【含生(がんしょう)】

胎生・卵生・湿生・化生によって世に生まれる生物たちを言う。このなかには、劫臘を経て霊力を得たものや、化ける能力を持つ「変化」(へんげ)に含まれる妖怪たちも該当する。胎生・卵生・湿生・化生を「四生」という。

胎生(たいしょう)  人間・畜獣  体に九竅を持つ 
卵生(らんしょう)  禽鳥  体に八竅を持つ 
湿生(しつしょう)  魚・鼈・蛙・湿虫  湿熱・水気を必須とする 
化生(けしょう)  虫  気化(非胎非卵)を含む 

含生のうち、尾のあるものは陰に属し、尾のないものは陽に属する*1という。人間をはじめとした含生たちは無漏種子・有漏種子を持っている。

「四生」は植物たちにも対応しており、卵生には果実や種子によって殖える草木、湿生・化生には菌類などが該当する。植物と生物は天地が逆となっていることも多い。植物は地から気を摂るが、生物は天から気を得る。また植物は体は冷かだが、生物は温かである。

草木  挿枝によって殖える 
草木  果種によって殖える 
湿草・水草・海藻・菌  湿熱・水気を必須とする 
菌・㡭  気化する 

草木は生があるが知がなく、禽獣は知があるが義がなく、人間のみが知と義を持っている*2とされる。

含生たち有生(うしょう)は、無生(むしょう)である天地の働きかけによって明界に生じることが出来る。これを「むすび」や「うぶすな」と呼ぶ。

【気化(きか)形化(けいか)】

天地から自然と生じるものたちを「気化」と呼ぶ。これには鉱物などのほか、一部の植物や「化生」に分類される含生たちがあてはまる。これらは雨露の滋沢・風日の吹晅の作用によって生まれると考えられており、赤忌とは無縁の存在である。

対して、交わりを持ち気と気が感じ合うことを「形化」と言う。含生と植物たちはこれをおこなって「種」を媒具とした繁殖を繰り返す。形化をするものには必ず雌雄男女が存在する。しかし、子供が生ずる仕組みには気化が影響しており、形化は気化の複雑化したもの*3であると言える。

【変化(へんか)】

「貌を易えて以て異物に成る」*4と言われ、ある動植物が、異なる動植物にかわることもある。これはある種の生き物が季節や環境による作用で気化を起こし、変形易貌(かたちをかえる)ことである。これには生物が植物になることもあれば、植物が生物になることもある。

「類を以て化す」とも言い、変化するもの同士には似た要素を持つ仲間であることもあるが、全く超越した別物に変化する例も存在しており、一定しない。しかし、変化が生ずる関係のあるもの以外に変化するということは基本ないので、変化の関係にあるもの同士は、何かしらかの不思議な関係性があると見られる。

「変」は形があらたまることなく変わること、「化」は形をはなれて化わることをそれぞれ示しているとも語られる*5

妖怪たちが用いる変化(へんげ)と、通常起こる変化(へんか)の異なる点は、自らの意志でそれを操作することが出来る・出来ないという点にある。変化(へんげ)にも一定の環境・状態などの諸条件が整わなければ行うことの出来ない事例もあるが、本人の意思がなくても寒暑・季節などの条件が周囲の環境として揃ってしまえば発生してしまうのが変化(へんか)による易貌である。

不化(ふか)有化(うか)

変化や化生は、雨露の滋沢・風日の吹晅など、「不化」(天地)のもたらす作用によって有生たちに起こることであるので「有化」とも呼ばれる。

【不生(ふしょう)有生(うしょう)】

有生は天地にいる万物を示す。不生はその根源を生み出す無(太虚・太一)のことである*6。有生の根源は無生からしか生じない。また、不生から生み出された無化(天地)の作用によって有生に変化(有化)を発生させる。


無(不生)からのみ天地(不化)は生まれる。天地が滅びてなくなるのは、形を持って生まれる存在だからである。「無」であるは太虚は形を持たず、生じることがないため滅びることはない*7

最終更新:2025年02月02日 15:46

*1 貝原益軒『大和本草』巻1

*2 『荀子』王制篇

*3 貝原益軒『大和本草』巻1

*4 『抱朴子』内篇

*5 『和漢初学便蒙』巻4

*6 『列子』天瑞篇

*7 『列子』天瑞篇