ジョジョの奇妙なバトルロワイヤル 第125話 『BIOHAZARD』 終幕
『今にも落ちてきそうな空の下で』
不愉快な、聞いてるだけで反吐を吐いちまいそうな声で俺は目を覚ました。
最初に知覚したのはずぶ濡れとなった体。
気持ちワリィ……起き上がってシャワーを浴びそうと思ったが体が動かねぇ。
手や足が動いている感覚はあるんだが体だけが起き上がらない。
意識も微妙にはっきりとしねぇのは寝起きだからか?
漆黒の世界から視界が帰ってきた。
見えたのは床、目線を動かすと見えるのは見覚えのない一室。
ははっ、聞こえた声はそういうことか……そういうことなのかよ!
全部分かったぜ。
どれもこれも俺の一炊の夢だったって訳だ。
ムーディ・ブルースでヤツの首をへし折った俺なんざいない。
いるのは戦う事も出来ずに貧血でぶっ倒れた馬鹿野郎だけだ。
納得いくぜ、幾ら精神が昂ぶってても俺のスタンドじゃ小枝を折るようには行くまい。
「どんな気持ちだ? 仲間を失い、やっと俺の元へと辿り着くも自分は瀕死。
戦う事すらできずに死んでいく貴様は一体どのような表情を見せてくれる!?」
本ッ当に趣味の悪いこった。手に持ったハンディカムはそういうことかよ。
倒れた時にカビて死なないってのもあれか?
黴に覆われて死ぬのはつまらねぇってコイツが解除したってわけか?
疑問だらけの俺だがこれだけは確実だって分かったものもあるぜ。
俺の“死という結果”だけは何があっても覆しようがねぇって事はな。
「ふふん? 貴様はすぐにでも死んでしまうものだって勘違いしているのか?
あまり馬鹿なことを考えるのはやめたほうがいいな。貴様には義務があるのだから」
「なん………だっ……て?」
思わず聞き返しちまったが大方予測はついている。
これから俺は碌な目に遭うことなく死んでいくのだろう。
案の定ヤツは歪んだ笑顔を浮かべていやがる。
俺の近くへ寄って来たと思いきや足の裏で頭を押さえつけてきやがった。
もはやムカつくという感情すら湧かねぇ。
上からは何かのボタンを押すような音が聞こえてくる。
そして俺の眼前に手中に納まりそうな機械が置かれた。
これは……やつの持っていたハンディカムか。
認識すると同時にヤツのスタンドが俺の体にのしかかり、無理矢理瞼をこじ開ける。
「さて、お前の友人の最後が如何なるものであったか見せてやろう。
大丈夫、彼は十分すぎるほど立派に戦ったさ。俺がヒヤッとする位にな」
強制的に開かされていた目が更に見開いた。
俺の無様な姿を野朗は「こちらも保存したいくらいだ」などとほざきながら見やがる。
見たかぁねぇ、死体を見て納得はしたが殺された場面なんざごめんだ。
そんな俺の願いも無機質な機械は答えてくれない。スクリーンはただ事実だけを映し出す。
イギーが接近してくるところから再生は始まった。
しかし、辿り着いたアイツが見たのは地面に落ちているヤツの右腕。
逃げろ! 俺の心の叫びも“過去”には決して届かない。
白兵戦を挑むクソ野郎に応じる二人。
地に置かれたビデオは淡々と出来事を記録してゆく。
やつを追い詰めた二人。
絶体絶命の状況にも拘らず俯いた顔の中でアイツは薄く笑っていた。
罠だ! まだ間に合う! 深追いだけはするんじゃねぇ!
背後から体と分断していたはずの右腕が引き金を引く。
放たれる鉛弾。
そしてイギーは崩れ落ちた。
糞生意気で言う事なんざ一つも聞かないアイツは……死んだ。
「バカ……野郎が……無茶すんなって………言ったろうが」
「あぁ、いい顔だ。本当にいい顔だ。ところでアバッキオ、話は変わるが人が幸福を感じるのはどんな時だと思う?
一つは絶望が希望へと変わった時だ。さっきの犬、イギーといったな。ヤツとの戦いはまさにそれだったよ」
ココで一旦間をおいて俺の表情を盗み見しやがる。
ド畜生が、悔しがる俺の表情すらヤツの思う壺ってヤツか。
大分霞んできた俺の世界でやたらとハッキリ聞こえてくる声が気にくわねぇ。
「もう一つの方も教えてやろう。絶望しているヤツを上から見下している時さ。
そう! 今のお前を見ていること! それこそが俺の幸福だ、レオーネ・アバッキオ!」
満足したんだろ? さぁさっさと俺のことを殺せよ。
声には出せない抵抗の意思を瞳に込めて睨む。
それすらもヤツの快楽への肥やし程度にしかならない。
「殺してくれってか? 俺はな人の苦痛を見ることが何よりも大好きなんだ。
だからこそ……血を失ってじわじわと死んでいくお前が見たいんだよ。
とはいっても少々の間ココからは立ち去らせてもらうんだがな。
なぁに、不安がる事はない。覚えていたら再度見に来てやろう」
そう言ってヤツは本当にこの部屋から出て行きやがった。
階段を下りていく音がやけに大きく感じられる。
やっと訪れた静寂の中で俺は孤独となった。
さっきまでは心がブレまくっていたせいで他の事を考える余裕が無かったが今は別だ。
あれこれと色々なモンが頭の中を通り過ぎていく。
走馬灯ってヤツか? それを見ながら俺は一つの結論に達しちまった。
いや、前から気がついていたことを改めて突きつけられたって感じか。
何をするにしても中途半端なダメな野郎が俺の真の姿だってことに。
殺し合いが始まって早々に任務の護衛対象を失った。
託された伝言の意味は結局分からずじまいだ。
もう少し深く考えてみるべきだったってのによぉ。
これじゃあ折角命懸けのメッセージを送ったってのに無駄ってヤツだ。
そもそも俺に託したメッセージは全部無駄だったんじゃないのか?
倒すと誓った相手も既に死亡していた。
俺は詰まる所ただの傍観者だったってわけなのか?
じいさんとオッサンが戦っている間に俺は何をやっていた?
マヌケにも
サンタナの記録を見て一人でイラついていただけじゃねーか!
そうだ、俺は結果すら見届けることの出来なかった負け犬だ。
俺がやったことといえば全てが終わった後にコソコソと覗き見をしただけ。
とんだお笑い種だ!
イギーの足を引っ張ったのも俺。
あの程度の罠なら気がつけていてもおかしくはないはずだ。
いや、気がつかなくてはいけなかったんだ。
そうすれば少なくとも足手まといだけにはならないで済んだ。
徐倫のヤツが勝手に交わした“帰る”って約束も果たせそうにねぇ。
俺たちが死んだ事でアイツが泣かなきゃいいんだが。
いや、絶対にアイツは俺達の死を知って泣くだろう。
だから俺達は絶対に生きて帰らなくてはならなかった。
はっ! 約束の一つも果たせないガキは俺じゃねぇかよ!
出来ないならあの場できっぱりと言い切ればよかったんだ。
俺は全く成長しちゃいねぇ。
あの人を殺し、この世界へと足を踏み入れてから一向に成長してねぇ。
なぁ先輩。あんたから見たら俺はどんな風に見える?
正義を信じ、正義に殉じたあんたから見ればな。
笑うかい? 怒るかい? それとも泣いてくれるのかい?
だよな……死んだやつの気持ちなんてそんなの分かるはずねぇ。だからこそ俺が納得するために何かしなくっちゃいけねぇ。
くだらねぇ人生だったが最後にカッコつけるくらいならアンタも許してくれるだろ?
後の連中へと託してみるくらいはよ。
立ち上がることは出来ないから這ってでも進む
俺が通った後には血の道ができるが気にしねぇ
壁際へ、ヤツの立っていた壁際へと必死に這い寄る
上半身が崩れ落ちた、もう力が入らない
痛みはない、それどころか全ての感覚が消えかかっている
目は完全に靄に覆われて全てが白くなった
衣服が床と擦れる音だけがやたらと大きく響きやがる
この程度の動きで息が切れ始めた
もう一度、最後に数十cm
このホンの僅かさえ動ききれば俺のムーディはいける
それでも俺の肘から先はびくともしねぇ
だから俺は肘を支えとして行軍を再会した
スタンドは最後の一瞬に全エネルギーをかける為に使用しない
あくまでも俺の力だけで辿り着いてやらぁ
そして俺は目的の位置で完全に崩れ落ちた
一瞬意識が虚空の彼方へと飛んでいく
いや、意識ではなく俺の命が出て行こうとしていたのだろうな
気を抜けばあっという間にあの世へと行っちまいそうな状況
此処はゴールじゃねぇ、給水所だ
大きく深呼吸をし、ムーディ・ブルースを発現
目の見えない俺にもこれだけは分かった
コイツもまた限界であるという事に
体表が割れた陶器のように崩れ落ちていく
だが、まだ能力だけは使える
どうせすぐにでも消えてしまいそうな命だ、全てを注ぎ込んでやろう
ブチャラティ、ミスタ、フーゴ……すまねぇな俺はここでリタイヤだ
新入り、気にくわねぇが後の事は任せたぜ。精々チームの野郎たちと仲良くやりな
ホルマジオ、ジョリーン……託した情報は上手く使ってくれ
そしてトリッシュ、イギー、すまねぇな
ムーディ・ブルースの感覚がターゲットを捉えたことを告げる。
後は壁にこの顔を刻み込めば終わりだ
ふらつく足を動かさせながらムーディの体を壁に密着させる
力を込める 刻め 刻め 刻め!
感覚のないこの体であったが実感はあった、成功したと
安堵の息を吐き出しつつ俺は満足した
このいい気分のままで俺は死んでいこう
そんな俺のささやかな願いは誰かの足音によって終焉を告げた
一歩一歩順調に近付いてくるそれは誰ものか分からねぇ
ただ、そいつは俺の全てを込めたデスマスクへと近付き―――――――――
何かが砕ける音がした
いや、何かじゃねぇ。この場においてあれしかねぇんだ!
足音の正体は分かったがそれは何の意味も持たねぇ
「やぁアバッキオ。随分と早い再会になったな」
ゲロ以下の声が聞こえてきやがる
思考力さえも奪われていってるがこれだけは分かった―――――絶望―――――
俺は結局何も成し遂げることなく犬死。なんの意味もない死を迎えるのだ
「さっき言ったことの裏を返せば希望が絶望に変わったのは相当な悲劇だ。
その不幸からくる絶望が俺を更なる喜びを俺に与えてくれるぞ! レオーネ・アバッキオ!
お前と共にいたあの女に仲間の死の映像を見せてやるってのもいいかもしれんな」
「はっ……くそっ…たれ………が」
彼の断末魔は今までの弱った様子からは考えられぬほどに大きなものだった。
屋根の向こうに広がる空はどこまでも広く、青い――――――
【イギー 死亡】
【レオーネ・アバッキオ 死亡】
【残り 52名】
【E-6 とある民家の二階のベッド/1日目 午前】
【
チョコラータ】
[時間軸]:本編登場直前
[状態]:最高にハイ、右腕切断(カビで接着&止血)、顔に小さな傷、疲労(大)
[装備]:ミスタの拳銃、
[道具]:顔写真付き
参加者名簿、チョコラータのビデオカメラとテープ、支給品一式×2
エンポリオの拳銃(幽霊)、不明支給品の詰まったディバッグ、四部ジョセフが持っていた折りたたみナイフ
[思考・状況]
基本行動方針:殺し合いを楽しみ、優勝して荒木にロワの記録をもらう
1:実に楽しかった、またこういう体験をしたいものだ
2:中央(繁華街)を通り西を目指す
3:
ディアボロを拷問してボスの情報をはかせる
4:参加者に出会ったらどうするかはその場で考えるが、最終的には殺す
5:ホルマジオに出会ったら殺す
6:徐倫にイギーとアバッキオの死に様を見せる?(動揺を狙ったものか本気かは不明です)
7:少しこの家で休憩する、少しの度合いは不明
[備考]
※グリーン・ディには制限があります、内容は以下の通り
チョコラータからある程度離れたら“感染能力”と“体に付着していた胞子”は消える
要するに今ついているカビは絶対に取れないけどチョコラータから離れれば伝染は起きなくなると思っていただければOKです
なお、どの程度離れれば効果が切れるのかというのは不明です
※参加者が荒木に監視されていると推測しています
※思考3については、「できれば」程度に思っています
不明支給品について
【E-6 民家付近に放置されているもの】
レッキングボール2個分の衛星
“ガラスのシャワーだッ!”と乱暴に書かれ、折り畳まれている紙と散乱したガラス
鋭い歯のついたモリ。
【チョコラータの持つディバッグに入っているもの】
死の結婚指輪
アリマタヤのヨセフの地図
ボーリングの爪切り
ワンチェンがジョナサンを襲撃した時につけていた武器
缶ビールが二本に共通支給品であるペンとは異なるデザインのそれ。そして“知ってるか?缶ビールの一気飲みの方法”と書かれたメモ。
ディオの母親が来ていたドレス
【E-5 繁華街の少し東/1日目 午前】
【
空条徐倫】
【時間軸】:「水族館」脱獄後
【状態】:全身に切り傷。疲労(大)、精神的ショック、気絶中
【装備】:
ダイアーの生首
【道具】:なし
【思考・状況】
基本行動方針:打倒荒木! これ以上自分のような境遇の人を決して出さない。
1:気絶中
2:私が……殺したの?
3:アバッキオとイギーに強い心配
[備考]
※名簿に目を通しました。
※作中の彼女の心情は混乱していたため起き上がった後どうなるかは分かりません
しかし、ダイアーを殺したのは自分だと思い込み強い罪の意識を感じました
※錯乱していたため本作では完全に冷静さを欠いてました
※チョコラータの能力の骨組み(下に降りると発生するカビを撒く能力)
【ホルマジオ】
[時間軸]:ナランチャ追跡の為車に潜んでいた時。
[状態]:カビに食われた傷(現在はカビの感染無し)、軽い精神的疲労と肉体的疲労
[装備]:なし
[道具]:支給品一式、万年筆、ローストビーフサンドイッチ、不明支給品×3
[思考・状況]
基本行動方針:ボスの正体を突き止め、殺す。自由になってみせる。
1:決断する
2:ディアボロはボスの親衛隊の可能性アリ。チャンスがあれば『拷問』してみせる。
3:
ティッツァーノ、チョコラータの二名からもボスの情報を引き出したい。
4:もしも仲間を攻撃するやつがいれば容赦はしない。
5:仲間達と合流。
6:アバッキオ達の死をホンの少しだけ残念がる気持ち
7:カビのスタンド使いを倒せなかった自分に苛立ち
[備考]
※首輪も小さくなっています。首輪だけ大きくすることは…可能かもしれないけど、ねぇ?
※
サーレーは名前だけは知っていますが顔は知りません。
※死者とか時代とかほざくジョセフは頭が少しおかしいと思っています。
※不明支給品は本来ジョセフのものです。いまだ未確認です。
※チョコラータの能力をかなり細かい部分まで把握しました
【一日目午前/D-5】
【
フェルディナンド】
[スタンド]:『スケアリーモンスターズ』
[時間軸]:ロッキー山脈への移動途中(本編登場前)
[状態]:恐竜(元アヴドゥル)の中にいる。健康。予定と違う状況にいらだち。
[装備]:なし
[道具]:支給品一式 ×4、麻薬一袋、ダイアーの未確認支給品×0~2個、スティックス神父の十字架、メス(
ジャック・ザ・リパーの物)
[思考・状況]:基本行動方針:優勝する。過程や方法などどうでもいい。
1.優勝する
2.政府公邸へと向かう?
3.政府公邸に向かわせた恐竜化から花京院の状況を探る
4.
ジョセフ・ジョースター、花京院典明、
J・P・ポルナレフ、
空条承太郎にアヴドゥルの最後の言葉を伝える。協力する気はないが、利用できるならば利用する。
5.荒木に対する怒り
6.アヴドゥルに対しての複雑な感情
7.リンゴォ(と
ミセス・ロビンスンの最後)に強烈な印象。こいつは狂人か?関わりたくない。
※DIOの館は取り合えずあんな人間(リンゴォ)がいる以上は厄介なので捜索は辞めておくことにました。
※フェルディナンドは、 『ジョセフ・ジョースター、花京院典明、J・P・ポルナレフ、イギー、空条承太郎』 の姿と能力を知りました(全て3部時点の情報)。
※フェルディナンドは恐竜(元アヴドゥル)に入っています。
※フェルディナンドは【D-6】に大型トラックを放置しました。
※アヴドゥルの首輪はついたままです。機能自体は停止していますがなかに爆薬はまだ入っています。
※フェルディナンドはミセス・ロビンスンを「虫を操るスタンド使い」だと思っています。
※
タルカスの声をうっすら聞きました。つまりリンゴォ以外の人間がDIOの館にいると把握しました。姿は見えていません。
※カビのスタンド使いの存在を把握しました
※「スケアリー・モンスターズ」は制限されています。
解除後は死亡
恐竜化してもサイズはかわらない
持続力、射程距離、共に制限されています。ある程度距離をとると恐竜化は薄れていきます。細かい制限は次の書き手の皆さんにお任せします。
恐竜化の数にも制限がかかっています。一度に恐竜化できるのは三体までです。
※フェルディナンドは制限の一部に気付きました(『三体まで』の制限)。
【翼竜A】
[思考・状況]
1.政府公邸へと向かい、状況を観察する。フェルディナンドは一度回収済みで再度向かわせた。
【翼竜B(甲虫の死体)】
[思考・状況]
1.現在はフェルディナンドの元へ帰還、虫の死骸としてフェルディナンドのディバッグの中に。
※翼竜は、ミセス・ロビンスンの虫の死骸にスタンド『スケアリーモンスターズ』を使い生み出されたものです。
※翼竜の大きさは本来の虫と同じ(数mm~1cm)です。
※翼竜はフェルディナンドが命令し操作できます。
※翼竜は視聴覚をフェルディナンドと共有します。
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最終更新:2009年09月12日 15:16