スプルーアンスは、軽くシャワーを浴びてさっぱりした後、自室で軍服に着替えた。
軍服に着替えてから、彼は作戦室に向かった。
作戦室に入ると、そこには彼の参謀長であるデイビス少将、恰幅のいい体型の
スミス海兵中将、顔が皺だらけの老人のようなミッチャー中将が席に座っていた。
「ターナーはまだ来てないか。」
「もうそろそろ来るかと思われます。」
デイビス少将はそう答えた。そこへコンコンとノックする音が聞こえた。扉が
開かれ、眼鏡をかけた将官が入ってきた。
「やあ、レイ、待たせたな。おっと、ここでは敬語でしたな。失礼」
ターナー中将は、そう苦笑しながら言った。スプルーアンスとターナーは、アナポリス
時代の同期生である。仲は昔からとても良く、日本海軍で言う「俺、貴様」の関係である。
「ハハハ、そんなことはいいさ。今日はトップ会談で少ない人数しかおらんからな。
そんなことより、今日は珍しく酒を飲んでいないな。」
「そりゃそうさ。俺は昔から酒は大好きだが、飲みたくない時は飲まんさ。」
「そうか、まあ座れよ。」
スプルーアンスに施されて、ターナーはミッチャーの隣に着席した。
ターナーは元来酒が大好きで、勤務中の時にも時折飲んでいるときがある。
たまにその酒好きが災いして、酒癖が悪くなるときがあり、あちらこちらで
癇癪を爆発させていることから、将兵はかげで「テリブル、鬼のターナー」
とあだ名をつけられている。
軍服に着替えてから、彼は作戦室に向かった。
作戦室に入ると、そこには彼の参謀長であるデイビス少将、恰幅のいい体型の
スミス海兵中将、顔が皺だらけの老人のようなミッチャー中将が席に座っていた。
「ターナーはまだ来てないか。」
「もうそろそろ来るかと思われます。」
デイビス少将はそう答えた。そこへコンコンとノックする音が聞こえた。扉が
開かれ、眼鏡をかけた将官が入ってきた。
「やあ、レイ、待たせたな。おっと、ここでは敬語でしたな。失礼」
ターナー中将は、そう苦笑しながら言った。スプルーアンスとターナーは、アナポリス
時代の同期生である。仲は昔からとても良く、日本海軍で言う「俺、貴様」の関係である。
「ハハハ、そんなことはいいさ。今日はトップ会談で少ない人数しかおらんからな。
そんなことより、今日は珍しく酒を飲んでいないな。」
「そりゃそうさ。俺は昔から酒は大好きだが、飲みたくない時は飲まんさ。」
「そうか、まあ座れよ。」
スプルーアンスに施されて、ターナーはミッチャーの隣に着席した。
ターナーは元来酒が大好きで、勤務中の時にも時折飲んでいるときがある。
たまにその酒好きが災いして、酒癖が悪くなるときがあり、あちらこちらで
癇癪を爆発させていることから、将兵はかげで「テリブル、鬼のターナー」
とあだ名をつけられている。
そのターナーが口を開いた。
「それにしても、今度のマリアナ侵攻部隊はまさに大軍そのものだな。俺が見る
限り、合衆国始まって以来だ。」
その言葉に、一同が頷いた。
「私が指揮する機動部隊だけでも、4個空母郡あります。この勢力なら、オザワの
機動部隊と対等以上に戦えます。」
ミッチャーが顎をなでながら言う。
「空母はTF58だけではない。ターナー提督指揮下にある護衛空母部隊もあります。
それらも含めれば、空母数は大小合わせて25隻にものぼる。」
「エニウェトクにいる北部攻撃郡もあわせれば、艦船数は800隻にものぼります。
この大部隊で行けば、東京の占領も確実ですな。」
スミス中将が冗談を交えながらそう言う。その言葉に一同は笑った。
「まあ、なにも東京占領は出来んと思うが、マリアナ制圧はこれで早く終わると思うな。
私の予想では、2ヶ月もすればマリアナは制圧できるでしょう。」
スミス中将は胸をはり、自身たっぷりにそう言った。
「なにせ、頼れる大艦隊がついておるのですから。」
「うむ。わが第5艦隊は、総力を挙げて君たちを支援しよう。」
そう言ったスプルーアンスは、やがて本題に入った。
「さて、マリアナ侵攻の手順だが、上陸予定は6月の中旬を予定している。
第1目標はサイパンだ。」
スプルーアンスは、ふと絃窓に視線を移した。南の方からは、入道雲がゆっくりと
迫ってきていた。その姿は、幾分大きくなっているように思えた。
(これは一嵐来そうだな)
彼はそう思いつつも、話を続けた。
「それにしても、今度のマリアナ侵攻部隊はまさに大軍そのものだな。俺が見る
限り、合衆国始まって以来だ。」
その言葉に、一同が頷いた。
「私が指揮する機動部隊だけでも、4個空母郡あります。この勢力なら、オザワの
機動部隊と対等以上に戦えます。」
ミッチャーが顎をなでながら言う。
「空母はTF58だけではない。ターナー提督指揮下にある護衛空母部隊もあります。
それらも含めれば、空母数は大小合わせて25隻にものぼる。」
「エニウェトクにいる北部攻撃郡もあわせれば、艦船数は800隻にものぼります。
この大部隊で行けば、東京の占領も確実ですな。」
スミス中将が冗談を交えながらそう言う。その言葉に一同は笑った。
「まあ、なにも東京占領は出来んと思うが、マリアナ制圧はこれで早く終わると思うな。
私の予想では、2ヶ月もすればマリアナは制圧できるでしょう。」
スミス中将は胸をはり、自身たっぷりにそう言った。
「なにせ、頼れる大艦隊がついておるのですから。」
「うむ。わが第5艦隊は、総力を挙げて君たちを支援しよう。」
そう言ったスプルーアンスは、やがて本題に入った。
「さて、マリアナ侵攻の手順だが、上陸予定は6月の中旬を予定している。
第1目標はサイパンだ。」
スプルーアンスは、ふと絃窓に視線を移した。南の方からは、入道雲がゆっくりと
迫ってきていた。その姿は、幾分大きくなっているように思えた。
(これは一嵐来そうだな)
彼はそう思いつつも、話を続けた。
大陸暦1089年 5月 ヴァルキュレア王国
「畜生、バーマント公国アホ共め。」
ヴァルキュレア王国第3騎兵旅団の旅団長であるローグ・スプレル将軍
は、目の前で対峙する軍勢をそう罵って睨み付けた。
「宣戦布告もしないでいきなり大侵攻とは、卑怯者め。」
「畜生、バーマント公国アホ共め。」
ヴァルキュレア王国第3騎兵旅団の旅団長であるローグ・スプレル将軍
は、目の前で対峙する軍勢をそう罵って睨み付けた。
「宣戦布告もしないでいきなり大侵攻とは、卑怯者め。」
ヴァルキュレア王国は、2年前、東の大国バーマント公国の一方的な侵攻
を受けた。戦争原因は、ヴァルキュレアを植民地にするため。
あまりにも唐突に行われた戦争は、ヴァルレキュア国民を恐怖のどん底に叩き落した。
戦争開始以来、ヴァルレキュア軍は開戦2週間で軍の半数にあたる20万の兵を失った。
それ以来、劣勢のヴァルレキュア軍は奮闘の甲斐あってなんとか軍の崩壊を免れていた。
しかし、ヴァルレキュア軍は歩兵主体なのに対して、バーマント軍は、時速300キロ
も出る小型飛空挺やワイバーンロードなどで陸空立体攻撃仕掛けてくる。
歩兵のみなら五分の戦いに持ち込めるヴァルレキュア軍も、航空部隊出てこられたらお手上げだった。
また、海上交通路も、バーマント軍の巧みな破壊戦術によって壊滅状態に陥っている。
もはや戦局挽回することは難しくなっていた。
を受けた。戦争原因は、ヴァルキュレアを植民地にするため。
あまりにも唐突に行われた戦争は、ヴァルレキュア国民を恐怖のどん底に叩き落した。
戦争開始以来、ヴァルレキュア軍は開戦2週間で軍の半数にあたる20万の兵を失った。
それ以来、劣勢のヴァルレキュア軍は奮闘の甲斐あってなんとか軍の崩壊を免れていた。
しかし、ヴァルレキュア軍は歩兵主体なのに対して、バーマント軍は、時速300キロ
も出る小型飛空挺やワイバーンロードなどで陸空立体攻撃仕掛けてくる。
歩兵のみなら五分の戦いに持ち込めるヴァルレキュア軍も、航空部隊出てこられたらお手上げだった。
また、海上交通路も、バーマント軍の巧みな破壊戦術によって壊滅状態に陥っている。
もはや戦局挽回することは難しくなっていた。
この日は、第3騎兵旅団の上空には飛空挺やワイバーンロードはいない。だが、
3個師団の敵軍が迫っていた。数は第3騎兵旅団3000に対し、20000
だが、勇猛果敢なスプレル将軍は、これに立ち向かおうとしていた。
「バーマント軍なぞに、わが第3騎兵旅団はひけは取らん!すぐに蹴散らしてくれるわ!」
彼は鼻息を荒くしながらそうまくし立てた。
そこへ、馬周り兼参謀役の若い女性騎士、ジェネッサ・ロックウェルが、浮かない表情で声をかけてきた。
「将軍閣下、大変申し上げにくいのですが。」
「なんだ?」
「我々は確かに王国で精鋭と謡われる部隊です。ですがいくら精鋭部隊といえども、あの大軍には
とても太刀打ちできないのでは?」
彼女は冷静な表情そう言ってきた。
「それはわかっておる。だが、やつらは後方に3万の新手を用意している。撤退中の第22騎兵師団を
助けるためには、ここで敵に大損害を与えて進撃を遅らせるしかない。」
彼の決意は固かった。彼女はさらに言葉を続けようとしたが、これ以上は無理だろうと
思い、口をつぐんだ。
「ようし!全軍出撃!」
スプレル将軍は、大音声を上げてそう叫ぶと、部下たちも高々と雄たけびを上げた。
3個師団の敵軍が迫っていた。数は第3騎兵旅団3000に対し、20000
だが、勇猛果敢なスプレル将軍は、これに立ち向かおうとしていた。
「バーマント軍なぞに、わが第3騎兵旅団はひけは取らん!すぐに蹴散らしてくれるわ!」
彼は鼻息を荒くしながらそうまくし立てた。
そこへ、馬周り兼参謀役の若い女性騎士、ジェネッサ・ロックウェルが、浮かない表情で声をかけてきた。
「将軍閣下、大変申し上げにくいのですが。」
「なんだ?」
「我々は確かに王国で精鋭と謡われる部隊です。ですがいくら精鋭部隊といえども、あの大軍には
とても太刀打ちできないのでは?」
彼女は冷静な表情そう言ってきた。
「それはわかっておる。だが、やつらは後方に3万の新手を用意している。撤退中の第22騎兵師団を
助けるためには、ここで敵に大損害を与えて進撃を遅らせるしかない。」
彼の決意は固かった。彼女はさらに言葉を続けようとしたが、これ以上は無理だろうと
思い、口をつぐんだ。
「ようし!全軍出撃!」
スプレル将軍は、大音声を上げてそう叫ぶと、部下たちも高々と雄たけびを上げた。
バーマント軍第12騎兵師団に所属する騎士、フランスリング・マールズは、
師団の前衛中隊を率いて、突進してくる第3騎兵旅団に向かった。
先頭の馬に乗った指揮官らしき人物が、大剣を振りかざして向かってくる。
「あいつが指揮官だ!無謀にも大将直々に先頭とは、ありがたい。先頭に攻撃を手中しろ!」
彼はそう指示を飛ばし、先頭の小隊を指揮官に向かわせた。
小隊がその指揮官を包み込んだと思ったその時、2、3人の味方兵が血しぶきをあげて吹き飛ばされた。
さらに残りの部下も、指揮官の腕前にたじろいだところを突っ込んできた騎兵にやられた。
串刺しになったり、首を叩き落された味方兵の姿が見えたが、一瞬のうちに敵の軍勢に呑まれて見えなくなった。
「相手は手ごわいぞ!全部隊突っ込め!」
彼は次の指示を飛ばし、中隊全体が敵との交戦に入った。だが、猛進する敵を食い止めることは出来なかった。
「ぐわ!やられた!」「バーマントの犬!しねえええ!!」「来るな畜生ー!!」
たちまち、あたりは剣と剣、体と体がぶつかり合う乱戦と化した。
師団の前衛中隊を率いて、突進してくる第3騎兵旅団に向かった。
先頭の馬に乗った指揮官らしき人物が、大剣を振りかざして向かってくる。
「あいつが指揮官だ!無謀にも大将直々に先頭とは、ありがたい。先頭に攻撃を手中しろ!」
彼はそう指示を飛ばし、先頭の小隊を指揮官に向かわせた。
小隊がその指揮官を包み込んだと思ったその時、2、3人の味方兵が血しぶきをあげて吹き飛ばされた。
さらに残りの部下も、指揮官の腕前にたじろいだところを突っ込んできた騎兵にやられた。
串刺しになったり、首を叩き落された味方兵の姿が見えたが、一瞬のうちに敵の軍勢に呑まれて見えなくなった。
「相手は手ごわいぞ!全部隊突っ込め!」
彼は次の指示を飛ばし、中隊全体が敵との交戦に入った。だが、猛進する敵を食い止めることは出来なかった。
「ぐわ!やられた!」「バーマントの犬!しねえええ!!」「来るな畜生ー!!」
たちまち、あたりは剣と剣、体と体がぶつかり合う乱戦と化した。
第3騎兵旅団は、精鋭の名の通り、バーマント軍を圧倒した。だが、やはり精鋭といえども
数にはかなわなかった。第3騎兵旅団は、バーマント軍相手に力戦敢闘し、2300人を戦死させ、3200人
を負傷させた。だが、敵3個師団も精鋭部隊であった。第3騎兵旅団は包囲され、猛攻を受けてしまった。
結果、3000人中戦死者2700人という大損害を受けて壊滅してしまった。
包囲網脱出の際、スプレル将軍は戦死してしまった。これで第3騎兵旅団は作戦地図から
消えてしまったのである。
数にはかなわなかった。第3騎兵旅団は、バーマント軍相手に力戦敢闘し、2300人を戦死させ、3200人
を負傷させた。だが、敵3個師団も精鋭部隊であった。第3騎兵旅団は包囲され、猛攻を受けてしまった。
結果、3000人中戦死者2700人という大損害を受けて壊滅してしまった。
包囲網脱出の際、スプレル将軍は戦死してしまった。これで第3騎兵旅団は作戦地図から
消えてしまったのである。
参謀兼馬周りであったジェネッサ・ロックウェルは途方にくれた表情で歩いていた。
生き残りはバラバラになってしまい、彼女は一人で退却していた。
「将軍閣下・・・・・いい人だったのに・・・・・」
彼女は、金髪の長髪をかきながらそう呟いた。2年前、20歳のころに第3騎兵旅団に入隊した彼女は
スプレル将軍に才能を見込まれ、わずか22歳という若さで参謀けんに任じられた。
スプレル将軍は、彼女によくしてくれた。恋人で悩んでいたときも、彼は的確なアドバイスをしてくれた。
どんな時もよくしてくれた人が、死んでしまった。
「人の死は・・・・・はかないものなのね。」
彼女は再びそう呟いた。もはや彼女にとって王国は戦争に負けると思っていた。近頃、魔道師達が何かを
召喚しようとしている、という噂が立っている。彼女はデタラメだと思い、気にしてなかった。
生き残りはバラバラになってしまい、彼女は一人で退却していた。
「将軍閣下・・・・・いい人だったのに・・・・・」
彼女は、金髪の長髪をかきながらそう呟いた。2年前、20歳のころに第3騎兵旅団に入隊した彼女は
スプレル将軍に才能を見込まれ、わずか22歳という若さで参謀けんに任じられた。
スプレル将軍は、彼女によくしてくれた。恋人で悩んでいたときも、彼は的確なアドバイスをしてくれた。
どんな時もよくしてくれた人が、死んでしまった。
「人の死は・・・・・はかないものなのね。」
彼女は再びそう呟いた。もはや彼女にとって王国は戦争に負けると思っていた。近頃、魔道師達が何かを
召喚しようとしている、という噂が立っている。彼女はデタラメだと思い、気にしてなかった。