ギャルゲ・ロワイアル2nd@ ウィキ

第5回放送

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第5回放送 ◆/Vb0OgMDJY氏



「――さて、放送の時間だ。
僕が告げるのは久しぶりではあるが、特に話すことも無いし、君たちも希望していないだろう。
なので早速死者の発表といこう。


以上、8名。

さて、そろそろ優勝が見えてきた、という所かな。
あともう一息、僕らとしても出来れば頑張ってもらいたいものだ。
そして、禁止エリアだが、

8:00より、B-7、
10:00より、F-2

以上だ。

では、また六時間後に再会しよう――」




マイクの電源が切れた事を確認し、短く息を付く。
認めよう、焦っている事は。
どれだけ凪に対して平静を装おうと、普段どおりに会話しようとも、
心の奥底には隠しきれない焦燥が存在している事を。
先ほどの放送が、ソレを何よりも物語っている。
あのように無駄話を挟む時点で、普段の僕とは明らかに異なる。
先ほどの、凪の言葉が原因であることには違い無い。
帰ってきたのなら、軽く小言でも告げようか。

「……」

誰も居ない部屋の中。
何の音も無い。
ただ、一言、言葉が漏れる。

「静留さん……」

死んだ、か。

(…………)

元々のhimeの死、という事象はこれが始めてだが、特に何か変化があった訳でもない。
強いて言うなら、彼女がチャイルドを呼び出した後、玖珂なつき、深優・グリーアというhimeが、次々とチャイルドを顕現させたという事象か。
元々呼び出す事の出来ていた玖珂なつきは兎も角、深優・グリーアがチャイルドを顕現させたのはコレが初めてになる。

(なにか、関連性でもあるのか?)

思えば、あの鬼という事象もそうであった。
最初の一人、鉄乙女の目覚めを呼び水として、三人……いや、キャロ・ディヴェンスも、今際の際に変わろうとしていた。
この内、西園寺世界の憎悪は、果たして彼女を変えうるに足りるものだったろうか?
過去に悪鬼と化したとはいえ、九鬼耀鋼の変化は、あまりにも早すぎないだろうか?
加えて、成り立ちが異なるとはいえ、羽藤桂もまた鬼と化した。

……この地には、それらの変化を誘発しやすい仕組みは、確かに存在している。
だからと言って、それはこんな、仕組まれたかのように連鎖的に発現するものなのだろうか?

……こうは、考えられないだろうか?
つまり……既に鬼、そしてチャイルドに関する封印は、存在していない、と。
この場合、前者と後者では多少封印、のニュアンスが異なるが、解けた、という意味合いとしては同じ事だ。
『最初の一人』を突破口として、その封印は、意味を成さなくなる。
そして以後、この島に存在している、……あえて、こう表現しようか……『成長を助ける力』のみが働く事になり、結果として新たな『扉』を開く者が続出する。

(…………)

問題は、無い、筈だ。
この『成長を助ける力』とは、此度の星詠みの舞の特殊性、即ち、死者の想いであると考えれば、辻褄が合う。
死者が増えることで、生き残りの巫女達はより純化したされた存在へと昇華される、その余禄のようなもの、の筈だ。
最期に残る一人が、予定通りに奉げられる、その結末には変化は無い。

(……だが)

凪の言葉。
あの女が言ったという言葉。
既に、僕の手にすら負えるか判らない生き残りの参加者達。
推論が正しければ、今よりも恐るべき物になるかもしれない、生き残る一人。
そして、媛星。
これらの要因から、『もう一つ』考えられる結末が、ある。

(…………いや)

首を振って、その結論を頭から追い出す。
メリットなど、無い、……少なくとも僕らには無い。
意味の無い思考だ、今考えるべきは、この舞の遂行、それだけだ。


…………死んだ、か。

楽しみが、一つ潰えた。

それが、まず心に浮ぶ。
次いで、その最期の時を観察しえなかった自らの不徳を恥じる。
果たして、彼は……衛宮士郎は最期に何を思ったのか。
自身が道化であると知って死んだのか、ソレすらも知らなかったのか。
いずれにしろ、その素晴らしく甘美な瞬間を見落とした事に、心が痛む。

同時に、一つ心残りでもある。
結局、あの男という存在が、永遠に私には理解出来なくなったという事だ。
無論、あの男の息子というだけの存在である衛宮士郎では、完全な答えなど出はしないだろうが……
人として欠けた存在である衛宮士郎とて、間桐桜の為に己の道を変えた。
あるいはあの男の変遷の理由が理解できたかも知れないが……

そして、もう一つ……

「……Amen」

短く、祈りを告げる。
結局、生まれ出でる事の無かった命に、一言の祈りを。
或いは自らの願いを叶えるかもしれなかった存在の消滅に、落胆と哀悼を。
彼、或いは彼女は、何を思ったのだろうか。
生まれ出でる事を許される己の死を、是としたのか否としたのか。
得られるかもしれなかった答えが、一つ失われてしまった。

やはり、私の不徳とするべきだろう。

……そして、ここに至り、私が答えを得る為の手段は最早一つとなった。
アレへの、問いかけ、という形のみ。

この場所にいるのも、少し、飽きてきたかもしれんな……


死に、ましたか。

既に確定していた事実。
どうでもいい事象。
その事に意味など無く。
その事に向けるべき意思も無く。

ただ、僅かな嫉妬だけが残る。
果たして、あの男は何を思って逝ったのかと。

たった一度。

最早数えることすら出来ない程の回数で、とうに磨耗しきったこの身には、その無垢さが眩しくすら映る。
まるで穢れを知らぬ乙女のような、純粋なその言葉に、ふと相反する感情を抱かなくも無い。
この世の全てを明かして、穢しきってやりたいという欲望と、
その純粋なまでの幼さに対する羨望と、
そして、アレは最期に何を告げたのかという疑問と。

その全ては、いずれ膨大な流れの中に消えていくだけなのだから、何の意味も無いというのに。
ただ……抱くものはとうに彼らに……マスターの心を奪う者達に抱く嫉妬だけになっていたこの身にとっては、もはや求めるべく物すらない。
なら、この初めて見る事象を、最期まで眺めてみるのも時間潰しにはなる。

どうせ、最期には絶望しか残らないこの催しの結末を、眺めていよう。


231:The knife in the blue 投下順 233:requiem
230:構図がひとつ変わる 時系列順
神崎黎人 239:クロックワークエンジェル
213:Diaclose 言峰綺礼

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