、確認することはあるが、まさか敵を目の前にしてそれを行うことはできない。
ならばまずは倒してから、と思いエクスカリバーを構え直す風。
しかし、一方の士郎は構えるどころか投影で出したシンケンマルを消し、地面にドカッと座り込んだかと思うと、風に向けてこう声を掛けた。
どちらも考えること、確認することはあるが、まさか敵を目の前にしてそれを行うことはできない。
ならばまずは倒してから、と思いエクスカリバーを構え直す風。
しかし、一方の士郎は構えるどころか投影で出したシンケンマルを消し、地面にドカッと座り込んだかと思うと、風に向けてこう声を掛けた。
「一時休戦しないか」
「……どういうつもり?」
「……どういうつもり?」
さっきまで殺しあうつもりだった男から来た突然の言葉に、思わず訝し気になる風。
しかし士郎は嫌な顔一つすることなく、淡々と意図を説明し始めた。
しかし士郎は嫌な顔一つすることなく、淡々と意図を説明し始めた。
「そんな難しい話じゃないさ。
お前も見ただろ。さっきの放送に出てきた、モンスターを召喚する女の子を殺した金髪の奴」
「……あの強そうな人が何よ。強そうだからって一緒に戦おうって話?」
「そうだ」
お前も見ただろ。さっきの放送に出てきた、モンスターを召喚する女の子を殺した金髪の奴」
「……あの強そうな人が何よ。強そうだからって一緒に戦おうって話?」
「そうだ」
一番ないだろうと思っていた選択肢を無拍子で肯定され、思わず呆気にとられる風。
だが士郎は気にもかけず話を続ける。
だが士郎は気にもかけず話を続ける。
「別に根拠なく強いって思ってるわけじゃないぞ。
例えばこのゲームの主催者が紹介していた敵キャラ、あの継国縁壱についてはどう思う?」
「……いきなり言われても、まあ侍って感じ?
あ、でも主催者が用意したボスって奴でしょ。じゃあ弱かったら拍子抜け、みたいに思われちゃアレだし、まあ強いんじゃない?」
「俺もそう思う。
それでいて、あの金髪の男も立場的には似たようなもんだと思う。
殺し合いに乗っていることをあそこまで明確に示しても、あいつはそう簡単にやられたりしないと判断したからああやって放送したんだと思う」
「思ってばっかりね」
「……言うなよ。しょうがないだろ、俺は金髪の男の事も主催者の事も知らないんだから」
「ごめんなさい。とにかく、あの二人を殺すまでは休戦、ってこと?」
「いや、どうせならある程度参加者が減るまででいいんじゃないか? 別に殺し合いに乗っているのはあの二人だけじゃないだろうし。
他にも強い奴はいないとは言い切れないだろ」
例えばこのゲームの主催者が紹介していた敵キャラ、あの継国縁壱についてはどう思う?」
「……いきなり言われても、まあ侍って感じ?
あ、でも主催者が用意したボスって奴でしょ。じゃあ弱かったら拍子抜け、みたいに思われちゃアレだし、まあ強いんじゃない?」
「俺もそう思う。
それでいて、あの金髪の男も立場的には似たようなもんだと思う。
殺し合いに乗っていることをあそこまで明確に示しても、あいつはそう簡単にやられたりしないと判断したからああやって放送したんだと思う」
「思ってばっかりね」
「……言うなよ。しょうがないだろ、俺は金髪の男の事も主催者の事も知らないんだから」
「ごめんなさい。とにかく、あの二人を殺すまでは休戦、ってこと?」
「いや、どうせならある程度参加者が減るまででいいんじゃないか? 別に殺し合いに乗っているのはあの二人だけじゃないだろうし。
他にも強い奴はいないとは言い切れないだろ」
なんだか、戦う空気じゃなくなってきた気がする。
そう感じた風だが、同時に士郎の言い分に理があるとも思った。
なので彼女もエクスカリバーを消し、士郎と同じように地面に座った。
そう感じた風だが、同時に士郎の言い分に理があるとも思った。
なので彼女もエクスカリバーを消し、士郎と同じように地面に座った。
「いいわ。強そうな参加者をある程度倒すまで休戦ね。
でもひとまずだから」
「分かってるよ」
でもひとまずだから」
「分かってるよ」
こうして一時休戦は成立した。
そんな二人がまずしたことは、自己紹介である。
休戦し、話すこともある以上名前を知らないというのはあまりにもお互いやりづらかった。
その次は名簿の確認である。
特に風は、守り助けようとしている妹や仲間がいないかこの段階になって初めて不安になった。
もっとも、その心配は杞憂であったが。
そんな二人がまずしたことは、自己紹介である。
休戦し、話すこともある以上名前を知らないというのはあまりにもお互いやりづらかった。
その次は名簿の確認である。
特に風は、守り助けようとしている妹や仲間がいないかこの段階になって初めて不安になった。
もっとも、その心配は杞憂であったが。
「……良かった」
「その様子だと、お前が助けようとしている妹はいないみたいだな。犬吠埼」
「ええ、おかげさまで。そっちは?」
「……ああ、名簿に俺の知っている名前はなかったよ」
「その様子だと、お前が助けようとしている妹はいないみたいだな。犬吠埼」
「ええ、おかげさまで。そっちは?」
「……ああ、名簿に俺の知っている名前はなかったよ」
風の問いに返答してから、士郎はそういえばとばかりに捕捉する。
「いや、すまん。ポセイドンは知っている名前だな」
「何それ」
「ギリシャ神話の海の神様だな」
「ふーん、物知りなのね。私はそういうのあんまり分かんないし。
……まさか本当に神様も参加していたりする?」
「そりゃいくらなんでも……いやでもこの決闘、滅茶苦茶だしもしかしたら……」
「何それ」
「ギリシャ神話の海の神様だな」
「ふーん、物知りなのね。私はそういうのあんまり分かんないし。
……まさか本当に神様も参加していたりする?」
「そりゃいくらなんでも……いやでもこの決闘、滅茶苦茶だしもしかしたら……」
風の提示する可能性を、己の知識に当てはめて否定しようとする士郎。
しかし、現在行われている殺し合いが途轍もなく埒外なことを考えれば、あながち否定できない気がした彼は言い淀んでしまった。
本物の神。もしそんなものが同じ殺し合いに参加していて、なおかつ敵だったら、と考えるとあまりに恐ろしい。
それがどれだけの存在なのか、曲がりなりにも魔術世界に身を置く彼は風以上には理解しているのだから。
しかし、現在行われている殺し合いが途轍もなく埒外なことを考えれば、あながち否定できない気がした彼は言い淀んでしまった。
本物の神。もしそんなものが同じ殺し合いに参加していて、なおかつ敵だったら、と考えるとあまりに恐ろしい。
それがどれだけの存在なのか、曲がりなりにも魔術世界に身を置く彼は風以上には理解しているのだから。
とはいえ、今はそれが事実なのか確かめる術はない。
なのでこれからどうするか話し合おうとした矢先、空がふと月や星の瞬きとは違う光が現れた。
二人が空に見上げるとそこには――
なのでこれからどうするか話し合おうとした矢先、空がふと月や星の瞬きとは違う光が現れた。
二人が空に見上げるとそこには――
「ロケットが飛んでる……!?」
「なんでさ」
「なんでさ」
あまりにもトンチキな光景に思わず素で呆ける二人。
このロケットは同じエリアで壮絶な戦いの末逃げることを選んだ閃刀姫と魔戒騎士、それから平凡な少女が乗り込んでいるのだが、そんな事実を彼らは知らない。
このロケットは同じエリアで壮絶な戦いの末逃げることを選んだ閃刀姫と魔戒騎士、それから平凡な少女が乗り込んでいるのだが、そんな事実を彼らは知らない。
「……どうする? あのロケット追いかけてみる?」
「いや、逆に発射地点に行ってみてもいいかもしれない」
「……どういうこと?」
「いや、逆に発射地点に行ってみてもいいかもしれない」
「……どういうこと?」
士郎の提案を疑問視する風。
それを受けて彼は、なんか説明してばっかりだな、と思いながらも大人しく説明を始めた。
それを受けて彼は、なんか説明してばっかりだな、と思いながらも大人しく説明を始めた。
「恐らくだけど、あのロケットに乗っている奴は逃げたんだと思う。
殺し合いに乗っている奴に襲われたのか、あるいは逆に襲い掛かったけど返り討ちに逃げたのかまでは分からないけどな」
「後者だとすればダサいことこの上ないわね……
でもそっか、そっちにもいるかもしれないのか」
「まあどっちであっても俺らが知らない奴なのは間違いないし、どっちでもいいんだろうけどな。
犬吠埼はどうだ?」
「どっちでもいいってなると逆に困るわね……うーん、じゃあ――」
殺し合いに乗っている奴に襲われたのか、あるいは逆に襲い掛かったけど返り討ちに逃げたのかまでは分からないけどな」
「後者だとすればダサいことこの上ないわね……
でもそっか、そっちにもいるかもしれないのか」
「まあどっちであっても俺らが知らない奴なのは間違いないし、どっちでもいいんだろうけどな。
犬吠埼はどうだ?」
「どっちでもいいってなると逆に困るわね……うーん、じゃあ――」
風は士郎の問いを受けて、それほど考えず返答する風。
それを聞いた彼の行動は早い。
それを聞いた彼の行動は早い。
「じゃあそっち行くか」
「え、いいの!?」
「え、いいの!?」
士郎のあんまりな即決に驚く風。
確かに判断材料がない以上、ほぼ勘でしか決めようがないのは間違いない。
だからと言ってこんなにあっさり決められると、流石に驚いてしまう。
とはいえ決まってしまった以上、風も逆らう理由も決めてもない。
こうして、二人は歩き始めた。各々の大切なものを救うための、その一歩を。
確かに判断材料がない以上、ほぼ勘でしか決めようがないのは間違いない。
だからと言ってこんなにあっさり決められると、流石に驚いてしまう。
とはいえ決まってしまった以上、風も逆らう理由も決めてもない。
こうして、二人は歩き始めた。各々の大切なものを救うための、その一歩を。
◆
(悪いな、犬吠埼)
目的に向かう間、士郎は内心で風に謝罪をする。
なぜなら、彼は風に嘘をついているからだ。
とはいっても、彼が語った内容に嘘はない。
なぜなら、彼は風に嘘をついているからだ。
とはいっても、彼が語った内容に嘘はない。
士郎の知人は名簿に乗っておらず、休戦の意図も本音だ。
だが当初に比べて彼の行動の意図が変わる理由がある。
だが当初に比べて彼の行動の意図が変わる理由がある。
(美遊。待っててくれ)
美遊。
最初の放送で黎斗が人質として紹介した少女は、士郎が救おうとしている妹だ。
その少女がこの殺し合いに関わっている以上、彼の目的はシフトした。
最初の放送で黎斗が人質として紹介した少女は、士郎が救おうとしている妹だ。
その少女がこの殺し合いに関わっている以上、彼の目的はシフトした。
(俺は誰にも、お前に願いを叶えさせたりしない)
士郎の妹、美遊にはある能力がある。
それは願望器としての力。
生まれついての聖杯であり、人の願いを無差別に叶える力がある。
しかしその代償として、彼女は願いを叶える度に魂をすり減らしていかなければならない。
つまり――
それは願望器としての力。
生まれついての聖杯であり、人の願いを無差別に叶える力がある。
しかしその代償として、彼女は願いを叶える度に魂をすり減らしていかなければならない。
つまり――
(この殺し合いの優勝賞品は、美遊だ)
黎斗の願いを叶えるというのは、美遊を使って行使するのだろう、と士郎は結論付けた。
そして彼はそれを認めたくないから、ただの少女として生きて欲しいから殺し合いに乗ったのだ。
そして彼はそれを認めたくないから、ただの少女として生きて欲しいから殺し合いに乗ったのだ。
士郎の願いはどうあっても変わらない。
ただ、やり方は変わる。
ただ、やり方は変わる。
(そうはさせるか。だったら俺は、優勝を狙う奴を皆殺しにする)
それはとても単純な結論。誰にも願わせなければ大切な人を救えるのなら、願おうとする者を排除すればいいだけの話。
その為なら、どんなことでもする。
その為なら、どんなことでもする。
殺し合いに乗った少女とだって、手を組む。
【C-3/一日目/深夜】
【衛宮士郎@Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ3rei!!】
[状態]:健康(?)英霊エミヤが侵食
[装備]:シンケンマル@侍戦隊シンケンジャー、双ディスク@侍戦隊シンケンジャー、共通ディスク@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1
[思考・状況]基本方針:妹を救う。その為に優勝を狙う奴は皆殺しにする
1:ロケットの行く先に向かうか、それとも発射地点に向かうか――
2:強そうな参加者をある程度排除するまで、しばらくは二人で一緒に行動する。
3:もし可能なら、風の妹も救いたかった。
[備考]
※参戦時期はイリヤたちがエインズワースの工房に潜入した後です。
※ロケットの行く先(ロゼ、零、チノがいる方向)か発射地点(のび太がいる方向)のどっちに向かうかは次の書き手様にお任せします
[状態]:健康(?)英霊エミヤが侵食
[装備]:シンケンマル@侍戦隊シンケンジャー、双ディスク@侍戦隊シンケンジャー、共通ディスク@侍戦隊シンケンジャー
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~1
[思考・状況]基本方針:妹を救う。その為に優勝を狙う奴は皆殺しにする
1:ロケットの行く先に向かうか、それとも発射地点に向かうか――
2:強そうな参加者をある程度排除するまで、しばらくは二人で一緒に行動する。
3:もし可能なら、風の妹も救いたかった。
[備考]
※参戦時期はイリヤたちがエインズワースの工房に潜入した後です。
※ロケットの行く先(ロゼ、零、チノがいる方向)か発射地点(のび太がいる方向)のどっちに向かうかは次の書き手様にお任せします
【犬吠埼風@結城友奈は勇者である】
[状態]:健康、左眼の視力が散華、夢幻召喚による変身中
[装備]:サーヴァントカード セイバー@Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ3rei!!
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本方針:妹や仲間の未来を取り戻す為に優勝する。
1:ロケットの行く先に向かうか、それとも発射地点に向かうか――
2:強そうな参加者をある程度倒すまで、しばらくは二人で一緒に行動する。
3:私は絶対に……
[備考]
※参戦時期は諸々の真相を知って自棄になっていた時期です。
※英霊召喚やカードそのものの制限に関しては、後の書き手様にお任せします。
※ロケットの行く先(ロゼ、零、チノがいる方向)か発射地点(のび太がいる方向)のどっちに向かうかは次の書き手様にお任せします
[状態]:健康、左眼の視力が散華、夢幻召喚による変身中
[装備]:サーヴァントカード セイバー@Fate/Kaleid liner プリズマ☆イリヤ3rei!!
[道具]:基本支給品、ランダム支給品0~2
[思考・状況]基本方針:妹や仲間の未来を取り戻す為に優勝する。
1:ロケットの行く先に向かうか、それとも発射地点に向かうか――
2:強そうな参加者をある程度倒すまで、しばらくは二人で一緒に行動する。
3:私は絶対に……
[備考]
※参戦時期は諸々の真相を知って自棄になっていた時期です。
※英霊召喚やカードそのものの制限に関しては、後の書き手様にお任せします。
※ロケットの行く先(ロゼ、零、チノがいる方向)か発射地点(のび太がいる方向)のどっちに向かうかは次の書き手様にお任せします
050:贈【のろい】 | 投下順 | 052:■滅の刃(前編) |
036:僕が僕であるために | 時系列順 | 059:異種闘争? |
21:悪を為すシスコンたち | 衛宮士郎 | 072:Judge End ─アドバンス・カーニバル─ |
犬吠埼風 |