【十幹十二枝】

十二支の「支」は「枝」の意味を持っており、十幹(十干)と十二支は、それぞれ植物たちの生成と成長を示しており、それらはうぶすな(産霊)の力をあらわしていると言える。

【日神十幹(にっしんじゅっかん)】


  • 閼逢(あつぼう) 甲。畢。出甲。万物鋒芒。割れて芽が生えはじめた種を示す。
  • 旃蒙(せんもう) 乙。橘。奮軋。万物遏蒙。芽が地上に出て来ようとしていることを示す。
  • 柔兆(じゅうちょう) 丙。修。明炳。万物皆生枝布葉。枝葉が生じ照らされてゆくことを示す。
  • 強圉(きょうぎょ) 丁。圉。大盛。万物剛盛。ちから強く育つことを示す。
  • 著雝(ちゃくよう) 戊。厲。豊楙。万物繁養四方。枝葉が繁茂してゆくことを示す。
  • 屠維(とい) 己。則。理紀。万物各成其性。それぞれ特色を示してゆくことを示す。
  • 上章(じょうしょう) 庚。窒。斂更。万物畢生。つよくなってゆくことを示す。
  • 重光(じゅうこう) 辛。塞。悉新。万物就熟。あらたな実を生み出すことを示す。
  • 玄黓(げんよく) 壬。終。懐任。包任万物。実が熟して種をつくることを示す。
  • 昭陽(しょうよう) 癸。極。陳揆。万物含生。種がまたあたらしく繋がってゆくことを示す。

畢・橘・修・圉・厲・則・窒・塞・終・極は、歳陰(さいいん)と呼ばれる。

「甲・畢」は種や卵の殻を破って生まれ出ることをあらわしていると伝えられており、「はじまり」を意味する。「壬」は「妊」と通じているとされ陰陽が交わることをあらわしている。「癸」は実や籾のなかに「種」が入って包まれている状態をあらわす。

春  夏  秋  冬 
閼逢・旃蒙  柔兆・強圉  上章・重光  玄黓・昭陽 


【月霊十二支(げつれいじゅうにし)】

十幹(十干)と対となる存在として十二支は存在している。天の数が「五」でそれぞれの陰陽があることで「十幹」となっていることから天幹(てんかん)と称され日神(日の神)の管理するものとしているのに対し、十二支は地の数である「六」のそれぞれの陰陽があることによって「十二支」となっている。こちらを地支(ちし)とも呼び、月霊(月の神)のつかさどるものとしている。「地」を示していることから、こちらも植物や作物の生育過程そのものをあらわしていると語られていた。幹は「みき」、支は「えだ」を示す。

卯(う)は「うまれる」から、酉(とり)は「とる」からなど、動物に当てはめているのはあくまで覚えやすくするために後から当てはめたものであると語られる。

  • 根(ね) 子。地中で種から根が出る。
  • 湿(うるおし) 丑。潤いを受けて種の根と芽が育つ。
  • 開(とひらき) 寅。地上へと芽が出る。
  • 生(うまる) 卯。芽が成長してゆく。「日の出」とも対応する。
  • 起(たつ) 辰。茎や枝葉が育つ。
  • 実(み) 巳。実が生じる。
  • 旨(うま) 午。実が熟してゆく。
  • 干(ひあつし) 未。太陽のちからで実が完熟する。
  • 去(さる) 申。実が熟しきって茎や枝から去る。
  • 採(とる) 酉。実を採る。実から種が取られる。「日の入り」とも対応する。
  • 納(いれる) 戌。実や種を貯える。
  • 居(い) 亥。茎や枝葉が残る。収獲した実の種がまた繋がってゆく。

これは植物だが、寅(とら)を螾(うごく)の意であるとして、生命の生育過程を示すとする考え方も存在した。どちらも「寅」を動き出すはじまりと考えているのは、時刻四天などと連動している。亥(い)も核(さね・たね)を示すと語られており、これもすべての生命に共通するものであるとされる。

天真名井(あまのまない)

亥は「居」であると共に「井」ともされ、万物を養う水に種がひたされ、生育の力が蓄えられゆくことを示していると語られる*1。天真名井は高天原にある万物を養う真水のこと*2

春  夏  秋  冬 
寅、卯、辰  巳、午、未  申、酉、戌  亥、子、丑 

また、十二支と十二ヶ月とを結び付ける考え方もあり、次のように呼ばれる。これは月陽(げつよう)と呼ばれる。示す意味は「十幹」と共通している箇所が多く、「如」は乙の「旃蒙」の芽が地上に出て来こようとすることを示す内容とおなじく、にょきにょきと芽が出ようとする動きをあらわしているとされる。「寎」も陽気が盛んになることを示しており、丙の「柔兆」と意味合いが共通している。

  • 陬(すう) 正月。寅。訾星。太虚と陰陽の働きで陰陽が植物を動かし始めることを示す。
  • 如(にょ) 二月。卯。如如然。にょきにょきと芽が出ようとすることを示す。
  • 寎(へい) 三月。辰。物皆炳然。陽光に照らされてゆくことを示す。
  • 余(よ) 四月。巳。舒展。植物がすべてのび成長することを示す。
  • 皋(こう) 五月。午。高。高く大きくなってゆくことを示す。
  • 且(しゃ) 六月。未。趔趄。陰の気の働きがはじまることで植物の動きが転換の準備に入ることを示す。
  • 相(しょう) 七月。申。導。秋の成長に導かれてゆくことを示す。
  • 壮(そう) 八月。酉。大。陰の気の働きを大いに満ち受けることを示す。
  • 玄(げん) 九月。戌。万物畢尽、百草畢落。植物が実り枯れ始めることを示す。
  • 陽(よう) 十月。亥。無陽。陽の気の働きが失われることを示す。
  • 辜(こ) 十一月。子。故。植物が枯れ終わることを示す。
  • 涂(と) 十二月。丑。除。来年に向けての植物の動きを備えることを示す。

「陬」は十二次の「娵訾」と星が重なっているようである。

四季六期

四季の間には六期という区分も存在して来た。

萃時  春  熱際  夏  雨際  夏  秋時  秋  寒時  冬  氷雪  冬 

これらは順次に巡ることで、寒熱の動きを定期のものとしている。気候の様子は、太陽との距離や地勢によって土地に差異が生じるため、天下一定ではない。それは、非常に高い山岳の上では寒熱の動きが異なることや、北や南の果てに常に夜のままで日の出ない季節を持つ地域が存在することなどによって太古から知られて来た。

最終更新:2025年02月04日 16:35

*1 土田誠一『吉川惟足の神道説』、1932年

*2 『神道名目類聚抄』