非常にマズい。

私、ティッツァーノは心臓を握られたかのような危機を感じています。
目の前のヴェルサスに対して不満を述べたいわけではありません。
確かにヴェルサスが睡眠中の今、襲われたら逃走もままならないのですが。
しかしそれよりも現状はマズいのです。

「アナスイとティムが生きているだなんて……!」

放送で読み上げられなかった両者。
あれだけのスタンド使いでもただでは済まないと思っていましたが。
ちょっと前なら素直に喜べたことなのですが、とんでもない。

アナスイのデイパックには『トーキング・ヘッド』を仕込んだままだ。
ここで、何らかの事情で水を飲み込んだとしましょう。
彼は『トーキング・ヘッド』の能力は知っている、しかし『仕込みの事実』は知らない。
能力が発動したら、その後はいともたやすく想定できる――

――『あいつらは何か意図があって俺たちを騙そうとした』と非難を受けるでしょう。

「積極的に出すぎましたね……」

今更ながら後悔してきました。
中途半端な説明に終わらせなければ、こうはならなかったはず。
『嘘をつく能力』を拡大解釈されて更なる誤解――元々騙すことも考えていたので語弊がありますが――は避けられないでしょう。
信頼を得ることを優先しましたが、完全に裏目です。
二兎を追う者は、でしたっけ? 地でいってしまいました。
説明しようにも難しい。二人がどこにいるか分からないというのもありますし。
しかもヴェルサスの穴は『私たちを除く』全員が巻き込まれた。
『まとめて殺そうとしたのでは』なんて言われてもおかしくない。実際私だって死んだんじゃあないかと思いましたし。
アナスイもティムも瀕死の重傷を負っている、という線もありますが堅実ではないでしょう。
スクアーロを落ち着かせるという名目はありましたが、私自身『あり得ない』が『あり得た』ためにやられた身ですから。

「しかし、どうする?」

動こうにも厳しい。
ヴェルサスを置いて行くわけにはいかないし、探すあてもない。
かと言って熟睡しているヴェルサスを起こすのも気が引ける。
しかし逆にここで待機していれば状況はますます不利になっていくかもしれません。

「やはり起こすしか?」

説明を端折って急を要するとだけ言えばヴェルサスも一先ず納得してくれるでしょうが……どこへ行ったものか。
そこまで時間は経っていないですから、まだ穴の近くにいるかもしれません。

「そこを動くな」

……!
窓越しに命令してきたのはマウンテン・ティム
アナスイがいないのが気になりますけど、それどころじゃあない。
出向いてきてくれたのは有難いのですが……言葉を慎重に選ばなければなりませんね。


  ★


「無事を喜んでいる場合じゃあない……ですね」
「全くだな」

民家に入って最初に交わした言葉はこれだけ。
ティムは、片方の足が地肌を晒していることなど気に留めず、ギャングの私でさえ怯みかねない眼光を向けています。
無理もないでしょうね。私たちはほぼ無傷、穴に落ちていないのは明らか。
だからと言って問答無用で襲いかかる人ではないはずですが、ここは先手を打たねばなりません。

「穴を空けたのはヴェルサスです」
「……そうか」

このままヴェルサスに全責任を押しつけることはできた。
保身を考えればその方がいいのかもしれませんが……私は彼の温情に少なからず感謝していますし。
出来る限りの擁護はしてみましょう。

「仕方のないことだったと思います。あれがなければ、私とヴェルサスはやられていた」
「何故隠していた? 隠さなければ、他にやりようはあったはずだ」

ティムは私の言葉を遮ってきました。
正直な話、問いの答えは私の知ることではありません。
知っている限りを、彼の神経を逆なでしないように伝えるほかない。

「……分かりません。無自覚の力なのかもしれませんが、私が何を言っても結局は推論の域を出ません」
「そのことに対してお前は思うことはないのか?」

……ないことはない。
ハッキリ言って、そんな切り札あるんなら最初っから言えと思わざるをえません。
ヒーローが必殺技を止めに使うようにもったいぶられちゃあ苛立ちもしますよ。
しかし、私に対してその能力を使わなかったのも事実。
単なる弱音と言っていい心情を吐露した際も、寝ながらではありましたがちゃんと聞いてくれていました。

「当初からずっと一緒にいましたから、信頼しているつもりです。
 ヴェルサスは人を無暗に襲ったりなんかしませんよ。気の迷いで殴られはしましたがね」

彼の過去に深く触れたわけではありませんが、これは胸を張って言えますよ。
そのせいか私情で埋め尽くしてしまいましたが……嘘は言っていませんし、変に疑われたり勘ぐられたりはしない、と願いたい。

「だから信頼してくれ、なんて言えた立場じゃあないことはもちろんわかってます。
 ただ……」
「わかった、もういい」

頭を垂れて、右手を左右にぶんぶん振るティム。
今までの話には、我々が無実である根拠はまるでない。
体裁を取り繕って、聞こえのいい言葉を選んでいると言われればそうなのでしょう。

「……しかし、俺はまだ信用できない。下手をすれば俺もアナスイも死んでいた。
 個人的感情で動くべきではないが……これは事実だ。だから、俺はお前たちを監視する」

だから、その言葉が聞きたかった。
ティムの保安官としての人間性を鑑みれば当然でしょうが、割とマシな結果に落ち着きましたね。
不信感は払拭できませんでしたが、後々何とかしていかなければなりません。
『再び信頼を得る』『トーキング・ヘッドも回収する』
両方やらなくちゃいけないのが、私のつらいとこですね。

「命の危機に晒された張本人を前にして冷静になれ、なんて酷じゃあないか?」
「……ごもっともです」

その一言は、ヴェルサスを起こす身としてはつらいものがありますが、仕方ないですね。
目を覚ますと、そこには死んだはずのティムが! となりますし。
文面だけなら仲間との再会みたく聞こえますけど、ヴェルサスに向けられるのは警戒の眼差しときてる。

「特別懲罰房へ向かう。怪我の処置を済ませてから出るが、準備をしていてくれ。
 それと、放送を聞き逃した。教えてくれるとありがたいんだが」
「わかりました。まず死者ですが……」


  ★


マイク・Oがか? 俄かには信じがたいな」

いまさらですが、放送内容は衝撃的なものでした。
アナスイとティム、二人がかりであっても逃してしまったマイク・Oの死。
私たちは会っていないので何とも言えないのですが、未だそれだけの実力者がいることは想像に難くない。
そして、これは個人的な事ですが……ブチャラティチームの一人、アバッキオもその名を告げられました。
状況が違えば吉報でしょうが、彼も暗殺チームの猛追を掻い潜ってきた実力者のはず。

「それにブラックモアも……」

強敵かと思ったがそんなことはなかった、なんて楽観視はしません。
ちょっと前まで危機感が欠如していましたし、それで先手を取られる痛手も経験しました。
二度目はないと思うべきです。

「それじゃあ向かうとするか。ヴェルサスを起こしてくれ」
「分かりました。ほら、ヴェルサス、起きてください」

ヴェルサスの肩をポンポン叩く。
起きる気配がないので、今度は少し力を込めてゆさゆさ揺らしてみる。

「う……んん……なんだよ、せっかく人がいい気分で寝てるときに」

こっちはずっと襲われやしないかとハラハラしてたんですけどね。
まあ、ゆっくりお休みって言ったの自分ですけど。

「ン……? げぇっ! ティム!?」

元気そうで何より、と喜ぶべきなんでしょうか?
ともあれ、これだけ叫べれば問題ないですね。

「その辺の事情は歩きながら説明しますから、ひとまずここを離れましょう」
「あの二人組が穴から出てくるかもしれないからな」


  ★


向かう途中、もちろんヴェルサスにこれまでのあらましを話しはしましたが、それどころではありません。
とにかくすぐに知りたかったのは、『トーキング・ヘッド』を持っているアナスイの所在。

「奴はコロッセオに向かった。徐倫を探すために」

何故止めてくれなかった、というのは的外れでしょう。
仲間の死を知らされた身なら、そう動くのは当然。
……しかし、そうなるといよいよ『トーキング・ヘッド』の回収が難しくなってきた。
特別懲罰房からコロッセオまでは距離があるし、中央よりですから人が集まっていることでしょう。
懲罰房でアナスイと待ち合わせるとのことですが、ティムの話からして徐倫を優先してもおかしくありません。

考察を話すのも必要な事でしょうが。
何とかして、『不信感を持たれずに、特別懲罰房を抜け出す手段』を考えなくては……!




【G-4/1日目 日中】

【マウンテン・ティム】
[時間軸]:SBR9巻、ブラックモアに銃を突き付けられた瞬間
[状態]:左肩と腹部に巨大な裂傷痕(完治)。左足に切り傷(小、処置済み)。服に血の染み。やや貧血。全身ずぶ濡れ。右足が裸足。
[装備]:物干しロープ、トランシーバー(スイッチOFF)、アナスイの右足(膝から下)
[道具]:支給品一式×2、オレっちのコート、ラング・ラングラーの不明支給品(0~3)
[思考・状況]
基本行動方針:ゲームに乗った参加者の無力化、荒木の打倒
1.特別懲罰房へ向かう
2.「ジョースター」、「ツェペリ」に興味
3.特別懲罰房を拠点にしたい(そこでアナスイを待つ)
4.ティッツァーノとヴェルサスは信用できるのか?
5.もしアナスイが再び殺人鬼になるようなら止める。生死を問わず
6.アラキを倒す


[備考]
第二回放送の内容はティッツァーノから聞きました。
※アナスイ、ティッツァーノと情報交換しました。アナスイの仲間の能力、容姿を把握しました。
 (空条徐倫エルメェス・コステロ、F.F、ウェザー・リポート、エンポリオ・アルニーニョ
  ブチャラティ、ミスタ、アバッキオ、フーゴ、ジョルノ、チョコラータ
※ティッツァーノとの情報交換で得た情報は↓
 (自分はパッショーネという組織のギャングである。この場に仲間はいない。ブチャラティ一派と敵対している。
  暗殺チームと敵対している。チョコラータは「乗っている」可能性が高い。
  2001年に体に銃弾をくらった状態でここに来た。『トーキングヘッド』の軽い説明。)
  親衛隊の事とか、ボスの娘とかの細かい事は聞いていません。
※マイク・Oのスタンド能力『チューブラー・ベルズ』の特徴を知りました。
※マイク・Oの目的(大統領夫人の護衛)を知りました。
ラバーソールとヴェルサスのスタンド能力と容姿を知りました。
※アナスイが愛のために暴走してしまわないか心配しています。もし暴走するようなら、アナスイの生死を問わず止める覚悟はできています。
※自分が不確定だと思った考察はアナスイには話さないようです。(精神状態を心配しての配慮です)
※自分達が、バラバラの時代から連れてこられた事を知りました。




ドナテロ・ヴェルサス
[時間軸]:ウェザー・リポートのDISCを投げる直前
[状態]:疲労(中)、服がびしょぬれ
[スタンド]:アンダー・ワールド
[装備]:なし
[道具]:テイザー銃(予備カートリッジ×2)、杜王町三千分の一地図、牛タンの味噌漬け、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:絶対に死にたくない、幸せになる。
0.特別懲罰房へ。
1.どんな事してでも生き残って、幸せを得る。その方針は依然変わりなくッ!
2.プッチ神父に会ったら、一泡吹かせてやりたい。
3.この先不安。ティムとアナスイ生きてたの!? 他の二人も!?
4.ティッツァーノムカつく、もっと寝ていたかったのに。


[備考]
※ティッツァーノの『トーキング・ヘッド』の能力を知りました。
※ティッツァーノ以外のマフィア、ブチャラティ達の事、パッショーネの事を聞きました。
ブローノ・ブチャラティ、グイード・ミスタ、レオーネ・アバッキオパンナコッタ・フーゴ
 ジョルノ・ジョバァーナ、チョコラータ)
※荒木のスタンドを「物体をコピーする」能力だと思っていますが、確証が持てないので保留あつかいにしました
※ティッツァーノの言葉により「自分達は偽物かもしれない」という考察を聞きましたが
 幸せになるという行動方針にブレはありません。
※荒木の能力により『アンダー・ワールド』には次の制限がかかっています。
 ・ゲーム開始以降の記憶しか掘ることはできません。
 ・掘れるのはその場で起こった記憶だけです。離れた場所から掘り起こすことはできません。
 ・『アンダー・ワールド』でスタンドを再現することはできません。
 ・ただし、物理的に地中を掘り進むことは今まで通り出来ます。
※ラバーソールとマイク・Oの、能力と容姿を知りました。
※アナスイ、ティムの容姿とスタンドビジョンを知りました。
※アンジェロ、Jガイルの容姿と『アクア・ネックレス』のスタンドビジョンを知りました。
※星型の痣を持つ相手(ジョナサン、ジョルノ、徐倫)の位置が大体わかります ただし、誰が誰かまでは判別出来ません。




【ティッツァーノ】
[時間軸]:ナランチャのエアロスミスの弾丸を受けて、死ぬ直前。
[状態]:胸に切り傷(中、処置ずみ)、背中に痛み、服がずぶぬれ、絶望していました(ヴェルサスの言葉で緩和ずみ)
[スタンド]:トーキング・ヘッド
[装備]:ブラックモアの傘 、牛タンの味噌漬けを包んでた布(包帯として)
[道具]:岸辺露伴のサイン、少年ジャンプ(ピンクダークの少年、巻頭カラー)、基本支給品
[思考・状況]
基本行動方針:生きて町から出る。
0.特別懲罰房へ。着いたら二人に考察を話す?
1.『トーキング・ヘッド』を放置してたらマズイ。回収しなくては……どうやって?
2.ここで生き残るためには「情報」が必要、どんな些細なことにも気をつけないと……
3.この先不安……自分は本当に「ティッツァーノ」なのか?スクアーロは生きてるのか?
4.この名簿は一体?なぜ自分はここに呼ばれたんだ……?
5.少しだけ見直しましたよ、ヴェルサス
6.アラキを倒し、生きて町から出る



[備考]
※ヴェルサスの『アンダー・ワールド』の能力を知りました。
※ヴェルサスの知り合いについて、かなりおおざっぱな説明をうけました。後で、もう少しくわしく聞く気です。
※アナスイ、ティムと情報交換しました。アナスイの仲間の能力、容姿を把握しました。
 (空条徐倫、エルメェス・コステロ、F.F、ウェザー・リポート、エンポリオ・アルニーニョ
  ベンジャミン・ブンブーン、ブラックモア、オエコモバ
※荒木のスタンドを「物体をコピーする」能力だと思っていますが、確証が持てないので保留あつかいにしました。
※「自分達が偽物ではないか?」という考察を情報が集まるまで、保留にしました。
※パッショーネのボスが代替わりし、スクアーロが死んだ可能性について、情報が集まるまで保留にしました。
※ラバーソールとマイク・Oの、能力と容姿を知りました。
※トーキング・ヘッドを操作できる射程距離に制限がかかってる可能性がありますが、
 本人は気づいてないようです。(ちなみに原作の射程距離はB)
※アナスイ、ティムの容姿とスタンドビジョンを知りました。
※アンジェロ、Jガイルの容姿と『アクア・ネックレス』『ハングドマン』のスタンドビジョンを知りました。


ティッツァーノの考察↓

荒木の能力について

 「死者を生き返らせれる」
  ・アナスイ、ティムが主張している。
   ・おそらく違う。アナスイとヴェルサスが「自分達は殺された記憶を持っていない」と言っているため。
    (これは他の参加者にも要確認。)
   ・女性が宙に浮いて殺された方法が説明不可能。
   ・そもそも人を生き返らせるスタンドなんて、ありえない。
  ただし↓
   ・参加者を一斉に集める方法→死体の自分達を集め、一斉に生き返らせれば可能。
   ・バラバラに配置する方法→自分達の「生存」を解除し、死体をバラバラに配置し、再び生き返らせれば可能。

 「物体をコピー出来る」
  ・ヴェルサスの「この地面には記憶が無い」と、バラバラな地名の地図から考察。
   ・女性が宙に浮いて殺された方法→連続的にコピーして浮いているように見せかけた?
   ・参加者を一斉に集める方法、バラバラに配置する方法→簡単に可能。
  ただし↓
   ・自分達の記憶と体の状態が一致しない→説明不可能。

その他の考察

 「自分達は偽物であり、本物の記憶を植え付けられているだけ」
  ・自分達の記憶と体の状態が一致しない、ヴェルサスの「この地面には記憶が無い」から考察。
   ・荒木のスタンド?
   ・もしこの仮説が正しければ、荒木は
    「本人そっくりの人形を作れる力+本人の記憶を植え付ける力」を持っている事になる
   ・スタンドは原則、一人一能力。これだと2能力持ってる事に。

 「パッショーネのボスが2001年に代替わりしている」
   ・アナスイからの情報(アナスイの勘違いの可能性も、他の参加者に要確認)
    ・事実ならば、スクアーロは生きていない?

なお、上の全ては情報不足のため、推論の域を出ない物とする。



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キャラを追って読む

138:バーチャルスター発生学 ティッツァーノ 169:アイ・コール・ユア・ネーム
138:バーチャルスター発生学 ドナテロ・ヴェルサス 169:アイ・コール・ユア・ネーム
150:人でなしの恋 マウンテン・ティム 169:アイ・コール・ユア・ネーム

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最終更新:2010年04月18日 19:06