第18話 陸鷲の初陣
1482年3月3日 午前5時 シホールアンル領ポリルオ
未だに空けきっていない真っ暗な空の下、ポリルオのとある場所では、冷えた空気を熱く変えさせる出来事が起きていた。
ポリルオにあるシホールアンル陸軍第21空中騎士隊の基地では、合計で32名の竜騎士達が整列し、とある一点を見据えている。
その一点に、竜騎士達が仕える主。第34空中騎士軍司令官が立っていた。
ポリルオにあるシホールアンル陸軍第21空中騎士隊の基地では、合計で32名の竜騎士達が整列し、とある一点を見据えている。
その一点に、竜騎士達が仕える主。第34空中騎士軍司令官が立っていた。
「諸君!いよいよ決戦の時が来た!」
軍司令官のベルゲ・ネーデンク中将は張りのある声音で、冷気を吹き飛ばすように訓示を始めた。
「南大陸との戦闘を始めて以来、君たちはよく敵と戦い、度重なる戦友の死を乗り越えて、みごとに任務をやりこなしてきた。
諸君らはシホールアンル陸軍ワイバーン部隊の精鋭部隊である。その君たちが今日戦う敵・・・・・
数ヶ月前に突然この世界に現れ、不遜にもわがシホールアンル帝国にたてついたアメリカという憎き蛮族共は
これまで我が軍に対して度重なる戦闘を行い、多くの味方の命を奪ってきた!」
諸君らはシホールアンル陸軍ワイバーン部隊の精鋭部隊である。その君たちが今日戦う敵・・・・・
数ヶ月前に突然この世界に現れ、不遜にもわがシホールアンル帝国にたてついたアメリカという憎き蛮族共は
これまで我が軍に対して度重なる戦闘を行い、多くの味方の命を奪ってきた!」
ネーデンク中将は拳を振り上げながら、喚き散らすように言い放った。
彼の訓示に食い入る竜騎士達の視線は鋭く、目から火を噴きかねぬほどである。
彼の訓示に食い入る竜騎士達の視線は鋭く、目から火を噴きかねぬほどである。
「その不遜なアメリカ人共は、ここから250ゼルドしか離れていないロゼングラップに基地を構え、
そこからわが軍の侵攻を阻む腹積もりだ。だが、アメリカ人共が好き勝手できるのもこれまでである。
我が空中騎士隊の総力を持って、このロゼングラップのアメリカ軍基地を奇襲し、敵飛空挺部隊を地上で殲滅する!
諸君、敵に遠慮はいらぬ!敵が泣き喚き、命乞いをしても容赦なく殺せ!諸君らの武運を祈る!!」
そこからわが軍の侵攻を阻む腹積もりだ。だが、アメリカ人共が好き勝手できるのもこれまでである。
我が空中騎士隊の総力を持って、このロゼングラップのアメリカ軍基地を奇襲し、敵飛空挺部隊を地上で殲滅する!
諸君、敵に遠慮はいらぬ!敵が泣き喚き、命乞いをしても容赦なく殺せ!諸君らの武運を祈る!!」
ネーデンク中将の訓示が終わると、32名の竜騎士達は、一斉に雄叫びを上げた。
「これより出撃する。かかれぇ!」
飛行隊長が命令すると、32名の竜騎士達は一斉に自分の相棒にまたがった。
最先頭が離陸すると、2番騎、3番騎が次々と地面を蹴り、大きな翼を上下に振りながら、まだ暗い空へ優雅に舞っていく。
見る人が見れば美しい光景であり、攻撃ワイバーンの竜騎士や地上勤務員達は、誰もが諸手を振って出撃を見送った。
第21空中騎士隊のワイバーン42騎が離陸すると、編隊を組んで南に向かっていった。
ロゼングラップ攻撃に向かうワイバーンは第21空中騎士隊だけではない。
同じポルリオに駐屯する第34空中騎士隊の24騎や、レージェンの第2、第22空中騎士隊の48騎。
ジャンベルの第61、62空中騎士隊76騎。
計190騎のワイバーンが途中で合流し、気付かれぬように高度2500グレルの高高度を飛行し、
未だに寝静まっているであろうロゼングラップにひっそりと忍び寄る計画である。
最先頭が離陸すると、2番騎、3番騎が次々と地面を蹴り、大きな翼を上下に振りながら、まだ暗い空へ優雅に舞っていく。
見る人が見れば美しい光景であり、攻撃ワイバーンの竜騎士や地上勤務員達は、誰もが諸手を振って出撃を見送った。
第21空中騎士隊のワイバーン42騎が離陸すると、編隊を組んで南に向かっていった。
ロゼングラップ攻撃に向かうワイバーンは第21空中騎士隊だけではない。
同じポルリオに駐屯する第34空中騎士隊の24騎や、レージェンの第2、第22空中騎士隊の48騎。
ジャンベルの第61、62空中騎士隊76騎。
計190騎のワイバーンが途中で合流し、気付かれぬように高度2500グレルの高高度を飛行し、
未だに寝静まっているであろうロゼングラップにひっそりと忍び寄る計画である。
1482年 3月3日 午前6時30分 カレアント公国ロゼングラップ
「眠くてやっとれんな。」
当直将校のジョゼフ・アーヴィン少尉は、ややだらしのない格好で椅子にふんぞり返り、眠気覚ましのコーヒーを飲んでいた。
「なあブルース。眠気覚ましのコーヒーを飲んでいるんだが、眠気がちっとも晴れんのはどういう事だい?」
アーヴィン少尉は眠たそうな口調で、レーダーと睨めっこしている同僚のエリック・ネルソン少尉を問い詰めた。
「眠気が晴れると信じりゃあそうなる。」
「そのセリフ、それで34回目だぜ。」
「おい、いちいち数えんでもいいだろうが。それにお前は休憩中じゃねえか。」
「たった5分間で休憩できるかい。5時間の休憩なら大歓迎だがね。」
「そのセリフ、それで34回目だぜ。」
「おい、いちいち数えんでもいいだろうが。それにお前は休憩中じゃねえか。」
「たった5分間で休憩できるかい。5時間の休憩なら大歓迎だがね。」
アーヴィン少尉とネルソン少尉は、たまたま運悪く早朝のレーダー監視班員に任じられてしまった。
しかし、彼らにはこうなった心掛かりがある。
しかし、彼らにはこうなった心掛かりがある。
それは、非番の時にロゼングラップの町で、現地人の若い娘をナンパしては夜中によろしくやっていた事である。
その日は門限に20分遅刻して上官からこっ酷く叱られた。
遅れた理由は適当にごまかしたから良かったものの、その2日後にいきなり、
その日は門限に20分遅刻して上官からこっ酷く叱られた。
遅れた理由は適当にごまかしたから良かったものの、その2日後にいきなり、
「3時から7時までの間、レーダーを睨んでいろ」
とレーダー監視班に回されてしまい、こうして愚痴を言いながらレーダーと睨めっこしているのである。
ロゼングラップ飛行場には対空レーダーが2基設置されており、2名の監視員によって、いつ来るか分からぬ
シホールアンル軍のワイバーン部隊の襲撃に備えている。
傍目から見れば重要な任務であるが、基地設立から3週間近くが立った今、レーダーに引っ掛かったのは友軍の航空機か、
南大陸のワイバーン部隊ぐらいだ。
「いいよな、スクランブル要員の奴らは。あいつらは出撃命令が出るまでトランプを楽しんだり、居眠りしたりやりたい放題だ。」
「おい、そんなに愚痴るなよ。」
ロゼングラップ飛行場には対空レーダーが2基設置されており、2名の監視員によって、いつ来るか分からぬ
シホールアンル軍のワイバーン部隊の襲撃に備えている。
傍目から見れば重要な任務であるが、基地設立から3週間近くが立った今、レーダーに引っ掛かったのは友軍の航空機か、
南大陸のワイバーン部隊ぐらいだ。
「いいよな、スクランブル要員の奴らは。あいつらは出撃命令が出るまでトランプを楽しんだり、居眠りしたりやりたい放題だ。」
「おい、そんなに愚痴るなよ。」
ネルソン少尉は半ばうんざりした口調でそう言った。
その時、レーダースコープに何かの反応が見られた。
その時、レーダースコープに何かの反応が見られた。
「・・・・・・?」
一瞬、ネルソン少尉は見間違いかと思ったが、またもや反応があった。
「おい!ちょっと来て見ろ!」
彼はアーヴィン少尉を手招きした。
「ん?どこぞの鳥か?」
アーヴィン少尉はふらふらと歩きながら、ネルソン少尉の側にやって来た。
「鳥がこんな緊密な編隊を組むか?」
丸いレーダースコープの右上からいくつもの反応体が移っている。
その反応は間を置かずに増大しつつある。
その反応は間を置かずに増大しつつある。
「北には、友軍のワイバーン部隊はいない・・・・・」
「と・・・・・すれば。」
「と・・・・・すれば。」
2人は顔を見合わせた。
「「敵だ!!!!」」
奇襲を狙った190騎の戦闘ワイバーンは、ロゼングラップより北西110マイルの地点で探知されていた。
まだ夜が開けきらず、オレンジ色の淡い光がうっすらと見え始めた、静かな夜の町に突然空襲警報が鳴り響いた。
初めて聞く空襲警報に、ロゼングラップの住人達は何事かと思い、飛び起きた。
最初、どこからサイレンが鳴っているのか誰もが分からなかったが、やがてサイレンの音は未だ建設中のアメリカ軍基地から
鳴り響いている事に気付き始めた。
空襲警報のサイレンが鳴るや、第3航空軍の将兵達はベッドから跳ね起きた。
簡易の宿舎やテントに次々と明かりが灯り、中から兵士達が慌てて飛び出していく。
ロゼングラップ飛行場に一時的に移駐してきた南大陸軍のワイバーン部隊も突然の出来事に戸惑いを見せつつも、やがて事態が飲み込めてきた。
現在、ロゼングラップ飛行場には第3航空軍の第34戦闘航空師団の第31航空団が常駐しており、
第12戦闘航空群のP-40戦闘機62機、第13戦闘航空群のP-39戦闘機36機。
それに第14戦闘航空群のP-38戦闘機12機の計120機である。
この他に、バルランド軍のワイバーン部隊が20騎ほど、基地にいるが、迎撃にあたるのは第31航空団である。
常に臨戦待機にあった戦闘機は、整備兵の点検や燃料補給、弾薬搭載などの手間はスクランブル機以外にかけられるが、
整備兵達は素早く燃料や弾薬を所定量に満たしていく。
まだ夜が開けきらず、オレンジ色の淡い光がうっすらと見え始めた、静かな夜の町に突然空襲警報が鳴り響いた。
初めて聞く空襲警報に、ロゼングラップの住人達は何事かと思い、飛び起きた。
最初、どこからサイレンが鳴っているのか誰もが分からなかったが、やがてサイレンの音は未だ建設中のアメリカ軍基地から
鳴り響いている事に気付き始めた。
空襲警報のサイレンが鳴るや、第3航空軍の将兵達はベッドから跳ね起きた。
簡易の宿舎やテントに次々と明かりが灯り、中から兵士達が慌てて飛び出していく。
ロゼングラップ飛行場に一時的に移駐してきた南大陸軍のワイバーン部隊も突然の出来事に戸惑いを見せつつも、やがて事態が飲み込めてきた。
現在、ロゼングラップ飛行場には第3航空軍の第34戦闘航空師団の第31航空団が常駐しており、
第12戦闘航空群のP-40戦闘機62機、第13戦闘航空群のP-39戦闘機36機。
それに第14戦闘航空群のP-38戦闘機12機の計120機である。
この他に、バルランド軍のワイバーン部隊が20騎ほど、基地にいるが、迎撃にあたるのは第31航空団である。
常に臨戦待機にあった戦闘機は、整備兵の点検や燃料補給、弾薬搭載などの手間はスクランブル機以外にかけられるが、
整備兵達は素早く燃料や弾薬を所定量に満たしていく。
待機所から、一通りブリーフィングを聞き終えたパイロット達が一斉に愛機に向かっていく。
既に整備兵によってエンジンはかけられ、暖機運転は終わりかけている。
既に整備兵によってエンジンはかけられ、暖機運転は終わりかけている。
「敵編隊、あと60マイル!」
管制塔に敵ワイバーン部隊の接近が刻々と伝えられてくる。
午前7時には空は少しばかり明るくなっており、飛行場は100機以上の戦闘機があげるエンジン音で満たされ、
自然と基地の周辺には、ロゼングラップの住人達が何事かと集まっている。
7時を1分過ぎた時、2機のP-40が離陸を開始していた。
2機のP-40が滑走路を駆け、大空に舞い上がっていく。
それを皮切りにP-40が、P-39が、そしてP-38が次々に離陸して行った。
午前7時には空は少しばかり明るくなっており、飛行場は100機以上の戦闘機があげるエンジン音で満たされ、
自然と基地の周辺には、ロゼングラップの住人達が何事かと集まっている。
7時を1分過ぎた時、2機のP-40が離陸を開始していた。
2機のP-40が滑走路を駆け、大空に舞い上がっていく。
それを皮切りにP-40が、P-39が、そしてP-38が次々に離陸して行った。
午前7時40分 ロゼングラップ北北西25マイル地点
最後のP-38が離陸したのは午前7時30分を回った所であった。
P-38が離陸を終えた頃には、既に先発していたP-40やP-39は高度5500メートル上空にまで上昇を終えていた。
P-39で編成される第13戦闘航空群36機は、高度5500メートルを時速340マイルで飛行していた。
第13航空群の第2中隊を率いるニック・バーンズ大尉は前方を飛行する第1中隊を見つめていた。
空はやや雲が多いものの、おおむね晴れており、空戦にはもってこいの天気である。
P-38が離陸を終えた頃には、既に先発していたP-40やP-39は高度5500メートル上空にまで上昇を終えていた。
P-39で編成される第13戦闘航空群36機は、高度5500メートルを時速340マイルで飛行していた。
第13航空群の第2中隊を率いるニック・バーンズ大尉は前方を飛行する第1中隊を見つめていた。
空はやや雲が多いものの、おおむね晴れており、空戦にはもってこいの天気である。
「こちらベイリレンド1、タリホー」
無線機から声が流れてきた。ベイリレンド1とは先行する第12戦闘航空群のコードネームだ。
「こちらオヴニル1、ベイリレンド1へ。数はどのぐらいいる?」
「オヴニル1へ、敵は高度5000メートル付近を飛行している。すげえ数だぞ。100騎、いや、もっといる!」
「オヴニル1へ、敵は高度5000メートル付近を飛行している。すげえ数だぞ。100騎、いや、もっといる!」
オヴニル1とは、第13航空群のコードネームである。
「200騎近くはいやがるぜ!」
「200騎ぃ!?そんなに繰り出してきたのか!」
「200騎ぃ!?そんなに繰り出してきたのか!」
バーンズ大尉は思わず耳を疑った。
自分たちはせいぜい120機ぐらいしかいないが、敵は倍近い数のワイバーンを投入しているようだ。
自分たちはせいぜい120機ぐらいしかいないが、敵は倍近い数のワイバーンを投入しているようだ。
「海軍の戦闘機隊と戦った際、互いに同数では分が悪いと見てありったけつぎ込んで来やがったな。」
「だが、やり甲斐はあるぞ。」
「こちらウェルバ1、敵さんは多いようだな。」
「だが、やり甲斐はあるぞ。」
「こちらウェルバ1、敵さんは多いようだな。」
第14戦闘航空群の指揮官が会話に参加してきた。
「ビビルな。高度はこちらが500メートル上だ。」
P-40隊の指揮官は自信ありげな口調で言う。
「まず、俺達ベイリレンド隊が敵と真っ向からぶつかる。オヴニル隊は俺達が突入した後、右方向から、
ウェルバ隊は左から突っ込め。」
「「ラジャー!」」
ウェルバ隊は左から突っ込め。」
「「ラジャー!」」
無線機上の会話は、どうやら終わりを告げたようだ。
「よし、ベイリレンド隊はこれより敵編隊に突っ込む。グッドラック!」
第12戦闘航空群の指揮官は無線を切ると、編隊の左前方下方に位置する敵のワイバーン部隊に向けて突っ込み始めた。
「話は聞いたな?我が隊は敵編隊の左方向に移動する。付いて来い!」
P-39隊の指揮官機が先導しながら、36機のP-39が大きく旋回していく。
右方向には、やはり命令を受け取った12機のP-38が突入地点に向かっている。
突入の一番槍を担った62機のP-40は、ワイバーンの先頭集団に猛然と襲い掛かっていた。
先頭集団を努める第61空中騎士隊はもろにかぶられる格好となってしまった。
右方向には、やはり命令を受け取った12機のP-38が突入地点に向かっている。
突入の一番槍を担った62機のP-40は、ワイバーンの先頭集団に猛然と襲い掛かっていた。
先頭集団を努める第61空中騎士隊はもろにかぶられる格好となってしまった。
「くっそぉ!なんでアメリカ軍機が上空に上がっているんだ!?」
第61空中騎士隊の隊長は、予期せぬ米軍機の襲撃に半ば混乱を来たしていた。
作戦は、ワイバーンの羽音が聞こえにくい高高度を飛行してこっそりとロゼングラップに接近し、
まだ地上でのうのうと翼を休めているであろう米軍機を一気呵成に討ち取る、というものであった。
だが、シホールアンル側はアメリカ軍が所有するレーダーの事は全く頭になかった。
いや、レーダーそのものの存在が知らなかった。
そのため、190騎のワイバーンの大編隊は、高高度をこっそりと飛ぶどころか、逆に
「今から向かっていますよ」とアメリカ側に教える結果となった。
レーダーというこちらの世界では存在し得ぬモノによって、奇襲効果をあっさりと無きものにされてしまったのだ。
第61空中騎士隊の飛行隊長は部下に命令を下すと、唸りを上げて降下してくるアメリカ軍機へと向かった。
「地上撃破はかなわなかったが、この多数のワイバーン部隊にアメリカ軍飛空挺が突っ込んで来た事は好都合だ。返り討ちにしてくれる!」
隊長は獰猛な笑みを浮かべて、先ほどまで浮かべていた困惑顔を吹き飛ばした。
至近距離にまで接近したアメリカ軍機が両翼から光弾を放って来た。
隊長はすかさず相棒に指示を下し、咄嗟に体を横滑りさせた。4条の火箭が空しく左側方を抜けていく。
作戦は、ワイバーンの羽音が聞こえにくい高高度を飛行してこっそりとロゼングラップに接近し、
まだ地上でのうのうと翼を休めているであろう米軍機を一気呵成に討ち取る、というものであった。
だが、シホールアンル側はアメリカ軍が所有するレーダーの事は全く頭になかった。
いや、レーダーそのものの存在が知らなかった。
そのため、190騎のワイバーンの大編隊は、高高度をこっそりと飛ぶどころか、逆に
「今から向かっていますよ」とアメリカ側に教える結果となった。
レーダーというこちらの世界では存在し得ぬモノによって、奇襲効果をあっさりと無きものにされてしまったのだ。
第61空中騎士隊の飛行隊長は部下に命令を下すと、唸りを上げて降下してくるアメリカ軍機へと向かった。
「地上撃破はかなわなかったが、この多数のワイバーン部隊にアメリカ軍飛空挺が突っ込んで来た事は好都合だ。返り討ちにしてくれる!」
隊長は獰猛な笑みを浮かべて、先ほどまで浮かべていた困惑顔を吹き飛ばした。
至近距離にまで接近したアメリカ軍機が両翼から光弾を放って来た。
隊長はすかさず相棒に指示を下し、咄嗟に体を横滑りさせた。4条の火箭が空しく左側方を抜けていく。
「放て!」
ワイバーンの口からババババ!と赤紫色の光弾が数発ずつ、連続で発射される。
光弾はアメリカ軍機の尾翼をギリギリで掠めたに過ぎなかった。
狙ったアメリカ軍機は早くも隊長騎の後方に飛びぬけていく。
隊長はその米軍機には目もくれず、次の真正面から向かって来るアメリカ軍機にワイバーンの体を向ける。
互いに高速で飛行しているから、距離はみるみる縮まっていく。
放て!と言う直前に米軍機が光弾をぶっ放してきた。
狙ったアメリカ軍機は早くも隊長騎の後方に飛びぬけていく。
隊長はその米軍機には目もくれず、次の真正面から向かって来るアメリカ軍機にワイバーンの体を向ける。
互いに高速で飛行しているから、距離はみるみる縮まっていく。
放て!と言う直前に米軍機が光弾をぶっ放してきた。
「避けられるか!?」
彼はそう思いながら相棒に指示を下す。ワイバーンの体が一瞬、ガクンと下方に下がった。
それに伴うGに隊長は耐えた。4条の火箭が上スレスレのところを飛び抜けていった。
ワイバーンも首を上に上げて、少し上を飛びぬけようとした、機首の尖ったアメリカ軍機に光弾を放つ。
その光弾は機首と左主翼、尾翼に突き刺さった。
左主翼の被弾は、防弾板がなんとか被害を最小限に食い止めたが、機首と尾翼の被弾位置は致命的であった。
まず機首に命中した3発のうち1発が機首の最先端に命中し、尖った鼻先を叩き割って3枚のプロペラを吹き飛ばした。
残りの2発もエンジン内部の配管をギタギタに引き裂き、エンジン部に致命的な損傷を与えた。
次に尾翼に命中した1発の光弾は、上の後ろ半分をごっそりと抉り取って操舵不能に陥れた。
束の間、アメリカ軍機の機体から白煙が噴出したが、そのアメリカ軍機もすぐに後方に飛び抜けていく。
だが、先の敵とは違って、今度の敵には手傷を負わせたと隊長は確信した。
その後、3度ほどアメリカ軍戦闘機と撃ち合ったが、この3度とも光弾は外れた。
アメリカ軍機が全てワイバーン隊の側を通り過ぎていった。
それに伴うGに隊長は耐えた。4条の火箭が上スレスレのところを飛び抜けていった。
ワイバーンも首を上に上げて、少し上を飛びぬけようとした、機首の尖ったアメリカ軍機に光弾を放つ。
その光弾は機首と左主翼、尾翼に突き刺さった。
左主翼の被弾は、防弾板がなんとか被害を最小限に食い止めたが、機首と尾翼の被弾位置は致命的であった。
まず機首に命中した3発のうち1発が機首の最先端に命中し、尖った鼻先を叩き割って3枚のプロペラを吹き飛ばした。
残りの2発もエンジン内部の配管をギタギタに引き裂き、エンジン部に致命的な損傷を与えた。
次に尾翼に命中した1発の光弾は、上の後ろ半分をごっそりと抉り取って操舵不能に陥れた。
束の間、アメリカ軍機の機体から白煙が噴出したが、そのアメリカ軍機もすぐに後方に飛び抜けていく。
だが、先の敵とは違って、今度の敵には手傷を負わせたと隊長は確信した。
その後、3度ほどアメリカ軍戦闘機と撃ち合ったが、この3度とも光弾は外れた。
アメリカ軍機が全てワイバーン隊の側を通り過ぎていった。
「追え!逃がすな!!」
隊長は即座に下令し、相棒を旋回させて追撃の態勢に移った。
その時には、第61空中騎士隊のワイバーンは散開し、急降下していくアメリカ軍機に食い下がろうとする。
だが、猛スピードで降下していくアメリカ軍機に追いつけるワイバーンは1騎もいない。
その時には、第61空中騎士隊のワイバーンは散開し、急降下していくアメリカ軍機に食い下がろうとする。
だが、猛スピードで降下していくアメリカ軍機に追いつけるワイバーンは1騎もいない。
「くそ、スピードが速すぎる!」
追跡に移った騎の竜騎士は誰もが歯噛みして追跡を断念する。断念すると同時に、改めて四方を警戒する。
時を置かずに、先ほど急降下していったアメリカ軍機が上昇して来た。
飛空挺独特のけたたましい轟音をがなりたてながら、ぐんぐん高度を上げていく。
第61空中騎士隊以外のワイバーン隊も、この50機以上はいる飛空挺につっかかろうとしていたが、突然左右から別の飛空挺の襲撃を受けた。
第21空中騎士隊のとある竜騎士は、右上方から向かって来た飛空挺の姿を見るや、思わず度肝を抜かれた。
時を置かずに、先ほど急降下していったアメリカ軍機が上昇して来た。
飛空挺独特のけたたましい轟音をがなりたてながら、ぐんぐん高度を上げていく。
第61空中騎士隊以外のワイバーン隊も、この50機以上はいる飛空挺につっかかろうとしていたが、突然左右から別の飛空挺の襲撃を受けた。
第21空中騎士隊のとある竜騎士は、右上方から向かって来た飛空挺の姿を見るや、思わず度肝を抜かれた。
「なんて形だ!」
その飛空挺は、絵で見せられたグラマン戦闘機とは全く違う物で、なによりも発動機が2つも装備されており、
その発動機の真ん中に操縦席らしき胴体があった。
発動機の後方には2つの垂直尾翼があり、胴体部分と尾翼部分はぽっかりと開いている。
それに、スピードがグラマンと違って速すぎる!!
その発動機の真ん中に操縦席らしき胴体があった。
発動機の後方には2つの垂直尾翼があり、胴体部分と尾翼部分はぽっかりと開いている。
それに、スピードがグラマンと違って速すぎる!!
「早く迎撃せねば」
そう呟いて、竜騎士はワイバーンをその魁偉な姿をした敵と正面から向かい合った。
だが、向かい合った直後、胴体の前部から閃光が煌き、その次の瞬間、集中された光弾が魔法障壁をわずか4秒で叩き割り、
体にまつわりついた。
悲鳴を上げる間もなく、竜騎士とワイバーンはP-38の12.7ミリ機銃4丁、20ミリ機銃1丁の集中打を食らって叩きのめされた。
電光石火のごとく、P-38がワイバーンの群れに突っ込むや、集中射撃を受けたワイバーンは体をズタズタに引き裂かれて撃墜されていく。
P-38がワイバーンの編隊を下方に飛び抜けると、怒り狂った仲間のワイバーンと竜騎士が追撃しようとするが、
その頃にはP-38はずっと下方に逃げ散っており、追っても無駄であった。
だが、向かい合った直後、胴体の前部から閃光が煌き、その次の瞬間、集中された光弾が魔法障壁をわずか4秒で叩き割り、
体にまつわりついた。
悲鳴を上げる間もなく、竜騎士とワイバーンはP-38の12.7ミリ機銃4丁、20ミリ機銃1丁の集中打を食らって叩きのめされた。
電光石火のごとく、P-38がワイバーンの群れに突っ込むや、集中射撃を受けたワイバーンは体をズタズタに引き裂かれて撃墜されていく。
P-38がワイバーンの編隊を下方に飛び抜けると、怒り狂った仲間のワイバーンと竜騎士が追撃しようとするが、
その頃にはP-38はずっと下方に逃げ散っており、追っても無駄であった。
「おのれ・・・・またしても!」
アメリカ軍機を追撃するも、一旦諦めた第61空中騎士隊の飛行隊長はもう1度空戦域に戻ろうとしていた。
だが、彼は後続部隊が次々と叩き落される光景を見て、はらわたが煮えくり返る思いが沸き起こった。
そこに1機のアメリカ軍機が向かって来た。
だが、彼は後続部隊が次々と叩き落される光景を見て、はらわたが煮えくり返る思いが沸き起こった。
そこに1機のアメリカ軍機が向かって来た。
第13戦闘航空群のバーンズ大尉は、敵編隊に急降下で突っ込んだ後、ワイバーン1騎を撃墜し、
高度2000メートルまで降下した後、再び上昇して別のワイバーンを狙った。
既に、先行したP-40隊はワイバーン群と乱戦を行っていた。
一撃離脱に徹するP-40に後方から追撃して光弾やブレスを吐きかけるワイバーンもいれば、ワイバーンに
機銃弾を叩き込んで新たに撃墜数を稼いだP-40もいる。
高度2000メートルまで降下した後、再び上昇して別のワイバーンを狙った。
既に、先行したP-40隊はワイバーン群と乱戦を行っていた。
一撃離脱に徹するP-40に後方から追撃して光弾やブレスを吐きかけるワイバーンもいれば、ワイバーンに
機銃弾を叩き込んで新たに撃墜数を稼いだP-40もいる。
「俺達も負けてられんな。」
バーンズ大尉はそう呟きながら、とあるワイバーンを見つけた。
そのワイバーンは空戦域に慌てて向かいつつある。
恐らく、むきになって友軍機を追撃して、空戦域から思わず離脱してしまったのだろう。
そのワイバーンは空戦域に慌てて向かいつつある。
恐らく、むきになって友軍機を追撃して、空戦域から思わず離脱してしまったのだろう。
「ようし、あいつと勝負だ。」
バーンズ大尉はニヤリと笑みを浮かべると、機首をそのワイバーンに向けた。
再びスロットルをフルにし、時速550キロのスピードでワイバーンに向かっていく。
距離が目測で3000メートルに迫った時、突然ワイバーンは向きを変え、一目散に逃げ始めた。
再びスロットルをフルにし、時速550キロのスピードでワイバーンに向かっていく。
距離が目測で3000メートルに迫った時、突然ワイバーンは向きを変え、一目散に逃げ始めた。
「逃がさん!」
バーンズ大尉は叫ぶと、機銃の発射ボタンに指をかけた。
ちょっとでも力を加えれば、両翼の12.7ミリ機銃4丁が火を噴く。
ちょっとでも力を加えれば、両翼の12.7ミリ機銃4丁が火を噴く。
機首の機銃は使わない。
念の為、後方や左右を確認する。
わずか数秒足らずで確認し、周囲に敵がいないと確認するや、再び視線をワイバーンに向ける。
距離はみるみる縮まっていく。
恐らく、パニックをきたした敵のパイロットは逃げる事しか考えていないのだろう、その証拠に、人影が何度も振り返る。
距離は800メートルにまで縮まった。
念の為、後方や左右を確認する。
わずか数秒足らずで確認し、周囲に敵がいないと確認するや、再び視線をワイバーンに向ける。
距離はみるみる縮まっていく。
恐らく、パニックをきたした敵のパイロットは逃げる事しか考えていないのだろう、その証拠に、人影が何度も振り返る。
距離は800メートルにまで縮まった。
「食らえ!」
バーンズ大尉は機銃を発射した。その刹那、いきなり敵ワイバーンの後姿が大きくなった。
「わあ!?」
彼は仰天して目をつぶった。影が一瞬、操縦席を覆う。両翼の12.7ミリ機銃がドダダダダ!と発射された。
すかさず目を開けるが、前方にいたはずのワイバーンは居なくなっていた。
彼は仰天して目をつぶった。影が一瞬、操縦席を覆う。両翼の12.7ミリ機銃がドダダダダ!と発射された。
すかさず目を開けるが、前方にいたはずのワイバーンは居なくなっていた。
「まさか!」
彼がそう叫んだ瞬間、後ろから禍々しい殺気を感じた。咄嗟に機体を右に捻って旋回に移る。
機体が左旋回を行いかけたその時、1つ、2つ、3つとワイバーンの光弾がコクピットの上面を飛び去った。
バギャッ、ガリガリ!という何かが命中し、破壊される音が聞こえ、機体が激しく身震いする。
(しまった!)
バーンズ大尉は自らの失策を悟った。敵のワイバーンは、バーンズ大尉のP-39が至近距離に来るまで、ひたすら逃亡する腰抜けを演じていたのだ。
そして、彼のP-39が機銃を撃つか撃たぬかの距離に迫った瞬間、一か八かスピードを急激に緩めたのだ。
案の定、オーバーシュートしたP-39はワイバーンに背後を取られ、光弾を叩き込まれたのだ。
光弾はP-39の胴体や水平、垂直尾翼に突き刺さった。
機体が左旋回を行いかけたその時、1つ、2つ、3つとワイバーンの光弾がコクピットの上面を飛び去った。
バギャッ、ガリガリ!という何かが命中し、破壊される音が聞こえ、機体が激しく身震いする。
(しまった!)
バーンズ大尉は自らの失策を悟った。敵のワイバーンは、バーンズ大尉のP-39が至近距離に来るまで、ひたすら逃亡する腰抜けを演じていたのだ。
そして、彼のP-39が機銃を撃つか撃たぬかの距離に迫った瞬間、一か八かスピードを急激に緩めたのだ。
案の定、オーバーシュートしたP-39はワイバーンに背後を取られ、光弾を叩き込まれたのだ。
光弾はP-39の胴体や水平、垂直尾翼に突き刺さった。
胴体に描かれた国籍マークはたちまちのうちに数発の光弾によって醜いあばた面に変えられ、水平尾翼は右側が3分の1ほど吹き飛ばされ、
垂直尾翼は2発の光弾に大穴を開けられ、屑鉄に早変わりした。
垂直尾翼は2発の光弾に大穴を開けられ、屑鉄に早変わりした。
「ふん、間抜けな奴め。これほど簡単なトリックに引っ掛かるとは、たかが知れるものだな。」
第61空中騎士隊の隊長は、胴体と後部から白煙を引きながら墜落していくP-39に向かってそう吐き捨てていた。
その時、墜落していく機体を見限ったのであろう。アメリカ軍機からゴミ粒のような影が飛び出した。
やや間を置いて、白く、丸い布が広がって影の落下速度を急速に緩めた。
どうやら、先のアメリカ軍機の搭乗員があの白い布で作った脱出器具で地上に降りようと言うのだろう。
地上はだだっ広い草原があるのみだ。あの降下速度なら、何不自由なく着地できるだろう。
だが、隊長は情け容赦なかった。
その時、墜落していく機体を見限ったのであろう。アメリカ軍機からゴミ粒のような影が飛び出した。
やや間を置いて、白く、丸い布が広がって影の落下速度を急速に緩めた。
どうやら、先のアメリカ軍機の搭乗員があの白い布で作った脱出器具で地上に降りようと言うのだろう。
地上はだだっ広い草原があるのみだ。あの降下速度なら、何不自由なく着地できるだろう。
だが、隊長は情け容赦なかった。
「御者が相棒を見捨てるとは、片腹痛いわ。今すぐ後を追わせてやる。」
彼は相棒に指示し、体を翻した。
ワイバーンは猛速で、降下しつつあるアメリカ軍機の搭乗員に向かって行った。
アメリカ人もそれに気が付いたのか、人影がせわしなく動く。
ワイバーンは猛速で、降下しつつあるアメリカ軍機の搭乗員に向かって行った。
アメリカ人もそれに気が付いたのか、人影がせわしなく動く。
「地獄を見学させてやろう!」
彼はみるみる大きくなる人影に向かってそう呟いた。その時、不意に飛空挺独特の轟音が大気を奮わせた。
音からして、別の飛空挺が向かいつつあるようだ。隊長は音のする右上方を見てみた。
そこには、2つの発動機を持ち、変わった形の飛空挺がいた。
これまで見たアメリカ軍機と比べると大きく、それでいて一層力強い感のある機体だ。
音からして、別の飛空挺が向かいつつあるようだ。隊長は音のする右上方を見てみた。
そこには、2つの発動機を持ち、変わった形の飛空挺がいた。
これまで見たアメリカ軍機と比べると大きく、それでいて一層力強い感のある機体だ。
「グラマンではないな。」
隊長はそう呟くと、相棒をその未知の機体の鼻先に向けた。彼が驚いたのはここからであった。
なんと、そのアメリカ軍機のスピードは異常なほど速かった。
「速い!」
彼はそう呟いた。不意にアメリカ軍機から光が迸った。
咄嗟にワイバーンの体が、アメリカ人から見ればあり得ない機動を行い、機銃弾が右横を通り抜けていく。
反撃しようとするが、その時にはアメリカ軍機は下方に飛びぬけていく。
大き目の旋回機動を行いながら、双発のアメリカ軍機は高度をぐんぐん上げていき、またもや隊長のワイバーンに突っかかって来た。
右後方に回りこんだアメリカ軍機が機銃弾をぶっ放す。すかさずワイバーンが体を捻って射弾をなんとか回避する。
機銃を撃ちまくりながら、アメリカ軍機が通り過ぎて行った。
咄嗟にワイバーンの体が、アメリカ人から見ればあり得ない機動を行い、機銃弾が右横を通り抜けていく。
反撃しようとするが、その時にはアメリカ軍機は下方に飛びぬけていく。
大き目の旋回機動を行いながら、双発のアメリカ軍機は高度をぐんぐん上げていき、またもや隊長のワイバーンに突っかかって来た。
右後方に回りこんだアメリカ軍機が機銃弾をぶっ放す。すかさずワイバーンが体を捻って射弾をなんとか回避する。
機銃を撃ちまくりながら、アメリカ軍機が通り過ぎて行った。
「死ねぇ!」
隊長は必殺の光弾を放った。
先ほど、不遜な単発機を仕留めた射弾だ。今度も光弾が敵の機体に噛み付き、引きちぎるだろう。
しかし、アメリカ軍機のスピードはやはり速すぎた。必殺光弾が届く前に、アメリカ軍機は既に射程外に達していた。
この似たような事が2度ほど続けられるうちに、いつしか撃墜機のパイロットからは遠く離されていた。
横目で、遠く離れた白い布を見た時、隊長はアメリカ軍機が、脱出した仲間から自分を引き離すために戦いを挑んだのだと確信した。
「なかなかの戦友愛だ。」
隊長は半ば感心した面持ちだったが、別のアメリカ軍機が2機ほど向かってくるのを見て、隊長は自分が不利であると分かった。
先ほど、不遜な単発機を仕留めた射弾だ。今度も光弾が敵の機体に噛み付き、引きちぎるだろう。
しかし、アメリカ軍機のスピードはやはり速すぎた。必殺光弾が届く前に、アメリカ軍機は既に射程外に達していた。
この似たような事が2度ほど続けられるうちに、いつしか撃墜機のパイロットからは遠く離されていた。
横目で、遠く離れた白い布を見た時、隊長はアメリカ軍機が、脱出した仲間から自分を引き離すために戦いを挑んだのだと確信した。
「なかなかの戦友愛だ。」
隊長は半ば感心した面持ちだったが、別のアメリカ軍機が2機ほど向かってくるのを見て、隊長は自分が不利であると分かった。
第14戦闘航空群のP-38隊を率いるビーン・リストロング大尉は、逃げるワイバーンを追撃していく寮機を尻目に、
パラシュートで脱出したパイロットに目をやった。
パラシュートで降下していくパイロットは激しく手を振って、窮地を救ってくれたリストロング大尉に感謝の気持ちを表している。
パラシュートで脱出したパイロットに目をやった。
パラシュートで降下していくパイロットは激しく手を振って、窮地を救ってくれたリストロング大尉に感謝の気持ちを表している。
「全く、敵に落とされるとは。どれ、やっこさんの面でも拝んでみるか。」
彼はぶつくさ呟きながらパラシュートで降下していくパイロットの側を通り過ぎた。
パラシュートの100メートル前方を通り過ぎた時、リストロング大尉は思わず唖然となった。
パラシュートの100メートル前方を通り過ぎた時、リストロング大尉は思わず唖然となった。
「やれやれ。バーンズの野郎だったとは・・・・・・」
進行してきたワイバーン群が反転、引き返して行ったのは午前8時20分の事である。
これ以上の進撃は無理と判断したワイバーン隊の最上級指揮官は、全騎に反転命令を下し、ロゼングラップ近郊から引き返し始めた。
この戦闘で、第31航空団の損害は、P-40が19機、P-39が7機、P-38が1機撃墜され、
被弾はP-40が21機、P-39が4機、P-38が1機となった。
そのうち、7機のP-40と1機のP-39が使用不能と見なされ、全体的には35機の戦闘機を失った。
それに対して、戦果はワイバーン72騎撃墜、23騎の損傷を負わせ、撃退に成功した。
第31航空団は、初陣で少なくない航空機を失いはしたが、敵の基地攻撃を未然に防ぎ、倍以上の損害を与えた事から、士気は最高潮に達した。
これ以上の進撃は無理と判断したワイバーン隊の最上級指揮官は、全騎に反転命令を下し、ロゼングラップ近郊から引き返し始めた。
この戦闘で、第31航空団の損害は、P-40が19機、P-39が7機、P-38が1機撃墜され、
被弾はP-40が21機、P-39が4機、P-38が1機となった。
そのうち、7機のP-40と1機のP-39が使用不能と見なされ、全体的には35機の戦闘機を失った。
それに対して、戦果はワイバーン72騎撃墜、23騎の損傷を負わせ、撃退に成功した。
第31航空団は、初陣で少なくない航空機を失いはしたが、敵の基地攻撃を未然に防ぎ、倍以上の損害を与えた事から、士気は最高潮に達した。
午前9時50分 ポリルオ
第34空中騎士軍司令官のネーデンク中将は、着地し、休息を取るワイバーン達の姿を見て思わず絶句してしまった。
早朝、32騎で勇躍出撃した戦闘ワイバーンのうち、帰還できたのは、目の前にある19騎のワイバーンのみ。
暫定報告によれば、奇襲を狙ったワイバーン群は、突如待ち構えていたアメリカ軍機に襲撃された。
地上撃破するはずのアメリカ軍機は、全てが上空に上がっており、縦横に空を飛び回り、ワイバーン群を翻弄させ、次々と撃墜した。
奇襲効果は完全に失われ、ワイバーン群は数の優位で迎撃に上がったアメリカ軍機をどうにか押さえ込もうとしたが、それは無為に返し、
あたらに喪失を増やす結果となった。
早朝、32騎で勇躍出撃した戦闘ワイバーンのうち、帰還できたのは、目の前にある19騎のワイバーンのみ。
暫定報告によれば、奇襲を狙ったワイバーン群は、突如待ち構えていたアメリカ軍機に襲撃された。
地上撃破するはずのアメリカ軍機は、全てが上空に上がっており、縦横に空を飛び回り、ワイバーン群を翻弄させ、次々と撃墜した。
奇襲効果は完全に失われ、ワイバーン群は数の優位で迎撃に上がったアメリカ軍機をどうにか押さえ込もうとしたが、それは無為に返し、
あたらに喪失を増やす結果となった。
「敵飛空挺は、本当にグラマンではなかったのか?」
ネーデンク中将は、力ない声音で報告に来ていた飛行隊長に尋ねた。
「はい。今まで見た事もない未知の飛空挺でした。敵の飛空挺は、全体で3種類おり、1種類目は尖った機首の下に口のような穴が空いていたもの、
その次は機首が尖って、やや小型のもの、最後の種類が発動機を2つ積んだ恐ろしく早い飛空挺です。」
「恐ろしく早い、だと?」
その次は機首が尖って、やや小型のもの、最後の種類が発動機を2つ積んだ恐ろしく早い飛空挺です。」
「恐ろしく早い、だと?」
ネーデンク中将は飛行隊長の顔をまじまじと見た。
「発動機を2つ積めば、速力は落ちかねないし、運動性能も単発機と比べて劣る。
そのような飛空挺が恐ろしく早いのだと?」
「そうです。私としても、信じたくはありませんが・・・・・・・」
そのような飛空挺が恐ろしく早いのだと?」
「そうです。私としても、信じたくはありませんが・・・・・・・」
飛行隊長は顔をうつむかせたまま、しばらく言葉を止め、少し深呼吸をしてから続けた。
「スピードは、300レリンク以上はありました。」
指揮所の空気は凍りついた。
誰もが耳を疑うような表情だ。
誰もが耳を疑うような表情だ。
「すまんが、もう一度言ってくれんか?」
参謀の1人が引きつった笑いを浮かべながら飛行隊長に聞いてきた。
「はい。敵飛空挺の中には、300レリンク以上のスピードを発揮できる物がいます。」
「300レリンク・・・・・・・・」
「300レリンク・・・・・・・・」
ネーデンク中将は頭が痛んだ。
ワイバーンの最高速度は245レリンクが限界なのだ。
ワイバーンの最高速度は245レリンクが限界なのだ。
そのワイバーンを遥かに凌駕する飛空挺が、あの未知の世界の軍隊にはあるのだ。
「300レリンクが発揮可能なワイバーンは、未だに開発段階にあるというのに。アメリカ軍は既に持っている。」
「軍司令官。今回の作戦で多くの戦闘ワイバーンを失いましたが、こちら側も敵に少なくない損害を与えています。
今回は、敵が待ち伏せているとは思わなかったため、大損害を被りましたが、次ぎこそは必ず、ロゼングラップの
アメリカ軍基地を使用不能に陥れる事が出来ます!」
「軍司令官。今回の作戦で多くの戦闘ワイバーンを失いましたが、こちら側も敵に少なくない損害を与えています。
今回は、敵が待ち伏せているとは思わなかったため、大損害を被りましたが、次ぎこそは必ず、ロゼングラップの
アメリカ軍基地を使用不能に陥れる事が出来ます!」
第21空中騎士隊の司令官が懇願するような口調で彼に言ってきた。
「それに、300レリンク以上の速力が出せる飛空挺といえど、わずか10機前後しかいないではありませんか。
のみならず、迎撃に出たアメリカ軍飛空挺はこちらより遥かに数が少なかったと報告されています。」
「敵飛空挺50機近くを撃墜して、こっちは90騎近い数を失ったのだぞ。敵以上に被害が大きすぎる。
第34空中騎士軍のみでは、ロゼングラップの襲撃は難しいだろう。」
「何も第34空中騎士軍のみで行うとは言っていません。」
のみならず、迎撃に出たアメリカ軍飛空挺はこちらより遥かに数が少なかったと報告されています。」
「敵飛空挺50機近くを撃墜して、こっちは90騎近い数を失ったのだぞ。敵以上に被害が大きすぎる。
第34空中騎士軍のみでは、ロゼングラップの襲撃は難しいだろう。」
「何も第34空中騎士軍のみで行うとは言っていません。」
司令官は胸を張って考えを言い始めた。
「他の空中騎士軍もロゼングラップ攻撃に参加させるのです。」
「君。簡単に言うがね。他の空中騎士軍もそれぞれ受け持ち区がある。今回は我々の受け持ち区がロゼングラップにまで含まれていたから
攻撃に出たのだ。担当の受け持ち区以外のワイバーンを勝手に動かす事はできぬ!」
「君。簡単に言うがね。他の空中騎士軍もそれぞれ受け持ち区がある。今回は我々の受け持ち区がロゼングラップにまで含まれていたから
攻撃に出たのだ。担当の受け持ち区以外のワイバーンを勝手に動かす事はできぬ!」
ネーデンク中将は拒否した。が、
「戦力が低下しているのは、向こうも同じです。強い敵は、疲労している時に叩くのが一番なのです。
今回と同様か、それ以上の戦力。300騎ほどの戦闘ワイバーンで掛かれば、100機程度のアメリカ軍機なぞ寡兵も同然です。」
「その戦力は」
今回と同様か、それ以上の戦力。300騎ほどの戦闘ワイバーンで掛かれば、100機程度のアメリカ軍機なぞ寡兵も同然です。」
「その戦力は」
わが空中騎士軍にはない!と怒声を上げかけたが、ネーデンク中将は抑えた。
他の空中騎士軍も参加すれば、戦闘ワイバーンの200や300はすぐに集まる。
他の空中騎士軍も参加すれば、戦闘ワイバーンの200や300はすぐに集まる。
「・・・・・なるほど。確かにその戦力はあるだろう。しかし、戦況は常に変わるものだ。
すぐに応援を要請することはできまい・・・・・・・・・だが、検討の余地はある。」
すぐに応援を要請することはできまい・・・・・・・・・だが、検討の余地はある。」
ネーデンク中将は大きく頷いた。
「それ以前に、被害を受けた各空中騎士隊の戦力を回復せねばならない。まずは低下した戦闘力を回復する事から始めよう。」