「っ!」
強い殺意の気配を感じて青年は振り返る。視界の奥、遠くにいくつもの光があり、
強い殺意の気配を感じて青年は振り返る。視界の奥、遠くにいくつもの光があり、
「――――全員伏せろ!!」
黒服が叫んだ時には青年は契約者の足を払って強制的に床に伏せさせていた。
直後、銃弾が窓を割る音が連続して響く。
「な、何なのよ、これ!?」
「≪モンスの天使≫だ!! ≪組織≫の始末屋の一人が契約してる都市伝説だ!」
「……っ、≪組織≫の、強硬派と言った所か」
苦々しく呟き、
……銃弾が避けて着弾すれば幸せだ。
思い、淡い光が青年から発され幸せが履行される。銃弾はほとんどが一行を避け壁、床を抉る。
しかし護る対象がいる範囲が広い。天使の集団が発射する銃弾全てに対して力をかけ続けることは不可能と判断、
負傷者が出ているだろうことを思い舌打ち一つ、
……結界、銃弾を防げる壁があれば幸せだ!
「破ぁ!!」
光壁を展開する。それは銃弾の衝撃に徐々に削られていくが、
「汝の悪意入ること能わず!」
境界を別つ宣言と共に更に強力な結界が張られた。
≪夢の国≫の時にも見たものと似た輝きを持った結界。今日何度か目にしたその光を見て、
「この範囲でこの強度を短時間で……流石は専門家、か?」
「≪座敷童≫の境界設定です。機銃の斉射では揺るがないと思いますよ」
少女の言葉になるほどと青年は頷く。
「十分。だが、釘付けだな」
結界の消耗を減じる為か範囲は一行ギリギリ、明確な害意を示す銃弾は防いでもそれらが建物の構造物を破壊して作る破片は透過する結界だ。天使群の絶え間ない銃弾がギリギリで当たらないという現在の状況。下手に動いて結界の範囲から出ることは得策ではない。
青年は負傷者をざっと確認する。低く伏せた体制で窺える範囲内では負傷をしているのは、
「掠っただけだ……大丈夫、だから」
と傍らの少女に告げる、背中に負傷を負った≪13階段≫くらいだろうか。
深い傷ではないようだが背中を銃弾が掠り、服が破けて露出した背中の傷が見えている。
そんな彼を泣き出しそうな声を出して気遣っている、以前≪魔女の一撃≫の契約者と共にいた所を見たことのある少女。
命に別条はなさそうだと判断した青年は足払いで伏せさせ、そのまま頭を抑えつけていた契約者と頭を抑えつける手の位置にあるリカちゃんを見た。
「むぎゅー……」
「な、なんなんだくそ」
床にぶつけたのか、額を赤くした契約者と手に潰されていたリカちゃんがそれぞれ唸った。
契約者の少女は飛んでくる破片をはたきながら、
「あの神々しさの欠片も無い銃弾ぶっ放してる天使共、≪組織≫の奴の手先なんだろ? なんで髪の伸びる黒服さんが居るのに撃ってきてんだよ?」
「マッドガッサーの一味に加わったと思われたんだろ」
ほら、俺消息不明扱いだし。苦く笑いながら黒服は携帯を操作して、耳に当てた。
「なら早く≪組織≫に連絡を――」
そう契約者が言った時、その場にいた少女が言った言葉が契約者の耳に届いた。
「携帯のにーちゃんも発作、大丈夫か?」
「だいじょ、ぶ」
その会話の流れを聞いて彼女の視線が黒服から携帯のにーちゃんと呼ばれた少女へと向けられた。少女の姿を契約者は以前≪魔女の一撃≫の契約者と共に居る所として見たことがある。おそらくはマッドガッサー一味の仲間だろう。≪魔女の一撃≫の契約者の正体が割れた今、契約者もそのことに疑いは持ってない。
そして、
…………。
契約者は以前黒服に見せられた写真を思い出す。マッドガッサー一味の仲間である≪爆発する携帯電話≫の契約者は確かに男だった。しかし、
「女体化……?」
そうだ。マッドガッサーたちは女体化ガスを持っている。何らかの理由で自身の仲間を女体化させることもできるのだ。そうして見ると携帯のにーちゃんと呼ばれた少女にはあの写真で見た≪爆発する携帯電話≫の面影がある。
「……ちょっと待てよ」
そして先程髪が伸びる黒服が言っていたことを思い出す。
「お姫様……?」
その言葉に反応した≪13階段≫。その意味を考え、
「……あれ?」
思考が変なところで止まった。
直後、銃弾が窓を割る音が連続して響く。
「な、何なのよ、これ!?」
「≪モンスの天使≫だ!! ≪組織≫の始末屋の一人が契約してる都市伝説だ!」
「……っ、≪組織≫の、強硬派と言った所か」
苦々しく呟き、
……銃弾が避けて着弾すれば幸せだ。
思い、淡い光が青年から発され幸せが履行される。銃弾はほとんどが一行を避け壁、床を抉る。
しかし護る対象がいる範囲が広い。天使の集団が発射する銃弾全てに対して力をかけ続けることは不可能と判断、
負傷者が出ているだろうことを思い舌打ち一つ、
……結界、銃弾を防げる壁があれば幸せだ!
「破ぁ!!」
光壁を展開する。それは銃弾の衝撃に徐々に削られていくが、
「汝の悪意入ること能わず!」
境界を別つ宣言と共に更に強力な結界が張られた。
≪夢の国≫の時にも見たものと似た輝きを持った結界。今日何度か目にしたその光を見て、
「この範囲でこの強度を短時間で……流石は専門家、か?」
「≪座敷童≫の境界設定です。機銃の斉射では揺るがないと思いますよ」
少女の言葉になるほどと青年は頷く。
「十分。だが、釘付けだな」
結界の消耗を減じる為か範囲は一行ギリギリ、明確な害意を示す銃弾は防いでもそれらが建物の構造物を破壊して作る破片は透過する結界だ。天使群の絶え間ない銃弾がギリギリで当たらないという現在の状況。下手に動いて結界の範囲から出ることは得策ではない。
青年は負傷者をざっと確認する。低く伏せた体制で窺える範囲内では負傷をしているのは、
「掠っただけだ……大丈夫、だから」
と傍らの少女に告げる、背中に負傷を負った≪13階段≫くらいだろうか。
深い傷ではないようだが背中を銃弾が掠り、服が破けて露出した背中の傷が見えている。
そんな彼を泣き出しそうな声を出して気遣っている、以前≪魔女の一撃≫の契約者と共にいた所を見たことのある少女。
命に別条はなさそうだと判断した青年は足払いで伏せさせ、そのまま頭を抑えつけていた契約者と頭を抑えつける手の位置にあるリカちゃんを見た。
「むぎゅー……」
「な、なんなんだくそ」
床にぶつけたのか、額を赤くした契約者と手に潰されていたリカちゃんがそれぞれ唸った。
契約者の少女は飛んでくる破片をはたきながら、
「あの神々しさの欠片も無い銃弾ぶっ放してる天使共、≪組織≫の奴の手先なんだろ? なんで髪の伸びる黒服さんが居るのに撃ってきてんだよ?」
「マッドガッサーの一味に加わったと思われたんだろ」
ほら、俺消息不明扱いだし。苦く笑いながら黒服は携帯を操作して、耳に当てた。
「なら早く≪組織≫に連絡を――」
そう契約者が言った時、その場にいた少女が言った言葉が契約者の耳に届いた。
「携帯のにーちゃんも発作、大丈夫か?」
「だいじょ、ぶ」
その会話の流れを聞いて彼女の視線が黒服から携帯のにーちゃんと呼ばれた少女へと向けられた。少女の姿を契約者は以前≪魔女の一撃≫の契約者と共に居る所として見たことがある。おそらくはマッドガッサー一味の仲間だろう。≪魔女の一撃≫の契約者の正体が割れた今、契約者もそのことに疑いは持ってない。
そして、
…………。
契約者は以前黒服に見せられた写真を思い出す。マッドガッサー一味の仲間である≪爆発する携帯電話≫の契約者は確かに男だった。しかし、
「女体化……?」
そうだ。マッドガッサーたちは女体化ガスを持っている。何らかの理由で自身の仲間を女体化させることもできるのだ。そうして見ると携帯のにーちゃんと呼ばれた少女にはあの写真で見た≪爆発する携帯電話≫の面影がある。
「……ちょっと待てよ」
そして先程髪が伸びる黒服が言っていたことを思い出す。
「お姫様……?」
その言葉に反応した≪13階段≫。その意味を考え、
「……あれ?」
思考が変なところで止まった。
青年は契約者の少女が変なところで思考停止しているのを見、この状況で結構余裕あるな。と苦笑した後黒服へと質問した。
その視線は≪13階段≫の契約者へと向いており、
「髪が伸びる黒服さん。≪13階段≫の契約者の背にある、焼き鏝で刻印されたような跡のシリアルナンバーのようなものはなんだ?」
H-96と見えるそれについて訊ねると黒服は携帯を耳に当てながら答える。
「あんたも元≪組織≫の人間だろ? なら察してくれや」
銃弾の音が響き、結界範囲外の物が次々撃ち砕かれていく。
飛んできた破片を払いながら青年は、ん、と頷いた。一息つき、
「……では契約者も訊いていたが、何故≪組織≫の成員である髪が伸びる黒服さんが同じ≪組織≫の者の攻撃対象になっている?」
「そりゃさっき言った通り――」
青年の問いに黒服が答えようとするのへ被せるように青年はメイド服を着た少女を背負った大きな黒犬に声をかけた。
「≪ブラックドッグ≫のお嬢さん」
「なんですの?」
背のメイド少女を気遣いながら返事をする黒犬――ザクロに青年は、
「貴女が≪モンスの天使≫に気がついた時にはこの黒服さんは既に反応していたな?」
「ええ、確かそうでしたけど?」
「ありがとう」
「? ええ、どういたしまして」
疑問気な声を発するザクロに満足そうに礼を言って青年は黒服に向き直る。そして手をひらひら振り、
「髪が伸びる黒服さんの反応はいささか早すぎると思うんだ。そう、まるで自分が狙われているのを知っていて、ずっとこの襲撃を警戒していたかのように」
探るような目で告げられた言葉に黒服は数秒無言を保ち、
「……失敗作だからさ」
呟くように言った。
「失敗作?」
黒服は苦笑して「これ以上は言わない」と首を振った。そして、
「ところで、Tさんは現状をどうにかしなくていいのか?」
話題をあからさまに変えてきた。
「……ああ、髪が伸びる黒服さんが何かしてくれそうだしな。――以前こちらの能力で≪コーク・ロア≫を沈めただろう? 今度はそっちの手札を見たい」
青年は黒服の話に乗り、期待してる。と激励のひとことも付けた。
「アレとじゃ割に合わなくねえか?」
それらを受けて黒服はやや不満気な顔でそう言う。青年は微笑で、
「後に切るカードの方が数字が大きいのは基本だろう?」
黒服は更に嫌そうな顔をした後、携帯が繋がったのか、お、と声を上げた。
その視線は≪13階段≫の契約者へと向いており、
「髪が伸びる黒服さん。≪13階段≫の契約者の背にある、焼き鏝で刻印されたような跡のシリアルナンバーのようなものはなんだ?」
H-96と見えるそれについて訊ねると黒服は携帯を耳に当てながら答える。
「あんたも元≪組織≫の人間だろ? なら察してくれや」
銃弾の音が響き、結界範囲外の物が次々撃ち砕かれていく。
飛んできた破片を払いながら青年は、ん、と頷いた。一息つき、
「……では契約者も訊いていたが、何故≪組織≫の成員である髪が伸びる黒服さんが同じ≪組織≫の者の攻撃対象になっている?」
「そりゃさっき言った通り――」
青年の問いに黒服が答えようとするのへ被せるように青年はメイド服を着た少女を背負った大きな黒犬に声をかけた。
「≪ブラックドッグ≫のお嬢さん」
「なんですの?」
背のメイド少女を気遣いながら返事をする黒犬――ザクロに青年は、
「貴女が≪モンスの天使≫に気がついた時にはこの黒服さんは既に反応していたな?」
「ええ、確かそうでしたけど?」
「ありがとう」
「? ええ、どういたしまして」
疑問気な声を発するザクロに満足そうに礼を言って青年は黒服に向き直る。そして手をひらひら振り、
「髪が伸びる黒服さんの反応はいささか早すぎると思うんだ。そう、まるで自分が狙われているのを知っていて、ずっとこの襲撃を警戒していたかのように」
探るような目で告げられた言葉に黒服は数秒無言を保ち、
「……失敗作だからさ」
呟くように言った。
「失敗作?」
黒服は苦笑して「これ以上は言わない」と首を振った。そして、
「ところで、Tさんは現状をどうにかしなくていいのか?」
話題をあからさまに変えてきた。
「……ああ、髪が伸びる黒服さんが何かしてくれそうだしな。――以前こちらの能力で≪コーク・ロア≫を沈めただろう? 今度はそっちの手札を見たい」
青年は黒服の話に乗り、期待してる。と激励のひとことも付けた。
「アレとじゃ割に合わなくねえか?」
それらを受けて黒服はやや不満気な顔でそう言う。青年は微笑で、
「後に切るカードの方が数字が大きいのは基本だろう?」
黒服は更に嫌そうな顔をした後、携帯が繋がったのか、お、と声を上げた。