【元ネタ】
Accelerator=「加速装置」「アクセル」等。
作中においては、『粒子加速器(アクセラレイター)』が由来。
【初出】
三巻
【概要】
学園都市第一位の
超能力者、通称『
一方通行』が所持する能力。
運動量・熱量・電気量などなど、あらゆる種類の力の向き(ベクトル)を観測し、
一方通行に触れたベクトルを自由に変換する。
誤解されることが多いが、彼が操作できるのは『向き(ベクトル)』、
つまり『力が作用する方向』のみであり、『力そのものの大きさや量』を操作することはできない。
ただし、力の向きを集中させたり他所から力を集めたりできるため、
結果として高い攻撃力を発揮することができる。
実際は直接皮膚に触れているわけではないが、
展開している能力の効果範囲が自身の周囲を覆う程しかないため、外見上は触れているように見えている。
このあり方から効果範囲の通称は「保護膜」。
勿論実体はないので触れることも壊すことも出来ない。
この保護膜の正確な射程は不明だが、
戦闘時に靴や衣服も含めて完全に無傷であることから、衣服より上まで展開できると考えられる。
【反射】
能力の基本的な使用法にして、一方通行を「最強」足らしめる主要因。
『反射』(ベクトルの反転)により、自身に加えられた攻撃を自動的かつ正確に180度跳ね返してしまう。
力の大小や種類を問わず本人が認可していないベクトルは全て反転し、「『反射』できる限界」は存在しない。
一方通行の特徴的な白い髪と赤い瞳もこの『反射』の弊害で、紫外線などの有害なベクトルをほぼ全て反射しているためらしい。
とはいえ万物を拒絶しているわけではなく、無意識のうちに構築されたフィルタに基づいて『反射』を行使している。
具体的には「生活に必要不可欠なもののベクトル(必要最低限の酸素、重力等)」をホワイトリスト方式でフィルタに登録し、
それ以外の全てを『反射』するといった寸法である。
そのため未知の攻撃であっても、「それ以外のベクトル」として無条件に反射可能。
『反射』に必要な演算はごく簡単で無意識下でも発動できるため、
デフォルトではこれに設定してあり、能力使用中は常に展開される。
そのため後述のように能力に制限がかかる前は就寝中でも展開され、不意打ちも完全に無効だった。
なお「ベクトルの反転」はあくまでデフォルトのため、設定し直すことで反射角を変更することも、
『反射』自体をオフにすることもできる。
【使用・応用例】
受動的な『反射』は使用法の一例に過ぎず、能動的な使用でも絶大な効果を発揮する。
作中で披露したものを一部述べるだけでも、
- 反作用を束ね、ただのパンチ・キックが無反動で倍の威力に(3巻など)
- 物体を軽く小突いて弾丸のように射出する、『超電磁砲』以上の速度での石礫飛ばし(3巻)
- 衝撃を地面や壁に伝わせ、離れた位置に攻撃(3巻)
- 身体運動の増幅、音速を超える挙動(3巻など)
- 風の操作による120Mクラスの暴風の発生(3巻)、時速数百キロでの飛行
- 空気の圧縮によるプラズマ作成(3巻)、空気を膨張させ周囲の温度をコントロール
- 地球の自転の力を利用して圧倒的な速度でコンクリート塊を投げる(13巻)
- 地面を隆起させ、大規模な地割れを起こす
- 音を収束し衝撃波を放つ、反響定位による空間把握
- 血流操作で相手を即死させる(3巻)、体内の異物を取り込まずに体外へ絞り出す
- 生体電気の操作で相手を気絶させる
- 細胞分裂の促進による負傷の治癒(8巻)、血液の操作(5巻)と合わせて致命傷も完治
- 脳の電気信号や水分の操作による洗脳や読心
- 事象の地平(ブラックホール)のような力場を発生させる
などなど、戦闘方面に限らず多岐にわたる応用が可能。
保護膜に接してさえいれば密着しておらずともベクトル操作が可能であり、
「保護膜に接触している巨大なベクトル」として、大気のベクトル(風)や地球の自転・公転すら操作可能。
感知能力としても機能するため、低周波や放射線など人の五感では認識できないベクトルや三次元空間で表現できないベクトルをも観測し、操作することができる。
電気信号なども知覚できるが、抽出できるのはあくまでベクトルの有無、つまり0と1の羅列のみで、
脳内にある記憶情報を読み取る事はできても、それらを再生する機能は存在しない。
本人曰く「CDの表面を見ただけで音楽を思い浮かべられる人間がいないのと同じ」らしい。
派手な力技だけでなく、非常に繊細かつ精密な能力行使も得意とする。
自らの脳で『
学習装置』の代わりを務め、打ち止めのウイルス削除をしたのが代表的。
この技術は、その場にあったワクチンデータを目視で把握・暗記した後、
打ち止めの脳内にある情報と照らし合わせ上書きしただけであり上記の欠点とは矛盾しない。
学園都市の暗部へと堕ちた後、意識を失った妊婦の生体電
気を読み取って胎児と母体の生体情報をモニターし、
適切な治療法を導き出すことで救った事もある。
創約12巻では地中の人工物を介して大気を操ることで降雨や落雷などを発生させ、刑務所から一歩も出ることもなく気象操作で外の世界に干渉できるほどに能力に磨きをかけている。
【魔術に対して】
魔術のベクトルは既存のベクトルとは異なるが、
ベクトルそのものは確かに存在しており、干渉が可能。
しかし、思い通りに干渉できるわけでもなく、
魔術を放った
魔術師、干渉した一方通行両者にとっても不可解な現象を起こす。
例えば
ヴォジャノーイの水の槍を『反射』した際は、水槍は斜め後方に逸れ、七色の光に分解された。
どうやら魔術的なベクトルを反射すると基本的に「斜め後方に逸れる」らしく、
ミーシャの氷の翼も斜め後方に逸れて外れている。
そのため通常の反射のように「相手に向けて跳ね返す」ということはできないものの、
魔術を逸らして防御することは一応可能。
ただし弾かれる角度が浅いため、強く切り込まれれば逸らしきれずに直撃してしまう。
『
一掃』程の威力では逸らす事も敵わなかった。
エイワスの攻撃を防げなかったのも同様の原理らしい。
また、
魔力を練りながら能力を使うことで、魔術的な力の流れを感知することも可能らしい。
新約二巻で
ラジオゾンデ要塞が学園都市に迫った際、
要塞の墜落誘導用ビーコンが
人払いで隠されている事を一方通行なりに解釈して、
街を流動する不自然な力の流れを観測し、ビーコンの位置を特定した事がある。
なお、この際魔力を練ったために超能力と魔術の競合を起こしかけている。
【本質】
その能力の本質は、『自身が観測した現象から逆算して、限りなく本物に近い推論を導き出す』事。
ベクトル制御や、それに付随する攻撃スキルは単なる付加価値でしかない。
『粒子加速器(アクセラレイター)』の名を自ら冠したのは、
無意識の内に、自身の能力の意味に気付いていたが為。
作中で
未元物質や魔術について記載した羊皮紙などの『未知の法則』と対面した際、
それを解析・再定義して『理解出来る法則』に落とし込み干渉・使用したことから、その片鱗を垣間見ることができる。
【弱点】
能力自体に目立った弱点はないが、『反射』をすり抜けたり、能力使用を封じたりすることで攻撃を通した例が幾つか存在する。
主なパターンは「能力を攻略する」方法と「
ミサカネットワークの接続を妨害する」方法の2つ。
なお、当然一方通行も把握した弱点に関しては対策を施している。
木原数多が習得している体術(のファン通称)。
『反射』は向かってくるベクトルをただ反転させているだけなので、
内側から外に逃げるベクトルを“内側に向かって『反射』してしまう”という点を突いた方法。
なお数多が完全に独力で編み出したものではなく、
木原唯一の体術をベースとしていることが明かされている。
これをおこなったのも木原数多。
能力の計算式の死角を完璧に掌握した上で、
特殊な音波を発生させるストラップで演算を妨害し、風のベクトル操作を完全に封じこめた。
曰く「プログラムコードと同じで、複雑であればあるほど計算式につけこめる隙も多くなる」との事。
ただ複雑な演算が必要な「風操作」が出来なくなるだけで、『反射』や『集中』など演算が容易なものは健在。
一方通行の能力を開発し、演算・思考パターンを完璧に把握している数多だからこその手段である。
垣根帝督が実行した方法。
反射するベクトルはホワイトリスト形式で登録されるため、
『
未元物質』で一方通行が普段「受け入れているベクトル」を変質させ、
「受け入れているベクトル」に偽装した攻撃で反射を素通りする。
とはいえ偽装攻撃のベクトルや偽装方式を認識・演算した上で、「それを排除するフィルタ」を意識的に組み直せば対応可能。
どんな超能力でも制御には演算が必要のため、
「無意識・意識的に関わらず計算が追いつかないベクトルは制御下に置けない」という点を突いた方法。
実行したのは
ミナ=メイザースで、一方通行の演算速度を超える速度でかつ人体の上限に囚われない動きで攻撃することで『反射』を実質無効化した。
ただ一方通行は光のベクトルすら演算処理が可能であり、
ミナ自身も「
ミサカネットワークと第一位の脳髄を併用しているのですから、平素であれば何の問題もないのでしょう」と評している。
世界最高峰の演算装置であると同時に意思を持つオカルトでもある、ミナだからこそ可能な芸当と言える。
御坂妹などが実行した方法。
一方通行本人はあくまで人間であるため、酸素濃度を低下させて酸欠にさせる。
ベクトル操作では物質を無から直接生み出すことは出来ないため、その点でも効果的。
だが一方通行は高速移動や風の操作などで容易く対応しており、これ単体では効果も意味もほとんどない。
エイワスの攻撃には『反射』を正面から貫通されて惨敗している。
これは完全に未知のベクトルに干渉できなかったためのようである。
新約二十二巻以降は、クリファパズル545の補助があるため、未知の魔術に対してもある程度『反射』が可能。
他にも
菱形が駆る
窮奇も、方法不明ながらも相打ちの形で『反射』を突破した。
ただしこちらは初撃で対応しており、2回目以降は無傷だった。
一方通行が
打ち止めを巡る事件で頭部に損傷を負って以降は、能力の使用そのものにも制限がかかっている。
一方通行は思考や能力発動に必要な演算のほぼ全てを
妹達の
ネットワークに任せているが、
ネットワークとの通信に用いる
演算補助デバイスのバッテリーの残量により能力使用可能時間が制限されており、
9月30日当初では15分のみしか能力を解放できなかった。
暗部に落ちてからは
グループの技術班によって改造が加えられ30分に倍増したものの、
代わりに上層部による通信ジャミング(=『一方通行』が無力化されうる)機能が仕込まれた。
これは後に、
杖にジャミング対策用の機材を仕込むことで克服されている。
この関係上、トンネルや地下施設などのミサカネットワークの電波が届かない環境では、
アンテナを自作するなどして対処しない限り、能力を使用できない。
駒場利徳は
攪乱の羽を利用することでこの弱点を突き、一時は『一方通行』を突破した。
【翼】
『0930』事件において、演算能力を失ったまま行われた数多との戦闘をきっかけに、
既存のものとは違った非科学的法則に基づくベクトル制御で
AIM拡散力場を操作できるようになった。
木原数多及び地の文によると、
既存のルールを全て捨て、可能と不可能を再設定し、
目の前にある条件をリスト化し、その壁を取り払う。
それにより新たな制御領域の拡大(クリアランス)を取得、
自分だけの現実に数値を入力し、通信手段を確立...という事らしい。
この際
アレイスターは「ベクトル制御装置」に言及しており、この使い方まで予想通りだった節がある。
この際、
- 失ったはずの言語能力や歩行能力を補う。
- 正体不明の黒い噴射の翼が生える。
- 至近距離での手榴弾爆発を防ぐ(反射とは別)。
- 不可視の力によって木原を音速の数十倍の速さで吹き飛ばす。
- ミーシャやエイワスのように、言葉にノイズが混じる。
- インデックス曰く聖人でも纏めきれるか分からないほどの力を行使。
- かなりの負担がかかり、翼を意識的に操作することは不可能。発動時の記憶は残るもののほぼ本能のままに発動する。
といった現象が起きている。
後に
垣根との戦闘で
黄泉川が倒れ、一方通行が殺意を露わにした際にも黒い翼が顕現し、
- 正体不明のベクトルを操り、離れた地点にいる垣根帝督を地面に叩き伏せる。
- 黒翼そのものによる打撃、及びそれを裂いて出現させた複数の鋭い黒い羽を放つ攻撃(本人の強い意志で途中停止可能)。
等を新たに披露した。
外伝『とある科学の一方通行』では、
檮杌(イサク)が敗北し、学園都市を吹き飛ばす程の爆発が起きそうになった時にも出現し、
その爆発のエネルギーを宇宙にまで打ち上げて学園都市を救った。
作中の時系列的には、この時が初めての黒い翼の出現にあたる。
第三次世界大戦で魔術を行使し打ち止めを救った際には、
墨のように黒い翼は純白になり、頭上には同じ色の輪状の物体が現れるといった
天使的な造形に変化している。
地の文曰く「この現実世界に特異な力を吐き出す源となっていた、精神の変異」とあり、心境の変化に伴って『
自分だけの現実』が変容したためである可能性が高い。
出力は『黒い翼』を遥かに上回り、
一瞬で3000m〜5000m上空へ急上昇し、ユーラシア大陸全土を消滅させるほどの
テレズマを真っ向から相殺するほどの力を見せている。
『黒い翼』『白い翼』は共に現時点では正体不明の力。
なおエイワス曰く、「『黒い翼』は
オシリスの時代の力である」とのこと。
新約六巻において、垣根帝督はこの翼を「論理の範疇から飛び出した」「理論で説明できない翼」と評しており、
「説明できない何かは説明できない浪費を大量に促す」と分析している(翼の出現期間が極端に短いというデータからかと思われる)。
実際に「何か」を消費しているのか、しているとして「何を」消費しているのかは不明。
超能力の『噴出点』を設けて他者の能力を借用する
恋査は、『一方通行』をコピーすることで黒翼を発現。
その上で「白翼の出し方が解らない」と発言していることから、どうやら『白い翼』と『黒い翼』は別種の能力であるらしい。
地の文によれば白翼は一方通行が「何かを手にした結果」到達した能力であるとのこと。
後の恋査と一方通行では「何かを守る」という心境が共通しており、これがキーとなっている可能性が高い。
また、「翼」の正体が何であれ、能力コピーで使用できる以上は「翼」もあくまで超能力『一方通行』の一部ということらしい。
『翼』は一方通行の心理状態によってその色を変化させるようで、白や黒ではない色に染まる可能性もある。
フロイライン=クロイトゥーネによって打ち止めが殺害、捕食されたと勘違いした際には「グロテスクな何かに染め上げられた翼」を現出させかけた。
更に新約二十ニ巻にて、
クリファパズル545の協力で〈深淵〉を踏破し叡智を得たことで、
エイワス同様の『透き通るような青ざめたプラチナの翼』を発現させた。
世界中に満ちる見えない力を槍の形に収束しての攻撃など、不完全な魔神とも痛み分けに持ち込めるほどの力を得た。
【プランとの関係】
アレイスターの「
プラン」の核の一部でもあり、アレイスターには「第一候補(メインプラン)」と位置付けられている。
『0930』事件で一方通行が黒翼を発現させた際、
アレイスターが「ベクトル制御装置への入力を終えた」と語っているため、
翼も「プラン」に何かしらの形で必要なものと思われる。
学園都市第二位・垣根帝督が操る「第二候補(スペアプラン)」とされる
未元物質とは似た本質の能力らしい。
地の文では
未元物質が「こことは違う世界における無機」「神が住む天界の片鱗を振るう者」とであるのに対し、
一方通行が「こことは違う世界における有機」「神にも等しい力の片鱗を振るう者」とされている。
【余談】
一方通行が熱を『反射』した場面(五巻など)について、しばしば「熱量はスカラーである」という指摘がされるが、
火炎攻撃や冷却攻撃等含む「熱量の移動」はベクトルであるため、操作できても能力的に矛盾しておらず、またそれ以外のことをした事はない。
同様に電気量もスカラー量ではあるが、電磁場はベクトル場であるため、作中の描写に無理はない。
また、『
空間移動』は「11次元空間の『ベクトル』」を用いて物体を移動させるため、これによる攻撃も『反射』可能。
なお一方通行自身の経験として、空間移動を反射した際に「奇妙な現象が起こる」事が語られているが、詳細は不明。
精神系も同様で、何らかの媒体を介して干渉するものは無効化される。
例として『
心理掌握』は対象の脳の水分操作を原理としていたため、
一方通行も制御できるので効かなかった(ゲーム『とある魔術の電脳戦機』での描写による)。
最終更新:2025年04月03日 22:12