東名首都圏電気鉄道1300系電車
1300系電車(1300けいでんしゃ)は、東名首都圏電気鉄道の通勤形直流電車。2005年12月1日より営業運転を開始した。2014(平成26)年現在の東名首都圏電気鉄道を代表する通勤形車両でもある。

主要諸元
起動加速度 | 3.3km/h/s |
営業最高速度 | 145km/h |
設計最高速度 | 160km/h |
減速度 | 4.5km/h/s(通常) 5.2km/h/s(非常) |
編成定員 | 721(立)+344(席)=1,065名 |
最大寸法 | 20,000(20,050)*×2,950×3,630mm *()内は先頭車 |
編成重量 | 327.5t |
軌間 | 1,067mm |
電気方式 | 直流1,500V |
モーター出力 | 連続定格 270kW(M-MT106) |
編成出力 | 270kW×2×7=3,780kW |
歯車比 | 1:6.53 |
駆動装置 | WN平行カルダン歯車形たわみ軸継手方式 |
制御装置 | 2レベルPWMIGBT-VVVFインバータ M-PC15(1C2M) |
ブレーキ方式 | 回生ブレーキ併用電気指令式空気ブレーキ 抑速・発電・耐雪・直通予備ブレーキ |
保安装置 | ATS-SW,東鉄CS-ATC,ATC-IM,列車防護無線装置 EB,TE装置,誘導無線装置,デジタル列車無線 |
概要
老朽化が目立つ200系・600系・800系の各通勤形を置き換え、普通電車を東名本線・京浜相模線・副都心線では1000系と本形式に、その他の線区では本形式に統一して所要時間の短縮など普通電車のサービス向上と車両性能の統一を図るために開発された車両である。
なお、計画段階での仮称は「D1000系」だった。
車体
車体は幅2,950mmのステンレス製ワイドボディ(前頭部のみ普通鋼製)で、1両の片側に4つの客用扉を持つ形態となっている。ドアピッチは1000系と同じ4,700mm(ドア中心間)である。断面は近郊型との共通化を念頭に置き、1000系とも2300系とも異なる新形状が起こされた。1000系では構体に骨構造+ビード加工(断面が凹凸の細い帯状の補強構造)外板となっていたが、本形式では2003年の2300系5000番代で採用された、戸袋部を2シート工法、窓部を骨組み工法とすることでビードが廃止された。車体の溶接工法は腰部・吹き寄せ部が従来のスポット溶接からレーザー溶接に変更され、屋根肩の雨樋カバーが従来の角ばったものから、丸みを帯びたものに変更されていることもあって、従来より外観平滑性の高い構造となっている。外板厚は2.0mmであり、レーザー溶接と相まって2300系等を上回る車体強度を有する。1000系に比べ床面高さを30mm、屋根高さを70mm下げ、バリアフリー化と低重心化を図った。一方で床を1000系より5mm厚くし、床材も塩化ビニールからゴムに変更することで車内騒音・振動を軽減するとともに、火災時の有毒ガス発生を抑えている。
コストダウンや車種変更の容易化を目的に、各車の構造は極力共通化されている。パンタグラフ搭載スペースは全車種に2か所ずつ設けられたほか、台枠も全車共通設計で、どの車種にも車両制御装置・空気圧縮機・蓄電池を搭載できる。このため、従来先頭車床下台車間に設けていたATC制御装置を運転室内設置とした。ただし、2次車であるD17編成以降は、クモハ1200形とモハ1200形にパンタグラフを搭載する予定が現時点ではないため、これらの車種からパンタグラフ台座を省略し、製造コストの低減を図っている。
1000系の側窓はドア間が固定、連結面寄りが下降式で、1-3位側の妻面下降窓の幅を拡げるため貫通路を車体中心からオフセット配置、消火器は妻窓下の車外に設け取り出す際は窓を下げる必要があった。本系列では火災時の対応や妻構体の近郊型との共通化を考慮し、第1-第2ドア間と第3-第4ドア間を下降窓とし、貫通路は中央に配置し妻窓は廃止、消火器は室内側から取り出せるようにした。
先頭車前面のデザインは「厳めしい」と評された1000系のイメージを踏襲しつつ、フォグランプの追加や下部の三角形の装飾、前面の紺色(計画時は黒)仕上げで、先端部分一層近代的で力強い表情となっている。車体下に設置される排障器(スカート)は前面と一体感のある専用デザインのものとなり、強度も1000系の強化型(製造途中に設計変更)よりさらに向上している。この部分は鋼製となっており、紺色仕上げ面以外の部分は銀色の塗装がなされている。なお、側面先端部分には紺色のグラデーションが入れられている。
接客設備
車外の行先案内設備は、1000系以来の幕式の種別表示器とLED式の行先表示器を併用するものである。2000系では省略されていた号車表示機能が設けられており、その分表示機の横寸法が長くなった。
寒冷地での車内保温策として、乗客が任意で扉を開け閉めすることができる「半自動扉」装備を搭載している。この装備の稼動を、2000系では扉を動かすスイッチの脇に設けられた電照パネルに『ドア』の文字を表示することで告知していたが、6000系ではスイッチボタン周縁が光る方式に変更されまた、ドア『開』スイッチが押されてから7秒経つと自動的にドアが閉まるようになっている。登場当初は5秒だったが、高齢者の歩行速度や判断能力を考慮して営業運転開始前に延長された。
車内の配色は、2000系がアイボリーの内壁とベージュの床であったのに対し、本系列では白色の内壁と灰色の床が採用された。また、妻面は灰色、妻面貫通扉はステンレス素材を生かし、運転台仕切りは赤みがかった灰色で塗り分けられ、アクセントとなっている。手摺りなどの構造も大幅に簡略化され、コストの低減と内装との統一が図られている。妻面には大型の路線図が掲示されている。
座席はすべてロングシートで、ドア間は2000系の7人掛から6人掛に減らし、その分一人当たりの幅を440mmから470mmに拡げた。車端部は4人掛、440mmが踏襲されている。また、着座区分のために2000系の一部車両で試験的に装備していたバケットシートが本格的に採用されている。ただし、2000系では一般的な凹み形状であったが、本系列では座面の左右が他よりも盛り上がるという、簡略化された独特の形状となっている。
また、座面高さを2000系より35mm上げ、奥行きを25mm浅くした形状とし、併せてクッションを沈み込みの少ない硬いものとした。これは、高齢者が立ち上がる際の負担軽減や足を通路に伸ばした着席の防止を狙ったものである。座席モケットは従来より濃い青色で、外装が青主体だった計画時のものがそのまま採用されている。
2006年1月1日以後に新造される鉄道車両には改正された火災対策の条文が適用されることとなり、第14編成以降、蛍光灯カバー・天井化粧板の材質変更や貫通扉のドアキャッチャ廃止がなされた。以後の車両の蛍光灯カバーは特殊樹脂でコーティングしたガラス繊維製で、デザインも強い丸みを持ち、つり革の支持棒と一体化するという、独特のものに変更されている。
2000系からの最大の変更として、各車両に19インチ・解像度SXGAの液晶ディスプレイが計12面設置された。これは、左側画面に路線上の現在位置や駅名などの運行情報、右側画面にCM放送(東海道湾岸Nを利用して、リアルタイムで流す計画もあるほか、装置自体を各台車直近に配置することで配管を簡素化、応答性も向上させている。
2000系の特性として、制動の立ち上がり時と完全停止する際の衝動が少ないことがあげられる。微速域は空気ブレーキのみの制動となるが、速度が0となる直前に空気ブレーキが自動的に緩むようになっている。
集電装置
集電装置は東海道湾岸鉄道標準の下枠交差式パンタグラフであるWPS27Dである。
車両情報システム
車両情報システムとして、東芝製のデジタル伝送装置を搭載する。インタフェースは車両間の幹線に10Base相当のイーサネット、端末装置-機器間にRS-485を用いている。全車共通設計を図るため先頭車の中央装置を排し、各車の端末装置にその機能を分担させた。伝送速度は1000系の1kbpsから10Mbpsと大幅に向上、力行・ブレーキの編成単位での制御が可能となった。幹線と端末装置を2重系として冗長性を確保しているが、従来の機器毎の引き通し線も設けており、「ソフト・ハード双方の信頼性の実績を示すデータが蓄積できた後、伝送のみで制御するシステムに移行させる」としている。
運転席のモニタ装置は2300系などと同様のものを搭載しているものの、表示される内容は3000系よりも東日本旅客鉄道(JR東日本)のE231系に近い。画面に表示される距離は停車駅相互間の距離ではなく、走行中の路線の起点からのキロ程である。東名本線系統は境界の東京駅で、副都心線・京浜相模線系統は東名本線との分岐点の品川駅でそれぞれ切り替わる。これらの内容は、従来の形式でも表示は可能である。
冷房装置
冷房装置は集約分散式のWAU708(冷凍能力20000kcal/h)を1両につき2基搭載する。1989年の1000系からの伝統的な方式であるが、保守性を高めるため外装ケーシングの上下寸法が拡大されている。
警笛
警笛は、1000系と同じ調律のミュージックホーンが引き続き採用されている。
運用
第1編成は2005年7月19日に近畿車輛で落成し、その後第2編成以降も同社で順次製造されたが、従来の形式とは編成体系が異なるためか同年12月1日までは全編成とも長期的に試運転が行われ、営業運転には使用されなかった。
当初は湾岸本線の普通列車を1000系と1300系に統一した上で、145km/h運転を前提としたダイヤに移行して高速化がなされる計画があったが、快速電車の性能向上後に行うこととされたため一旦見送られている。
現在の運行区間は以下の通りである。
- 東名本線普通列車
(熱海 - )小田原 - 品川 - 東京 - 赤羽 - 大宮間を通し運転される。熱海 - 小田原間は早朝のみ走行。
- 副都心線・池袋線
東名本線と直通し、東名本線からは(熱海 - )品川 - 新宿 - 池袋 - 森林公園間を通し運転される。
- 京浜相模線
東名本線・副都心線・池袋線と直通し、品川 - 平塚間を通し運転される。平塚 - 小田原間には乗り入れない。
編成
全車0.5Mとなっている。
- D編成
クモハ1300-0 Mc |
モハ1200-0 M' |
モハ1300-0 M |
モハ1200-0 M' |
モハ1200-0 M' |
モハ1300-0 M |
クモハ1200-0 M'c |
関連項目
添付ファイル