【草野姫(かやのひめ)】

万の草の神。野、大地そのものであるとされる*1。野槌(のづち)とも呼ばれる。天之闇戸、国之闇戸(暗闇の神)大戸惑子。大戸惑女(惑わしの神)などを生んだとされることから、妖怪変化を生む神とみなされ、野槌自体も次第に妖怪視された。神話には草野姫を蛇とする記述は見られないものの、配偶神である大山祇(おおやまつみ)を蛇体とする説があることから、草野姫も蛇体の神であると考えられている。*2


高知県では、山には異変がつづいたため、大山祇と草野姫を祀り朝夕に人々が拝んだところ、山で妖怪変化に襲われることは無くなったという。山で働く者は「聖権現」と言って崇敬している。*3

野槌

草神である草野姫は野槌とも呼ばれると語られる。野津霊(のつち)の意味である。*4

【垢の穢と草野】

含生のものたちではない植物や万草たちは、その体に垢の穢(あかのよごれ)がないとされる。特に蓮は、泥に生じるも泥に染まらず育ち咲くところから清浄なものとされる。

【屋船(やぶね)】

屋船という文字は当て字で、「やぶね」とは「弥生根」の意味で非常にたくさんの植物が繁茂成長することだと考えられている*5

最終更新:2024年01月12日 22:05

*1 菅野雅雄『古事記系譜の研究』桜楓社、1970年

*2 安田喜憲『山岳信仰と日本人』NTT出版、2006年

*3 『高知の研究 民俗篇』清文堂、1982年

*4 『修験道初學辯談』

*5 『祝詞考 中巻』