自衛隊がファンタジー世界に召喚されますた@創作発表板・分家

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大陸暦1098年 7月4日 バーマント公国サイフェルバン
サイフェルバンの朝の静寂は、突如来襲してきた第58任務部隊の艦載機によって打ち破られた。
7時10分、第58任務部隊第3群、第1群から発艦してきた184機の攻撃隊はサイフェルバン
に到達、サイフェルバン南10キロと、北20キロの所にある飛行場を爆撃した。
飛行場は瞬く間に壊滅し、飛空挺120機が地上で撃破されてしまった。
7時40分、第1次攻撃隊と入れ替わるように、今度は第2群、第4群から発艦した第2次攻撃隊
200機が来襲。第1次攻撃隊は郊外の飛行場、軍事施設を狙ったのに対し、第2次攻撃隊は
サイフェルバン市内の総司令部や、港に停泊するバーマント海軍の艦艇を狙った。
目立つ建物である総司令部は真っ先に破壊され、港に係留してあった木造の破壊船12隻が撃沈
され、鋼鉄製の戦列艦3隻が爆弾を食らって大破した。
続いて第1、第3群から第3次攻撃隊120機が来襲し、今度は鉄道や海岸要塞を爆撃した。
午前9時には第4次攻撃隊200機が、再び港湾施設を爆撃し、半数の倉庫や建物などが爆破
され、黒煙を大きくたなびかせた。
午後1時には第5次攻撃隊220機が来襲し、海岸要塞や、サイフェルバン市内を銃爆撃し、またもや
甚大な損害を負わせた。

午後2時50分 サイフェルバン沖東180マイル地点
攻撃隊の最後の機が戻ってきた。そのヘルダイバーは、レキシントンの艦尾方向から速度を緩めつつ、
ゆっくりと迫ってきた。やがて飛行甲板に足をつけ、着艦フックにかけられたワイヤーがスピードを
急激に落とし、そのヘルダイバーは停止した。
艦橋上のミッチャー中将は、そのヘルダイバーの胴体を見て、顔をしかめた。
「被弾しているな。」
よく見ると、ヘルダイバーの胴体にいくつかの傷がついている。それは、対空砲火を浴びたときに出来る
傷である。機銃弾のような弾痕が4つあった。
「パイロットの報告では、バーマント側は対空機銃で応戦してきたとのことです。これまでの統計で、
F6Fが1機、SB2Cが3機喪失。F6Fが12機、SB2Cが24機、TBFが6機被弾しています。
修理不能機は出ていません。」
「そうか。」
バーク参謀長の説明に、ミッチャーはそう呟いた。今回の空襲で、バーマント側は初めて機銃で応戦してきた。
既にバーマントが、銃器などの新兵器の開発は終えているとヴァルレキュア側から伝えられているからある程度
予想は出来た。
米側では、せいぜい小銃が配備された程度で、機関銃などの類はまだ配備されていない。配備されるにしても
少数であろうと考えていた。
だが、バーマント側の機銃配備は予想よりも早かった。そして飛行場やサイフェルバン市街などには、多数の
発砲煙が見えたと、パイロットは言っている。
「敵にも対抗手段が出来たか・・・・・・こいつは少し厄介になってきたな。」
ミッチャーは眉をひそめた。

「しかし、被撃墜数は若干です。敵が機銃弾を開発したからと言って、威力はそれほどでもないようです。」
バークが言う。
「わが艦載機は12.7ミリ機銃弾に充分に耐えられるように設計されています。被弾機を見たところ、敵の
機銃弾の口径は、明らかに12.7ミリと同等か、それに劣るように思えます。これは被弾によって生じる
修理不能機が未だに出ていないことから見て明らかです。」
米軍機の防御能力は、ことさら頑丈なことで広く知られている。特にグラマン社製の艦上機であるF6Fや、
TBFアベンジャーは相当頑丈であり、20ミリ機銃で撃たれてもすぐには火を吹くことが無い。
それに、鉄のぼろになるようまで撃たれても、パイロットや主な機器は無事で、見事に母艦に戻ってきた事も
何度もある。この事から、パイロット連中はグラマン社を「グラマン鉄工所」と呼んでいる。
その頑丈さは、ここ異世界のサイフェルバン空襲でも充分に発揮されたのである。
「おそらく、敵はこれでわがほうの飛行機が、配備されたばかりの機銃でばたばた落とせると確信していたろう。
しかし、今頃は撃墜した数が極端に少なく、自軍の損害の多さに途方にくれているだろうな。」
ミッチャーは微笑みながらそう言った。

午後3時、サイフェルバン
町の光景はすっかり変わっていた。総司令部の城は完膚なきまでに叩き潰されている。町のあちらこちらから黒煙が噴出しており、
まるでサイフェルバン全体が地獄の釜に変わったように錯覚させる。
総司令部より900メートル西に離れたところにある地下壕でバリッチ・ローグレル騎士元帥は、朝から幕僚と共にここに篭り、
米艦載機の空襲をじっと耐えていた。
地下壕にいる時でも、米艦載機の激しさは用意に想像できた。一時などは至近弾が豪の付近で炸裂し、激しい衝撃と共に彼らは
床に投げ出された。
やがて爆撃の音が無くなり、彼らは意を決して外に出てみたのである。
「新兵器の機関銃を配備しても、敵には太刀打ちできんかったのか・・・・・・・」
参謀長のマヌエル・ジュレイ中将が失望した口調で呟いた。サイフェルバン市街地や飛行場には、2週間前に大量に届いた
機関銃が配備されていた。将兵は配備早々、訓練に励み、錬度は格段に向上しつつあった。
それをもってしても、白星の悪魔には太刀打ちできなかったのである。
「まさか、ここサイフェルバンに敵軍が来るとは。後方基地に展開させていた2個空中騎士団をクロイッチに
配備させた今、あとは4個空中騎士団しかない。敵に嵌められた。」

3日午前8時。サイフェルバンの総司令部には、クロイッチ、ララスクリスの各司令部から悲痛な魔法通信が次々に
入ってきていた。
「こちらクロイッチ。海岸要塞壊滅せり。第64歩兵師団は壊滅せり。」
「こちらララスクリス。敵軍戦列艦により海岸要塞は壊滅。第39歩兵師団は60%の戦力を喪失。」
アメリカ艦隊から派遣されてきた砲撃部隊は、両都市の海岸要塞を砲撃で叩き潰したのである。
クロイッチは25分、ララスクリスは20分という信じられないような短時間で壊滅したのである。明らかに
敵はララスクリスとクロイッチを狙っている。総司令部ではその考えが、ついに確信となった。
もし、シュングリル侵攻の足がかりを失えば、バーマントの今後のスケジュールは大きく遅れることになる。
総司令部は、サイフェルバンに駐留している7個空中騎士団のうち、2個空中騎士団をクロイッチ後方の
飛行場に派遣し、敵上陸軍にぶつけようと考えた。

3日午後1時、第12、第14空中騎士団160機が後方のガスエル基地から発進していった。
そしてサイフェルバンより300キロ離れたウッドル軍港にいる最新鋭戦列艦6隻と、高速艦6隻をサイフェルバン
に呼び寄せ、好機を見て夜間に突入させようと考えた。
「まずは、最善を尽くして、ララスクリス、クロイッチの敵軍上陸を阻止せねば。」
しかし、4日午前6時、当直の参謀は驚くべき情報を通信参謀から渡された。その魔法通信は、岩島に駐留する
第23海竜情報収集隊からの緊急文であった。
「敵大輸送船団は、クロイッチより北東にあり。敵艦隊の進路は北。敵軍の目標はララスクリス、クロイッチにあらず」
通信参謀は急いでローグレル騎士元帥にその報告を伝えた。
この情報はサイフェルバン中を震撼させた。敵はここを狙っている。それも、バーマントにとってかけがえの無い重要拠点
であり、大陸一の良港と呼ばれたこのサイフェルバンに。
ローグレル騎士元帥はすぐさま迎撃準備を各部隊に伝えた。しかし、わずか1時間後に、米艦載機は姿を現したのである。

彼らの元に伝令兵が紙を持ってきた。通信参謀はそれをしばらく見続け、ローグレル騎士元帥に報告した。
「閣下、暫定の損害報告ができました。損害は戦死8400、負傷3万500、海岸要塞の30パーセントが喪失、飛空挺
120機が地上撃破されました。それに海軍の重武装戦列艦3隻、破壊船30隻が沈没、着低。港湾施設の45パーセントが
破壊されました。」

「そんなにか!?」
ローグレルはぎょっとなった表情で彼に向いた。その表情は青白く染まっていた。
「はい。今は暫定報告でありますから、今後も増える可能性はあります。」
「・・・・・・・・・・・・」
あまりの被害の大きさに、ローグレルは絶句した。今サイフェルバンには18万の地上軍がいる。
その4万余りが満足に戦わないうちに作戦地図から姿を消したのである。
それに期待されていた新型戦列艦や、通商破壊に大きな功績を残した破壊船も。
製油所の被害が少ないのは不幸中の幸いであろう。、
(俺が貴族から軍人になったのは、ヴァルレキュアの軍を叩き潰して功績を作り、
今後のライバル貴族に対して発言権を増すためだったのだ)
彼はすっかり変わり果てたサイフェルバンを見回した。港湾施設は半数が破壊され、
それ一つ一つが粗大ごみの集積場を思い浮かべる。軍事都市として発展した町はどこもかしこも黒煙が吹き上がっており、
それに慌しく対応している将兵の姿が見て取れた。
(それが、こんな大失態をやらかすとは。空中騎士団を割かなければ良かった。今不用意に動かせば、敵に悟られて切り札の
空中騎士団まで失ってしまう。おのれ、白星の悪魔め!)
彼は心の中で米艦載機を呪った。いつしか、米軍機が飛び去っていった洋上を、物凄い目つきで睨んでいた。

7月5日 午前5時
うっすらと明けてきた朝。サイフェルバン沖は、無数の輸送船団で覆い尽くされていた。
数は400隻は下らない。
「今頃、バーマントの奴らは度肝を抜かれているだろうな。」
ロッキー・マウント艦上で、上陸軍総司令官のホーランド・スミス中将はニヤリと笑みを浮かべた。
「恐らくそうだろうな。リバティ型輸送船でも、奴らの大型帆船よりでかい。
それが何百隻と沖合いにいるんだ。驚かんほうが不思議だろう。」
傍らにいるターナー中将が当然だ、と言わんばかりの表情で答える。
「それにしても、久しぶりの上陸作戦だ。リッチ、君はどう思う。スムーズに行くと思うか?」
「それは分からんな。だが、少なくともタラワ戦のような混乱ぶりは見せんと思う。
敵兵は小銃を装備しているらしいが、敵さんが海岸で小銃を撃つ前に、海岸要塞ごと艦砲射撃に
吹っ飛ばされるだろう。」
「そうだといいな。」
スミスはうんうんと頷いた。午前5時10分、輸送船で待機している将兵に上陸前恒例のステーキが出された。
米兵達は一切の迷いを断ち切るかのごとく、これをぺろりと平らげる。
午前5時30分、上陸用舟艇への兵員の以上が始まった。輸送船の舷側に接舷した舟艇に、
海兵隊員が縄梯子を使って降りていく。
時折、足を滑らせて群衆の頭に落ちる兵員がいる。その兵士には、
「馬鹿野朗!どこ見てやがる!!」
「貴様、酔っ払ってるのか?」
「臭いケツをこすりつけんじゃねえ!」
などと、あちらこちらから罵声が浴びせられる。軍曹や士官の上に落ちた兵はさらに容赦ない罵声か、
鉄拳制裁を浴びせられた。
そうこうしているうちに、第1波上陸部隊である8000名の将兵が順調に乗り込み、
午前6時には全員の乗り込みが終わった。
午前6時10分、戦艦7隻、巡洋艦6隻、駆逐艦24隻が、サイフェルバンの海岸に艦砲射撃を行った。
海岸要塞は、前日の空襲で傷ついていたが、いまだに健在であった。そこへ、8000メートルまで
近づいた砲撃部隊の艦砲射撃を受けた。
午前7時、ターナー中将は上陸開始を指示、この命令を機に無数のLVTが、一斉に海岸に向けて動き始めた。

第4海兵師団第23海兵連隊第1大隊B中隊に属するウィリアム・アービン2等兵は、やや青ざめた
表情で下にうつむいていた。
「どうしたウィリアム?」
同僚であるギリアム・オールドウェル2等兵が聞いてきた。
「船酔いでもしたか?」
「いや、ちょっと緊張してな。ギリアム、お前、怖くないか?」
「俺か?もちろん怖いさ。でも、そんなに心配することはないさ。現世界のジャップと違って、
相手はつい最近まで剣や弓を振り回ししていた連中だ。いくら小銃を装備してようが、
現代戦では俺達にかなうものなんかいねえさ。」
と、そこへ波が艇内に降りかかってきた。何人かがまともにかかって罵声を上げる。
上陸用舟艇は天蓋がなく、高さも低いため、航行すると波がどんどん入ってくる。
排水機構がついているから沈みはしないものの、中の将兵は全員が濡れ鼠となってしまう。
「そう・・・だな。」
「ああそうさ。なんたって、俺達はマリーンだからよ。」
ギリアムがそう言って、笑いながら腕をさすった。ウィリアムは少しばかり緊張が解けたような気がした。
上陸用舟艇は相変わらず揺れている。誰かが船酔いの余り、胃のものを吐き出す。
「あと2マイル!」
舟艇を操縦する兵士が海岸までの距離を言う。時速数ノットというスピードがひどく遅く感じる。
畜生、もっと早く進まんのか。
ウィリアムは舟艇のスピードの遅さにやや腹を立てた。
誰もが押し黙っている。あたりは舟艇のエンジン音と波が切り裂かれる音、艦砲射撃を行う艦船の発砲音、
砲弾が通過する音、爆発音が響くが、人の声は全く聞き取れなかった。
「あと1マイル!」
操縦兵の声が聞こえた。一応距離は縮まってるんだな。彼はふとそう思った。

そしてそれからしばらくたった時、
舟艇が急に何かに乗り上げた。海岸だ。海岸についにのし上げたのだ。
「開けー!」
その号令と共に前の開閉扉が倒れた。ドスン、という音と共に、前列の兵が走って進む。
「行け行け行け行け!」
先に外に出た下士官が、手を振りながら兵達を施す。ウィリアムは舟艇から出て、
まず完膚なきまでに叩き潰された大きな要塞が目に留まった。爆炎に撫でられた後があちこちにあり、
ところによっては大きく抉れている。
原型をとどめない戦死者の死体も散乱しており、凄惨さを極めた。綺麗な死体もあれば、
四肢がちぎれた物、首が無くなっているもの体の中身が出ているものなど、死体の見本市のようである。
「うっ、うげえ。」
側にいた別の同僚が思わずうずくまって吐いた。ウィリアムもつられて吐きそうになるが、なんとか耐えた。
あたりには硝煙の匂いと死臭が充満していた。これが戦場だ。彼はそう思った。
と、その時、
ダダダダダダダダ!という射撃音が響いた。海兵隊員の何人かが悲鳴を上げて倒れた。
「敵だ!敵が生きているぞ!!」
彼らは一斉に砂浜に伏せた。銃弾の飛び去ってくヒューンという音が頭のすぐ側でなった。頭を上げたら撃たれる。
彼は思わずぞっとなった。その時、青白い雷が側を通った、と思いきや、いきなり後方でダーン!という爆音が響いた。
衝撃と爆風が吹き荒れた。ザーッと砂が降りかかってきた。射撃音はまだ止まず時を追うごとに、1人、
また1人と負傷者が続出する。

銃声にはパン、パンという乾いた音が混じっている。それもますます増え続けている。
(畜生、何が剣と弓を振り回していただけの連中だ!?全然違うじゃねえか!)
ふと、彼はあるものを目にした。それは、破壊された豪内から光る発砲の閃光だった。
何人かがあそこで立て篭もっているのだろう。
12,3人の人影が見えた。
「あそこだ!あそこのガレキの穴を撃て!」
他にも同じものを見たのがいたのだろう、海兵隊員たちの銃口が一斉に豪内に向けられた。
ウィリアムは伏せ撃ちの体制で愛銃のM-1ガーランドを構えた。
そして、パンパンパンパンパンパンパンパン!と弾倉内の銃弾を連続で放った。
最後の1弾を撃つと、カランという音と共にカートリッジが吐き出される。そ
こに新たな8発入りのカートリッジを入れ、さらに撃ち続ける。
そこにいたバーマント兵の何人かが打ち倒された。そこの周辺に弾着の煙が次々と立ち上がる。
やがて煙に覆われて見えなくなってしまった。
銃声はあちらこちらから聞こえる。生き残りのバーマント兵が、配備されたばかりの銃器を使って防戦を行っているのだろう。
豪内からは銃弾が飛んで来なくなった。それでも何人かが銃を撃ちまくる。
「撃ちかたやめー!」
どこからともなく声が聞こえると、彼らの隊からは銃声が止んだ。
「穴を調べる。お前とお前、それからお前とお前来い。」
ウィリアムも指を指され、その軍曹と共に穴に近寄る。豪の壁に背中をつけ、軍曹がこっそりと覗いた。
その瞬間、パン!という銃声が響いた。
「うわ!」

軍曹は慌てて首を引っ込めた。これに刺激されたのか、複数の銃声がなり続けた。
軍曹は胸についている手榴弾のピン引き抜いた。
「手榴弾!伏せろ!!」
そう叫んで彼は穴の中に手榴弾を放り込んだ。5人はすかさず伏せる。バーン!という音と共に爆風が
穴から吹き出た。爆風が鳴り止むとパラパラと破片が落ちてきた。
「行くぞ。」
軍曹は起き上がると、先頭に立って穴の中に入った。入り口には5人の男性が血を流して死んでいた。
さらに奥に入ると、2つの死体と2人の女性兵が呻いている。傷の深さからして助かりそうにも無い。
豪内に入っていくと、T字状の分岐に当たった。壁に背をつけ、先と同じようにこっそりと覗き見る。
「よし。」
彼は頷いて、まず右の通路に入った。その瞬間、いきなり甲冑姿のバーマント兵が、目の前の分岐から
十人以上姿を現した。手にはいずれもよく切れそうな長剣を持っている。
「騎士だ!!」
軍曹はそう絶叫すると、トミーガンを騎士に向けて乱射した。
「撃て!撃ちまくれ!」
彼はそう言うと、全員がはじかれる様に銃を撃ちまくった。何人かを撃ち倒した時、騎士に混じって白い
ローブをつけた女性が何かを叫んだ銃声が邪魔して聞こえない。とおもった瞬間、
薄暗い壕内がまばゆい光に覆われた。
(見てはいけない!!)
ウィリアムはそう悟って目をつぶった。
「ぐわああ!目が、目が見えない!?」

彼以外の海兵隊員から悲鳴が上がった。その時、先頭の軍曹が生き残った3人の騎士に斬殺された。
軍曹の悲鳴が聞こえる。
騎士はかなりのヤリ手だった。軍曹の息の根を止めたと確信するや、光で盲目になった海兵隊員に
次々と襲い掛かった。
「ぎゃああああああ!」
悲鳴と共に血しぶきが吹き上がり、首が飛んだ。
「くそったれ!」
仲間の死に逆上した彼はガーランドライフルを乱射した。最後尾にいた彼は運良く生き残っており3人
の騎士を打ち倒すことができた。
カランとグリップが吐き出される。彼はカートリッジを入れて最後の敵、魔法使いと思われる
女性兵に向けようとしたが、
「死ねえ!蛮族!!」
鮮やかな身のこなしで彼に体当たりしてきた。ウィリアムは肩に激痛が走った。
彼は仰向けに倒れ、敵兵が馬乗りになって、予備のナイフでウィリアムを殺そうとしてきた。
ナイフを振りあげ、思いっきり振ってきた。ナイフが刺さる位置は、額だ。
「くそったれ!」
ウィリアムは左の手のひらを広げた。その瞬間、左手に鋭い痛みが走り、ナイフが手を貫通した。
「うっぐう!!」
彼は激痛のあまり、気絶しそうになる。だが、敵は諦めていない。
「しね!しね!しね!」
見た限りでは若い女性だが、その表情は怒りで赤く染まり、まるでこの世のものとは
思えない化け物を思わせた。
徐々にナイフが頭に押し下げられていく。女とは思えない物凄い力だ。
これが火事場の馬鹿力というものか。
こんなところで死んでたまるか!!ウィリアムは右の腰に吊ってある銃剣を抜いた。
そしてそれを思いっきりその敵の腹に突き刺した。敵兵の表情が痛みに歪んだ。
だが、まだ彼を殺すことを諦めていないのか、さらにナイフが押し下げられる。
彼は腹から引っこ抜くと、また刺した。何度何度も刺した。必死にそれを繰り返した。
頭の中がカッとなっている。
この敵を倒さないと、自分が死ぬ。やれ、やれ!仲間の仇だ!彼はそう思った。
気がつくと、側にはうつろな表情となった敵魔道師が、腹を真っ赤に染めて横たわっていた。

上陸第1波は、早速バーマント兵の反撃を受けた。この反撃で89人が戦死し、234人が負傷したが、
バーマント兵の生き残りが少なかったことと、装備の優劣さが幸いし、バーマント兵は射殺されるか、降伏した。

午前9時20分、内陸部に第4海兵師団の第23海兵連隊は、内陸部へ向けて進撃を開始した。
ウィリアムの同僚であるギリアムは、傷を負って後送されていく彼を見ていた。
5人中4人が、突如現れたバーマント騎士に襲われて戦死、ウィリアムも肩や左手に重傷を負っていた。
「豪内で不意打ちにあったんだな。」
ギリアムはそう呟いていた。
その時、遠くから何かが振動するような音が聞こえてきた。それもどんどん近くなりつつある。
「止まれ!!」
先頭の兵が手を上げて伏せた。何かがおかしい。携行機銃を据え付け、何かに備えた。いきなり
上空警戒にあたっていたF6F6機ががスピードをあげて前方に飛び去っていった。
前方は小高い丘になっていて見えない。
「何かが迫ってくる。」
ギリアムは喉が干上がりそうな気分だった。その時、機銃の発射音が聞こえた。結構長めに撃っている。
もしや、中世のような騎兵突撃では・・・・・・・・
彼の予感はずばり的中してしまった。なんと、丘の頂上から、無数の騎兵の大群が姿を現したのである。
陸の頂上から彼らの距離は300メートルもない。
「撃てぇ!!」
ドダダダダダダダダダダダダッ!M-1ガーランドを初めとする小銃、機銃、そして迫撃砲が一斉に放たれた。
まるでミシンを縫うかのようにバタバタとなぎ倒されていく。
騎兵群の真ん中にいくつもの迫撃砲弾が炸裂し、何人かの騎兵を馬共々吹き飛ばした。
騎兵突撃は、第2次大戦直後のポーランド戦で、ポーランド群がドイツ軍機甲部隊に向けて騎兵突撃を行った。
しかし、無数の機銃弾や砲弾を浴びせられて無残な結果になった。

この騎兵突撃もそれと同様な結果になりつつある。
「どうやらなんとか、」
と最後まで言うまでも無く、中隊長の肩に穴が開いた。
「ぐわ!」
中隊長は被弾の衝撃で後ろに吹き飛ばされた。それを皮切りに、次々と騎兵側から銃弾が浴びせられてきた。
なんと、敵は小銃を撃ってきている!
ギリアムは絶句した。この軍隊は一般兵といった部隊ではない。精鋭部隊だ。彼はそう確信した。
馬の乗り方も操り方もうまい。
おそらく、長年馬に携わったものばかりなのだろう。
彼は元々乗馬クラブに小さい頃から通っていたことがあり、一目で分かった。
次々に被弾して命を落とすもの、負傷して撃てなくなる物が続出した。
このままじゃ、騎兵部隊に蹂躙される!誰もがそう思った。そして結果は現実となった。
生き残った数十頭の騎兵が、第23海兵連隊の隊列に殴りこんだ。馬に踏み潰される兵や、弾き飛ばされる兵、
乗っている騎士に切りつけられる者が続出した。
だが、騎兵の奮戦もそこまでだった。30人の騎士は、無数の銃弾を四方八方から浴びせられて全滅した。

午後2時、バーマント兵の度重なる反撃に損害を出しつつも、上陸部隊は幅10キロ、
奥行き2キロの橋頭堡を築くことに成功した。
バーマント兵の反撃は、鬼気迫るものがあり、多くの米兵を傷つけたが、上空警戒機や、最新装備の海兵隊の前に
次々と駆逐されていった。
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