航空宇宙都市パルディステル

概要

 航空宇宙都市パルディステル(正式名称:パルディステル連合直轄区)は、宇宙新暦5000年(共立公暦0年)に再稼働を迎えた。旧星間機構の首都として栄えた歴史を持ち、現在は文明共立機構の直轄都市として機能する。政治の中枢たる最高評議会、代表総議会議事堂、そして数々の重要拠点が連なるこの都市は、共立公暦1000年においても拡張を続けている。セクション毎に広大なエリアが広がり、移動手段としてタワートレインが主流となり、区画内路線とともに増設された。タワートレインは透明なナノチューブ製のチューブを高速で走行し、乗客に都市全景の360度パノラマを提供する。都市機能を守る防衛拠点も増強され、艦隊戦力を含む多数の平和維持軍部隊が常駐。パルディステルは恒星エネルギーを活用した自給自足インフラで知られ、「星間バザール」や「追悼の森」などの名所が星間からの訪問者を惹きつける。しかし、急速な拡張による社会格差や、シールド外縁に衝突する未知のエネルギー波への対応が課題として浮上しており、都市の未来に影を落としている。

都市構造

 共立公暦1000年、現時点では全長約4500km、全幅約2000kmもの面積を持つことから、国際法上の人道保護対象に指定されている。羽と呼ばれるシート状の区画に居住エリアが、「塔」と呼ばれる棒状の区画に工業地帯が密集した。リング状の部分は流体金属によるシールドコーディングが施され、深層に平和維持軍の拠点が広がる。建設当初は曲線を避けた設計が採用され、理論上の無限拡張を可能とした。耐熱ナノチューブ、液状ベロゼア装甲、その他特殊建材が紫外線や重力に耐える素材として選ばれ、都市の耐久性を支えている。「羽」は変形機能を備え、常時稼働する重力制御システムが市民生活を守る。一方、「塔」は分離や拡張部分との連結が可能で、状況に応じた柔軟な運用がなされる。エネルギー供給はリング内の「恒星収集リング」が担い、太陽風や恒星放射を変換する。過剰エネルギーは「ソーラーパージ」と呼ばれる放出イベントで処理され、空に光の帯が広がる様子は市民の祭りとして親しまれている。このイベント中、タワートレインは特別なイルミネーションで運行され、観光客にも人気だ。


 複数の棒型構造物からなる。柔軟な強度を持ち、任意に分離や増設・連携が可能。工業生産ラインに加え、軍事研究施設が秘匿されており、フェノメノン・リプレーサーを応用した「複層次元ポートアリア」の実験が極秘で行われている。
この技術は短距離転送に成功しているが、不安定性から実用化には至っていない。また、塔の外壁には発光パネルが埋め込まれ、夜には都市のシンボルとして輝く。

クランナム・ステル(共立塔)

 棒状区画の内部に収まる巨大構造物。共立公暦1000年時点で高さ600km以上を誇る。塔内には複雑なギミックが仕込まれ、一つの中枢拠点として機能する。自己修復機能を備えた「変形戦艦」の試作機が格納されており、緊急時には塔全体が宇宙戦艦に変形する。
最上部には展望エリアがあり、タワートレインの光跡や「羽」の多層都市を見下ろす絶景が楽しめる。一方、最下層にはエネルギー炉があり、恒星収集リングからのエネルギーを直接受け取る。ここは立ち入り禁止区域とされ、謎の振動音が市民の間で噂となっている。

 宇宙空間に面する表面と裏側の多層エリアからなる。
 塔に繋がる直通路線が複数敷かれ、変形可能な構造を持つ。表面は商業都市として繁栄し、裏側は居住や自然環境の保全に重点が置かれる。変形時には流体金属が波打つように動き、重力制御システムが市民への影響を最小限に抑える。
羽の端部には緊急避難用の小型脱出ポッドが配置され、災害時の安全性を高めている。

商業エリア

 主に羽の表側に集中している。多層構造の大都市。近代的な複合商業施設が連なることから最も栄えた。
 「星間バザール」が毎週開催され、ツォルマリア人、イドゥニア人、異星文明の商人たちが集う。異星の香辛料、浮遊する装飾品、遺伝子操作されたペットなどが取引され、新たな料理や芸術が生まれる。
巨大ホログラム広告が空を覆い、夜には「光の洪水」と称される景観が広がる。最上層には富裕層向けの空中邸宅が浮かび、タワートレインの専用路線でアクセス可能。商業エリアの地下には闇市場が存在し、違法な技術や武器が密かに取引されているとの噂が絶えない。また、毎年開催される「交易祭」では、タワートレインが特別装飾され、パレードが繰り広げられる。

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居住エリア

 主に羽の裏側に集中している。多層構造の大都市。最高評議会の施策で多くの移民が定着した。上層部には低重力実験区があり、宇宙適応型人類の進化研究が行われる。ここでは子供たちが低重力で育ち、骨格や筋肉が異なる「新人類」が誕生しつつある。一方、低層エリアは過密化が進み、「影の街」と呼ばれる「相対的貧困層」の密集地帯が広がる。狭い住居や粗雑な環境の中で、住民たちは独自のコミュニティを形成し、闇市場と繋がる者も多い。最高評議会はこれを「社会実験」と称して放置するが、不満が蓄積し、小規模なデモや反乱が頻発。居住エリアの中層には教育施設「星間アカデミー」が位置し、次世代の科学者や政治家を育成している。アカデミーの学生は塔での実地訓練も経験するが、最近では学生運動が活発化し、社会格差への抗議が広がっている。

自然エリア

 長きに渡る拡張から居住エリアと接した。広大な記念公園。羽の一画を占めており、多種多様な動植物が存在する。「追悼の森」では、ツォルマリア文明が過去に滅ぼした星系の動植物が遺伝子復元技術で再現され、平和の象徴として公開される。巨大な羽虫や発光植物が群生し、夜には幻想的な光景が広がる。人工重力で浮遊する散歩道が整備され、観光客が空中を歩きながら自然を満喫できる。エリア中央には「生命の塔」と呼ばれるモニュメントがあり、滅亡した文明の記録がホログラムで投影される。自然エリアは食糧生産にも寄与し、遺伝子操作された高収穫植物が栽培されている。一方で、過度な遺伝子操作による生態系の不安定化が懸念され、専門家による監視が続けられている。

海洋エリア

 観光と食糧事情を兼ねて整備された。ここに世界中の海洋生物が養殖されており、独自の生態系を成立させている。人工重力下で泳ぐクジラ型の生物や、深海由来の発光魚が観光の目玉。中央には「水族ドーム」がそびえ、透明なチューブを通って海底散歩が楽しめる。ドーム内では海洋生物のショーが開催され、特に発光魚の群泳が観客を魅了する。海洋エリアは食糧生産の要でもあり、海洋植物や魚類の養殖場が広がる。特に「パルディステル海藻」は栄養価が高く、都市全体の食糧自給率を支えている。しかし、最近では養殖生物が突然変異を起こし、予測不能な行動を取るケースが報告され、平和維持軍が調査に乗り出している。観光客向けには水中タワートレインも運行され、海中を疾走する体験が人気だ。

歴史

 元々は星間機構が誇る力の象徴としてのイメージが強く、再稼働を予定していなかった。しかし、その利便性に目を付けた時*2の有力者の投資によって増設され、共立世界を代表する記念コロニーとして生まれ変わった歴史を持つ。再稼働を主導したのは、キューズトレーターに反発したツォルマリアの科学者集団で、彼らは都市を「全文明の避難所」として再設計する秘めた意図を持っていた。この計画は新秩序世界大戦の混乱でイドゥニア側に漏洩し、一時的な緊張を招いたが、共立機構の支援で完成。精算の道の一環として、「追悼の森」や自然エリアが整備され、過去の罪を償う象徴となった。今日では国家間の融和を象徴する世界財産として、強い存在感を持つ。

軍事

 パルディステル自体は単独での戦闘を想定しておらず、対空砲など軽度の武装に留まる。一方、共立機構の中枢として機能するために大規模な戦力を蓄えており、事実上、難攻不落の都市型要塞となった。フェノメノン・リプレーサーによるシールド展開を継続し、恒星からのエネルギー供給で防護体制を維持。最近、シールド外縁に未知のエネルギー波が衝突する事件が多発し、平和維持軍は遠方の星系からの「探査信号」とみて警戒を強める。内部では軍の派閥争いが顕在化し、都市自治を求める勢力と共立機構への従属を主張する勢力が対立。塔での小規模な衝突が頻発し、市民にも緊張が広がっている。変形戦艦の実験も秘密裏に進み、外部からの脅威に備える動きが加速している。

姉妹都市(国)


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地域
最終更新:2025年03月06日 21:20

*1 作:NovelAI

*2 宇宙新暦1500年代、戦後長きにわたる旧代技術の復旧過程でパルディステルは再びの稼働に至った。キューズトレーターによる過酷な情報統制の歴史は、ツォルマリア人にとっても繰り返してはならない損失と考えられており、あらゆる先進テクノロジーの平和利用に繋がったとされる。一方のイドゥニア世界においては新秩序世界大戦の真っ只中にあり、連合帝国が空域の覇権を掌握していた時代でもあった。ツォルマリア文明による強烈な選別統治の歴史は時のイドゥニア諸国に留まらず、あまねく世界において大きな禍根を残しており、復旧を果たしたツォルマリア人類は同2000年以降、数十世紀にわたる精算の道を歩むこととなった。