ラブのラブレター! 驚きの正体!? ◆LuuKRM2PEg
「……なあ、石堀。そろそろ休まないか?」
「何?」
「ほら? 俺達、ここまで結構戦ったじゃん? なのに、ほとんど休めていない……これじゃあ、いつかバテちまうぜ? ラブちゃんだって、疲れていそうだし」
涼村暁が、
桃園ラブを見ながら提案をしてくる。言われてみれば、その顔には何処となく疲労の色が感じられた。
「えっ? あたしはまだ、大丈夫ですけど?」
「子どもは無理をしなくていいの! それに実は言うとさ……俺もヘトヘトなんだよね……だからさ、休もうぜ?」
それが暁の本音なのだろう。治療はしたがあくまでも応急処置なので、いつ開いてもおかしくない。この男はバカだが、ここで死んでは面倒なことになりかねなかった。
「……わかった。お前の提案を受け入れよう。流石に俺も疲れているからな」
「マジで? サンキュー!」
「言っておくが、一人で変なことをするなよ。何かあっても俺達ではどうにもならないからな」
「おいおい……俺がそんなことするわけないでしょ!」
「どうだか。お前のことだから、またバカなことをしないか心配になっただけだ」
「なにぃ!?」
「まあまあ、二人とも……」
怒りだした暁を宥めるようにラブが現れた。また軽口をぶつけたが、流石に限度を超えると疲れるだけなので、この辺りにしておかなければならない。
時刻は既に22時を過ぎている。四度目の放送までもう遠くなかった。
相当の体力を消耗してしまったので、
黒岩省吾が死んでからずっと中学校に留まっていた。涼村暁はダークメフィスト・ツヴァイと戦ったばかりで、桃園ラブも連戦で疲労が溜まっている。ここで無理をさせては肝心な時に使えなくなる恐れがあった。
それに
石堀光彦自身だって、ガドルやダグバとの戦いでダメージを受けている。今の所、行動に支障はないが休憩をして損はない。それに、予知能力の再使用までの時間を稼ぐのも悪くはなかった。
「とりあえず、警察署までの行動ルートを次の放送までに考えておく……お前達はその間に少しでも身体を休めてくれ。他の部屋に行って一人で休むのは構わないが、あまり遠くに行くなよ」
「オッケー」
「わかりました」
暁とラブは頷きながら部屋を出る。
能天気な二人を見て、やはり人間とは利用しやすい生き物だと石堀は思う。あの平木詩織だって、自分のことを欠片も疑わずに信頼をしている。一見するとナイトレイダーの有能なメンバーだが、本質的にはただのお気楽な女だ。いずれ、信頼を寄せていた相手に裏切られて絶望するに違いない。ここにいる二人だって、例外ではなかった。
とにかく今は、今後の進行プランを練りながら暁とラブを見守らなければならない。警察署に向かうとしても、そのルートがあまりにも過酷だった。
(市街地の方はどちらも禁止エリアとなって塞がっている……かといって、森の方を通るとなると遠回りになる上に、次の放送ではそこが選ばれる危険だってある。そもそも、この街だっていつまでもいられるとは限らない……)
普通に行くなら【F-8】エリアか【G-9】エリアのどちらかを通るべきだが、首輪がある限り通れない。足を踏み入れたら爆発するのか、それとも爆発までの猶予があるのかわからなかった。
死んだ参加者の首輪を放り投げれば実験できるだろうが、手元にはない。ダグバや黒岩から確保するべきだったかもしれないが、それでは二人からの信用を失ってしまう。首を切ったせいで嫌悪されてしまい、いざという時に裏切られては意味がなかった。
アクセルブースターに変身してから二人を抱えて、そのまま海を経由して警察署に向かう方法もあるが、途中で二人が暴れださないか心配だ。ラブはまだしも、暁だったら絶対に騒ぐはずだった。
トライアルになり、同じように二人を抱えながら禁止エリアを突っ走ることもできるが、爆発のタイミングがわからないし、加速の時間自体も限られている。そんな状況ではあまりにも危険すぎた。
やはり、一番無難な方法は森を通ることだろうか? しかし、森でガドルのような参加者と遭遇してしまったら、今度こそ二人の内のどちらかは殺される危険がある。
(どうやら、多少のリスクは背負わなければならないようだな……人間のように躊躇っていても、何も得られない。いざとなったら、二人には言い聞かせなければならないようだな)
どの道、仲間と合流をするならば多少の危険は避けられない。こんな島の中で安全な場所など存在しないのだから、強行突破も考えなければなかった。
そう思いながら、石堀は立ち上がる。既にこの部屋には暁もラブもいない。
彼らがどこにいるのか。それだけでも把握しておかなければならなかった。
◆
暁は数時間前のように図書室にいる。
あの黒岩はもう倒してしまったのだから、別に間違った知識を指摘する為に調べ物をしている訳ではない。そうでないなら、勉強が嫌いな暁が自分から本を読むなんてことはありえなかった。
しかし、暁は再びたくさんの本を取り出して調べ物をしている。しかも、ご丁寧に筆記用具とメモ用紙まで用意した上で。
「ふんふん、なるほど……ここはこうすればいいのね」
納得したように独り言を零しながら、暁はメモを取る。もう制限解放は終わったのだから、誰かに聞かれることを気にする必要もない。尤も、今回は別の意味で誰にも知られたくない内容だが。
一ページ、また一ページと……本をゆっくりと捲る。その度に、暁は感心したかのように「おおー」と呟いていた。
今回の本に書いてあることも暁にとっては必要な知識だ。戦いではなく、愛の為……いや、ある意味では戦いの役に立つかもしれない。この殺伐とした世界に希望を与える為の知識だ。あの
速水克彦とかいう男がいたら、きっと「お前はなんてふしだらだ!」なんて怒鳴っていたかもしれない。でも、仮にそう言われたとしても暁は無視するつもりだ。
黒岩だったらどうだろうか? きっと、相変わらずこんな自分をバカ呼ばわりしながら蘊蓄を振りかざすだろうが、構わない。そうなったら、こっちから逆に黒岩の間違いを正せばいいだけだ。
そんなことを考えながら本を読んでいると、部屋のドアが開く音が聞こえる。それに気付いた暁が振り向くと、あの石堀が立っていた。
「ここにいたのか、暁」
「げえっ、石堀!? な、何の用だよ!?」
石堀の姿を見て、慌てふためいた暁はメモ用紙と本を後ろに隠そうとする。だが、隠し切れていない。
「お前こそ、どうして俺の姿を見て怯える? 俺が化け物にでも見えたか?」
「あ、当たり前……いや、違う! ノックもしないで入るなんて、失礼だろ!」
「トイレじゃあるまいし、こんな所でノックをする方がどうかと思うぞ?」
「うっ……まあ、でもそこは空気を読もうぜ!」
「……やれやれ」
石堀は呆れたように溜息を吐きながら、図書室に足を踏み入れる。歩みを止める気配はない。
このままでは、バレてしまう……そう思った暁は、腹を括ることにした。
「それで、お前はここで何をしていたんだ? また、勉強をしているのか?」
「そ、そうだ! 俺は実は言うと、勉強熱心だから常に勉強を欠かさないようにしているのさ!」
「嘘を言うな」
「ぐう……」
咄嗟に言ってみたが、やはりバレてしまう。こんなやり方で騙せる訳がなかった。
そうしている内に、石堀が近づいてくる。あと数歩だった。
「休みたいと言ったのはお前だろう? なのにどうして、こんな所で本を読んでいる?」
「わ、わかった! わかったから、そこで止まってくれ!」
「何?」
「俺が勉強していることは、実は言うと秘密にしておきたかったんだ! でも、見つかったからお前にだけは教える……このことは、誰にも言わないでくれよ!」
「あ、ああ……」
頷きながらも石堀は足を止めてくれる。やはり、表面上ではいい奴でいてくれているのだろう。胡散臭い奴は好きになれないが、今だけは有難かった。
軽く安堵しながら、暁は石堀に耳打ちをする。男同士でこんなことをしたくないが、今だけは仕方がなかった。
「いいか、石堀……本当に秘密にしてくれよ」
「……早く言え」
「じゃあ、言うからな……」
「ああ……」
ドラマとかなら、緊迫感を煽るようなBGMが流れそうだが、今は静寂に包まれている。ごくり、と息を呑んでもよさそうなのに、石堀は無表情のままだ。
しかしそれなら仕方がない。誰にも聞かれないように、ひそひそと呟く。
「実は言うとな……」
「実は言うと……?」
「……ラブレターの勉強をしていたんだ」
暁は静かに、そして強く宣言した。
「……は?」
「俺、実は言うとラブちゃんとデートの約束をしている……だから、その為にラブレターを書く勉強が必要だった」
「……そうなのか。でも、こんな時に書く必要があるのか?」
「わかってないねぇ、石堀君! 雰囲気だよ! ふ・ん・い・き!」
「雰囲気、か」
「そういうこと! だから、内緒にしてくれよ! 俺はお前を友達だと思っているから、信じているぞ!」
「わかったわかった……」
そして、石堀も了承する。この辺りを察してくれるのだから、やはり石堀は場の空気を読んでくれる信用していい男だ。
そう思いながら、暁は石堀から離れる。やはり、男同士でくっつくのは趣味じゃないからだ。
「何にせよ、きちんと休めよ。いざと言う時に死んでも、俺は知らないからな」
「その位、わかっているって……心配するなよ! あと、本当に秘密にしてくれよ!」
「しつこいぞ……」
やれやれと言わんばかりの態度で石堀は溜息を吐きながら、図書室から出ていく。
暁もホッと息を吐いた。これで秘密を知られずに済むからだ。
ゴハットを始めとする主催者達にはバレてしまうかもしれないが、どうせ後で倒すから気にする必要はない。
気を取り直しながら暁は再び椅子に座った。
「さ~て。愛の告白、愛の告白、愛の告白!」
陽気な態度で鼻歌を歌い、再び筆を握る。
テーブルの上に置かれているのは、デートとラブレターの書き方に関するテクニックが書かれた本だ。その数は十冊に達している。
普通なら、この類の本は学校には置かれないかもしれないが、暁はそんなことを気にしない。ラブとのデートをするのに必要だから、丁度良かったとしか思えなかった。
「なになに? 行儀が良すぎず、長すぎず! それでいて、上から目線にならない! あと、心からの言葉を贈る! これはわかるわかる! たまにいるよな、ダラダラ長いのを個性と勘違いしている奴って!」
暁は上機嫌に本を読みながら、ノートにポイントを纏める。
テクニックを読んだ暁の脳裏には、黒岩省吾が蘊蓄を披露する姿が浮かび上がっていた。奴は上から目線の態度で出鱈目な知識を披露しているが、本当に知識を得ている人間からすれば滑稽以外の何物でもない。ウケを狙ったとしても苦笑されるのがオチで、最悪の場合として信頼を失う結果に終わってしまうこともある。
また、無駄に長い文章はあるだけでも読む気を無くす。どうでもいい蘊蓄や誰も求めていない解説なんかをラブレターに書いたら、速攻で破り捨てられるだけだ。
わかりやすく、それでいて心を込める! 必要のない所は書かない! ラブレターに限らず、どんな文章でも大切なことだ。
「ラブちゃん、俺は君を愛しているよ! いや、これじゃありふれているか……あなたの瞳はプラネタリウムのように輝いている! さむっ、ポエムかよ! あるいは……君と出会えて、ウルトラハッピー! これは、未来の後輩に失礼な気がする! う~ん、どうするか……」
難しい参考書の問題を解こうとしている学生のように悩みながら、暁は白い紙と睨めっこをしている。
胸の想いと秘密を教える為には、どうやって書けばいいのか。暁は物凄く悩んでいた。
◆
人気のない教室で空を眺めている。
何か特別な理由があってこの部屋に入った訳ではない。ただ、何となく一人になりたかっただけだった。
夜空に浮かぶ満月の光が窓から差し込んできて、暗い教室に柔らかな明かりを照らす。電気や太陽に比べればあまりにも頼りないが、完全な闇に包まれるよりは心が安らいだ。
桃園ラブは窓から顔を出して、暗くなった空を見上げる。雲が一つもなく、月と数え切れない程の星が確認できた。
夜空を見るのはこれで二度目になる。殺し合いが始まって、もうすぐ二四時間が経とうとしていた。
最初に殺されたのは三人の男。それから一八人の名前が呼ばれて、十五人が呼ばれて、十二人が呼ばれる……六時間が過ぎる度に人がどんどん死んでいた。それが余りにも辛すぎるけど、どうすることもできなかった。
「流れ星、見えないかな……?」
不意にラブは呟く。
もしも流れ星に願い事ができるのなら、もう誰も死なないで、こんな戦いが一秒でも早く終わることを願いたかった。修学旅行で大輔との雰囲気が悪くなった後、二人で流れ星に願ったおかげで仲直りができた時のように。
微かな期待と共に夜空を眺めたが、流れ星は見つけられない。どれだけ目を凝らしても同じだった。
(今も、どこかで誰かが戦っているのかな……?)
この星空の下で殺し合いは進んで、他の誰かが傷付いている。それはプリキュア達だって同じかもしれないことを考えると、簡単に眠ることができなかった。
美希といつきはどこにいるのかわからない。つぼみも街に向かっているけど、心配になってしまう。祈里やせつなの時みたいに、最悪の形で再会しないことを願いたかった。
(杏子ちゃん……大丈夫だよね? 今、どこで何をしているのかな?)
顔も知らない少女の無事を祈る。
マミからは名前しか聞いていない。髪の色や顔の特徴も聞いておけば良かったと思うけれど、もうどうにもならなかった。石堀や暁に聞いてもわからないだろう。
ただ、無事を祈るしかできない。その最中、ドアを叩く軽い音が聞こえてきた。
「ラブちゃん、起きてる~?」
続いて聞こえたのは、暁の軽い声だった。
それを聞いたラブはドアの方に振り向いて、足を進めた。
「暁さん……あたしなら起きてますよ」
「そっか。なら、入ってもいい?」
「どうぞ」
ラブは暁に答える。
すると、ガラリとドアが横に開いて、暁が現れた。
「どうしたんですか、暁さん?」
「いや、ラブちゃんとデートの約束をしたでしょ……だから、その前に俺からプレゼントを渡しに来たの!」
「プレゼント?」
「そうだよ……じゃじゃーん!」
暁は大げさに笑いながら、懐から小さな封筒を取り出す。
そのまま上機嫌な表情と共に差し出されたので、ラブは素直に受け取った。
「なんですか、これ?」
「ラブちゃんへの、ラブレター!」
「えっ……ラブレター!?」
「そうそう! 君とデートをするなら、ラブレターも必要でしょ? だから……書いてきたんだ!」
「はぁ……」
「そういう訳で、俺の心を込めたラブレターをちゃんと読んでね! あ、でも誰にも言っちゃダメだよ? 俺と君だけの、約束だよ!」
「わかりました……」
「サンキュー!」
そう言い残しながら暁は手を振って、部屋から出ていく。
あれだけ盛り上がっていた雰囲気が嘘のように、部屋に静寂が戻る。まるで嵐のようだった。
「ラブレターか……」
封筒の裏側を見てみると、豪快な字で『親愛なるラブちゃんへ』と書かれている。汚くはないが、丁寧とも言えない。普通の大人が書くような文字だった。
ラブは封を開けて、中に入っている折り曲げられた手紙を開く。そこに書かれている文字も、やはり豪快だった。
ラブちゃんへ。
この俺、涼村暁様がいるからにはどんなデートだって楽しくしてあげるよ!
遊園地だろうと、プールだろうと、映画館だろうと、公園でも、都会でもこの俺がエスコートしてあげます! 君とラブラブする!
ラブちゃんのスマイルが見たいから、ドキドキで胸をキュンキュンさせるし、ハピネスがチャージできるデートにしてあげるから楽しみにしていてね!
「涼村暁より……か」
書かれているのは、たったこれだけ。
最初こそは呆気にとられたが、読み終えた途端に笑顔を浮かべる。手紙の中に暁の情熱がたくさん込められているからだ。
こんな状況でも暁は落ち込まないで、ありのままでいる。もちろん、本当は辛いのかもしれないけど、表に出さないで笑うのが暁という男だ。
きっと、このラブレターだって楽しみながら書いていたはずだった。笑っていなければ、こんなにも元気に溢れている手紙なんて書ける訳がない。
そんな暁の為にも絶対に生きなければならない。大輔には悪いけど、今は暁とのデートが優先だった。
「……ん?」
その時、手紙の片隅に小さな文字を見つける。普通に見ていたら、見逃してしまいそうなくらいに小さかった。
「何だろう、これ?」
ラブは小さな文字を凝視する。
追伸。
ラブちゃん。これを見ることがあるのなら、教えるぜ。
石堀には気を付けろ……黒岩の野郎はそう言っていた。
俺も正直、信じられないけどあいつが嘘を言っているとも思えない。あいつはペテン野郎だけど、最後の最後には本当のことを言ったはずだ。
詳しいことは、デートの時に教えるからね。
「……なに、これ」
ラブレターを握る手は震えていた。
あの黒岩が石堀に気を付けろと言っていたのは、どういうことなのか? 石堀はこれまでたくさんの人を守ってきたし、凪の死にも怒りを抱いて戦っていた。そんな人を疑う理由はないはず。
いくら考えてもわからないので、急いで部屋から飛び出した。辺りを見渡すが、暁の姿は見えないので廊下を走る。普通なら先生に怒られるが、ここにはそんな人などいないので構わない。
ただ、今は暁の真意が知りたかった。そんなことを考えながら走っていると、すぐに暁の背中を見つける。
「暁さん!」
「あれ? ラブちゃん、どうかしたの?」
「あの、暁さん……さっきのラブレターなのですけど……」
「それは、俺達だけの秘密だって言ったでしょ?」
ひょうきんな笑顔を浮かべる暁は、ラブの言葉を遮るように人差し指を突き付けてくる。
「全部、デートで二人っきりになった時に教えてあげるから、それまでは俺達だけの秘密って約束したでしょ? 約束は破っちゃダメだよ」
「で、でも……」
「大丈夫! デートまでのお楽しみにしようぜ? それまではみんなで仲良くしながら、のんびりと休む! 大丈夫、俺が君を守るからさ」
困惑するラブの前で、暁は右目でウインクをした。
今、ここでは口にできない理由がある。暁の様子からそれを察して、ラブは言及をやめた。
「……わかりました。でも、デートの時には絶対に教えてくださいね」
「大丈夫だって! 俺は、秘密と約束を守る義理固い男だからさ!」
「あたしも、デートの時を楽しみにしています!」
「おう! なら、今はちょっとでもいいから寝ようぜ……俺も眠いしさ」
「あ、そうだった! もう、そんな時間ですよね……おやすみなさい、暁さん」
「おやすみ、ラブちゃん」
そのやり取りを終えると、暁は保健室の扉を開く。中からは石堀と楽しげに話す声が聞こえてきた。
それは何気ないやり取りに思える。でも、その裏で暁と石堀は互いを疑っているかもしれないし、ラブだって石堀を信じていいのかどうかわからなくなってきた。
ずっと前、お母さんに化けたソレワターセがシフォンを捕まえようとしたことがある。もしかしたら、石堀も巧みな演技で大勢の人を騙してきたのかもしれない……それを考えただけでも、不安になった。
でも、暁が教えてくれるまで余計なことをしない。秘密にしてと言われたのだから、この件は簡単に口にする訳にはいかなかった。
(暁さん、ありがとうございます……どうか気を付けてください)
心の中で呟きながら、ラブも部屋へ戻ることにした。
◆
「……お前達、まだ休んでいなかったのか?」
「いや、デートのプランを立てていたら遅くなって……」
「それはお前達の勝手だが、休憩の時間を無駄にするな。お前らはバカか」
「うるせえ!」
暁は石堀光彦と話をしている。怪しいと言われた男と一緒の部屋にいるのは不安だが、今は仕方がなかった。
幸いにも、さっきの会話は聞かれていない。また、聞かれたとしても困るような話はしていないから、大丈夫なはずだ。
本当ならタイミングを見計らって話したかったが、石堀がいる限りそんな隙などない。話している陰でひっそりと聞かれてしまったら、その瞬間に殺されてもおかしくなかった。
でも、あまり先延ばしにする訳にもいかないと思って、暁はラブレターにメッセージを付け加えた。こうすれば、ラブだって石堀のことを警戒するはず。
こいつと戦う時が来たとしても、一人では勝てるかどうかわからない。だから、
結城丈二や
涼邑零にも相談をしなければならなかった。
対策を考えている一方で、肝心の石堀は何事もないかのように言葉を続ける。
「だが、放送が終わったら警察署に移動をする……どのルートだろうと、文句を言うなよ?」
「わかっているって……ん? ちょっと待てよ、もしかしたらあの禁止エリアって所を突っ走るつもりか?」
「それは状況次第だ。とにかく、今はさっさと身体を休めろ……いいな?」
「わかったよ……」
暁は渋々ながらも頷く。ここで下手に反論などしては、余計なトラブルを生むだけだ。
移動だって、無茶なルートを通らないのなら余計なことを言う気はない。今は石堀に従うしかなかった。
どうか、少しでも安全なルートでありますようにと願いながら、暁もまた休憩を選ぶことにした。
『……石堀光彦だ。奴に気を付けろ……』
生前、黒岩が遺した言葉が頭の中で再生される。
この男が本当に黒岩を悪魔にして、自分やラブが傷付いてしまったのか。
ラブを守ったのも嘘だったのか。凪を守ろうとした姿も嘘だったのか。森の中で結城や零と良い雰囲気を作っていたのも嘘だったのか。
石堀にとっては全てが嘘なのか? その顔の下には何が潜んでいるのか?
考える度に疑念は増えていき、暁の中で不安な気持ちが膨れ上がっていた。
【1日目 深夜】
【G-8/中学校・保健室】
【備考】
※三人とも今は休憩をするつもりでいます。
※その後、仲間を捜す予定ですがどのルートを選ぶのかは後続の書き手さんにお任せします。
【涼村暁@超光戦士シャンゼリオン】
[状態]:疲労(小)、胸部に強いダメージ(応急処置済)、ダグバの死体が軽くトラウマ、脇腹に傷(応急処置済)、左頬に痛み
[装備]:シャンバイザー@超光戦士シャンゼリオン、
モロトフ火炎手榴弾×3
[道具]:支給品一式×8(暁(ペットボトル一本消費)、一文字(食料一食分消費)、ミユキ、ダグバ、ほむら、祈里(食料と水はほむらの方に)、霧彦、黒岩)、首輪(ほむら)、姫矢の戦場写真@ウルトラマンネクサス、タカラガイの貝殻@ウルトラマンネクサス、八宝大華輪×4@らんま1/2、スタンガン、ブレイクされたスカルメモリ、ランダム支給品0~5(ミユキ0~2、ほむら0~1(武器・衣類ではない)、祈里0~1(衣類はない)、黒岩0~1) 、スーパーヒーローマニュアルⅡ
[思考]
基本:加頭たちをブッ潰し、加頭たちの資金を奪ってパラダイス♪
0:石堀を警戒。石堀からラブを守る。表向きは信じているフリをする。
1:石堀やラブちゃんと一緒に、どこかに集まっているだろう仲間を探す。
2:別れた人達が心配、出来れば合流したい。
3:あんこちゃん(杏子)を捜してみる。
4:可愛い女の子を見つけたらまずはナンパ。
5:変なオタクヤロー(ゴハット)はいつかぶちのめす。
[備考]
※第2話「ノーテンキラキラ」途中(橘朱美と喧嘩になる前)からの参戦です。
つまりまだ黒岩省吾とは面識がありません(リクシンキ、ホウジンキ、クウレツキのことも知らない)。
※ほむら経由で魔法少女の事についてある程度聞きました。知り合いの名前は聞いていませんでしたが、凪(さやか情報)及び黒岩(マミ情報)との情報交換したことで概ね把握しました。その為、ほむらが助けたかったのがまどかだという事を把握しています。
※黒岩とは未来で出会う可能性があると石堀より聞きました。
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
※
第二回放送のなぞなぞの答えを知りました。
※森林でのガドルの放送を聞きました。
※第三回放送指定の制限解除を受けました。彼の制限は『スーパーヒーローマニュアルⅡ』の入手です。
※リクシンキ、ホウジンキ、クウレツキとクリスタルステーションの事を知りました。
【桃園ラブ@フレッシュプリキュア!】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)、左肩に痛み、精神的疲労(小)、決意、眠気
[装備]:リンクルン@フレッシュプリキュア!
[道具]:支給品一式×2(食料少消費)、カオルちゃん特製のドーナツ(少し減っている)@フレッシュプリキュア!、毛布×1@現実、ペットボトルに入った紅茶@現実、
巴マミの首輪、工具箱、黒い炎と黄金の風@牙狼─GARO─、クローバーボックス@フレッシュプリキュア!、暁からのラブレター
基本:誰も犠牲にしたりしない、みんなの幸せを守る。
1:どこかに集まっているだろう仲間を探す。
2:マミさんの遺志を継いで、みんなの明日を守るために戦う。
3:プリキュアのみんなと出来るだけ早く再会したい。
4:マミさんの知り合いを助けたい。もしも会えたらマミさんの事を伝えて謝る。
5:犠牲にされた人達のぶんまで生きる。
6:
ダークプリキュアと暗黒騎士キバ(本名は知らない)には気をつける。
7:どうして、
サラマンダー男爵が……?
8:後で暁さんから事情を聞いてみる。
[備考]
※本編終了後からの参戦です。
※
花咲つぼみ、来海えりか、
明堂院いつき、
月影ゆりの存在を知っています。
※クモジャキーとダークプリキュアに関しては詳しい所までは知りません。
※
加頭順の背後にフュージョン、ボトム、ブラックホールのような存在がいると考えています。
※放送で現れたサラマンダー男爵は偽者だと考えています。
※第三回放送で指定された制限はなかった模様です。
※暁からのラブレターを読んだことで、石堀に対して疑心を抱いています。
【石堀光彦@ウルトラマンネクサス】
[状態]:疲労(小)、ダメージ(小)、残り1時間予知能力使用不可
[装備]:Kar98k(korrosion弾7/8)@仮面ライダーSPIRITS、アクセルドライバー+ガイアメモリ(アクセル、トライアル)+ガイアメモリ強化アダプター@仮面ライダーW、エンジンブレード+エンジンメモリ+T2サイクロンメモリ@仮面ライダーW 、コルトパイソン+執行実包(2/6) 、ロストドライバー@仮面ライダーW
[道具]:支給品一式×3(石堀、ガドル、ユーノ、凪、照井、フェイト)、メモレイサー@ウルトラマンネクサス、110の
シャンプー@らんま1/2、ガイアメモリ説明書、.357マグナム弾(執行実包×18、神経断裂弾@仮面ライダークウガ×4)、テッククリスタル(レイピア)@宇宙の騎士テッカマンブレード、イングラムM10@現実?、火炎杖@らんま1/2、血のついた毛布、ランダム支給品2~8(照井1~3、フェイト0~1、ガドル0~2(グリーフシードはない)、ユーノ1~2)、暁が図書室からかっぱらってきた本
[思考]
基本:今は「石堀光彦」として行動する。
0:「あいつ」を探す。そして、共にレーテに向かい、光を奪う。
1:今は休憩をして、その後に暁とラブの二人を先導しながら進む。
2:どこかに集まっているだろう仲間を探す。
3:周囲を利用し、加頭を倒し元の世界に戻る。
4:孤門や、つぼみの仲間、光を持つものを捜す。
5:都合の悪い記憶はメモレイサーで消去する
6:加頭の「願いを叶える」という言葉が信用できるとわかった場合は……。
7:クローバーボックスに警戒。
[備考]
※参戦時期は姫矢編の後半ごろ。
※今の彼にダークザギへの変身能力があるかは不明です(原作ではネクサスの光を変換する必要があります)。
※ハトプリ勢、およびフレプリ勢についてプリキュア関連の秘密も含めて聞きました。
※良牙が発した気柱を目撃しています。
※つぼみからプリキュア、砂漠の使徒、サラマンダー男爵について聞きました。
※殺し合いの技術提供にTLTが関わっている可能性を考えています。
※テッカマン同士の戦いによる爆発を目にしました。
※第二回放送のなぞなぞの答えを知りました。
※森林でのガドルの放送を聞きました。
※TLTが何者かに乗っ取られてしまった可能性を考えています。
※第三回放送指定の制限解除を受けました。予知能力の使用が可能です。
※予知能力は、一度使うたびに二時間使用できなくなります。また、主催に著しく不利益な予知は使用できません。
※予知能力で、デュナミストが「あいつ」の手に渡る事を知りました。既知の人物なのか、未知の人物なのか、現在のデュナミストなのか未来のデュナミストなのかは一切不明。後続の書き手さんにお任せします。
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最終更新:2014年05月18日 14:47