カヴィーナ経済安全保障条約(IF)


概要

 カヴィーナ経済安全保障条約は、共立公暦680年に発効した。セトルラーム共立連邦ユエスレオネ連邦間における個別的防衛条約。ロフィルナ文明及び共同統治領たるホートシェート星域国(正式名称:ファールリューディア自決権条約によるユエスレオネ連邦議会行政執行部長とカイティワ国境策定条約並びに8月16日勅令による南サニス連合王国の国王の間に交わされたピリフィアー歴2013年12月3日協力宣言に基づく共同統治領域たるホートシェート星域)の関係強化を目的とし、イェスルキオン協定と同時期に締結された。

歴史

 共立公暦655年。ナルヴァール協定の締結以降にセトルラーム側から打診。ロフィルナ、南サニス両君主の婚姻に伴う関係強化を目的としてホートシェート側との協議が始まった。その結果、同660年に友好貿易協定が成立。同学術研究協定の締結に至るも、ウェールフープ技術に対して強い制約を設けるロフィルナ側の経済体制が障壁となり、兵器取引を含む最新の安全保障環境の構築に支障をきたす事態に直面した。一方、相互主義の原則に同意した南サニス連合王国政府は、ロフィルナ圏との相互依存体制を強化。ホートシェートの外交方針を巡って対立するユエスレオネ政府の警告から、一時は分裂の可能性も浮上した。そうした情勢に対し、セトルラーム政府はユエスレオネ政府に国内市場を開放する用意があることを伝え、改めて相互主義の原則に同意するよう提案したのである。ユエスレオネ側は同盟国に対する安全保障関連法を根拠として、最新兵器のレンドリースに踏み切る用意があることを提案。セトルラームにとっては他の関係国よりも安い価格で導入できることが決定打となり、双方の合意に至った。

内容

セトルラーム共立連邦

  • 1.セトルラーム政府は、ウェールフープ製品を含む所定品目の関税の引き下げを実施。ホートシェート製品の輸入を一部円滑化する。
  • 2.セトルラーム政府は、係る 優先契約対象 としてホートシェートを輸出の二等国に指定。必要なレンドリースを含め、一世代前の兵器を通常価格で提供する。
  • 3.レンドリース・ウェールフープ兵器の整備/オーバーホールに関しては同盟国としてホートシェート軍が行うことに同意する。

●引き下げの対象となる品目
関税の具体的な引き下げ幅は、該当ウェールフープ兵器のレンドリース量(需要)に応じて変動する。
  • a.一部農業分野(0~1%程度の引き下げ幅)
  • b.一部海産分野(同上)
  • c.一部医薬分野(同上)

ユエスレオネ連邦

  • 1.ユエスレオネ政府は、セトルラームに対して最新兵器のレンドリースを提供する。(これはサニス条約機構同盟国相当の扱いとなる)
  • 2.ユエスレオネ政府は、セトルラーム政府に対して一部品目の引き下げ幅による損失を補填。ウェールフープ兵器のレンドリース代を他の同盟国より下げることで調整する。

共通事項

  • 両国間で共有される機密情報は双方の安全保障関連法に照らして厳重に扱うことに同意する。
    • ユエスレオネ連邦側( 連邦法 )では連邦情報管理法、国家情報管理法、国家存立妨害行為等処罰法が挙げられる。
  • 当条約に両国主権の防衛を盛り込み、緊密な軍事連携を進める。

備考

 当条約の内容は双方の事情に応じて再交渉を行うことも視野に入れており、両国ともに不変のものではないことを確認している。

セトルラーム政府

 この条約は当初、両国間の合意によりセトルラームの視点から輸出の一等国として同意された経緯があった。しかしながら、優先契約対象として二等国の指定がなされている諸同盟国との整合性(公平性や妥当性)を問われる事態となり、705年、共立最高裁における違憲判決(異例の対応)をもってフリートン政権は当該条項に係る再交渉を余儀なくされたのである。一方、ユエスレオネ側の対応は当初の予想に反して穏健であり、セトルラーム側の事情をそのまま汲み取る形で再度合意に至った。以上の流れから友好関係の喪失という事態こそ避けられたものの、フリートン大統領の求心力低下は否めず、再びの政権交代を迎えてしまった。後に4度目の返り咲きを果たした同大統領は自らの驕りを反省し、国内外の調整に関して、より慎重に務めることを約束した。

 互恵価格とはいえ、独自運用できない技術を導入することに関して反対意見も根強く、フリートン政権は対ウェールフープ依存の回避を確約している。片務的な関税の引き下げに関しても諸説あるのが現状で、同政権は該当の取引量(兵器レンドリースの需要)に応じた税率の変動制を設けた。両国にとって経済上のメリットは殆どなく、今後の相互依存の進展に含みを持たせているのが現状とされる。当面の目的として、フリートン政権は専ら軍備対応の効率化に主眼を置いており、連邦総議会においては「そのための合意である」と説明された。当の大統領にとっては長期的視点による精査を前提とすることから、段階的な危機回避の促進に努めることを想定しているという。また、国内の主権意識に係わるセンシティブな問題であるために同政権は今後のユエスレオネの出方に合わせて慎重に対応する意向を表明した。

ユエスレオネ政府

 基本的にユエスレオネ連邦は古来から、構成主体外で同盟関係も確固としていない国に対して強硬な態度を取る伝統がある。本条約が締結されるまで、ロフィルナ圏に対するユエスレオネ連邦の評価は非同盟関係との解釈になっていたものの、条約交渉の結果その解釈は改められることになった。
 また、保護貿易主義を取っていたホートシェートの窓口が一部とはいえ開放されたというのも画期的なことであった。
 ウェールフープ技術の保守点検を受け持つことによって、完全に手放しではないシステム的条約を作ったキャスカ・ファルザー・ニーレイ統治監査官の手腕は連邦では高く評価されたものの、セトルラーム側の幾分かの不満を取り除けなかったことに関しては「一人に重責を押し付け過ぎではないか」という連邦議会野党の批判を呼んだ。
 ユミリア首相はこれに対して「上手くまとめられたというのに、文句だけは口が回る野党共が」と発言し、さらなる批判を受けた。なお、数カ月後に実際にキャスカ統治監査官が過労で倒れたときはすぐに権限を引き継ぎ、復帰までの数ヶ月を受け持ったという。

影響

 この条約の履行を受け、ロフィルナ圏とホートシェートの関係はより強固なものとなる。
990年代、双方文化交流の一環としてリティーア公女 悠里世界 に嫁ぐ流れとなり、社会文化的階級の保護のためにユエスレオネ連邦皇遇庁を通して選ばれた悠里世界の武士や騎士にあたる階級「ヴェフィサイト」であるヴァルティア・ド・スロートギエとの婚姻が決まった。
 この夫婦に南サニス王朝と連邦皇遇庁が生活費出資を行い、双方の介入をお互いに非難し合う状況が発生したが、リティーア公女が丁寧に双方の出資を断ったことにより場を収めた。社会文化的階級に疑念の目が深いユエスレオネ連邦国民もこの対処には驚嘆し、敬意を示したという。

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最終更新:2022年11月18日 18:47