神咒神威神楽の登場人物であり、咒皇百鬼夜行篇のヒロイン。
御門一門現当主の 龍明を義母に、御門一門陰陽頭(おんみょうのかみ)の 夜行を許嫁に持つ少女。龍明が後見人を務める 竜胆とは姉妹同然の幼馴染である。
自身も発展途上とは言え、幼いながら陽の術にして肆という豊かな才能を持つ術者であり、御門一門の次期当主として見初められている。御門一門代表として御前試合に参戦、常人を遙かに超えた益荒男たちに翻弄されるもここを生き残り、敬愛する母と姉、そして愛する男のため、竜胆の旗の下益荒男の一として東征軍に参入する。
東征軍の益荒男たちの中では最年少。歳相応のはずなのだが小さい体にコンプレックスがあり、「ちんちくりん」と言われると声を荒げて怒り出し、実際子供なのに 覇吐や 宗次郎や 刑士郎などの(一応は)年長者に向かって大人ぶるなど身体も精神もまだまだ未熟。背伸びしたい年頃だと見受けられる。本人がどう思ってようが実際ちんちくりんな子供である。
性格は前述通り不相応に大人ぶりたがり、そこを突かれると怒り出すプライドが高い強気な気性を持つ。一方で、龍明や夜行や竜胆など尊敬している者には時に卑屈に見えるほどの敬意を払い、奉仕しようとする高い忠誠心も持つ。なお、 紫織や 咲耶などの女性には毒舌を収めて対等に接するなど、対する人によって態度を大きく変える性格のようだ。
等級は陽の肆、陰の壱。
御門一門の術者として陰陽術を使う。一般的な陰陽師としてみれば一流、年齢まで加味すれば非常に優秀な術者であり、一応は龍明が認める実力を保持している。もっとも、周囲の者たちが化物過ぎて実力が霞みがち。率先して戦闘を行うことはほぼ皆無だが、東征軍の他の術者である夜行は独断専行ばかりで言うこと聞かない、龍明は肝心な時いつもいないと言った体なので、何気に貴重なサポート要員として重宝されていたりする。
また、メインで使うのは術だが、軽度の陰気汚染で 先見、未来視とも呼べる異能を持つ。いつも見えるわけではないし、見えるのは数瞬先の出来事だけだが、直近未来の光景を見ることで本来致命傷になるような攻撃を避けることができる。彼女の持てる力で評価されがちなのは術よりもこちらの方で、本人も「目には自信がある」というほどの自負を持つ。
固我を見失うほどの精神潜行が可能であり、己の幸せが揺らいだ時、なぜ自分の身にこんなことが起こるのか、こんな目に遭う自分はいったい何者なのか、そして現状を打開するために、己はどう在らねばならないのか……と考える自己探求の深さこそ、御門龍水の最大適正。咒の理において瞑想の深さは奥義に通じるものであるため、龍明にも、夜行にも、他の誰にも成し得ぬ域で己というものを見たがる渇望(おもい)である龍水のこうした気質は、天賦の才と言って構わない。
東海、阿明――西海、祝良――南海、巨乗―――北海、愚強――
四海、百鬼を退けて凶災を蕩う!急々如律令!
禁!水位之精――悪星退散!
神火清明――急々如律令!
――唵!
相手による態度の変化は激しいものの、神楽に割って入った竜胆を心配したり、龍明、夜行を敬愛したりするなど、一見すると益荒男の中でも最も五徳に近い感性を持っているように思える。もっとも、この世界で利他的な利己は珍しくないので、覇吐も当初は彼女をそのような人種と認識していた。
しかし、彼女の実体はその程度のものではなく、端的に言ってしまえば彼女の思考の根底にあるのは 「自分は幸福である」、転じて 「思う通りになればいい」というもの。これだけならまだ子女の妄想で済んだのだが、質の悪いことに彼女の 異能はそれを実現してしまうもの。即ち彼女にとっての世界とは都合の良い妄想がそのまま具現したような存在であり、彼女が世界を愛するのも子女が自分の書いた拙い小説に浸っているようなもの。彼女の周囲の人間たちも、彼女にとっては「己の小説の登場人物」であり、彼女の一見利他的な行動も、「己の描いたキャラクターは素晴らしい」と自画自賛しているに過ぎない。ある意味自己愛の究極形。
序盤の御前試合で竜胆の行動に対して強い拒否を示したのはこの関係で、「自分が思い描く理想の竜胆」と「現実の竜胆」との間に齟齬が発生したからである。彼女が愛しているのはあくまで他者の上に投影した自身の理想像であり、現実の他者そのものを愛しているわけではないのである。
龍水は己の幸せというものを病的に信じている傾向があり、ゆえにそれが揺らいだとき、彼女は己の内に埋没する。そうした懊悩の果てに彼女が沈んでいく意識階層は常軌を逸した域に達する。それはつまり忘我の境地で、高次域への接触である。高次域とは即ち 座である。 アクセス──我がシン
己の在り方に一切の疑問を持たない夜行とは真逆の資質だが、これもまた個我を重んじることの表れと言え、天狗道の法則に基づく正統な在り方であろう。彼女の 異能の産物が 波旬に目を付けられたり、座に居る波旬と接触しながらも排除されずに同調を果たしたことなどからもそれがうかがえる。
彼女の異能は自己に好ましい存在を引き寄せるに止まらず、自己の理想像の存在そのもの形成するに至る。それが夜行であり、故に彼女が夜行に引きつけられるのは当然のこと。つまり 夜行の変態性は全て彼女の理想像を表したものであり、これだけでもその 変態ぶりは尋常でないが、 夜行の死体と情交して太極へ上り詰めるといった所業も発揮しており、その変態性はもはや計測不可能。
龍明曰く「まったく、おまえは本当に危ういな。ある意味、咲耶以上の爆弾だよ」との事。 育て方間違えたんじゃ…
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