【汚火(けがれび)】

これは伊邪那岐が火之迦具土(火の神)を斬った際に流れた血のうち、濁ったものが黄泉国に達して汚火になったとされる。


黄泉戸喫(よもつへぐい)

黄泉の汚火で調理された食品を食べると、黄泉国を離れることが出来なくなってしまう。伊邪那美が明界へ帰ることが出来なくなった原因とされる。

火の穢

食品には少なからず「火の穢」が含まれるとされる*1。そのため、特に調理に用いる火についての清濁については強く注意が払われて来た。
塩についても、製塩の際に使われる竃に「火の穢」が用いられてしまうこともあるため、神事に用いるのは、塩をさらに清火で沸かした湯に入れて清めた「塩湯」を用いるとされていた*2

【清火(きよび)】

汚火に対して、太陽や太一に由来する火を清火と称する。妖怪や禍神たちはこれを非常に苦手とする。

切火(きりび)

火打から直接で打ち出した火を切火と呼ぶ。清めや災難よけのまじないとして用いられて来た。動作を「燧出」(きりだす)という。

祭祀に臨む際には、切火からおこした清火(忌火)を調理のたびにつくって潔斎*3をした。体を清めるために浴びる湯なども、清火で沸かす。

祭主や巫女をはじめ特に重要な役割を果たす者は、穢体を清いままに保つため、常に清火を用い、他人と火を共有しないことが大切なことだと言い伝えられていた。


最終更新:2023年12月17日 17:13

*1 岡熊臣『学本論』

*2 伴信友『獣肉塩湯考』

*3 潔斎は、衣食住をすべて清いものにするためのことが行われていた。