Second Heaven

それは“世界最悪”の男がこの世に落とした一冊のノート。
かつて世界と時間を支配した男が遺した、決して紐解いてはならない“禁忌”(タブー)。
人類不可侵領域であったそのノートは、世に解き放たれる事なく一人の男によって焼失された。


男の名は『空条承太郎』。
多くの代えがたい犠牲を払い、帝王DIOを討ち倒した男。


彼の、いや彼らのディオ・ブランドー討伐という勲章は、世界を救ったという事実に些かの間違いは無い。
それでも彼らの『勇気』を知る者はたった一握りの数なのだろう。
およそ殆どの人類は世界が救われたという事実にすら気付かず、今日を過ごしている。
だが承太郎たちは世界を救うために旅をしてきたわけではないし、ましてや賞賛されたいがために血を流してきたのではない。

母親を救うため。
そして友を助けるため。
そんなシンプルで、ありふれた理由。

かくして承太郎たちは目的を達成することが出来た。
犠牲になってしまった戦友たちは、本当は悔いがあったのだと思う。
それでも死にゆく彼らは最期の瞬間まで、遺志を託して逝った。
彼らの犠牲あって、この世は救われたのだ。

友の遺志を受け継いだ承太郎は思う。
DIOのような邪悪を、二度と生み出してはならない。
力を持つ者とは、その『責任』が問われる。


故に承太郎はエジプトで発見したこのあまりに忌まわしいノートを直ちに焼却した。
倫理的にも、また人として根源的な部分がこのノートの存在を否定せざるをえなかった。
その後、SPW財団内においても存在自体が第三種極秘事項“トップシークレット”扱いとされた異物。
今やノートの内容を知る者は、死んだDIOを除いて空条承太郎ただひとり。

本来ならノートの存在はこのまま誰にも知られることなく、ひっそりと深淵の闇へと沈む筈だった。




―――しかし今、葬られた闇のページが再び捲られる。

―――『月の頭脳』と称された、天才医師の手によって……





▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽





『天国に行く方法があるかもしれない』



―――この手記に度々出て来る『天国』というワード…そして『ディオ・ブランドー』という男……


   パラ…


『必要なものは信頼できる友である』
『彼は欲望をコントロールできる人間でなくてはならない』
『権力欲や名誉欲、金欲、色欲のない人間で、彼は人の法よりも神の法を尊ぶ人間でなくてはならない』
『―――いつかそのような者に、このディオが出会えるだろうか?』
『私の対極とも言える、そんな人物に』
『いや、私は出会わなければならない』
『そのような友と、出会わなければならない』


―――ただの地上人にしては、あまりにも邪悪すぎるわね……。『ブレーキ』のない悪、といった所かしら……


   パラ…    パラ…


『このような記録を残すことは危険でもある……』
『このノートが例えば、かつての宿敵ジョナサン・ジョースターのような者にでも見られたら相当にまずいことになる』
『そういう人物には私の“目的”を知られたくない』
『知れば“彼”は、“彼ら”は、きっとそれを妨げようとするはずだ』


―――なるほど。道理でこのノート、高度な暗号化の施し、それに所々曖昧にぼかされているわけか。
―――全く、解読するこっちの身にもなって欲しいものね。


   パラパラ…     パラ…  パラ……


『だから“天国へ行く方法”をこんな風に記録することは、非常にリスキーだ』
『だがそのリスクを、私は冒さなくてはならない』
『これは私の頭の中だけで、私だけが理解していればいいこと、ではないのだ』
『まだ見ぬ友にその方法を理解してもらうためには、それを文章化し、そして体系化しておく必要がある』
『もしも私がいなくなったとしても―――その方法を実行できるように』


―――永い時間を生きてきて、様々な『ヒト』と触れ合ってきた。
―――その中には鳥肌の立つほどに不快な『悪』も多くいた。
―――でも、このDIOという男はその誰とも『違う』。
―――地上にも、月にだってこんな次元の考えをする者はいなかった。


   パラパラパラ…  パラパラパラ…


『真の勝利者とは“天国”を見た者のことだ』
『どんな犠牲を払っても私はそこへ行く』
『組織や己のスタンドさえ犠牲にしてでも』


―――…………。


   パタン。


―――ふぅ……。



―――なるほどね。面白い男じゃない……ディオ・ブランドー。



▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


『八意永琳』
【午前】D-6 迷いの竹林 永遠亭


まず初めに誤解のないよう言っておくと、私はこのまだ見ぬ男DIOに同調したわけではない。
むしろ軽い『戦慄』を覚えたぐらいだ。私ともあろう者が。


「荒ぶるしか脳に無かった猿(ましら)が、随分な果てへと進化を遂げたものね」


一言だけの軽い感想を終えて、永琳はそっとノートを閉じた。
自身の支給品である『DIOのノート』を手に取り、ここまでの移動ついでに暗号の解読を行ってきた。
ノートの内容は余程見られたくない物だったのか、解読は普通の人間ならば困難を極めるものだろう。
年頃の乙女の日記でも盗み見るような気持ちでページを捲り始めたのだが、蓋を開ければ出て来たのは悪魔も逃げ出す見解の叢り。

―――曰く、『天国』。

本の随所に出て来るこの単語は、余程DIOという男を惹き付けて止まないらしい。
許されざる蛮行に踊るひとつの狂った宗教、と簡単に吐き捨てる事も出来ない。
それほどの魅力が、このノートにはあった。

永琳とて月の賢者と呼ばれた天才。
このノートに触れた時から並々ならぬ存在感が永琳の興味を惹いた。
初めは徒歩での移動ついでの暇潰しにと、暗号の解読に勤しんだ彼女。
最高の頭脳を持つ彼女にとっては、解読にそう長い時間は掛からなかった。
果たして永琳は、ノートという媒体を通してDIOの言葉に耳を傾け始めた。


まず、このノートに記されている事柄はどう控えめに言っても『非人道的』だった。
悪逆非道の限りを尽くした体験記……というのも少し違う。
人類を超越した吸血鬼が自身の目的を書き記した、天国へ向かうための方法。
あまりにも、突飛過ぎて、常軌を逸している。

正直に言おう。
しかし永琳は、その内容を垣間見てあろうことか『奮って』しまった。
DIOの記した文字の、文節の、文章のひとつひとつに釘付けになってしまった。


『天国』 『魂』 『スタンド』 『宇宙』
『未来』 『引力』 『時間』 『世界』
『らせん階段』 『ドロローサへの道』 『特異点』 『天使』


まるで蜜のように甘い言葉の誘惑。
一言で言えば、『カリスマ』。
そんな雰囲気を、言葉の節々から否応にも感じさせる魅力。


故に永琳は戦慄した。


生粋の研究者気質である永琳にとってもDIOの考える『天国へ行く方法』は難解かつ深遠。
それだけに余計彼女の探究心を刺激した。
邪悪の化身と呼ばれるDIOが一体何を考え、何を企み、どう生きたのかを、知らずにはいられなかった。
知りたいと、思ってしまった。


そして、そこで本を閉じた。


先述した通り、永琳は決してDIOに同調したわけではない。
面白い男だとは感じても、どれほどの興味が湧き出ても、
この男は紛うことなき『邪悪』だったからだ。

DIOに心酔し、慕う数多の部下と同じ道を辿るほど永琳の良心は欠けてなどいなかった。
どころか、DIOを愚かだとすら思った。


彼は…究極の難題に挑戦しようとしている。
それは千年以上も昔に、主である蓬莱山輝夜が5人の男へと与えた無理難題よりも遥かに多難だった。
だというのに、彼は『執念』とも言える欲深さを以って狂気染みた目的を達成しようとしている。
どこまでも欲望に忠実で、『生』を全うしようとしているその執念は、不死の永琳にとっては素晴らしく映った。
己の呪われた運命に抗うことをやめた永琳と、歩みを止めることなく運命と闘い続けるDIO。
自分と同じで既にヒトをやめた彼は、それでも自分に無いモノを持っている。
そう。DIOは生を『謳歌』しようとしたのだ。
そこだけは、本当に尊敬した。


しかし彼は『孤高』だった。
どこまでも……歪にさえ見えるほどに前向きの彼は、どこまでも自分勝手だった。
ノートを通しておよそ推測されるDIOの性格は『傲慢』『自信家』『理知的』、そして何よりも『負けず嫌い』。
人間の『頂』を飛び越えて、それこそ天国へ届くほどに登り詰めようとした彼は、他の全ての存在を置き去りにしようとした。
誰よりも強い自信と、誰よりも強い力を持った男は。
その素晴らしい力を正しいことに使おうとはしなかった。

そんな“元”人間の彼が究極の高みまで登ろうとしている姿は……月人の永琳から見れば非常に滑稽にも映る。
思えば先刻遭遇したリンゴォも方向性の違いはあれど、ある意味ではDIOと似ていた。
目的のためなら他の何者をも擲ち、終点の見えない高みまで突き進む孤高さ。
リンゴォと同じに、このDIOという男も呪われた信念でも持っているのか。
人間とはどいつもこいつも、これほどに愚かなのか。

どうしてもっと『妥協』できない?
どうしてもっと『自由』に生きれない?
害毒の鎖に縛られた『運命』とやらに、何故そこまで怯える?
短い時間を生きるしかできない種族が、何故そこまで生き急ぐ?


―――所詮はイエローモンキーね。


かくして月の賢者は地上の猿を見下した。

どれほど夜空の月に焦がれ、手を伸ばそうとしても。
その行為は結局の所、水面に映った月を掻き回そうとしているだけだ。
彼らはそれに気付くことも無く、死ぬまでその行為を止めようとはしない、いや出来ないのだろう。
伸ばしたその手が月にまで触れることは無い。
妥協を学べ。
自由を探せ。
それが地上の民の―――人間の生き方だ。
我々月の民が永い永い時間をかけて模索した、賢い生き方なのだ。




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さて、とはいえこのDIOという男。
そしてこのノートに記される天国へと行く方法。
非常に危険ではあるし、同時に興味も尽きない。
少なくとも永琳はこのノートを通すことでDIOへの関心が際限なく湧き上がったのは事実だし、それは否定出来ない。
彼の持つ『カリスマ』は間違いなく、本物の輝きだったということだ。
だがしかし、このノートには決定的に足りない項があった。

『天国』とは何なのか。
そこに辿り着いた者は、『何』を見るのか。
肝心要の部分が、このノートには記されていない。

よもや死によって辿り着けるとされる『あの』天国ではないことは流石に承知している。
それはある意味、不死人である永琳が最も見たい景色なのかもしれないが、そうではない。
月の頭脳を持つとされる永琳でも想像だに出来ぬその景色は、彼女の知的探究心を刺激する。
なんなら天国へ向かうその方法、私が成就させちゃおうかしら? などと軽い冗談を吐ける余裕だってある。

もっとも、永琳もこのノート全てに目を通したわけではない。
まだまだ見落としている部分もあるかもしれない。
暇が出来たらまた続きでも読むとしようか。
読みかけの小説に栞を挟むかのような気軽さで、ノートの続きに想いを馳せる。


「さっ。読書タイムも程ほどに、やるべきことは山ほどあるわ」


キィ…と、愛用していた椅子を揺らし、背伸びをしながら立ち上がる。
休日の午後の茶店ならば小説の1冊も読み通せるだろう。
しかしこの場所は血生臭い戦場。もっと言うなら、破壊の跡がすっかり目に付く我が家だ。



永琳が自宅の机などで読書に勤しむことになった経緯はこうだった。

時を遡ること半刻。時計の針も9時に到達しようかという時刻。
ウドンゲから電話で聞いてはいたが、この診療所もご他聞に漏れずバトルフィールドの役割として大活躍だったらしい。
魔女の遺体をサンプル蒐集するためにここまで真っ直ぐ足を運んだが、まず来てみてビックリ。
数え切れぬ客を招き入れた愛着すらある玄関扉が、廊下の壁にめり込んでいる。
一体どれほどの怪力者が来客したのか。扉くらい静かに開け閉めして欲しい。

次に応接間からお茶の間に至るまで、あらゆる弾幕痕が流星でも襲来したかのように部屋中を蜂の巣にしていた。
ふすま、障子、天井、床下……あぁ、お気に入りの化粧鏡まで。
…まず間違いなく、ウドンゲの仕業だった。
緊急事態だったとはいえ、これだけ穴だらけの欠陥住宅で冬を過ごすことは難しいだろう。
このゲームが終わったならばウドンゲにはすぐに修理してもらおう。……1日で。


そんなこんなで、気だるい気持ちを抑えながらも永琳は庭先に出た。
…縁側の傍に何本もの鉄の棒が突き刺さり、不気味なオブジェを形作っていた景色には目を瞑った。
事前に聞いていたとおり、庭の隅には確かに何かを埋めたような跡がある。

永琳はアリスという魔女とは会ったことも見たことも無い。
これからやることには少しの引け目は感じるが、別段気の毒とは思わなかった。
しかし永琳も一人の医者であり、血の通った月人だ。
ヤマビコ妖怪の時と同じく、目を瞑り祈りを捧げる。
せめてその魂だけは、安らかに『天国』へと逝け。

思えば職業柄、死体にメスを入れることはあっても、墓荒らしの真似事などとんとやった記憶が無い。
少なくとも永き人生の中で、そのような行為が必要な場面に立ち会ったことは無いと思う。
心の中で一言「ごめんなさいね」と呟き、数十秒間の黙祷を終える。

墓のすぐ傍にはシャベルが放置されたままだった。恐らくウドンゲが使ったものだろう。
体力仕事は慣れたものだ。シャベルを手に取りせっせと土を掘り起こしていく。
弾幕で軽く穴を開けても良かったが、死体にまで穴を開ける可能性を考えるとその案は却下。

こうして永琳は魔女の亡骸と対面した。
死因は失血だろうか。胸部に大きく穴が開いている。
見知らぬ他人とはいえ、このような惨状は見るに耐えない。
デイパックからエニグマの紙を取り出し、前回と同じ様に遺体を紙に収納する。
一枚の紙に遺体を二つも同居させるのもどうなのだろうとは思ったが、とにかくこれで『サンプル』は増えた。



掘った土を埋め直すことも無く、次に永琳は屋敷へと上がり、己の仕事場へと足を運んだ。
遺体のサンプル回収も重要だったが、永遠亭での目的は他にもある。


「……どうやらここは比較的被害が少ないみたいね」


立ち並ぶ医療機器や薬品が数多く揃うこの作業場は、戦闘による被害は殆ど無かった。
ここが無事ならばお茶の間の一つや二つ、安いものだ。
とはいえこの場所もどうやら人の手が加えられているらしい。
幾つかの医療道具や薬品が持ち去られていた。ウドンゲか、それ以前に誰かがこの場所へ来たのか。
幸いにも全ての道具が無くなっているわけではなく、ホッとしながらそれらの道具をデイパックに詰めていく。

そしてここへ来た最大の目的が、目の前にある技術の結晶“X線撮影装置”…いわゆる『レントゲン』である。

何に使用するかは今更語ることもない。
参加者全ての生殺与奪を握っているとされる脳内の爆弾、それの解析だ。
被験者は自分。
手馴れた手つきで機械を起動、すぐに撮影の準備に取り掛かった。
ありがたいことに電源は生きている。無駄骨にはならずに済みそうだ。
愛用のナース帽を脱ぎ、早速正面と側面からの写真をパシャリ。結果を待つ。

とはいえ実のところ、永琳は撮影結果にはあまり期待してはいない。
まず、主催は『脳に爆弾を仕掛けた』とは一言たりとも発言していないからだ。

『僕たちは君たちの脳を爆発させる能力がある』

最初の会場では確かに奴らはそう言っていた。
この台詞のニュアンスから考えて、爆弾などという可視的な物質を使用している可能性は低い。
そもそもそんな小型爆弾を参加者の脳内ひとつひとつに設置していくなど、手間も掛かるばかりで非効率だ。
恐らく不可視の存在……所謂『オカルト』『呪い』そして『スタンド』。
そんな常識外れな能力の可能性が高い。その中で更に高い可能性を持つのは『スタンド』か。

それも単純な爆破能力などではない。
奴らはいともたやすく神や蓬莱人を殺してみせると言いのけたのだ。自信たっぷりに。
ここまでの数時間でこの能力に太刀打ちできるほど、流石の月の頭脳でも見通しが立たない。


しかし、だが……何か糸口が。
針穴ほどの光明でもいい。
死中求活のための、足掛かりが欲しい。
ここで自分が光を見出さねば、誰が輝夜たちを守るのだ。

それに少し、釈然としない。
小骨が喉に引っ掛かったような、不快な違和感。
なんだろう。何処かで、何かを見落としている。

ええいしっかりしろ、八意永琳!
私は月の賢者とまで呼ばれた天才だったろう!
なんだ、この違和感は……? 思い出せ……ッ!






ピーーーーー!






何万通りもの可能性の海を模索する永琳を、無機質なレントゲンの音が現実へと引き戻した。
思考を中断され、苛立たしげに席を立った永琳は乱暴に写真を手に取る。



撮影結果は、『異常ナシ』だった。



▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽



少し、疲れたのかもしれない。
肉体的に、というよりも精神的に。
レントゲン写真については元より期待の範疇外。それほどダメージは無い。
どころか、数ある可能性の一つを潰せただけでも儲けものと捉えよう。

未だ永琳の心を揺す振っているのはウドンゲから聞いた衝撃の事実。
永琳のまさしく与り知らぬ所で、月との交友が良好の関係を進んでいたこと。
それと、ウドンゲそのものとの絶縁も理由に値する。
短い間に色々な事が起こりすぎて、心に少しの平穏が欲しかった。

蓬莱人であろうとも疲弊はする。
そんな疲れを吹き飛ばす意味でも、少し足を休めることにした。
薬品や資料が並ぶ机に腰を下ろし、一息つく。


そう言えばと、永遠亭に至るまでに読み進めておいた『あのノート』でも開くか。
支給品であるDIOのノートを再び手に取り、その異様とも言える内容を頭に入れ始める。
どうも自分は常に脳を使い続けていないと落ち着かない性分らしい。
熱いお茶でもあれば最高だが、それも虫の良い話と諦め、素直に本の虫となる。


―――――

―――



「さっ。読書タイムも程ほどに、やるべきことは山ほどあるわ」


以上が、永琳が永遠亭に到着して半刻足らずの出来事だ。
しかし出来事、と呼べるほどに劇的な何かがあったわけでも無い。
やったことと言えば墓荒らしと、記念撮影と、読書ぐらいだ。
暗雲立ち込める現状を打破する手段も思いつかない。
そんなゆったりとした時間を過ごし、時計は10時を回ろうかという頃合。

つくづく自分が嫌になってくる。
少なくともやることはハッキリしているのだ。
約束の時刻まであと2時間。
その時、伝言を聞いてやって来た輝夜やらてゐやらに、まさか『それでは脱出の策をこれから皆で考えましょう』などと言える訳がない。
彼女たちは恐らく自分に大いなる期待を寄せている筈だろう。

『あの天才ならば』
『永琳ならば何とか脱出の手立てを編み出している筈だわ』

皆の期待の眼差しがありありと想像できる。
彼女たちを裏切らないためにも、この月の賢者が動かないわけにはいかない。

……そもそも、ウドンゲはともかく輝夜たちが今も無事だとは全く限らない。
こんな所で他人の日記などに読み耽っている場合では、ない。考えるまでもなく。
永琳は折角の落ち着いた気持ちを、深い溜息と共に体外へと吐き出した。
げに恐ろしきDIOのカリスマ。ノート1冊で永琳のキャラクター像もあわや崩壊寸前だった。
永遠亭の大黒柱も何たる無様。これではウチのお姫様を笑えない。




「……さあさあ! 元気出していこう永琳! 輝夜に呆れられちゃうわ!」


両頬にピシャリと一喝を入れ、心機一転を目指す。
頭に浮かぶは姫と兎たちのニヤけた嘲笑。
そんな日常を少しだけ思い出し、永琳もクスリと口元がニヤけた。
どうやらウドンゲとの電話後の大笑いの時から、頬の筋肉が少し緩んだらしい。

そう。
皆で生きて脱出。
つまりは、それさえ叶えば『幸福』な日常を手にすることが出来る。
それはこのゲームが始まる前の日常よりも、少し違った幸福。
月の恐怖から解き放たれた、ほんの少しだけの『優しい世界』。


戻りたい。
いや。
手に入れたい。

そんなささやかな、優しさを。



希望を胸に、逆転の一手を指すその駒を。
私を誰だと思ってる。
お前たちが駒として召喚し、地を這う蛇だとタカを括り笑っている相手は、月の頭脳だ。
白旗を挙げるには早すぎるだろう。
このままで終わるわけがないだろう。


「―――精々、高みから胡坐掻いて見下していなさい。……でも忘れないで。
    貴方達がそこから天罰を下せるように、この地上から月へと辿る方法なんて、いくらでもある。
    水面に映る月なんて掬わなくても、手を伸ばせば月には届くのよ」


なんなら撃ち落してあげようかしら?
窓から覗く朝空に紛れる、既に見えぬ月影を仰ぎながら永琳は宣戦布告を唱える。

かくして天才は、勝利の酒に酔う想像を誇った笑みで讃えながら、
その一歩を踏み出す――――






―――ギィ……ギィ……―――




(………!!)


その時、木の板を踏み締める音が聞こえた。

永琳は静かに、だが飛びつくように耳を床に押し当てた。
外の廊下にひとり。こちらへと近づいてくる。
足取りは軽いようであり、重いようでもある。
フラフラと覇気の無い歩行。警戒しながら歩くような動きではない。
同時に、僅かなる衣擦れの音。
長い着物の裾を引き摺るような、そんな音。
きっと女性だろう。



…………はて。



どうも、聞いたことのある足音のような気がする。
最近、身近で聞いたような足音。可能性はそう多くない。

『長い着物の裾』……!





トクン、と。


心臓が大きく脈打った。

逸る焦燥を、鼓動する左胸を手で押さえつけ、

足音の主が、部屋の入り口で止まった。

スゥー……っと、緩やかに開かれる障子の向こうに居た者は――――





「…………輝夜?」





長い“黒髪”を揺らし、よく知っている“着物”を纏った『彼女』がいた。


自身も敬愛する永遠亭の主であり、月の姫君。
『美しい』という言葉でさえ彼女の美を形容するには物足りない。
月の光に咲き出た夜の花。

永遠の姫『蓬莱山輝夜』。



―――その生涯の“友”……『藤原妹紅』の変わり果てた姿がそこに居た。



永琳とて妹紅とは付き合いが長い。
主である輝夜とは正反対の“銀髪”を揺らし、不死鳥の象徴である“焔”を表したような紅いズボン。
奔放で気が強く、意外と面倒見も良い。
輝夜との日課である“殺し合い”も、最近では嬉々として楽しむ節も見られる。

正直に言えば、永琳はそんな妹紅が結構好きだった。
輝夜も妹紅のことが好きだったのだろう。
愛する娘に初めて出来た親友。
永琳が妹紅に抱くのはそんな母性のある、微笑ましい気持ち。


だが、目の前にいる妹紅から感じられるのは、生気の無い抜け殻のような感情。
病を患った精神病患者のそれと似ていた。
瞳の奥には『虚無』。何も映し出されていない。


(―――まるで、『幽鬼』じゃない……。一体、何があったらそんなカオ出来るのよ……妹紅)


絶句した。
あらゆる絶望を孕み、希望も廃れた、そんなカオ。
それに……なんだって輝夜と同じ“黒髪”に染め、輝夜の持つ“火鼠の皮衣”を纏っている?
一瞬、本当に輝夜かと見間違えた。それほどに、似ていた。
姫と同じ容姿で、よりによって私の前に現れて。
一体それは何への当てつけだ。




「随分とノーフューチャーな表情してるのね。……『地獄』でも見てきたのかしら?」


あっけらかんと皮肉たらしく言う。
事情は大体にだがリンゴォから既に聞いていた。
その『地獄』にまで妹紅を叩き落したのは他ならぬ彼なのだから。

だから予想は出来ていたのだけど、予想以上だった。
『死の淵』に呑まれたからといって、ヒトはここまで壊れるものだろうか。
それとも、その後にも何か『酷い出来事』を体験したとでも?
真っ白だった髪も漆黒のように黒くなっちゃって……恐怖体験したならば髪は白く抜けるのが常識でしょう。逆じゃない。



―――んて、ない。



目の前の『人形』をどう扱ったものかを思案する永琳の耳に、蚊の鳴くようなか細い声がかろうじて届いた。
思わず聞き流してしまいそうな、まるで気力の無い声が。
故にそれが妹紅の口から発せられたモノだと気付くのに、若干の遅れが生じた。







「――――――『地獄』なんて、無かった。『あそこ』には………何も、なんにも無かった」







黒い火の粉が、舞った。





▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


『藤原妹紅』
【午前】D-6 迷いの竹林 永遠亭前


藤原妹紅は恐怖に肩を震わせていた。
それもそのはず。彼女は放送を聴いていない。
故に禁止エリアが何処に設置されているのか、知る手立てが無い。


(―――死ぬ)


放送が始まり、エリアを二つ通過してきた。
もし今居るこの場所が禁止エリアに指定されていたら……?


(―――死ぬ…)


死んでいた。二度。
二度も、死ぬ可能性を通過してきた。
さながら蜘蛛の糸よりも細い綱渡りを、意味も無く行っている。


(―――死ぬ……!)


支給の地図にはくっきりとエリアが線引きされている。
しかし当然だが現実にはそんな柵など無い。
何処から何処までが次なる区域なのか。正確には分からない。
三歩先に見える地面が、全て地雷原に見えてくる。

運が悪ければ―――そこで、終わり。


(―――死ぬッ! 死んじゃうッ!)


嫌だ嫌だ何で私がこんな目に……!
このエリアに入って何分経つ……!?
3分…? 5分…?
10分にも感じるし、1分も経ってない気もする。
もし……もし10分経ってたら、私はすぐにも爆発して! 死んじゃうかもしれない!
嫌だ……! お願い……お願いだから、爆発しないで……ッ!


死にたくない! 死にたくない! 死にたくない! 死にたくない! 死にたくない! 死にたくない! 死にたくない!!!



―――ハァ…! ―――ハァ…! ―――ハァ…! ―――ハァ…! ―――ハァ…! ―――ハァ…! ―――ハァ…!
―――ハァ…! ―――ハァ…! ―――ハァ…! ―――ハァ…! ―――ハァ…! ―――ハァ…! ―――ハァ…!
―――ハァ…! ―――ハァ…! ―――ハァ…! ―――ハァ…! ―――ハァ…! ―――ハァ…! ―――ハァ…!
―――ハァ…! ―――ハァ…! ―――ハァ…! ―――ハァ…! ―――ハァ…! ―――ハァ…! ―――ハァ…!
―――ハァ…! ―――ハァ…! ―――ハァ…! ―――ハァ…! ―――ハァ…! ―――ハァ…! ―――ハァ…!




――――――――――――ドクン

――――――ドクン

―――ドク

―ン。






心臓の鼓動だけが耳に響く。

歩くのもやめ、座り込みながら耳を塞ぐ。

鬱陶しい鼓動の音だけが、今だけは何よりも救いの音色に聴こえた。

生きている。

自分はまだ、生きている。




「―――――――――ハァ…! ハァ…! ハァ…! ハァ…!」


生の実感と共に、ドッと汗が噴き出た。
ガクガクと小刻みに震える身体を、強引に両腕で押さえる。


今回も、生き延びた。





―――――――――く、ふ



「……ふ、っく、はは……っ あは はははははははははははははーーーーーーーーーーーッ!!!」



ねえ、見てる? 芳香!
私、また生きたよッ! ホラ!
あっはは! 嬉しいよ! ほんとに、こんな嬉しいことないよ!
生きてるんだ! なによりそれが嬉しいのよ!
生きてる生きてる! 見てよ! ねえったら!



「ははは……見てよ、お願いだから、さぁ……」


もはや正気ではいられなかった。
狂気でいることが、この世界では正しく正常で。
迫り来る恐怖から逃れる唯一の逃げ道なのだ。

こんな事があと何回続く?
一歩を進むごとに死の呪縛から逃げ続けなければならないのか。
これでは精神が保たない。
すぐに壊レテしまう。
でもまだマダ狂ってなんかいない狂ってナンカ。
私ハ狂っていないクルってない来るってクル繰るッテ――――――




「あ……………家だ」




いつの間にか歩き出していた。
どこかで見たような、竹林の屋敷。
誰の家だっけ……? あぁ、そうだ。

輝夜だ。

あいつの家だ。
輝夜……あいつは元気かな。
死んでないかな。

あっ もう殺したんだっけ。私が。

そうだそうだった。焼いたんだ確か。
なんだよ、随分あっさり死んだなぁ。
今までずっと殺し合ってきた日々はなんだったのかしら。

まぁ、死んだんならいっか。
みんな殺さないと、私が死んじゃうしね。


あそこには誰か居るのかしら。
居るなら全部燃やさないと。


▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽




「――――――『地獄』なんて、無かった。『あそこ』には………何も、なんにも無かった」


永琳の奴が、可笑しいくらいに的外れなことを口出してきた。
『地獄でも見てきたのかしら』だって……?

見てきたよ。
『虚無』を。

この世界には『地獄』も『天国』も、ありゃしないんだ。
『在』るのは、『無』だけ。
『無』だけが、『在』った。

コイツはなんでそんなことも知らないんだ。
月の賢人として、持て囃されたクセに。

……あぁ、そっか。
コイツも私や輝夜と同じ『蓬莱人』だったわね。
それじゃあ想像も出来ないわよね。『死後の世界』なんて無いということが。
だから私は言ってやった。
『地獄なんて無かった』という、どうしようもない事実だけ。

そして、すぐにコイツにもそれを身を以って教えてやりたくなった。
私と『同じ場所』に連れて行きたくなった。
だって、貴女も私と同じ『呪い』に苦しんでいたんでしょう?
不死という呪縛から逃れようと足掻いてきたんでしょう?
分かるわよ、その気持ち。


―――すぐに、楽にさせてあげるね。……ねぇ、永琳?




「……一瞬で終わるよ永琳! 私の時と同じ様にッ! 私の時と同じ様にィィイイイーーーーーーーッ!!!!」


慟哭のように咆えた。
絶望を象徴するような闇を抱えた焔が、飛ぶ。
ほぼ同時に、永琳が舌打ちと共にバックステップでそれを回避した。
情け無用の先制。不意打ち。
死なないためには、相手より先に殺す。
簡単な理屈だ。あの九尾だってそうしたんだから。

右腕に宿ったのは『漆黒の焔』。
何故かいつもの焔とは違うけど、なんだよ出るじゃんか。焔。
どうして九尾の時は出せなかったのさ。
それに輝夜の時は焔はまだ『紅色』だった気がする。


……あれ。
今気付いたけど、私の髪も『黒色』じゃん。
なんでだろう。これじゃあ輝夜とお揃いだ。忌々しい。

でも、そう………遥か昔の事だけども。
人間だった私はまだ、黒い髪を自慢にしてた気がする。
よく手入れして、たくさん伸ばして。
でも、そんな自慢の髪は誰にも褒められなかった。
お■様も、誰ひとりとして。
私は望まれない子だったんだ。
髪が銀に変色したのは、蓬莱の薬を飲んだ後からだっけ。
記憶の奔流に埋もれてしまうぐらい昔。
だからもう、あまり覚えてない。

でも今は、昔のまま。
きっと、蓬莱人ですらない今の私だから髪も昔に戻っちゃったのかな。

……あぁ、『黒』は怖い。
否応にも『あの場所』を想起させる。
そんな私にとって恐怖でしかないその焔の黒色は、でも何故だか希望の灯火にさえ見えてきて。


―――この希望の黒焔で私は、私以外を殺す。



「そして、全部を無かった事にするのよ。芳香も輝夜も、みんな戻ってくるの」



    ―――ピクリ。



その言葉を耳に入れた瞬間、永琳の表情が固まった。
ほんの一瞬だけ彼女の時が止まり―――


空気が豹変した。





轟、と。



カマイタチでも起こったかのようなひと薙ぎの風。
思わぬ突風に瞬きしてしまった妹紅の、コンマ1秒の隙。
その致命的な油断の間に、



―――永琳が背後に回りこみ、激しい衝撃と共に床に組み伏せられた。



「あ……ッ!!」

「輝夜が、何ですって……?」


鬼神の如き、有無を言わさぬ迫力の声だった。
さっきまでとは一層違う、氷のように冷たい声。
鞘から解かれた抜き身刀のような殺気が、背中越しからヒシヒシと伝わってくる。


「ぁ、や……ッ! やめて……ッ!! やめ―――!」

「貴女、輝夜に会ったの? 彼女に何をした?」

「こ……殺したのよ! アイツは……私が殺した…ッ! 芳香も死んだッ!
 でも! 全部元通りにするんだッ! 私が優勝して、願いを叶えてもらって……!
 全部『無かったこと』にするのよッ! そうすればみんな生き返るッ! 輝夜も、芳か―――グアァ……ッ!?!?」


押さえつけられた右手に熱い電気が走った。
メスだ。医療道具のメスが突き立てられていた。


―――い…痛い痛いイタイいたい……ッ!!!


「……『死者の蘇生は一人限定』。……最初にそう説明があった筈よ」

「蘇生じゃないッ!!! 全部元通りにするだけ……ッ! じ、時間の逆行よッ!!」

「主催からそう説明があったのは、『忠告』のため。
 『そんな都合の良い話があるわけが無いだろう』という、貴女みたいな愚者へと忠告するためにそう言った」




    ザクリ。


今度は左手に電気が走った。
両手共に、まるで磔のようにメスを突き立てられた。
どれだけ力を込めても、コイツの腕は全く振りほどけない。
まるで鬼だ。

『死』よりも『虚無』よりも、今は何よりこの女が恐ろしい。


―――嫌だ(怖い!)助けて(痛い!)殺される(死にたくない!)悪魔だコイツ(殺さなきゃ!)身体が動かない(どうする!)


 殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない
(殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ殺さなきゃ死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない死にたくない)


「やめろォォオオオヲヲヲヲーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッッ!!!!!!!!!!!」


背後を取られ拘束され、挙句に磔にされた妹紅に残された術など、内包する妖力をしこたまに放出するしかなかった。
背中から燃え上がる黒焔を幾千もの針のように噴出し、圧し掛かっていた永琳ごと包み込む。

「………ッ!!!」

寸前、エネルギーの集束を察知した永琳は飛び退って離れた。
妹紅の背から燃え上がった鋭い黒焔はそのまま天井を突き破り、一瞬にして炭化させる。
咄嗟の判断が無ければ永琳の身体も燃える針山に貫かれ、黒焦げにされていただろう。

「う、ァ………ハァ…ッ! ハァッ…! く、そぉ……ッ!」

一方、瞬間的にとはいえ一気に力を使用した妹紅は疲弊を免れない。
両手に刺さったメスは焼かれて炭と化し、床への拘束はひとまず脱した。
炎を無効化する『火鼠の皮衣』を着ていたことも幸運だ。
これが無かったら恐らく、自らの炎に焼かれて悶え苦しんで死んでいたのかもしれない。

不死だった時代の、自虐的な性格が私の枷になっている。
もっと、自分の身体を大切にしろよ!
この世界では……死んだら終わりなんだぞ!

心中でそう叱咤した妹紅が立ち上がると、永琳の姿が見えなかった。
いかな永琳でも今の妹紅に迂闊に近寄り、火達磨になるのは御免だと判断したか。
ここは屋内。隠れる場所も多い。




「えーりん……? 痛いじゃないのよぉ……。どこに隠れたの?
 かぐやの所まで送ってやるからさぁ……出てきてよォー……!」


嘘だ。
輝夜の所なんて、無い。
死んで逝き付く場所なんて無いんだ。
死んじゃったら、全部無くなっちゃうんだよ。
魂も、想いも、信念も、ぜーんぶ。
だから人は生き返らない。魂は戻ってきたりはしない。
だから私は時間を廻す。全てを無かったことにする。
あのリンゴォもやっていた。短い時間とはいえ、時間逆行は可能なんだ。
私は皆のためにやってるのに。
皆が幸せに笑えるためにこんなに頑張ってるのに。
それを。
それをそれを。
それをそれをそれをそれをそれをそれをそれをそれをそれをそれをそれをそれをそれをそれを――――――!



「なんでお前は邪魔をするんだアアアアアァァァァァーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッッッ!!!!!」



怒りが湧き上がってきた。
こんなにも私は独りぼっちで頑張っているのに。
永琳の奴は簡単に否定するんだから。
偉そうに威張り散らして、御高説垂れて、何様だ。

燃やしてやる。
お前という肉体も、魂も、笑みも匂いも誇りも目の前から全部燃やしてやるッ!!


ラストワード―――『フェニックス再誕』


背から生える両の翼は黒の焔から成り、
その姿は不死鳥というよりも、もはや猛り狂う怪鳥の如し。

敵の姿が見えないのなら、目の前の光景全てを焼け野原に変えてしまえばいい。
制御なんてしなくていい。
この敵さえ消してしまえば、一時の平穏が得られる。

―――死ななくて、済むッ!!









『ウドンゲ、いるわね? 私よ。永琳よ』





(――――――……ッ!?)


背後から奴の声がした。
ありえない。いつの間に背後まで隠れた。

弾幕を繰り出すその刹那、私は背後の声に誘き寄せられ、つい振り返ってしまった。



そこには1台の……見たことも無い小型機器が落ちていた。



声の主は、それだった。


(―――しまっ)


謀られた……!
悟り、すぐに振り向くも、遅かった。
電光石火の如く影が走り、それは一瞬にして妹紅の傍まで跳んだ。


ピシリ、と。


意識に亀裂が入った。
唐突に暗くなる景色。
瞼が意思に関係なく落ちていく。

堕ちて――――――







――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――■■■■■。










「『三界の狂人は狂せることを知らず。四生の盲者は盲なることを識らず。
 生まれ生まれ生まれ生まれて生の始めに暗く。死に死に死に死んで死の終りに冥し』。
 ……貴女は、自分が狂人だという事にすら気付いていない。
 真実を見抜く眼を持ち合わせない者は、己が何ひとつ見えていない事すら知らない。
 貴女もそんな『生』と『死』の輪廻に、いい加減に飲まれてしまいなさい。

 ……もう疲れたでしょう」



最後に届いた囁きは、底冷えた否定。
永琳の言葉を意識の奥で咀嚼しながら。



私の意識は、再び旅立った。





▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽




「ふぅ……。何とか成功したわね。念のためあの時の会話を『録音』しておいて良かったわ」


妹紅を行動不能にした永琳は小さく独り言を漏らし、床に落ちた携帯電話を拾った。
妹紅の『黒翼』を見た彼女は即座に『ヤバイ』と判断。
物陰に隠れながら支給品の携帯電話を弄り、それを気付かれぬように床を滑らせ妹紅の背後に設置した。

『会話録音機能』。
永琳の携帯電話には事前に掛けた相手との通話を録音する機能が備わっている。
ウドンゲとの通話を予め録音しておき、その会話を再生して聴かせた。
簡単な陽動だ。まんまと隙を生み出せた。

「……この幻想郷において、死後の世界の存在を考えることほど無駄な時間も無いというのにね」

もっとも、このゲームではその限りではないのかもしれない。
死んだ後に逝く場所など、死んだ者にしか分からない。
蓬莱人ならばなおさらのこと。

永琳は床に突っ伏した妹紅を軽蔑するかのように見下す。
彼女が先に放った言葉。


『こ……殺したのよ! アイツは……私が殺した…ッ!』


輝夜が、既に殺されている……? 妹紅の手によって……?

……戯言だ。
そう容易く否定できるほどの根拠は持ち合わせていなかった。
だが、輝夜の力は強大だ。永琳ほどとはいかなくても、限りなく強大。
狂い堕ちた妹紅にやられてしまうほど弱くない。

妹紅の言葉を否定出来得る根拠があるとするならば、それは自分と輝夜との『信頼』の他ない。

とはいえ、妹紅が輝夜を襲ったことは事実だろう。
永琳は、だから怒った。キレたと言っても良い。
心の底から殺してやりたいと思った。
知った仲など関係なく、完膚なきまで蹂躙してやりたいと思った。

だが、輝夜の悲しい表情が脳裏に一瞬浮かんだのだ。
永琳の冷たい心の奥に残った良心が、その行為を踏み留めた。


―――だから、薬を使って一時的に仮死状態にせしめた。



永琳とて月人きっての天才医師であり、ここはそんな医師の診療所。
『あらゆる薬を作る程度の能力』を持つ永琳にとって、人間を仮死状態に落とす薬品の調合はそう困難ではない。
妹紅の隙を突き、薬品を染み込ませたハンカチを嗅がせて意識を落とした。

こうして取り敢えずの窮地は脱したが、さて。
『彼女』をどうするか?
このまま放置するのは却下だ。
無難に『サンプル』として持ち運ぼうかと考えたが、あくまで仮死状態であり『死体』ではないのでエニグマの紙には収納出来そうにない。




…………ん?




いや、待て。
仮死状態だから紙には入らない……?


頭の中で作成途中だったパズルの、新たなピースが見つかった。
数万のピースの山に埋もれていた、ひとつの欠片。
そんな、光明を見出す感覚。


このエニグマの紙には、基本的には生物をこちらの意思で入れる事は出来ない。
それが出来るのは、元より主催側の裁定から『許可』されている支給品扱いの生物のみ。
『生きている者』は紙から弾かれ、
『物や死体』は紙に許可される。

紙――もとい、主催から。

今。
床で寝転がっている妹紅は、一時的にとはいえ『死体』だ。
『仮死状態』……呼吸や心肺が停止し、一旦は命が無いとされる状態をいう。
今……妹紅は間違いなく『死んでいる』。
自然蘇生するまでに数時間は掛かる見通しだが、『気を失っている』とか『意識が無い』とかではなく、確かに死んでいる状態なのだ。
自分の調合した薬だ。絶対の自信はある。


エニグマの紙を広げ、ゆっくりと妹紅の傍まで近寄る。
額の汗が鬱陶しい。汗を拭いてくれる助手は、もう居ない。

問題は……主催の『裁定』に引っ掛かるかどうか。これは賭けだ。


そっと、妹紅の身体に広げた紙を被せた。












――――――紙に、入ってしまった。


驚くぐらい、あっさりと。






最後のピースが、唐突にはまった。
ずっと違和感を覚えていた部分があった。

それは初めに配られた『ゲームルールメモ』の【禁止エリア】についての項。


―――脳の爆発以外の要因で死亡した場合、以降爆発することはない。誘爆もなし。


これだ。
言葉の意味は、読んだ通りなのだろう。
だがよくよく考えてみれば、この説明の必要性が感じられない。

脳の爆破にON・OFFの概念があると仮定して、
禁止エリアに侵入後10分で自動的にスイッチは当然だがONとなる。
他にも参加者が主催たちの不利益になる行動を起こした時、あの秋の神のように手動でもONに切り替えられる。
たった今エニグマの紙に吸い込まれた妹紅は、紙から――言い換えれば主催からは『死亡』状態にあると裁定を受けた。
死亡……つまりはスイッチがOFFから動かない状態とも言える。

主催たちが参加者の動向を何処まで把握しているかはわからない(十中八九、居場所ぐらいは知られているだろうが)。
盗聴器の可能性は無い。レントゲン写真にはそんな物仕掛けられていなかった。


監視カメラはどうだ?
……それも考えにくい。
このだだっ広い会場全てに満遍なく、死角のひとつも作らずにカメラを設置するなど到底不可能だ。
例えば、まさしく神の様に天上からこちらを見通していたならば、お手上げだ。成す術が無い。

しかし、もしかしたら主催は案外参加者の動きを知らないのではないか?
把握できるのは精々、参加者の『生死』と『現在位置』程度の可能性もある。


またはもうひとつの可能性として、参加者の誰かに偵察・報告の役割を担う『スパイ』をこっそりと潜ませている可能性だ。
第三者から聞き及んだ情報を眺め、客観的にショーを楽しむ。
奴らの考えそうなことだ。少なくとも自分ならば、そういった存在の一人二人を送り込むだろう。

ゲーム参加者の殆どの人物像を知らない永琳では、疑わしいスパイの存在を絞りきれない。

……だが、あらゆる可能性を模索しても、現状そういった『ジョーカー』の役を持たせるならば―――




「―――姫海棠はたて、かしら。一番可能性が高いのは」


天才が導き出した結論は、ジョーカーは彼女だという可能性。
確証は無いが、実際彼女は『花果子念報メールマガジン』などという低俗な記事を既に各方面に送り回っている。

新聞という媒体を通し、会場の様子をエンターテイメントとして発表している可能性もゼロでは無い。
主催と何らかの繋がりを持っていても、不思議はないのだ。
可能性は……精々5%未満といった所だが。

幸いというべきか、永琳の持つ携帯電話にもはたてのアドレスは登録されている。
接触しようと思えば出来るのだ。
だがリスクもある。
こちらの行動がはたてを通して主催へと伝わることも充分あり得る。
永琳としてはなるべく隠密を通したい。
はたてへの接触に関しては、こちらの『実験』の後ででも遅くはないだろう。


思考が横道に逸れたが、つまりは永琳のこれから行う『実験』が主催に把握される可能性は高くは無い、ということだ。


実験とは、まず禁止エリアに赴き保存しておいた『死体』をひとつ置き捨てる。
この時、同時に仮死状態である妹紅の身体も並べる。
当然自分はすぐにそこから離れ、10分経った後にまた戻ってくる。

『脳の爆発以外の要因で死亡した場合、以降爆発することはない。誘爆もなし』
ルールのこの文章を信じるなら、少なくとも死体の方の頭部は無事だろう。爆破スイッチは二度とONには上がらない。


これはつまり、爆弾が『解除』されているという事だ。


じゃあ、一方の妹紅はどうだろうか?
現在の妹紅は紙に入っている。仮初ではあるが死亡状態だ。

ならば仮説が正しければ、死体と同じに妹紅の頭部も無事な筈……!

とはいえその後、妹紅が仮死から復活した場合はどうなるか。
ルールには『死亡した場合、以降爆発しない』とは記されているが、例外もあるだろう。
主催が参加者の生死を把握している以上、すぐにも復活に気付かれる。
運が悪ければすぐにも禁じ手を行った『罰』が下されるかもしれない。

しかし、それはそれでいい。
そうなった場合でも、罰が下されるのは『妹紅』のみの可能性が高い。
この実験に関わったのが八意永琳だということは、直接現場を見られてない限りは主催側からは知り得ないだろう。
実験結果は確実に得られるということだ。

しかし主催に知られたもしもの場合の事も考えておかなくては。
永琳はメモ用紙を机から取り出し、自身の考え、実験過程や結果を書き記しておくことにした。
例え自分が消されたとしても、他の勇気ある誰かが輝夜たちを守り通してくれるように。
そんな希望を願いながら、スラスラとメモを取る。






「さてと。……10時前か。あまり時間は残っていないわね」


キィ…と、愛用の椅子を再び揺らし、背伸びをする。
永琳は頭の中でもう一度、これからの実験のシミュレートを開始した。

B-4またはF-5へと赴き、サンプル死体と妹紅の身体を一つずつ放置した後、すぐにエリア外へ避難。
10分経って様子を確認し、サンプル達を回収。
妹紅の頭部が無事ならば、それは主催に『死んでいる』ものと判断されたということだ。
そして正午に待ち合わせてある輝夜やてゐと会うため、レストラン・トラサルディーで待機。

……本来ならすぐにでも実験など放り出して輝夜を探しに行きたい。
輝夜の強さは理解しているが、妹紅に襲われたらしい彼女が完全に無事だとも思えない。
だが、自分にはやるべきことがある。
輝夜への信頼を自ら否定して、成すべき事も成さないのは愚か者のやることだ。
信じよう。輝夜の無事を。

そしてレストラン・トラサルディーで放送を迎えた後。肝心なのはここからだ。
正午をまわっても妹紅の肉体はまだ復活しない。そんな風に『殺した』のだから。
絶対に聞き逃せないのは放送の『死亡者の発表』だ。
もしも妹紅の頭部が無事で、実験が限りなく良好を辿っていたならば、放送では『藤原妹紅』の名が呼ばれるだろう。

ここで初めて実験を『成功』とする。
主催を騙し通せたという確かな『結果』が欲しい。

その後、妹紅は復活し、主催も妹紅の復活を察するだろう(察することが出来なければそれはそれで大成功だ)。
それはいい。妹紅はどうとでもなる。

この実験で知りたいのは『主催が参加者の生と死をどこで区切っているのか』だ。

肉体の仮死状態を主催が『死亡』と捉えるのならば。
例えばだが、『仮死状態のまま動き回る術』があれば、事実上の脳内爆弾は解除となる。爆破スイッチは二度とONには上がらない。

しかしひと口に『仮死状態のまま動き回る』と言っても、それはつまり脳が死んだ状態で肉体を動かすということ。

死んだ人間の肉体に脳を移植するというのはどうだ……?
自分なら可能だが……手術に時間が掛かりすぎる上に100%成功の策ではない。

人形に魂を憑依させるわけでもない。そう簡単には………………




「…………『魂』?」


ふと、思い浮かんだ説。

死んだ人間に生きた人間の魂を入れ込む。

死体は『入れ物』として扱い、その肉体を自由に操る。
前述した『ルール』により、その肉体は主催によって爆破されることはないだろう。
なんにせよ参加者の死体はあの主催にとっての『ルール外』。捨てた駒だ。


―――その捨てた駒を利用すれば、主催を騙し抜ける……!


問題は『魂を抜き取る方法』。
それも生きた人間の魂を別の死体に入れ込むというのだ。
そんな都合の良い手段が―――



「―――あるかも」



ここに来て永琳の記憶に先ほど読んだ『DIOのノート』が蘇った。
『魂』を抜き取り『集める』。
天国へ行く方法とやらにも多少の興味はあるが、間違いなくDIOという男は魂を取り出す方法を知っている……!

試してみる価値は充分にある。
勿論リスクは存分に高い。
だが、ここで動かずして何が月の賢者か。


―――禁止エリアでの実験。

―――仲間との再会。

―――はたてへの接触。

―――そしてDIOへの接触。


目眩がするほどに茨の道だが、もうやるしかない。
腹は括った。
後は……『運』を味方につけられるか。
私にその資格があるか。


かつて無いほどに、永琳は燃えた。



▲▽▲▽▲▽▲▽▲▽


【D-6 迷いの竹林 永遠亭/午前】

【八意永琳@東方永夜抄】
[状態]:精神的疲労(小)、体力消費(小)、霊力消費(小)
[装備]:ミスタの拳銃(6/6)@ジョジョ第5部、携帯電話
[道具]:ミスタの拳銃予備弾薬(15発)、DIOのノート@ジョジョ第6部、永琳のアブナイ薬@現地調達、永琳の実験メモ@現地調達、幽谷響子とアリス・マーガトロイドの死体、
    仮死状態の藤原妹紅、永遠亭で回収した医療道具、基本支給品、基本支給品(芳香の物、食料残り3分の2)、妹紅と芳香の写真、カメラの予備フィルム5パック
[思考・状況]
基本行動方針:輝夜、ウドンゲ、てゐと一応自分自身の生還と、主催の能力の奪取。
       他参加者の生命やゲームの早期破壊は優先しない。
       表面上は穏健な対主催を装う。
1:爆弾解除実験。まずはB-4かF-5の禁止エリアへ。
2:輝夜、てゐと一応ジョセフ、リサリサ捜索。
3:しばらく経ったら、ウドンゲに謝る。
4:基本方針に支障が無い範囲でシュトロハイムに協力する。
5:柱の男や未知の能力、特にスタンドを警戒。八雲紫、八雲藍、橙に警戒。
6:情報収集、およびアイテム収集をする。
7:第二回放送直前になったらレストラン・トラサルディーに移動。ただしあまり期待はしない。
8:リンゴォへの嫌悪感。
[備考]
※参戦時期は永夜異変中、自機組対面前です。
※ジョセフ・ジョースター、シーザー・A・ツェペリ、リサリサ、スピードワゴン、柱の男達の情報を得ました。
※『現在の』幻想郷の仕組みについて、鈴仙から大まかな説明を受けました。鈴仙との時間軸のズレを把握しました。
※制限は掛けられていますが、その度合いは不明です。
※『広瀬康一の家』の電話番号を知りました。
※DIOのノートにより、DIOの人柄、目的、能力などを大まかに知りました。現在読み進めている途中です。

○永琳の実験メモ
 禁止エリアに赴き、実験動物(モルモット)を放置。
 →その後、モルモットは回収。レストラン・トラサルディーへ向かう。
 →放送を迎えた後、その内容に応じてその後の対応を考える。
 →仲間と今後の行動を話し合い、問題が出たらその都度、適応に処理していく。
 →はたてへの連絡。主催者と通じているかどうかを何とか聞き出す。
 →主催が参加者の動向を見張る方法を見極めても見極めなくても、それに応じてこちらも細心の注意を払いながら行動。
 →『魂を取り出す方法』の調査(DIOへと接触?)
 →爆弾の無効化


【藤原妹紅@東方永夜抄】
[状態]:発狂、体力消費(中)、霊力消費(大)、両手の甲に刺し傷、黒髪黒焔、仮死(inエニグマの紙)、再生中
[装備]:火鼠の皮衣、インスタントカメラ(フィルム残り8枚)
[道具]:なし
[思考・状況]
基本行動方針:生きる。
1:みんな殺す。
2:優勝して全部なかったことにする。
3:―――仮死状態―――
[備考]
※参戦時期は永夜抄以降(神霊廟終了時点)です。
※風神録以降のキャラと面識があるかは不明ですが、少なくとも名前程度なら知っているかもしれません。
※死に関わる物(エシディシ、リンゴォ、死体、殺意等など)を認識すると、死への恐怖がフラッシュバックするかもしれません。
※放送内容が殆ど頭に入っておりません。
※発狂したことによって恐怖が和らぎ、妖術が使用可能です。
※芳香の死を確信しています。
※輝夜を殺したと思っています。
※現在黒髪で、炎の色が黒くなっている状態です。彼女の能力に影響があるかは不明です。
※現在仮死状態です。少なくとも正午を過ぎるまで目覚めませんが、外的要因があれば唐突に復活するかもしれません。


○支給品紹介

<DIOのノート@ジョジョ第6部>
八意永琳に支給。
かつて空条承太郎の手によって焼き捨てられ、プッチ神父が切望したDIOのノート。
世界の深淵でDIOが探し求めた『天国へ行く方法』が記されている。
用心深いDIOはノートの所々を高度に暗号化、曖昧にぼかしている。

<永琳のアブナイ薬@現地調達>
天才医師・八意永琳が自信を持って調合した、人を一時的に仮死状態にする薬。
テトロドトキシン(フグ毒)などをふんだんに使用し、天才的な比率でギリギリ死なないような調合が施してある。
貴重な薬で量は控えめ。無駄遣いは出来ない。
なお、この薬が誕生するまでに、可愛い助手の必死な悲鳴が夜な夜な聞こえてきた経緯があったことは言うまでも無い。

<永琳の実験メモ@現地調達>
永琳が自身の実験過程を書き起こしたメモ。
自分がいつ死んでも、他者に希望を遺すための大切な記録。
主催への反抗を露骨に表したものなので、信用する者にしか見せない。

112:Bloody Tears 投下順 114:燃えよ白兎の夢
112:Bloody Tears 時系列順 118:紅蒼の双つ星 ― ばいばいベイビィ ―
108:Other Complex 八意永琳 135:亡我郷 -自尽-
099:幻葬事変/竹取幻葬 藤原妹紅 135:亡我郷 -自尽-

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最終更新:2016年04月16日 16:36