概要
セクター・イドゥニア大戦(正式名称.
新秩序世界大戦.
Inter Sector Warfare/インター・セクター・ウォーフェア.通称,ISW)は、宇宙新暦1428年、
惑星イドゥニア(中央大陸)におけるサンパレナ共和国のジェルビア諸国に対する武力侵攻を発端として拡大した。枢軸及び連合諸国の数次にわたる戦いの総称である。本大戦は、
旧文明(星間機構)の崩壊に伴って独立したイドゥニア内諸国の覇権競争からエスカレートし、同4500年まで続いた。開戦当時、北半球の大部分を占めていた王政連合諸国の南下を起点に東西大陸へと波及。最終的には複数のセクター(区画宇宙域)を跨ぐ総力戦となり、数十世代にわたる天文学的破壊と夥しい数の犠牲を積み重ねた。
歴史と背景
S.S.0年~201年:イドゥニア世界におけるツォルマリア人類の大移動
かつて広大な領域を支配した
星間機構は、近古代から続く果てのない混乱に終止符を打つための計画を進めていた。それは、大量破壊を伴う苛烈な星間戦争の教訓として掲げられた、ツォルマリア人類の総意であり、予め脅威となり得る文明を捕捉、場合によっては早期に絶滅させることを目的とした。この予防措置を実行するために完全武装した多くの調査艦隊が未踏の宙域へと旅立ち、所定の文明レベルに該当する全ての知的存在を監視対象に加えたのである。外敵との遭遇を恐れるツォルマリア人類にとって、ヒトの姿をした異星人の存在は、これまでに戦火を交えてきた如何なる知的生命よりも遥かに尊いものであり、人道上の交流対象となるはずだった。
しかし、時の最高評議会はこれを似て異なる敵性種族と見なし、段階的に同化させる決定を下した。後に一つの区画宇宙域(セクター・イドゥニア)として分類されることになる、その一帯の惑星文明は征服の最優先対象として指定された。産業革命を迎えて久しく、宇宙進出を間近に控えたイドゥニア文明諸国の併合を皮切りに、宇宙新暦150年以降、ツォルマリア艦隊による大規模な侵略が始まったのである。ツォルマリア人類は当初、停戦を望む先住民に対して如何なる交渉も受け付けず、一方的な武力侵攻をもって星間機構の支配下に入ることを認めさせた。駐留軍による間接統治は多くの惑星世界において段階的な入植フェーズに移行したが、同化の優先レベルに応じて名目上の自治権を認められた星間国家も存在した。
- 監視航路を巡回する星間機構の戦艦(詳細不明-宇宙新暦300年代)
S.S.202年~1428年:選別を続ける文明とその後の影響
ツォルマリア人類によって征服された諸星系の統治は、総じて悲惨なプロセスを辿った。長きにわたる最高評議会の支配下で情報統制が進行し、駐留軍による渡航制限を始め、各植民地における同化政策や、強制労働、断種による自然消耗など苛烈な措置が取られたからである。イドゥニア近傍における開発状況の都合から、辛うじて星間機構による選別を免れていた遠方の自治国家においても重税が課され、正規軍も解体。ツォルマリア本国から派遣された駐留艦隊が全ての航路を抑える中、地上世界における貧富の格差は際限なく広がった。先住民によるレジスタンス活動は徹底的に封じられ、最高評議会は支配下に置くほぼ全ての文明に対し、管理デバイスの埋め込みを義務付けた。(連合体としての星間機構の最盛期は概ね1000年前後とされる。諸説有り)
そのようにして形成された保護社会においては、地域毎に情報が遮断されており、一般市民は近隣の状況はおろか、連合体の全容すら知らされず、それが絶対の常識として根深く浸透したのだという。中にはツォルマリア人の姿を一度も目にすることなく隔離された先住民も存在し、星間機構の庇護下にありながらインフラの整備能力を持たない自治体が増えていった。このような駐留軍の統治手法は、後のカタストロフィ(S.S.1200年代,イドゥニアの春)において多くの植民地が文明水準を後退させる要因となり、狭い領域を巡って争う群雄割拠の時代を迎えたのである。宇宙新暦1265年以降、新たに独立した旧植民地諸国が星系間の世代航行を再現するまで最短1世紀を待たねばならなかった。多くの先住民が異星の脅威に怯える中、そのナショナリズムはやがて世界征服を目論む大国間の覇権争いへと推移。同1401年に旧支配勢力の根絶を掲げた枢軸同盟が成立すると、新秩序に対する反感も高まっていく流れとなり、多くのツォルマリア人を抱える連合諸国の団結を促した。同1427年。ラマーシャ公国の首都ジェルビアにおける首脳間交渉の最中、突如としてフィンスパーニア国境のサンパレナ軍が動き出し、後に新秩序世界大戦と称される総力戦の火蓋が切られたのである。
- 突撃するサンパレナ兵(南中央大陸西部戦線:国境の街-宇宙新暦1428年)
- ジェルビア連合の戦車部隊(南中央大陸西部戦線:国境の街-宇宙新暦1428年)
参戦勢力
戦域(概略)
セクター・イドゥニア戦域
- セトルラーム連邦の生体兵器(南中央大陸東部戦線:ロルクス大砂漠-宇宙新暦4056年)
- 休戦協定成立時。うなだれる連邦兵と諦めた帝国兵(南中央大陸東部戦線:旧帝都レーゼルタス-宇宙新暦4495年)
セクター・リオグレイナ戦域(現セクター・イェルサ―)
セクター・ツォルマリア戦域
経過と影響
本大戦は、宇宙新暦1428年、惑星イドゥニアにおける二大陣営の開戦を発端として長期化し、最終的に複数の宇宙域(セクター)を跨ぐ総力戦となった。当時の技術水準は(接触していない高等文明など一部の例外はあるものの)概ね世代航行を前提とした核融合推進に頼っており、また、使用する兵器も時代によって異なる。そして、星間機構由来の高度な跳躍システムは失われて久しく、各種のテクノロジーの進歩も主力兵装の一部を覗いては長引く戦争によって著しく遅れていた時代でもあった。この一連の戦いで失われた人的資源は億単位を優に超えるもので、その犠牲の主な原因は、幾度となく繰り返された攻防戦でも、選別による虐殺でもない。外気圏以遠からの無差別爆撃が主因とされる。この頃の人類は文字通り種の存続を賭けた総力戦を続けており、敵対集団を根絶やしにすることに全く躊躇がなかった。また、係る戦線において衝突を躊躇わせるほどの星間兵器が存在しない以上、本大戦における相互抑止のメカニズムは殆ど成り立たず、特に利用価値のある一部の先進惑星を覗いては、後の戦いに影響しないよう、早々に滅ぼしてしまう方が多くの指揮官にとって重視されることであった。
未熟な通信システムも戦争が長期化する大きな要因の一つとなった。仮に現場レベルの停戦が合意されたとしても、本国からの命令一つで覆されてしまう。本国において和平交渉の決断がなされた場合も同様で、命令が伝達される頃には情勢が一変しており、何ら実効性を持たなくなることも多々あったからだ。そして、長すぎる航海は集団のアイデンティティを変質させる。情報統制が行き届いた独裁国家である場合、遥か遠い宇宙に送られた将兵と、安全な後方で過ごしている一般市民の認識に大きなズレが生じてしまうことも度々あった。その影響はあまりにも深刻で、時には本国のコントロールから外れて独立してしまう艦隊が続出したほどである。そのような集団の中には、独自のネットワークを形成して近隣空域を荒らし回る者達も存在した。
多くの国家指導者が事の真実を公表せず、更なる派兵に踏み切ったことも長引く星間戦争に拍車をかける要因となった。この大戦は同4495年、惑星イドゥニア(
ラマーシャ公国首都ジェルビア)における休戦協定を挟んで、同4500年、大国主導による
ジェルビア平和条約の発効まで続いた。通信が行き渡らぬ、遠方空域での停戦も含めると更に長い時を要する。当該国家の指揮下にある全ての艦隊が停戦したのが4525年。先のイドゥニアにおける講話を不服とし、大規模な軍事行動に及んだギールラングを壊滅に至らしめたのが4801年と、星間レベルにおける完全な終戦を迎えるまで更に長い時を費やした。この間も国際社会は主要各国から独立した非属惑星への対処に追われており、特に爆発的に増加した宇宙海賊などの存在は多くの国家にとって無視できない脅威となった。そうした混沌の時代に終止符を打つべく発足したのが
国際共立監視軍であり、同5000年(H.S.0年)に成立する
平和維持軍の前身として活動を続けたのである。共立公暦を迎えて以降の世界情勢は、
三大原則を基軸とする新たな国際秩序の強化に取り組み、不完全ではあるものの、今日の1000年に至る共立体制(パルディ・ルスタリエ)を実現した。
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最終更新:2025年03月14日 21:30