Cross point

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Cross point ◆Z9iNYeY9a2



「やあ、こんにちは」
「…ここは?」

気がつくと謎の空間にゼロは立っていた。
いや、謎の空間ではない。ここが何なのか、自分はよく知っているはずだ。
ルルーシュとしてではない。エデンバイタルの魔王としての記憶が知っているはずだ。

今まで叶わなかったエデンバイタルへの接続ができたということだろうか。
だとすると、この状況は何だ?目の前のこの白い謎の生き物は何なのだ?

「なぜお前のような生き物がここに干渉することができる?」
「悪いけど、君からの質問は必要なものにしか答えられない。今はそう決められているんだ」

質問はあっさりと流され、一方的に会話が進められる。本来であればルルーシュであった頃の話術を使えばどうとでもなることのはずがなぜかうまくペースを掴めない。

「今日は君にお願いがあってきたんだ」

そして目の前の生き物はこちらの意志を無視して話を進めていく。

「お願いだと?」
「うん、僕たちと契約して、宇宙の寿命を延ばすのを手伝ってほしいんだ」
「ほう?」

聞くだけならば興味を引かれないでもない内容である。
それ自体は己の使命に繋がりそうな言葉であるからだ。

「本来なら君ほどの人物はこちら側にいるはずなんだ。それほどにゼロ、君の評価は高い。
 僕達の指示に従って行動してくれるなら、きっと君の目的に沿うことは可能だよ?」
「ふん、協力者として声をかけておきながらこちらの質問には答えない。
 それでよく協力してくれなどと言おうと思ったな」
「おや、そういうものなのかい?
 それは気を悪くさせてしまったかな。いやいや、感情とは難しいものだね」
「まあいい。話してみろ」

「そうだね。君には今から今から話すことを実行に移してほしい。内容は君の返答次第で話す。それ以外は自由にしてもらって構わない。
 あとゼロ、君は何か不調のようなものを感じていないかい?」
「貴様か、エデンバイタルの接続を妨げたのは」
「君だけ特別扱いするのは難しいからね。一参加者としている限りは」
「つまりこういうことか。お前たちに協力することでエデンバイタルへの接続は自由になると」
「話が早くて助かるよ。それで返答は――「断る」」

一蹴された。意外だったのか、白い生き物は無表情の中で微かに首を傾げた。

「どうしてだい?」
「貴様らの管理下にある門を使ったところで信用することなどできない。何よりこれは私自身の役割だ。お前達のようなものの協力など願い下げだ」
「そうかい。それじゃ、この話はお終いだ。次に会うのは、君が最後の一人になってからかな?」
「一つ聞いておこう。お前たちの仲間に、あの男はいるのか?」
「君の言う『あの男』とはだれのことか判断しかねるし、そもそも質問は受け付けないと言ったはずだよ」

その言葉に何を納得したか、ゼロは踵を返して歩き始めた。
歩く先にあるのはこの空間の出口。現実の世界での戦いを続けるために。



「はぁ、やっぱり分からないなぁ。人間の感情って」
「ふん、あやつであればそうするであろうよ」
「でもいいのかい?彼にあの門からの情報を少しずつ流していって。
 結局ゼロの協力は取り付けられなかったというのに」
「どの道これを進めること自体に大きな意味がある。あやつがその気である以上、我らに不利はあるまい?」
「そうかい?ならいいんだけど。
 じゃあ僕は行くよ。これでも色々と忙しいからね」



「む…?」
「目は覚めたか」

気が付くと、そこは瓦礫の積み重なった空間。
目の前には一時的な共闘者として協力している木場勇治の姿。

ああ、思い出した。あの後この場で傷が癒えるまで休息をとることにしたのだった。

「俺は、眠っていたか?」
「声を掛けても反応がなかったようだし、しばらく放っておかせてもらった」

ゼロの顔は仮面に覆われているため、彼が動かない間起きているのか眠っているのか判断をつけられなかった。

(何か、俺に話しかけてきたやつがいたような…、駄目だ、思い出せん)

ふと時計を見ると、既に放送の時間を超過していた。
どうやら聞き逃してしまったようだ。

「放送はどうだったか?」
「もう時間は過ぎたさ。ここが禁止エリアに選ばれたからそろそろ出発するべきだろうな」

ここが禁止エリアに選ばれた。ならば木場勇治の言うとおり急いだほうがいいだろう。

「そうだな。だがその前に情報を整理しておきたい。放送の情報、教えてもらおうか」


サイドバッシャーを走らせる暁美ほむら、その隣に搭乗するアリス。
東に向かう二人の手元には2匹の生き物がいた。
一匹は小さなペンギンのような生き物。もう一匹は黒い猫。

(凄い拒絶感ね。本当に何があったっていうのかしら)

アリスがその拒絶感を感じる原因は、今手元にいるこのポッチャマというペンギンのせいだろう。
足元で猫と戯れるこのポケモンというらしい生き物。だがこの猫はほむら自身が受け取ることを承諾したのだ。生き物が嫌いなのだとは思えない。
まあそう考えはしても下手な追求はしたくないのだが。
考えを切り上げ、ふと地図に目をやる。

「ねえ、この鹿目邸ってところ、あんたの探しているまどかって子の家でしょ?ここには向かわなくていいの?」
「そうね。確かにここに行けばまどかはいるかもしれない。でも今はいい。取り急いで行く場所じゃないわ」
「?何でよ?」
「それは――…ちょっと待って」

言いかけたところで急に自身のソウルジェムを眺め始めたほむら。

「どうしたの?」
「少し急ぐわ。しっかり捕まってて」

と、バイクの速度を上げる。

「この近くにかなりの魔力の持ち主がいるわ。魔法少女では有り得ないくらいの。
 念のためにここから急いで離れるわよ」

説明しておくと、頭部の怪我の治癒に少し魔力を費やしてしまったと考えたほむらはミュウツーと別れて以降、魔法少女の服を解除していた。これは魔力節約を考えてのことだ。
しかし何かとんでもない脅威が近くにいると感じ取ったほむらは今またその姿を魔法少女のものへと変えた。
次の瞬間、

「■■■■■■■■■■■■■■■――――――!!!」

二人の耳に人のものとは思えない咆哮が届いた。


北崎にその体を灰とさせられてなお、バーサーカーは歩みを止めてはいなかった。
ボロボロと歩く度に灰を体からこぼれ落とす姿は痛ましくもあり、雄々しくもあった。

視覚聴覚触覚味覚嗅覚。それら全てを封じられてなお、歩みを止めない。
彼が狂化しているのも原因だろう。さらに狂戦士には歩みを阻むものを押しのけ粉砕するほどの力が備わっている。

そんな彼が知覚できるもの。五感に頼らずに把握できるもの。
第六感による気配。そして、魔力。

暁美ほむらの失敗は一つ。とは言ってもそれを責めるのも酷な話ではあるが。
彼女は出会ってしまった際の警戒として早々に迎撃態勢を、魔法少女の姿をとってしまったこと。

バーサーカーの魔力は膨大であり、ある程度離れた場所であってもその存在を把握することができる。
だが、バーサーカーの知覚はほぼ直感と気配頼り、逆に言えばそれらは五感が機能している時よりも精練されている。

魔法少女の姿となり、魔力を放出しながら移動する彼女達を逆に捉えることなど、造作もない。


「ポチャ?!」

それは正面から現れた。
全身を赤と黒の何かで覆われた巨人。先ほど変形したサイドバッシャーとも引けをとらない大きさの大男。

バイクを飛ばすこちらに迷わず走ってくる。

「―――!!」

それを見たほむらは迷うことなく時間を止める。
腕を振り上げたその巨体も、周囲の景色も、全てが止まる。動くのはほむら、サイドバッシャーとそれに搭乗している者のみ。

5秒。それが今止められる時間だ。だが5秒あれば充分だ。
バーサーカーを避けるのに2秒。残りの3秒を全力で走り、距離を離す。

最高速度で移動すればかなりの距離を離すことができる。
捕捉されにくいように角を曲がり、そのまま走り続ける。

3秒経過。時は動き始めた。

振り上げられた腕を空振りさせるバーサーカー。

「これで大丈夫。あとは逃げるだ――?!」

次の瞬間、目の前に砕かれた巨大なコンクリート片が降ってきた。

(対応が早すぎる!)

気配、直感のみで相手を把握するバーサーカー。そんな彼に時を止めての隠匿など、その体が魔力を放出し続ける限り何の意味もない。
加えて彼は狂化している。相手が瞬間移動やワープで突如居場所を変えたとしてもそれに戸惑うような思考などありはしない。
空振りした際に砕いた壁から作られたコンクリート片を直感的に投げた。ただそれだけのこと。

それを避けようとしてバランスを崩したサイドバッシャーは倒れ、サイドカーに搭乗していたアリス達を振り落した。

「くあっ!」
「ポチャァ!!」

中でもポッチャマの吹き飛んだ場所はよりにもよってバーサーカーの進路上。

「ポ、ポチャ!」

起き上がることもできないポッチャマに、それこそ車にも匹敵する勢いで走り抜けるバーサーカー。
アリスはポッチャマの救助にギアスを発動しようとさせ――

「え?」

それはポッチャマを跨いで走り抜けた。向かう先には暁美ほむらがいる。
この巨人は自分やこのポッチャマを無視してほむらに向かって走っていったのだ。

「ほむら!危ない!!」

はっと顔を上げたほむらは目の前で丸太のような腕を叩きつけようとするバーサーカーに気付く。

だが次の瞬間ほむらとサイドバッシャーは姿を消していた。さらにアリスの目からはまるでアニメのコマでも飛んだかのようにバーサーカーがよろけるのが目に入った。

「間一髪だったわ」

横を見ると傾いたサイドバッシャー(バトルモード)に乗ったほむら。時間を止めてバッシャーを変形させつつ巨人の足を蹴り飛ばして移動したようだ。
だが倒れたバーサーカーはすぐに起き上がりそうである。
すぐに建物の影に隠れる二人。

「少しだけ時間を稼いで。ほんの数分でいいから」
「あいつを引きつければいいならいけなくもないけど、ほむらはどうするの?」
「サイドバッシャーをまともに動くようにする。それにはまずあれを取りにいかないといけないんだけど」
「仕方ないわね」

と、バーサーカーが起き上がったと同時に水の入ったペットボトルを投げるほむら。と、次の瞬間。
それはバーサーカーの目の前で水を撒き散らしながら大爆発を引き起こした。

(まさか昔調べた知識がこんなところで役に立つなんてね)

もう遥か昔の、まだ魔法少女になり立てのころ、様々な武器を作る知識を調べている際に見た情報。
水入りペットボトルにドライアイスを入れることで爆弾となるのだ。
無論あの怪物には威嚇程度にしかならないだろうがこれに魔力を込めればそれなりの威力を持つものにもなる。
数秒怯んでくれれば充分だ。

サイドバッシャーを回収するため爆発と同時に飛び出すほむら。

しかし―――

「■■■■■■■■■――――――!!」

バーサーカーは一直線に、飛び出したほむらの元に向かってくる。
爆発で怯むこともダメージを受けることもなく。

「ほむら!危ない!!」
「ポッチャマーー!!!」

その腕がほむらを捕えようとしたその瞬間、バーサーカーの足に大量の水が叩きつけられた。
それはさっき放り投げられたポッチャマを出所としたものだった。
片足を重点的に狙われたことでバーサーカーはバランスを崩して今また倒れる。

(この怪物、もしかして――)

「ほむら!その魔力とかいうの、使うの止めて!!」

言うと同時にポッチャマをほむらの傍に走らせる。
確認した直後、ギアスを発動。

(考えが正しければこいつは私を追ってくるはず――)

一度に発動し続けることができるのはおそらく10秒ほどが限界。だがそれを一度に費やす必要はない。
まずこいつをこちらに引き付けることが重要。
今、ほむらは魔法少女の服を解除して元の制服姿になっている。
このタイミングでギアスを使用すれば間違いなくこいつの注意はこちらに向く。

まずはギアスを解除し5秒ほど走る。
加重力により超加速により、数秒とはいえ長距離の移動を果たす。
しかし巨人も見かけによらず驚異的な速度でこちらに追いすがっている。

その数秒の間に、自身の腕に薬をうつ。
支給品にあったヨクアタールという道具。撃った瞬間、視力、聴力が普段よりはっきりと知覚できるようになった。

肉薄するバーサーカーを今度はギアスを発動しつつジャンプで躱す。
が、バーサーカーは正確にこちらを向いて空中にいるアリスを手で掴もうとする。

(肉体は鋼のように硬く、銃弾を通すこともない。そこから振るわれる拳はサザーランドくらいなら余裕で破壊しかねないわね)

これがこの短時間で測ったバーサーカーの強さだ。

(でも、その体全てが硬いってわけでもないはずよ)

例えば、その恐らくは見えていないであろう眼。そして口腔内、ひいては体の内部。

(なら、そこに銃弾を撃ち込めば――)

加重力を制御しつつ空中で銃弾を命中させる。そのような芸当、よっぽどの腕が無ければできないだろう。
だが、五感を強化した今であれば――

(できる―――!!)

こちらを向いたバーサーカーの両目、口の中に合計4発の銃弾を撃ち込む。

着地と同時に背後のバーサーカーは目から血を噴出させて後ろに仰け反る。
が、すぐさま態勢を立て直した上、口に撃ち込んだ銃弾はそのまま噛み砕かれていた。

「■■■■■■■■■――――――!!」

それは痛みからか怒りからか、更に咆哮を上げて巨体が迫る。

「…駄目か」

眼や口腔への攻撃でも駄目となれば拳銃でどうにかできる相手ではない。
あとはもう逃げることで精一杯だろう。
それにこの怪物、このなりで頭もそれなりに働くようだ。同じ手を使っても成功率はぐんと下がる。加えてギアス使用中の反応速度は脅威だ。

「やっぱりこいつ、ほむらの言っていた魔力かそれに近いものに反応してる…?」

そのままこちらに駆け出すバーサーカー。しかしその体が不意に止まる。

「…?」

その視線は10メートルほど離れた場所にいる、ほむらの連れてきたあの黒猫の姿があった。

(え…。もしかしてこいつ、あの子を見てる?)

ミャー
「■■■■■■■■――――――!!」

猫が鳴いたと同時、そちらにとびかかるバーサーカー。

「な…っ、…ちょ…っとお!!」ダッ

慌ててギアスを発動させて猫の元へ飛ぶ。
掴むと同時、地面を滑らせて移動させるアリス。これで猫を逃がすことはできた。しかし――

「ぐ…っ」

自身まで守りきることはできなかった。体をその大きな手の内に捕まれ身動きがとれない。

ダン!ダン!
銃弾を撃ち込むがびくともしない。
強く握りこまれたその腕を振り上げる。

(っ…、これじゃギアスの発動は――)

ギアスをさらに使用することへの刹那の迷い。
その僅かな隙にバーサーカーはアリスを、まるで先ほどのコンクリートを投げるかの要領で投げる。

吹き飛ぶアリス。
目の前に迫る地面。激突までもう一瞬というところ。それを、

「間に合ったようね」

突如現れたほむらが受け止めた。

「…。何やってたのよ」
「ちょっとサイドバッシャーの修理をね」

といった瞬間、バーサーカーの横からあの変形したバイクがタイヤのついた腕を叩きつけた。

先ほどの戦いでダメージを受けたはずのサイドバッシャー。しかし今はしっかりと二足での直立を果たしていた。
見ると、木場勇治との戦いで切り裂かれたはずの脚部に当たる部位は、謎の発光を放っている。

「案外魔法って便利なものなのよね。少しやり方を考えてたら時間を取られてしまったけど」

と、言った後ジャンプしてその座席に座るほむら。
勢いのままに再びその腕部で殴りつけるも、今度は受け止められてしまう。
ギリギリと握られた部分から嫌な音が聞こえ始める。
脚部で蹴りつけるも、今度は倒れることはない。

恐らくこの怪力であればこのバイクごと投げ飛ばすことも可能だろう。
しかし、そうはならなかった。

なぜならこの時バーサーカーの足元に謎の渦が巻いていたのだから。
アリスが顔を上げると、座席の前に当たる場所にはポッチャマが陣取っていた。この渦を発しているのは彼のようだ。
ポッチャマのうずしおに足を取られたバーサーカーは思わず手を離してしまう。

「早く手を出しなさい。おいていくわよ?」

そんなことを言うほむらの顔が何か癪だったアリスは手を出さず、自力でサイドバッシャーの後部に上がる。

カチッ
その瞬間、またあの光景となった。
足を取られて倒れそうになるバーサーカー、しかしその姿はそこで止まっている。

「これで終わりよ」

そんな動かないバーサーカーに向け、左腕部の発射口から発射される大量の光弾。
それはバーサーカーの当たるか当たらないかという直前で止まっている。
さらに加えて、ほむらはポッチャマに先ほどの渦をバーサーカーの目の前に出現させる。

そうして追撃進路に障害物を置いたのち、バイクモードへと変形。直線に走り、50メートルは離れたかというところ。
そこまで来た辺りで時は動き始める。

次の瞬間、バーサーカーの体は大量の魔力弾の爆発で包まれた。


「死者は10人、禁止エリアはB-3、E-2、G-7か。間違いはないんだな?」
「ああ」

ルルーシュ・ランペルージ。
禁止エリアに指定されたこの場での乱戦の原因であり、ゼロの問いかけに迷うことなく答えを出したあの男。もう一人の自分。
全く想定していなかったわけではない。だがあいつならば生き残るだろうという思いもあった。

微かに胸中に苛立ちを感じるも、それを誤魔化すべく適当に掴んだ瓦礫を握りつぶす。

「傷の方は問題ないな。そろそろ出発するべきだろう。当てはあるのか?」
「当てか、最初にいた場所がここから北東のエリアだ。そこから移動するなら北か東だとは思う」
「お前の望みのものは虱潰しに当たるしかないということか。
 私にも特に向かいたい場所があるわけでもない。が、お前に支給されていたアヴァロンのキーが気がかりだ。向かうついでに付き合ってやろう」

それは情報交換の中でお互いの支給品について開示した際のこと。
木場勇治の支給品はカードキーとグリーフシードなる宝石のような石。カードキーはA-7に存在する戦艦アヴァロンにて使用するものだとか。
本当はもう一つ支給品があったらしいがそれは運搬できないため捨ててきたらしい。

「問題はここから追って間に合うのかということだが」
「その辺は心配ない」

と、木場は自身をオルフェノクの姿、さらに言えばケンタウロスのように下半身を馬としたものに変える。

「この姿で追えば追い付くのに時間はかからない」
「なるほどな」
「一つ言っておく。もし他の参加者に出会っても、情報を聞き出すまでは殺すなよ」

そう言って、木場はゼロをその背に乗せて走り出した。


「あいつ、まだ生きてるわ」

そう言ったのはサイドカーに乗ったアリスである。
あの怪物の歩く地響きは聴力の上がったアリスの耳に微かに届いていた。

「こっちには追ってきてる?」
「少なくとも追ってきてはないみたい」
「なら安心ね」

こちらの座っているサイドカーにはポッチャマ、そしていつ回収したのか黒猫も乗っていた。

「で、あれは何だったの?」
「もし名簿にあった名前から直接推察するなら、そうね、バーサーカーというやつなのかも。
 このバイクのことなら、ちょっと魔力で補強しただけよ」

元々は脚部の補修だけのつもりだったが、銃弾の節約もかねて魔力を撃ちだせるようにしてみたのだった。
しかし媒介としての優秀さが予想外だったようで、あのような威力となってしまっていたのだという。
元々ミサイルや重火器の扱いに精通していたのも馴染みやすかった理由だろう。

「まあグリーフシードがない以上、何度も使える戦い方ではないけれどね」
「ふぅん。
 そういえばさ、あんたこの子のこと警戒してたんじゃなかったの?」

さっきのバーサーカーとの戦いの最中、サイドバッシャーにポッチャマを乗せているのを見た。
正直置いていくのではないかと心配もしていたのだが杞憂に終わったようだ。
ただ、あのような近くにそのままの状態でいさせていたのには驚いた。

「勘違いしないで。まだそれを信用したわけじゃないわ。
 ただ、戦いで使えるってことが分かったから使わせてもらっただけよ」

そう、この生き物、見た目によらずそれなりの戦闘力をもっているらしい。
バーサーカーの足をとったあの水流、そして渦。
ただ、アリスとしてはあまり使ったという表現は好ましくないようにも感じたが。

「まあでも、助けられたのは確かだし、一応礼はいっておくわ。――ありがとう」
「ポチャ?」

ポッチャマを見ることもなく告げられたお礼に不思議そうに首を傾げるポッチャマ。
そのまま運転に専念するほむら。今はもう何も話すつもりはない様子だ。

(全く…、随分不器用なのね。
 …そういえば――)

と、アリスはポッチャマの隣で眠るこの黒猫を見る。

バーサーカーが魔力や気配に反応して対象を捕捉する一方で、五感のほうはほとんど失われているというのは先ほど推察したとおりだ。
無論これ自体が間違っている可能性もあるため断定することはできない。
しかし―

(確かにあの時、あいつはこの猫を認識した)

この猫がそういった生き物でないことはほむらの様子を見ていれば分かる。
ポッチャマには反応しなかった。つまりポケモンというものは魔力を持っていないのだろう。
なら、この猫は一体なんなのだろうか?
ふとアリスは、自身の胸中に一抹の不安が芽生えた気がした。


【C-4/市街地/一日目 午前】

【暁美ほむら@魔法少女まどか☆マギカ】
[状態]:ソウルジェムの濁り(少)、疲労(中)、頭蓋骨骨折(ほぼ回復)
[服装]:見滝原中学校の制服
[装備]:盾(砂時計の砂残量:中)、グロック19(15発)@現実、(盾内に収納)、ニューナンブM60@DEATH NOTE(盾内に収納)、サイドバッシャー(サイドカー半壊、魔力で補強)@仮面ライダー555
[道具]:共通支給品一式、双眼鏡、黒猫@???、あなぬけのヒモ×2@ポケットモンスター(ゲーム)、ドライアイス(残り50%)
[思考・状況]
基本:アカギに関する情報収集とその力を奪う手段の模索、見つからなければ優勝狙いに。
1:情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
2:協力者が得られるなら一人でも多く得たい。ただし、自身が「信用できない」と判断した者は除く
3:ポッチャマを警戒(?)。ミュウツーは保留。ただし利用できるなら利用する
4:サカキ、バーサーカー(仮)は警戒。
5:あるならグリーフシードを探しておきたい
最終目的:“奇跡”を手に入れた上で『自身の世界(これまで辿った全ての時間軸)』に帰還(手段は問わない)し、まどかを救う。
[備考]
※参戦時期は第9話・杏子死亡後、ラストに自宅でキュゥべえと会話する前
※『時間停止』で止められる時間は最長でも5秒程度までに制限されています
※ソウルジェムはギアスユーザーのギアスにも反応します
※サイドバッシャーの破損部は魔力によって補強されましたが、物理的には壊れています

【アリス@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:疲労(中)、ダメージ(小)、ドーピングによる知覚能力・反応速度の向上
[服装]:アッシュフォード学園中等部の女子制服、銃は内ポケット
[装備]:グロック19(9+1発)@現実、あなぬけのヒモ@ポケットモンスター(ゲーム)、
    ポッチャマ@ポケットモンスター@ポケットモンスター(アニメ)
[道具]:共通支給品一式、 C.C.細胞抑制剤中和剤(2回分)@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー
[思考・状況]
基本:脱出手段と仲間を捜す。余裕があればこの世界のナナリーも捜索。
1:とにかくゼロ達のいた場所から離れる
2:情報を集める(特にアカギに関する情報を優先)
3:脱出のための協力者が得られるなら一人でも多く得たい
4:余裕があったらナナリーを探す。
5:ほむらの隠し事が気になるが重要なことでなければ追求はしない
6:ポッチャマを気にかけている
7:ミュウツーはとりあえず信用する
8:サカキを警戒
9:黒猫に嫌な不安を感じる
最終目的:『儀式』から脱出し、『自身の世界(時間軸)』へ帰る。そして、『自身の世界』のナナリーを守る
[備考]
※参戦時期はCODE14・スザクと知り合った後、ナリタ戦前
※『ザ・スピード』の一度の効果持続時間は最長でも10秒前後に制限されています。また、連続して使用すると体力を消耗します
※ヨクアタールの効果がいつまで持続するかはお任せします


アリスの言ったとおり、バーサーカーは未だ健在であった。
いや、もしあの攻撃で命を奪えたとしても、直ちには無意味だっただろう。
その命は残り8回の復活を約束されているのだから。

起き上がるバーサーカー。
両目は潰れ、魔力弾を受けた胸部から腹部にかけては大きな火傷、皮膚の抉れなど酷くボロボロの有様であった。
しかしまだ命を費やしてはいない。
そしてどれだけの痛みにさらされようと、狂化した理性は止まることを許しはしない。

アリスと暁美ほむら達を逃がしてしまったバーサーカーだが、それに悔いることも省みることもなく歩き出そうとした、まさにその瞬間であった。
狂化、黒化した精神の中に残った、ほんの僅かな安らぎの存在を近くに感じ取ったのは。


「そういえばだ。お前が回収しそこねたという支給品とは、一体何だったのだ?」
「ああ、あれか。正直俺に扱えるようなものじゃなかったからな」

「大きな剣だ。それも石でできた茶色の」


バーサーカーは”それ”を拾い上げる。

狂戦士というクラスで呼ばれたヘラクレス。
彼には宝具として使うことができる武器が備わっていなかった。
12の試練を超えた肉体、それだけでも充分な宝具ではあったものの、英霊同士の戦いに素手というのは大きな欠点であった。
そんな彼が振るった武器。それは神殿の礎である岩を削って造られた剣。
それは彼自身を召喚する触媒とされたものであり、ある意味ではマスター、イリヤスフィールとの繋がりの証ともいえよう。

その斧剣が、今バーサーカーの手にある。

―――バーサーカーは強いね。

ふと、そんな声が聞こえた気がした。
しかしその声に思いを馳せることは今のヘラクレスには叶わない。

それでも彼は戦い続けるのだろう。
小さき主を守るため、黒き剣士の、黒き影の幻影を殺すため。

「■■■■■■■■■■■――――――!!」

狂戦士は吠え、その手で全てのものを破壊するために走り出した。
その命が尽きる時がくるまで、イリヤスフィール・フォン・アインツベルンの命を守るために。

【E-2/市街地/一日目 午前(禁止エリアとなるまでにはまだ余裕有)】

【ゼロ@コードギアス ナイトメア・オブ・ナナリー】
[状態]:ダメージ(小)、疲労(小)、全身に切り傷、軽度の火傷、回復中、木場勇治に騎乗中
[装備]:なし
[道具]:共通支給品一式、ランダム支給品0~3(本人確認済み、木場勇治も把握)
[思考・状況]
基本:参加者を全て殺害する(世界を混沌で活性化させる、魔王の役割を担う)
1:とりあえず進行方向は木場に任せる
2:木場と手を組むが、いずれ殺しあう
3:ナナリー……
4:ルルーシュの死に若干の苛立ち
[備考]
※参加時期はLAST CODE「ゼロの魔王」終了時
※第一回放送を聞き逃しましたが、木場勇治から情報を得ました
※放送を超えたため、他世界の情報を得ることが可能になりました。
  既に情報を得ているかどうか、また、どの世界の情報を得たかは次の書き手にお任せします
※冒頭のあれの記憶は消されている模様です

【木場勇治@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト】
[状態]:ダメージ(中)、疲労(小)、全身に打撲、ホースオルフェノク激情疾走態に変身中
[装備]:オーガドライバー一式@仮面ライダー555 パラダイス・ロスト
[道具]:基本支給品、グリーフシード@魔法少女まどか☆マギカ、アヴァロンのカードキー@コードギアス 反逆のルルーシュ、
    クラスカード(ランサー)@Fate/kaleid liner プリズマ☆イリヤ、コンビニ調達の食料(板チョコあり)、コンビニの売上金
[思考・状況]
基本:オルフェノクの保護、人間の抹殺、ゲームからの脱出
1:ファイズギアを持っていた者を追うため、北か東に向かう
2:すべての人間を殺したあと、村上を殺す。
3:ベルトを手に入れた乾巧と決着をつけたい。
4:たとえ別世界の海堂や長田であっても、自分を止めるなら容赦はしない。
5:ゼロとは組むが、いずれ殺しあう。
[備考]
※コロシアムでの乾巧との決戦の途中からの参戦です
※政庁で発生した煙を目撃したかどうかは次の書き手にお任せします


【D-3/大通り/一日目 午前】

【バーサーカー@Fate/stay night】
[状態]:黒化、十二の試練(ゴッド・ハンド)残り8、両目損傷、胸から腹にかけて大きなダメージ、灰化に抵抗可能
[装備]:バーサーカーの岩剣@Fate/stay night
[道具]:なし
[思考・状況]
0:■■■■■■
[備考]
※バーサーカーの五感は機能していません。直感および気配のみで他者を認識しています
※サイドバッシャーの攻撃を受けた部位の強度は下がっています


【ドライアイス】
二酸化炭素を固体に凍結させたもの。専用の入れ物と軍手付。
かなりの低温であり、触れると凍傷を引き起こす。基本的には保冷剤として扱われることが多い。
余談だが、これを水入りペットボトルに入れて衝撃を与えると、急激な圧力上昇により大きな爆発を引き起こす。
場合によってはコンクリートブロックを砕くとか。
よい子のみんなはマネしないように。

【アヴァロンのカードキー@コードギアス 反逆のルルーシュ】
アヴァロンにて使用可能なカードキー。
何に使われるものかは現状では不明。

【バーサーカーの岩剣@Fate/stay night】
原作にてバーサーカーが振り回していた巨大な岩の剣。
これを触媒としてバーサーカーは召喚されたとか。
宝具でこそないものの、バーサーカーの筋力と合わさることで爆発的な破壊力を得る。


085:Lost the way 投下順に読む 087:虚無の華
時系列順に読む
081:外見と心象の違い 暁美ほむら 093:蛇の道は蛇
アリス
080:憤怒 バーサーカー 100:Juggernaut-黒き零の魔人達
059:ナイトメア ~騎士と悪夢と起動兵器~ ゼロ
木場勇治


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