X、解放の刻/楽園からの追放者 ◆7pf62HiyTE
「検索を始めよう……」
白一色の空間、そこに立つフィリップの周囲に無数の本棚が展開されている。
「キーワードは『
佐倉杏子』、『魔法少女』、『魔女』、『キュウべえ』、『ソウルジェム』、『グリーフシード』……」
その言葉と共に、無数の本棚が縦横無尽に動き回る。その結果、フィリップの近くに展開される本棚は大幅に減少される。
これにより更に本棚が動き回り、フィリップの周囲の本棚の数が大幅に減少する。
「まだ多いか……となると……『ワルプルギスの夜』……」
その言葉と共に、本棚が一気に動き、フィリップの前に展開される本棚は1つだけとなる。そしてそこに収められている本も十数冊という所まで減少した。
「どうやら当たりだった様だ……現状これ以上の絞り込みは難しい様だが……ここからなら1つずつ確かめて見ても問題は無い……」
その言葉と共に、その中から1冊の本を取る。そこには『HOMURA AKEMI』というタイトルが入っている。
「ふむ……この本には暁美ほむらの事が収められている様だ……病気により長い間入院していたのか……」
そしてフィリップはその本を迅速に読み込んでいく。
「学校にもなじめなかった彼女はある時魔女に襲われる……その時に彼女は鹿目まどかと他1名の魔法少女に助けられた……」
タイトルの通り、そこには暁美ほむら、彼女の詳細が記されている。
「だが、ワルプルギスの夜の襲来により鹿目まどかは死亡……暁美ほむらはキュウべぇに彼女との出会いをやり直す事を願い魔法少女となった……そして、その願いによって得た力……時間遡行により転入する直前まで戻る……
なるほど、魔法少女の力は彼女達の願いによって決まるらしい……となると杏子ちゃんの本当の力は……いや、そんな事はどうでも良いか……」
そしてフィリップはほむらの足跡を調べ上げていく――そんな中、
「何だって……!」
状況的に不謹慎ではあったが興味があったが故に、どことなく楽しそうに笑顔を浮かべていたフィリップではあったが、あるページを目の当たりにした瞬間表情が変わる。
「そんな……それじゃあ杏子ちゃん達は……!!」
そのページに書かれていた事項を見たフィリップの衝撃は大きい、急ぎページを進め真偽を確かめる。
「嘘だ……そんな……」
そう零してもフィリップはわかっている。そこに書かれている事は明らかな真実だという事を。
別の本を手に取り読み進めてもフィリップの求める、いや望んでいる答えは決して手に入らず、否定したい真実ばかりが突きつけられる。
無論、検索の結果だけを検討すればある意味理にかなった話ではある。普遍的な話とも言えよう。だが、
「これじゃあ……あまりにも救われなさ過ぎる……杏子ちゃんや……彼女を信じ助けようとするみんなが……翔太郎……!」
第6節 楽園からの追放者
警察署の一室――そこには1枚の書き置きだけが残されていた。
そこにはほんの数分前まで佐倉杏子がいた。だが今はもう彼女の姿は無い。
それは彼女に課せられた制限の解除にあった。そう、杏子自身も知り得なかった制限――
彼女に伝えられた事は纏めるとこういう事だ、『24時以降、魔女が解放され行動を開始する』。魔法少女が倒すべき敵が現れるという事だ。
同時に、『何処から魔女が現れるのか?』という真実も伝えられた。
それを知った彼女のショックは余りにも大きかった。
唯々自分の為だけに戦っていた頃ならば衝撃は受けてもすぐに立ち直れただろう。
だが今はそうではない、冒した数えきれぬ罪を数え、今度は数え切れないぐらいの人々を救いたいと願っていたのだから――
そう、どれだけ多くの人々を救い希望を与えたとしても、今度はそれ以上の絶望を――
自分一人だけならばまだ良い、だが今更他人を苦しめたくはないのだ。
どれだけ願おうとも最早結末を変える事は出来ないのだ、最初から決まっていたという事だ。
そもそもこの真実、魔女の正体を仲間達が知ったらどうするだろう?
彼女達に魔女を倒させ――いや敢えて言おう、殺させるというのか? あるいは殺す所を見せるというのか?
それがどれだけ辛い事か、杏子は想像できてしまったのだ。そんな事言えるわけがない。
いっそ『別に解除される制限は無かった』とでも言って自分の内に秘めるという手もあった。
だがそれは出来なかった。24時以降2体の魔女が現れる事は確定事項、障害となる2体の敵が現れるのがわかっていて黙っている事など出来やしない。
それを伏せる事は仲間達を危機に晒す事に繋がる、出来るわけがないだろう。
では『魔女が2体現れる』事だけを伝えるか? それもダメだ。何故それが杏子にだけ伝えられるたのかという疑問が出てしまうのだ。
そう、これはあくまでも杏子達魔法少女に課せられた制限解除に関する話なのだ。2体の魔女の出現はその延長線上の話に過ぎない。
頭の切れる者ならば『魔女が2体現れる』という情報だけでも十分『何処から魔女が現れるのか?』という謎に行き着くだろう。
それ以前に、そもそもの前提として『何処から魔女が現れるのか?』という情報は『魔女が解放される』という現象を説明する為の前提に過ぎない。
つまり本来ならば伝えられる情報は『24時以降魔女が解放される』という事だけなのだ。だが、それはそのまま『何処から魔女が現れるのか?』という問いの答えにも繋がるのでそれを知らない杏子に説明されたというだけの話なのだ。
それに幾ら杏子が伏せたとしても、『何処から魔女が現れるか?』の真実が露呈する可能性はある。
そう杏子の知り合いの中に確実に1人はその真実を知っている者がいるのだ。
キュウべぇがイレギュラーと語っていた人物こと暁美ほむら、彼女の言動には謎が多い。
しかしその真実を知っているとするならばその行動にもある程度説明がつく。
勿論彼女がそういう情報をそうそう明かしたりはしない事は杏子自身も推測出来る。しかし絶対に明かさないという証明にはなり得ない。
彼女が退場したのは1度目の放送前、死に際に同行者に自身の持つ情報を託さないとどうして言い切れる?
それから12時間以上も経過しているのだ。自分達の知らない所でその情報が拡散している可能性は多分にある。
つまり早いか遅いかの違いはあれど何れ真実は露呈するだろうという事だ。更に前述の通り魔女の出現だけは確定事項。
悲劇的な結末は最早避けられないという事だ。そしてそれは杏子自身の問題にも直結する。
『貴女も殺し合いを止めようとしているのなら、気を付けることね……迂闊に戦ったりしたら、周りの人達も絶望に巻き込まれるのだから』
そう、今更簡単に命を投げ出すつもりはないが、下手に戦う事も出来なくなったのだ。
杏子自身の死は既に仲間達の危機に直結する致命的な爆弾となったのだ。
死なない様に戦う? 自身への負担を最小限に抑えつつ戦う? 確かにそれ自体は可能だろう。
だが出し惜しみをして勝てる戦いでは無い事は
ゴ・ガドル・バ、
血祭ドウコク、そして
天道あかねの変身した赤いナスカ・ドーパントとの戦いで痛い程理解している。
そんな連中を相手に出し惜しみなど足手纏い以外の何者でも無い、そんな状態で戦ったって誰も守れないし救えない。
それ以前にそんな動きを見せれば仲間達だって不審に思う。真実を明かそうが明かすまいが迷惑をかける事は確実だ。
だが考えている余裕は全く無い。先程の叫び声が聞こえたら仲間達は確実にやってくる。
それ以前に既に単独行動してから十分過ぎるほど時間が経過している。何時までも戻らなければ何かあったのかと思い駆けつけるだろう。
だが杏子には最早仲間達にどんな顔をして会えばいいのかわからなかった――
だから、最低限伝えるべき情報を書き残し――
アカルンの力を使い、その部屋から姿を消した――
杏子が記した書き置きはこうだ
『24時を過ぎたら2体の魔女が現れるから倒せ』
はっきりと書かれている部分を纏めるとこうなる。
しかし杏子は冷静では無かった。内心パニックに陥っていったと言っても良い。
そう、何度もペンで書いては消してを繰り返しているのだ。先の『2体』の所も実は『3』と書いた後二重線で消した痕跡がある。
そして他にも、
『魔女の正体は魔法少女の』
『もし次にあったらあたしのソウ』
そういった文を書いては線で消してを繰り返していた。
杏子自身迷っていたのだ。真実を明かすべきか最後まで――
だが、魔女の真実を知った上で魔女と戦う仲間達の姿を想像する度に書く手が止まってしまうのだ。
完全に書き潰せていない以上、その気になれば何が書かれているのかは簡単に看破出来る程度のものだ。
それでももう時間はなかった。だからこそ最後にある言葉をはっきりと記して消えたのだ――
それはさながら、知恵の実を食べた事で楽園から追放された罪人の様であった――
『ごめん、こんな形で別れる事になって』
第1節 地球の開放
――ゴ・ガドル・バとの戦いを終えた後、
響良牙、
花咲つぼみ、ダー……いや月影なのはの3人と別れた俺とフィリップ、そして響から託されたマッハキャリバーと共に仲間達の待つ警察署へと戻ろうとした。
だが、俺はすぐには戻らず警察署より約200メートル離れた場所にある建物の中にいた。
そこは何かのレストランらしく休憩するには丁度良い場所だ。ハードボイルドにとっては少々似つかわしくない気もするが四の五の言える状況じゃない。
そう、俺は単独で待つ事にしたのだ。21時以降、30分以上単独行動する事で解放される制限解除の時を、
主催陣の思惑もあるのだから当然と言えば当然だが単独行動によるリスクが大きいのは理解している。それでも参加者としては単独で行動出来るこの機会を逃す理由は無い。そして何より、別行動を取る前、俺達はこんな事を話していた――
『そういや響、1つ聞きたい事があるんだが……』
『何だ?』
『いや、仮面ライダークウガ……
一条薫だったか……そいつから何か託されたものはなかったか? 物とかじゃなくてだな……魂みたいなもんだ……』
『魂か……』
『確かにあのマッチョメン……ガドルにクウガは敗れたかも知れねぇ……だがその魂、いや想いまでは消させたくはねぇ……俺も仮面ライダーWとしてそれを受け継ぎてぇんだ……』
『う゛ーん……言いたい事はわかるがどういえば良いかは……そうだ、『中途半端はしないでくれ』……そう言っていたぜ……』
『中途半端はするなか……わかったぜ』
『中途半端……本当に大丈夫なのかな? ハーフボイルド……』
『ってフィリップ、いきなりハーフボイルド言うんじゃねぇ!!』
『ハーフボイルド……?』
『半熟卵の事ですね』
『That is, it is half a man.(つまり、半人前です)』
『半人前でもハーフボイルドでもねぇ!! 俺はこれでもハードボイルドな探偵なんだ!!』
『そう言っている時点でハードボイルドじゃねぇと思うが……』
『大丈夫なのかしら……』
『大丈夫ですよ…………………………多分』
『それフォローになってねぇよ!!』
――と、ともかく、『中途半端はするな』、それが一条が俺達に託したメッセージだ。
思えば、ここまでの戦い、人々を守る仮面ライダーを自称していながらも戦いでは足を引っ張る事が多く結果的に杏子や姫矢達に任せてしまう事ばかりだった。
その原因の1つは仮面ライダーWの戦闘力不足である事は揺るぎない事実だ。エクストリームメモリを封じられている状況ではその全ての力を発揮できない。
勿論、Wの真価は6本のメモリを状況に応じて使い分ける事で多種多様の状況に対応する事だ。だからこそエクストリームが無ければ戦えないという事は無い。
しかしエクストリームとなったWを超える力を持つエターナルのパワーをもってしてもあのガドルには全くダメージが届いていないという現実、
これはエクストリームを得てもガドルには届かない事を意味している。当然、その力を使えないままのWでは戦いにすらならないだろう。
特にガドルは状況に応じて戦い方を変えるというWに似た力を持っている。Wの持つ柔軟性すらガドル相手には通用しないということだ。
そんな中途半端な状態で戦い続けても何も守れない。また人々を泣かせるだけだ。
だからこそ、制限の解除は最優先事項だった。十中八九俺に課せられた制限はエクストリームだ。それを解放できなければ戦いにおいては足手纏いのまま……これ以上、俺達よりも若い奴らばかりを戦わせるわけにはいかねぇしな……
今は只、その時を待つだけ――
『Narration of what is carried out alone? And it is long(何を一人でナレーションしているんですか? しかも長いです)』
「前にも似た様な事言われたぞ! それより周囲の様子は」
『No problem(問題はありません)』
かくして
左翔太郎はF-9にある警察署から少し離れた所にあるレストランの奥の椅子に座りその時を静かに待っていた。
その場所は丁度死角となっている為、店外からは翔太郎の姿を確認する事は不可能。中の様子を確かめるには店内に入るしか無い。
だが店内に入れば流石の翔太郎も接近を察知できるしマッハキャリバーに周囲を警戒させてもいる。それ故、単独行動を維持する条件はクリア出来ていると言えよう(加えて言えば監視カメラの存在が無い事も確認済)。
勿論、何かあった時はすぐに動ける様、ドライバーは装着済みだ
『翔太郎』
そんな中、フィリップが話しかけてきた。
「どうしたフィリップ、頼んでおいた事はわかったのか?」
実は少し前にこんなやり取りをしていた。
『フィリップ、ゴ・ガドル・バ……いや、仮面ライダークウガについて調べてくれ』
『それ自体は構わないが……忘れたのか翔太郎、地球の本棚で検索できるのは僕達の世界に関係する事だけ、他の世界の事は対象外だ。恐らく検索しても……』
『だろうな……だが切り口はある』
『切り口……』
『俺達も接触したアイツ……』
『まさか……』
『そのまさかだ……仮面ライダーディケイド門矢士、通りすがりの仮面ライダーであるアイツならば仮面ライダークウガの事も……』
『なるほど、考えて見れば何度か共闘はしたとはいえ、長々と話した事はなかった……試してみる価値はある……だが例え僕達と接触したとは言え異世界の存在である事に違いは無い。過度な期待はしないでくれ』
というわけで、フィリップに仮面ライダークウガの事を調べる事を依頼していたのだ。勿論これは来たるべきゴ・ガドル・バとの戦いに備える為だ。
『要点の説明をしよう。仮面ライダーディケイド門矢士、彼は自らの記憶、あるいは世界を探す為に数多の世界を旅してきた。その旅の仲間の中に仮面ライダークウガがいた』
「大当たりか! けど頼んでおいてアレだがよくそこまで調べられたな……異世界なのに……」
『旅の仲間の1人、光栄次郎が園咲琉兵衛……父さんの知り合いだったからかな……?』
「え、何だって?」
『何でも無い、だが大当たりとは言い切れない……何しろ門矢士と旅をしていたクウガの正体は……小野寺ユウスケなのだから』
「別人って事か……」
『だが、ここからが重要だ、門矢士は数多くの仮面ライダーの世界を旅してきた。クウガ、キバ、龍騎……』
「そういや俺達が初めてディケイドと戦ったのはどのライダーの世界だったんだ? 確か銀ピカ野郎をぶちのめした世界だったが……」
『そんな事はどうでもいい、話の腰を折らないでくれ……彼の旅した世界の1つに仮面ライダーのいない世界があった……』
「仮面ライダーのいない世界?」
『そう、その世界は5色の侍戦士によって守られている世界……故に仮面ライダーが存在する必要が無いという事だ。ちなみにその世界ではクウガも戦った』
「その言い方じゃディケイドと旅していたクウガはあんまりクウガとして戦ってねぇ風に聞こえるが……ん、ちょっと待て、5色の侍戦士……それはまさか……」
『そう、
志葉丈瑠達シンケンジャーのいる世界だ』
「ちょっと待て、それじゃ梅盛達は仮面ライダーの事を知っているって事じゃねえか、けどそんな事梅盛の野郎一言も言ってなかったぜ」
『驚く事じゃない、彼がディケイドの現れる前のタイミングから連れてこられたというだけの話だろう』
「そうか……ん、おかしくねぇか? 何でシンケンジャーの世界の情報がそこまで詳しくわかったんだ?」
そう、ここまで話して翔太郎は事の異常に気付いたのだ。
地球の本棚はその名の通り地球の記憶が収められた本棚だ。それ故、別の世界の地球とは一切関係が無い。
だからこそ、翔太郎達の世界以外の事はフィリップがアクセス出来る地球の本棚では検索不可能という事だ。
翔太郎は自分達と接触したという一点を利用しディケイド経由で検索する事を考えた。それでも別世界の情報を得られるとは思えなかった。
しかしフィリップのもたらした情報は明らかな異世界の情報だ。
『気付いた様だね、それが僕にもよくわからない……突然本棚の数が大量に増えたんだ……』
「突然増えた? どういう事だ?」
『それは僕の台詞だ……そうだ、翔太郎今何時だ?』
「今……丁度21時を数分過ぎた所だ」
『なるほど……どうやら21時を過ぎた時点で検索範囲が広がる仕様になっているらしい』
「あーそういう……って確か21時を過ぎた上で30分単独行動しなきゃならねぇんじゃなかったのかよ!?」
『それは参加者にかけられた制限だろう。地球の本棚は実質僕専用とはいえ施設の様なもの、解放条件が多少異なっても不思議は無いし僕達に知らせなければならないという決まりもない』
フィリップの推測は的中している。
制限の解放の中には時間が来た段階で行われるものもあり、ものによっては参加者に知らされる事無く行われるものもある。
例えばシャンゼリオンの拠点であるクリスタルステーションの出現も21時になった時点で行われる(但し利用できるかは別問題)。だがそれは直接参加者に伝えられる事は無かった。
それと同様に地球の本棚の検索対象の拡大は21時を以て行われる事は確定事項だった。但し、例え関係者であるフィリップ達といえどもそれを伝えられるとは限らない。
厳密には首輪解除に動いた参加者2人がそのボーナスの一環としてその情報が伝えられているわけだがそれをフィリップ達が知る事は無い。
とはいえ、時間が来た時点で解放されている事に違いは無く、実際に利用する事で容量拡大を実感する事が出来たという事だ。
「つまり、これで情報に関しては問題が無いと……」
『そうとは限らない。検索範囲が広がったという事は絞り込む為に必要なキーワードも増えるという事だ。特に仮面ライダーに関しては余りにも多くの世界に存在している……簡単に検索ができるとは考えない方が良い』
「じゃあどうすりゃいいんだ……」
『仮面ライダーについてはもう少しキーワードが欲しい所だ……』
「どうすっかな……ん、範囲が広がったなら……そうだ、フィリップ……魔法少女について調べてくれないか?」
『杏子ちゃんを助ける為にか……状況わかっているのか翔太郎……気持ちはわかるが……』
「出来るならな……俺は杏子の身体を元に戻してやりてぇんだ……死ぬまで戦い続けるのはあまりにも辛すぎるだろう……」
『だが、罪を数え救うと決めたのは杏子ちゃん自身だ、それは彼女に対して失礼じゃ……』
「魔法少女じゃなきゃ人は救えないってわけじゃねぇだろう」
『もっともだね、わかった翔太郎……だがキーワードはどうする? 絞り込めなければ探しようが無い……』
「そうだな……杏子達魔法少女に関係する用語を片っ端から入れて……後は知り合いの名前、確か暁美ほむらはイレギュラーとかどうとかって言っていた筈だ」
『イレギュラー……なるほど調べて見る価値はある……だがまだ足りない、もう1つ決め手が欲しい所だ……例えば有名な魔女の名前とか……』
「有名な魔女の名前? そんなもん知るわけが……」
と、
『Walpurgis Nachi(ワルプルギスの夜)』
「ワルプルギスの夜……?」
マッハキャリバーが不意に言葉にし翔太郎もオウム返しのように復唱してしまった。
『『ワルプルギスの夜』……興味深い名前だ、わかったこれで試してみよう』
そう言って検索に入っていった。
「おい、フィリップ……」
呼び止めようともフィリップが答える事はなかった。
――とはいえ、何かに夢中になったフィリップがこうなる事は何時もの事だ。だがきっと、そんなフィリップなら闇に潜む真実を見つけ出せる。俺はそう信じている――
『It is shortly short(今度は短いですね)』
第3節 状況の整理
――今は只待つ事しか出来ない。だがこの時間を無駄に過ごすつもりはない。今は仮面ライダーとして戦えなくても俺が探偵である事に変わりは無い。今一度状況を整理することにした――
「3回目の放送の時点で残る参加者は21人、だがあの後一条といつきが死んだ事により残りは19人だ」
『It decreased very much(大分減りましたね)』
「ああ、順を追って整理するぜ……まず今現在警察署にいる冴島、美希、杏子、孤門、沖先輩、そしてヴィヴィオの6人、こいつ等は全員殺し合いを打破する為の仲間だ、ここまではわかるな」
『Yes(はい)』
「次に、いつきをつぼみの仲間達の所に埋葬に向かった後警察署に戻る手筈になっているのが響、つぼみ、なのはの3人、警察署の一件もあるからそうそう簡単に上手くいくかまではわからねぇがこの3人も仲間だ」
『And , Mr.Half Boiled(そしてハーフボイルドも)』
「というわけで俺を含めて10人が仲間という事になる……ってナチュラルにハーフボイルド呼ばわりすんじゃねぇ」
『The half was already exceeded...(既に半分を超えた……)』
「残り9人だな。まず美希と同じプリキュアである
桃園ラブ、この子は間違い無く仲間だ……どうでもいいがなんでラブって名前なんだ……」
『Please go ahead with the talk(話を進めて下さい)』
「で沖先輩の先輩である仮面ライダー4号ライダーマン
結城丈二先輩、そして響やつぼみから聞いた冴島同様魔戒騎士である銀牙騎士絶狼(ゼロ)こと
涼邑零、2人は警察署を離れてからずっと行動を共にしているらしい。
涼邑と冴島の間には何か因縁があったらしいがそれは既に解消されたらしい、結城先輩も一緒である事も踏まえれば離れているとはいえ2人も頼れる仲間となる」
『Kamen Rider is a senior...(仮面ライダーは先輩なんですね……)』
「そして孤門の同僚である
石堀光彦、聞いた話じゃ孤門同様特別な力は何も無いがこういう有事では頼れる仲間でつぼみも色々助けてもらったらしい……俺自身が会っていないからピンとこねぇけどな……」
『Remaining 5 persons(残り5人)』
「ああ、ここまでの14人は実質的にこのゲームを打破する仲間と考えて良い……だが仲間達を泣かせる危険人物が何人かいる……
まずゴ・ガドル・バ、俺の把握している限り一条といつき、霧彦、そしてフェイトにユーノを仕留めた現状最悪の相手だ」
『Ms.Fate...(フェイト……)』
「頼むからユーノの事も思い出してくれ……次に血祭ドウコク……あの時は杏子のお陰で撃退する事が出来たが未だ奴は健在……並の相手じゃ戦いにすらならねぇだろうな……」
『Next is ...(次は……)』
「本来なら殺し合いに乗る筈がなかったが許嫁……要するに婚約者あるいは恋人である
早乙女乱馬が殺された事で殺し合いに乗った天道あかね……彼女自身の戦闘力そのものは大した事は無いが……
達人級にまで強化する伝説の道着、そして赤レベルまで引き上げたナスカの力を持っている」
『Is it so dangerous?(そんなに危険なのですか?)』
「ああ……赤いナスカ自体エクストリームを以てしても対応仕切れないレベルだ……そして伝説の道着のお陰で強化されている事を踏まえれば……ガドルやドウコクに決してひけはとらないだろうな」
『Remaining...(残りは……)』
「そう……
涼村暁と
黒岩省吾……この21時間俺達は多くの参加者と遭遇し情報を得たが……この2人の情報だけは未だ掴んでいない……」
『An enemy or an ally , is it unknown?(敵か味方か、それも不明ですか?)』
「だが推測は可能だ。さっきの放送を覚えているか?」
『Yes.(はい)』
「あのゴバットというオタク野郎は仮面ライダー、プリキュア等々と並べて『シャンゼリオン』と言った、つまりこの『シャンゼリオン』は仮面ライダー及びプリキュア同様人々を守るヒーローという事になる。
そして調子に乗って呼びかけたり、一昔見た様な悪役みたく気取った所を見ると相当なオタクと考えて良い……
多分、あの野郎は放送役を与えられ舞い上がって俺達に呼びかけてしまったんだろうな……」
『Possibility of performance?(演技の可能性は?)』
「あれは間違い無く素だ。そしてつい言ってはならない事を言っちまった様だ……放送が止まり本部から苦情が来たというのはそれだろう……それは参加者の情報だ」
『What?(何?)』
「つまり現在生き残っている参加者の中に仮面ライダー、ウルトラマーン、魔戒騎士、プリキュアがいる事を口走ってしまったんだ……放送が止まったのはそれが理由だ。
それを裏付ける情況証拠はある……あの野郎は『シンケンジャー』とは呼ばなかった……あの野郎の性格上呼びかけないわけがない……つまり参加者の中にシンケンジャーはもういない事を証明したというわけだ……」
『The reason for not having called "magic girl" ?(『魔法少女』を呼ばなかった理由は?)』
「それは確かに引っかかるが……まぁ一番にありえるのはあの野郎の琴線に引っかかる『ヒーロー』じゃ無かったってとこだろうな……
もしくは……あの野郎の中では杏子はもう『魔法少女』じゃなくて『ウルトラマン』って事だろう。そうなると『魔法少女』はいない事になるしな。
ただ、何にせよあの野郎の言葉からシャンゼリオンが残る参加者にいる事は確実だ。だがさっきまで話した17人の中に該当する人物はいない……
つまり、涼村暁か黒岩省吾のどちらかがシャンゼリオンという事になる。断定は出来ないがまず味方と考えて良い。
未だ同行は掴めないが、恐らくは長い間同行がわかっていない参加者、ラブ、石堀、結城先輩、涼邑零……そのいずれかと同行しているか単独あるいはその2人で行動しているか……」
『It is how like a detective to talk.(探偵みたいな喋り方ですね)』
「探偵みたいじゃなく俺は元々探偵だ! なんかこのネタも前にもやったぞ!! というか今回こんなんばっかじゃねぇか!!」
ともかく残る参加者のスタンスを纏めると以下の様になる。
味方A(動向がある程度把握出来る者)……10
味方B(長期間動向が不明)……4
桃園ラブ
石堀光彦
涼邑零
結城丈二
敵……3
ゴ・ガドル・バ
血祭ドウコク
天道あかね
不明……2(注.但し片方は恐らくシャンゼリオンであり味方の可能性が高い)
涼村暁
黒岩省吾
「……?」
19人のスタンスを改めて確認した翔太郎はある種の違和感を覚えた。
「(待てよ……確か3度目の放送の時点では一条といつきが生きていて、月影なのはがダークプリキュアとして殺し合いに乗っていた頃だ……そうなると……味方に該当するのは15人、敵に該当するのは4人という事になる……
そして俺の推測通りなら涼村暁と黒岩省吾の内確実に片方は味方……もう片方を敵と仮定しても……味方は16人、敵は5人となる……
敵の数……少なくねぇか?)」
そう、現在の状況から見ても3度目の放送の時点から見ても敵対参加者が少ないのだ。
「(主催の連中にしてみりゃ……これはマズイ状況だぜ……)」
殺し合いの完遂が狙いとするならば放送時点で残り5人で16人を仕留めなければならない。
勿論、ガドルやドウコクの戦闘力を計算に入れればそれ自体はそう難しいことではない。
だが、状況はそうそう都合良くはいかない。
「(そもそもガドルやドウコク達だって別に組んでいるわけじゃねぇ、互いに潰し合う事だってあり得るだろう。それに……難しい事だが絶対に倒せない奴等じゃねぇ)」
前述の通り、敵対している参加者は何れも強敵と言える。
が、ガドルにしても、
ン・ダグバ・ゼバと対峙した事のある翔太郎視点で考えればそれに匹敵あるいは若干超えるレベルだと判断している。
そしてダグバが打倒できている事実がある以上、ガドルを倒すことも困難ではあっても不可能ということはない。
ドウコクに関しても1度杏子が撃退しているし、聞いた話では後に良牙達が遭遇し倒しているわけなのでこちらも倒す事は十分可能だ。
またあかねの変身した赤いナスカ・ドーパントも強敵ではあるがエターナルやエクストリームとなったWならば対応は可能であり、美希が一度撃退している事からもこちらも問題はないだろう。
加えて言えば、放送時点で殺し合いに乗っていたダークプリキュアもガドルの戦闘力を見て戦意を喪失した辺り、ガドルよりも大幅に弱い事は明らか。
そして、彼等は何れも単独で動いているわけなので互いに潰し合う事もあり得るということだ。
つまり、戦力のバランスが対主催側に傾いていると言える状況だ。
「(だが、連中は制限の解放で俺達を強化しようとしている。無論、ガドル達が強化される可能性もあるが……条件付きとは言え俺達も強化されるからそこまで致命的じゃねぇ……)」
主催陣の言動を見る限り、此方の行動をそこまで諫める様子は無い。幾ら殺し合いを続けろと言っても主催側が殺し合いを止めさせる発言をするわけもなく普通は煽るわけなので言葉自体に意味は無い。
「(そうだ、主催側にしてみりゃもっと積極的に此方が不利になる事を仕掛ける筈だ……それこそ殺し合いに乗った参加者が有利になる様な……制限の解放だってする必要もねぇだろう……
あいつらだって判っている筈だ……俺達が敵対する参加者を全て撃退すれば……次は自分達が危ないと……気付いていねぇのか?)」
そう、勿論まだ先の話ではあるが、敵対する参加者を撃退すれば主催陣の所に乗り込んで決戦という流れになる。
だが、それは主催陣にとっては良い状況では無い。殺し合いを催しておいてそれを壊される事など言語道断だ。
つまり、なんとしてでも殺し合いを継続すべき筈なのだ。しかし主催陣の言動を見る限り、あまり積極的とは言い難い。
「(何かおかしくねぇか……?)」
とはいえ、主催との戦いを考えるのは時期尚早、そんな中
「そういや響の奴に渡しそびれたな……」
と、T2のアイスエイジ・メモリを出す。エターナルは26個のT2ガイアメモリを使いこなす事が可能。それ故、このメモリもエターナルにとって大きな力になるわけだ。
「ま、いきなりメモリが増えた所で使いこなせるとは限らねぇか……それに確か月影なのはの持っていたメモリを持ってるらしいからな……恐らくパペティアー……ん、パペティアー?」
ここで物語は警察署で待機していた時に遡る。それは3度目の放送後、杏子達が買い出しに行く前、参加者の動向を纏めたものを確認していた時の事だ。
『なぁ、この響良牙って奴について詳しい話聞いている奴いねぇか?』
『乱馬さんやあかねさんの知り合いですね』
『ああ、確か乱馬は女、
シャンプーは猫、
パンスト太郎はなんかよくわからねぇ怪物に変身するってあるが……』
『そーいや、あの時現れた怪物、パンストか何かが見えた様な気が……アレか?』
『あんまり女の子がそういう事口にしないの……翔太郎さん、もしかして……』
『ああ、もしかしたらコイツも水を被ったら変身するんじゃねぇかと思ってな……』
『僕は聞いてないけど……美希は?』
『あたしも聞いてないわ……そもそも聞く余裕も無かったし……』
『梅盛の野郎も天道あかねとずっと行動していた割にそういう事は知らなかったみてぇだからな……』
『なぁそれじゃあ、その良牙の兄ちゃんは別に水を被ってもなんともならねぇんじゃねぇか?』
『………………あの、私……聞いてます』
『ヴィヴィオ? そうかそういや早乙女乱馬と長いこと一緒にいたんだったな』
『確かPちゃんっていうこれぐらいの子豚に変身してしまう体質で、時々あかねさんに抱きしめられたり一緒に寝たりしていたって聞いています』
この瞬間、ヴィヴィオ以外の3人の女性陣そして翔太郎の表情が通常ではあり得ないぐらいの驚愕の表情を見せる。
『なななななんだと、そんなうらやまし……いやいやいやいやけしからん事していたというのか!? その響良牙っていうPちゃんっていう子豚ちゃんは!?』
『兄ちゃん、本音がダダ漏れになってるぜ!! というか正気に戻ってくれ!!』
『ちょっと、どうしてそれ今まで黙っていたの!?』
『落ち着いて美希、そんな事普通は言えないと……』
『はい、乱馬さんからあかねさんには黙ってろと口止めされていたので……それに色々あって言いそびれて……』
『でもおかしいとは思わなかったの?』
『確かユーノさんも昔フェレットに変身したときなのはママと一緒にお風呂に入ったり寝ていたりしたらしいという話だがら……』
『ユーノォォォォォォ!! 俺を裏切ったなぁぁぁぁぁぁ!! お前だけはハードボイルドだと俺は信じていたんだぞぉぉぉぉぉ!!』
『落ち着いてくれよ兄ちゃん、9か10ぐらいだったら一緒に入っても……』
『あり得ると思う?』
『流石にそれはないでしょ……』
そんな一同を余所に、
『何やっているんだみんな……』
『そろそろ買い物に……』
『全く、退屈しない連中だ……』
そうツッコム沖と孤門、そして魔導輪ザルバであった。ちなみにこの時、
『う゛っ、なんか寒気が……』
『大丈夫ですか?』
『もう夜だ、冷えてくるだろう……』
とある場所にて微妙に寒気を感じる元Pちゃんがいたとかいなかったとか。
「つか、アイツにつぼみとなのはを任せて大丈夫だったのか……」
そんな事を思い出し流石に不安を覚えてくる。
「いや、だがまぁそういう奴とは限らねぇか……マッハキャリバー、確か響と一緒に行動していたんだろ、どんな奴だった?」
『He was doing hot britches with the marvelous body of buddy.(そいつ、相棒のマーベラスな躰で欲情していた)』
「響ぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!」
――新たなエターナルに不安を覚えていた俺だったが、すぐさま現実に引き戻される事になる……そう、その時がやってきたのだ――
第4節 男爵との遭遇
――それは突然現れた。音も無く、マッハキャリバーにも察知される事も無く――
『随分と騒がしいな……仮面ライダーW、いや左翔太郎。まぁ支給品は対象外だから別段問題は無いが……』
そう、店内に赤髪の男性がいたのだ。
――サラマンダー男爵……砂漠の使徒の元幹部で、砂漠の使徒やプリキュア達に復讐すべく世界の破壊を目論もうとした奴だ。
もっとも、ルー・ガルー……オリヴィエとの出会いといつき達との戦いの果てに改心、和解したという話だ。
だが、そんな奴が加頭達と組んでこの殺し合いの主催として参加している。最初の放送を担当したのもこの男だ――
『自己紹介の必要はないな……言っておくが今君の目の前にいる私はホログラフだ……手を出そうとしても無駄だ……』
「まさかアンタが来るとはな……俺はてっきり加頭の野郎が来ると思っていたぜ……」
『こっちも色々担当があるのでな……あの男も別の……いやこれは言うまい』
「いつきから話は聞いている……男爵、アンタは……」
『悪いが質問に答えるつもりはない……俺の用事は……制限の解放だ』
その言葉と共に指を鳴らす。するとあるものが出現した。
「エクストリームメモリ……」
『私の担当はこれの監視役でね、その関係もあって君の前に現れたという事だ。さて、左翔太郎……正確にはダブルドライバーの持ち主に課せられた制限を説明しよう……』
「エクストリームメモリとそこに幽閉されているフィリップの解放、そうだろう」
『御名答、いやいや説明の手間が省けて実に都合が良い……ん、妙だな……フィリップもすぐに出るとは思ったが……
まあいい、ともかくこれで君は仮面ライダーWの全ての力を使える事になる。
今更説明するまでも無いがフィリップ主体によるファングジョーカー、そして2人が1つになったサイクロンジョーカーエクストリーム……ここからはこの力を使い存分に戦いたまえ……』
そう言って用事を済ませ消えようとするが。
「ちょっと待て、アンタ本当にあの連中の手先になっているのか!? もしかしてオリヴィエ……ルー・ガルーが人じ……」
だが、男爵がステッキを向ける。ホログラフとはいえ翔太郎は思わず言葉を詰まらせる。
『答えるつもりはない。二度もいわせないでくれ……これ以上余計な事を言うならば、折角再会出来た相棒と早々に別れることになる……』
「まさかフィリップにも首輪を……」
『当然の措置だろう。今はこのまま戦い続けるしかないという事だ……だが、君たちが再び私の前に現れた時は……いや、言うまい……』
そう言って、後ろを振り返る。
『そう、君達の声は私の耳に届いている……キュアブロッサム……彼女の声も……それではさらばだ。運があったら……また会おう』
と指を再度鳴らし、男爵はその姿を消した――
――何事もなかったかの様にレストランに静寂が戻る……だが俺の中には1つの疑問があった。最後の男爵の言葉は何を意味しているのだろうか?
監視しているから下手な事をするなという意味か? だが何故キュアブロッサムの名前が出てきた?
いや、男爵に関する推測は後でも出来る……そう、今一番重要なのは――
「フィリップ……」
その言葉に反応したのかエクストリームメモリから1人の男が放たれる。傍らでは恐竜型のファングメモリが縦横無尽に走り回っている。
「……さっきまで普通に話していたのに随分と久しぶりに会った気がするよ……翔太郎」
そしてその手にエクストリームメモリとファングメモリを掴む。
「ああ……正直もう二度と会えねぇんじゃねぇかと何度も思ったぜ……フィリップ」
「奇遇だね……僕もだ」
「ははっ……よっしゃぁぁぁぁ! フィリップが帰ってきたぁぁぁぁぁ!!」
「翔太郎、こういう時はこう言うんだ、こうやって『フィリップキタァー!!』とね」
「なんだそりゃ!?」
『Congratulations(おめでとうございます)』
――そう、制限の解放なんてどうだってよい、最高の相棒と再会出来た事を喜んだ。だが――
「そうだ翔太郎、喜んでいる所悪いがのんびりしている場合では無い」
「そうだな、すぐにでも警察署に戻らねぇと……」
と言ってマッハキャリバーを握り店外へと出ようとしたが、
「待ってくれ、先に話したい事がある」
「何だそりゃ、んなもん警察署に戻ってからでも十分だろ、大体杏子に関係する事なら本人の前で……」
「ダメだ、この事はまだ杏子ちゃんにも警察署にいる仲間達にも話すわけにはいかない」
「まさか……何かマズイことがわかったのか……」
「ああ、だからこそまず君だけに話す……」
――そしてフィリップは検索結果を語り初めた。だが、俺は最初それを信じる事が出来なかった――
「何だそりゃ……本当かよ……」
「何度も検索した、間違いは無い……」
「巫山戯んなよ……杏子達魔法少女が戦っていた魔女の正体が……
魔法少女の成れの果てだと……!!
それじゃあ杏子達は……自分達の仲間を……かつて同じ人間だった女の子達を殺していたってことじゃねぇか!!
そして今度はその杏子達自身も……魔女になって……人々を泣かせるっていうのかよ!!
何の冗談だ!! フィリップ!!」
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最終更新:2014年04月07日 17:33