概要
量子力学の「重ね合わせ」とマルチバース理論
フェノメノン・リプレーサー(Quantum Phenomenon Replace:現象置換シールド)は、量子力学の「重ね合わせ」の概念を応用し、マルチバース理論を組み込んで成立する技術。量子力学の重ね合わせとは、特定の量子状態が複数の異なる状態の重ね合わせで存在することを意味し、観測されるまではどの状態にあるかが確定しない現象。フェノメノン・リプレーサーはこの性質を利用し、異なる次元層(世界・時間軸)への接続を前提としている。
量子重ね合わせの性質を用いることで、QPRは攻撃や改変が加えられる際に、その影響を複数の次元に分散させることが可能となる。具体的には、シールド内の量子状態が重ね合わせの状態で存在するため、攻撃がどの状態に作用するかが確定せず、実質的に防御力が向上する。また、マルチバース理論に基づくこの技術は、異なる次元からエネルギーや情報を引き出し、防御システムの効果をさらに強化する。
量子バブルとベクトル操作
量子バブルは、特定の現象を一時的に隔離し、異なる次元層に移動させるメカニズム。QPRは、量子バブルを形成し、現象のベクトルを操作することで攻撃や改変から防御する。量子バブル内では、特定の現象が異なる次元に転送され、元の次元に戻る前に操作されるため、攻撃の影響を受けにくくなる。
このプロセスにより、位相の壁が形成され、あらゆる攻撃に対して事実上無敵となる。量子バブル内で行われるベクトル操作には、現象の特性を変化させたり、現象を異なる次元に転送するための精密な制御が含まれる。この操作により、攻撃のエネルギーは元の次元から隔離され、異なる次元や意識に分散される。これにより、攻撃がシールド内の対象に影響を及ぼすことを防ぐ。また、量子バブルは異なる次元に存在するため、通常の攻撃手段では干渉することが非常に困難であり、防御効果が向上する。
エネルギー保存則とエントロピーの法則
QPRは、エネルギー保存則とエントロピーの法則に従って動作する。エネルギー保存則により、「系全体のエネルギー」は常に一定であるため、QPRの使用には莫大なエネルギーが必要。また、エントロピーの法則により、「系全体のエントロピー」は常に増加するため、シールドの永続的な使用はエネルギー効率の観点から非常に困難。そのため、この技術は短期間での防御や一時的な使用を前提としている。QPRの使用時には、エネルギーの効率的な管理が求められる。これは、短期間での防御を確実に行うためのエネルギー供給と、その使用後のエネルギー再生が重要となるためである。例えば、攻撃を受ける際に即座に防御を展開し、攻撃が終息した後は迅速にシールドを解除することで、エネルギーの浪費を防ぐ。さらに、エントロピーの増加に対応するため、QPRは自己修復機能やエネルギー再生機構を備えている。
コペンハーゲン解釈とエヴェレット解釈の両立
QPRは、量子力学のコペンハーゲン解釈とエヴェレット解釈の両立を前提としている。コペンハーゲン解釈は、観測によって量子状態が収縮するという理論であり、エヴェレット解釈は、多世界解釈として知られ、すべての可能な量子状態が異なる並行世界として実在すると主張。この技術は、これら二つの解釈を組み合わせ、多くの超常的法則に基づく防御機能を実現している。
観測が行われることで特定の状態に収縮する場合もあれば、異なる世界線が成立する場合もある。コペンハーゲン解釈に基づくQPRの防御機能は、観測によって量子状態を収縮させることにより、攻撃や改変を防ぐ。一方、エヴェレット解釈に基づく防御機能は、異なる並行世界が同時に存在することを利用し、攻撃や改変が異なる世界線に分散されるため、影響を受けにくくする。このように、QPRはコペンハーゲン解釈とエヴェレット解釈の両方を巧みに組み合わせて、防御機能を強化している。
具体的な防御メカニズム
観測と解析
シールドが攻撃や改変を検知し、その特性を解析。攻撃の種類や強度を分析し、最適な防御戦略を決定する。攻撃のパターンやエネルギー特性を詳細に解析することで、最適な対策を講じることが可能となる。
これには、シールドに搭載された高感度センサーや解析アルゴリズムが用いられ、迅速かつ正確な対応が求められる。攻撃が行われると、センサーが即座に反応し、解析アルゴリズムが攻撃の種類、発生源、強度を評価する。この情報を基に、防御システムが最適な対策を自動的に選択し、実行する。
量子バブルの生成
攻撃や改変を隔離するために量子バブルを生成。量子バブル内で、現象のベクトルを操作し、異なる次元層に転送する。量子バブルは、攻撃エネルギーを吸収し、異なる次元に転送することで、シールド内の対象を保護する。
量子バブルの生成には、高度な量子制御技術が必要であり、これにより攻撃エネルギーが効率的に転送される。量子バブル内では、攻撃エネルギーが異なる次元に分散され、元の次元に戻る前に操作される。このプロセスにより、攻撃の影響が実質的に無力化される。
位相の壁の形成
異なる次元層に転送された現象は、元の次元に戻る前に操作される。位相の壁を形成し、攻撃の影響を受けないようにする。位相の壁は、攻撃エネルギーを反射し、元の次元に戻ることを防ぐ役割を果たす。
位相の壁の形成には、シールド内部の量子状態を精密に制御する技術が必要であり、これにより攻撃エネルギーが完全に遮断される。位相の壁が形成されることで、シールド内部の安全性が確保され、攻撃の影響が排除される。
エネルギー管理
QPRの使用には莫大なエネルギーが必要なため、エネルギーの効率的な管理が行われる。短期間での防御や一時的な使用に限定し、エネルギー消費を最小限に抑える。エネルギー効率を最大化するために、リサイクルシステムやエネルギー補充機能が搭載されている。
これにより、使用されたエネルギーが再利用され、シールドの持続時間が延長される。また、エネルギー補充機能により、シールドが使用されるたびにエネルギーが自動的に補充されるため、連続使用が可能となる。
防御の解除
攻撃や改変が終息した後、量子バブルを解除し、元の状態に戻す。防御の解除には慎重な操作が必要。量子バブルの解除時には、シールド内の状態が元に戻るように調整され、エネルギーの安定化が図られる。
防御の解除は、攻撃が完全に終息したことを確認した後に行われる。解除プロセスでは、シールドの内部構造が慎重に調整され、エネルギーの安定性が維持されるようにする。
第二世代QPRの機能
現在の第2世代QPR(Quantum Phenomenon Replace)は、上記のプロセスを通じて、あらゆる攻撃、改変、認知の歪みを防ぐことができる。具体的には、以下のような機能を持つ。
物理的攻撃の防御
物理的な攻撃を異なる次元に転送し、影響を排除。攻撃エネルギーが異なる次元に転送され、実際の攻撃対象には影響が及ばないようにする。これにより、物理的な攻撃から完全に防御される。
さらに、物理的攻撃に対する防御機能は、高速移動する物体やエネルギー兵器からの攻撃にも対応している。シールド内の量子センサーが物理的攻撃を検知し、即座に量子バブルが生成され、攻撃エネルギーが転送される。
エネルギー攻撃の防御
エネルギー攻撃を量子バブル内で操作し、無効化する。エネルギー攻撃がバブル内で吸収され、無力化されることで、防御システムが強化される。これにより、エネルギー兵器やビーム攻撃からも効果的に防御される。
エネルギー攻撃に対する防御機能は、高エネルギー粒子やプラズマ兵器など、さまざまなエネルギー源に対して有効である。攻撃エネルギーが量子バブル内で分散され、無力化されるため、シールド内の対象が安全に保護される。
精神的攻撃の防御
認知戦に対する防御を行い、精神的な攻撃や改変から保護。この技術は、量子力学とマルチバース理論を応用した高度な防御技術であり、エネルギー保存則とエントロピーの法則に準拠しながら、異能攻撃や認知戦に対する効果的な防御を提供する。
認知の歪みを防ぎ、精神的な影響を最小限に抑えることで、乗組員やシステムの安定性を維持する。認知戦に対する防御機能は、精神的な攻撃や洗脳、幻覚誘発などの攻撃手段に対して有効であり、乗組員の精神的健康を保護するために重要である。
名称
フェノメノン・リプレーサー(QPR)という名詞は、本来、英語話者である転移者向けに提示された通称に過ぎないことを理解しておく必要がある。
無論、
ロフィルナ語の正式名称も存在するわけだが、これに関しては転移者人口の増加に伴って任意の併記を認めた。
シールド技術の名称としては用法違いと思われる「replace」について、主な開発元であるセトルラーム政府は単なる代替技術ではないことを強調するために苦慮した経緯を説明している。
実際には
ヴァンス・フリートン大統領の個人的趣向が含まれており、単に響きが良いからゴリ押しさせた説が問題となった。
旧代技術
QPR1(第1世代フェノメノン・リプレーサー)
クラック危機を発端とする世界情勢の激変から、全面的な実装には至らなかった。無力化されたシールド技術。既存のワープ理論に基づく量子バブルの形成から、特定の攻撃実体を別次元に逸らすという構想は共立時代を迎える遥か以前より存在した。しかしながら、現象そのものへの干渉を可能とする、魔法文明圏の現実改変能力を前に時のフリートン政権は計画自体を根本から見直す必要に迫られたのである。小手先のベクトル操作ではなく、改変事実そのものを散逸させることを目的とした新計画は、数世紀にわたる同政権の強力なリーダーシップのもとで進められた。結果、戦略レベルの転用も可能とする第2世代(QPR2)の開発へと漕ぎ着け、順次刷新を重ねてきた経緯がある。また、この計画は、
ラヴァンジェ諸侯連合体.
現象魔術士機関(国家現象魔術研究所)との技術協力の過程で進められた。
現行技術
QPR2(第2世代フェノメノン・リプレーサー)
現代
セトルラーム国軍を始め、
共立機構国際平和維持軍、
連合帝国宙軍、ユピトル連合軍など多くの星間組織が採用する。従来のシールドシステムは単に攻撃のダメージを抑えるためのものでしかなかったが、
クラック対処協定を起点に刷新を余儀なくされ、当技術の開発に至った。その形態も宇宙艦艇に搭載する本格的なものから、個人レベルで利用される
アーツ・デバイスに至るまで様々なシリーズが登場している。大まかな原理としては、マルチバースへ通じる既存のワープ理論(
ルーゼリック・ワープ航法など)を応用し、局所的な収束技術として昇華させたもので、特異点に生じる並列世界(量子バブルレーン)のとの接続を可能とした。これにより、他方面から飛来する攻撃実体を別次元へ逸らしたり、場合によっては
認識のベクトルそのものを任意の方向に置換できるという。より正確には、有効射程圏内で生じる全ての現象を観測。特定の事象変動を認めた場合に、異空の彼方(異なる現実、世界線)へ強制収縮させることを目的とした。問題は一連の実験過程において多くの
事象災害を引き起こしたことであり、現在も宇宙の法則に影響を及ぼす可能性が指摘される。安全保障上、センシティブな問題となることからセトルラーム政府はQPRの実行に厳しい要件を定めた。
- シールド展開時、量子バブルを纏う航空艦船は常時異空間と接続しており、事実上無敵となる。
- ただし、莫大なエネルギーを消費することから、一度ブラックアウトを引き起こすと長い充填時間を要し早々に無力化してしまう。
- そのため、通常の作戦状況においては従来のシールドシステムを用いるのが効率的で、ケースバイケースとされる。
- 現状では普通にオーバースペックとなることから、発電炉による回復は追いつかない。
- 以上の性質は個人がシールド展開した場合も同様とされ、しかも能力的には遥かに劣る。
●シールド展開・ベクトル操作(QPR)の基本形
応用技術
クオリア・プロテクション・システム
有効認知圏内で観測された全ての現象に対し、ディメンション・バブル(位相の壁.Dフィールド)を形成する。QPRの一種。中核となるシールド艦から量子力場を展開し、確率操作を実行。対象の波動関数を収縮させ、任意の状況へ収束させることを目的に実装された。安全保障上、現代主要国にとって欠かせない根幹技術の一つとされて久しく、セクター内各星域に複数の大型リプレーサーが設置されている。保険として、惑星間を繋ぐ中継ステーションにも接続。
文明共立機構が複数国間の連携を促し、ゲートルートを通じた投射能力の向上に努めてきた。近年はパラレルジャンプの際に展開する複数のロジカルゲートを用いて事象の確定を行う。
- 大まかな仕組みとしては、シールド性能に特化した支援艦を配備することによってQPRの弱点を補う。
- 大型リプレーサーだけでも相当の効果を発揮するが、有効射程に問題があり、シールド艦との連携を前提に設計された。
- 一度形成されたディメンション・バブルは、シールド艦が健在である限り相当数の味方艦をカバーする。
- しかし、莫大なエネルギーを要することには変わりなく、数の暴力には勝てない。
●Dフィールドの基本形
P・クオリア・プロテクション
セトルラーム連邦を構成する各惑星にて実装された。QPRの一種で、一般的に惑星シールドの名で知られる。
共通事項としてディメンション・バブルを形成するが、展開に絶大なエネルギーを要することから究極事態下における防護手段として制限された。
前兆なき攻撃に無力であることが想定されるため、LTS等の星域統合システムと連携させる形で弱点を補った。
その他・改変テクノロジーとの相互関係
以上の防護技術が
現象魔法に対し、どの程度の効力を及ぼせるのかについては、量子力学、または現象学を専門とする有識者によって異なる解釈が示された。ラヴァンジェを含む現状の共通認識として、その時々の環境や個々人の実力、その他、総合的な戦略事情により勝敗が異なってくるという説が有力視される。科学的視点から見た現実改変と現象学的視点から見た現実改変は異なる概念であり、個別のデータによる定量化は極めて困難とされた。現象魔法のメリットを端的に述べるなら、超常的な法則の書き換えを実現できるところにある。ただし、そうした力の行使に伴う代償もあり、期待される認知干渉の範囲が強大(または広大)であるほど
アポリアを誘発するリスクが指摘された。一方の科学分野においてもQPRが物理法則に縛られる以上、現実固着にあたる防護策を講ずる場合に定量的なコストを考慮しなければならず、認知改変を可能とする現象魔法がその許容値を超えた時に敗北を喫することになる。ここで気をつけなければならないのは、セトルラーム、ラヴァンジェともに敵対の野望を抱いているわけではなく、ともに技術交流の機会を設けるなど最大限の相互理解に努めてきたことである。現象魔法分野において、管理責任を主張するラヴァンジェ側のパターナリズムに一定の疑念を禁じ得ないセトルラームサイドの思惑もあるわけだが、それ以上に重要視される要素として現象魔法が軍事的な脅威として認識されないための外交努力を強く求めてきた経緯があった。
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最終更新:2025年02月02日 19:54