『約束の土地へ』
(キャラ) 西園寺まりい、鰯水等
──春風高校・生徒会役員(兼 光画部の財布)
────【鰯水 等】。
「……『何が』とは言わんがね。つまり僕達が大トリというわけだ、西園寺くん。…………せっかくだ。この劇的な終幕を祝して、どこかで優雅にディナーでも──」
「いいから通報しなさいって言ってんのよ!! 110番でもFBIでも警視庁特車二課でも、なんでもいいから!!」
────春風高校・生徒会長(兼 苦労人)
──【西園寺 まりい】。
場所は、朽ち果てた体育倉庫。
カビの胞子が舞うマットと、時代の埃を被った跳び箱。
そこに佇むのは、学園一の甘いマスクを無駄遣いする男と、冷徹な仮面が割れかかっている独裁者の女子生徒だった。
轟天号。アンドロイド。幽霊。工事騒音。
数多の理不尽に侵蝕され続けてきた、生徒会執行部である。
そのすべてを『悪性腫瘍』と呼び捨ててきたまりいにとって、この【殺し合い】は、絶望以外の何物でもなく──
「──なんてことなんてなく。──」
「──……刻ぶる必要もあるまい、西園寺くん。どうせ最期だ。華やかに自由を満喫して散るのも悪くはないさ」
「冗談じゃないわよ! こういう時こそ公権力の出番でしょぉが!? いい? 暴力に勝るものは警察! 権力の犬に勝るのは、さらにデカい権力しかないのよっ!!──」
「──……あ~もしもし? おまわりさん~~? ええ、そうなんです。誘拐監禁、および殺人教唆。至急、部隊の展開を~~」
「……おぉ怖ぇ。これだから権力の亡者は……」
アンドロイドも、幽霊も。
本来なら理解不能な現象も受け入れてはいた彼女がただひとつ、明確にその存在を『完全否定』したもの。
それが、この殺し合いだった。
◆
………
……
…
「……やれやれ。国家権力のお出ましを待つ間、この支給品とやらを検分しておこうじゃないか」
「分別はきちんとしなさいよ」
塵入れ箱に座り込む鰯水。
彼は、足元に転がっていたデイバッグ(=福袋同然のゴミ)を無造作に開けた。
どうせ大したものはない。銃? 刀? そんな程度で、こちらが驚くとでも?──といったような。
タワシだの、レトルト餃子だの、想像を絶する中身に顔真っ青な面食いの傍ら、まりいは窓の外を眺めていた。
「……おいおい、レンジはどこだ?」
「先に医者を探しなさい」
「……ほう、こりゃ驚いた。冷凍餃子ってのは、1978年には既に存在していたのか……興味深い」
「ああもう、うるさいっ!! くだらないことを逐一報告しないでちょうだい!!──」
「──まったく、もう……」
“まったくもう”とは、主催者が意の一番に吐きたいセリフなのだろうが、──まりいの徹底した拒絶反応にも、それなりの理屈がある。
日帝時代でもあるまいに、「殺し合え」と命じられて、従う理由がどこにある。
首輪型爆弾。脱出不能。封鎖。どれほど巧妙に状況を整えられようと。自分の尊厳まで差し出す義理は、どこにもないのだ。
ゆえに、拒否権も人権も剥奪されたこの閉鎖世界において、彼女はあくまで『人間』であることを選んでいた。
そう。
あの我が闘争を愛読書に挙げる西園寺まりいが、皮肉にも『人の道』を歩もうとしているのである。
──ならばこちらも『文章』で揺さぶるしかない──
それが主催者の、精一杯の悪意であり、あるいは提示だったのかもしれない。
「……おや。西園寺くん、これは君宛てのようだ」
「……はあ? ……何よ。遺書でも書けって?」
「いや、封筒だ。……なんというか。これは、君こそが読むべき内容……じゃないのかな」
鰯水が差し出したのは、一点の曇りもない白封筒だった。
血生臭い島には不釣り合いなほど上質な紙質。
まりいは鼻で笑い、指先で乱暴に封を裂いた。
「……どうせ、主催者からの降伏勧告か、悪趣味な招待状でしょう……」
呆れ果て、吐き捨てるように読み始めたまりい。
だが、不意に。──厳密には、三行目を過ぎたあたりにて。
その言葉が氷結したように止まった。
「……ん? 西園寺くん?」
「……な、なにこれ……」
鰯水が訝しげに覗き込むが、まりいは無言のまま動かない。
ただ、紙を掴む指先だけが、微かに震えていた。
「……なんなのよ…………。バカ……」
手紙。──いや、その『作文』には。
拙い幼稚園児のような、それでいて奇妙なほどに目を離せない筆致で、こう記されていた──。
◆
『エリカのやくそく』
【♪BGM】
【♪ひろしの回想】
エリカが尊敬してる人を、しょうかいします。
それは、うちゅー飛行士さんです。
でもエリカは、地球とNANAしか星をしらないので、うちゅーひこーしで文字数を埋められません。
なので代わりに、キラいな人を教えます。
それはエリカのお姉ちゃんの、まりいお姉ちゃんです。
なんでキラいかというと、たくさん注意するからです。
エリカが好きなもの、やろうとしてることは「教育に悪い」とか言って、いつもいつも、口を開けば「勉強しなさい!」です。
この前の金曜日らしき曜日でも、浴槽にろうそくをニ十個沈めたら、すごい怒られました。
バスキャンドルを知らないんでしょうか。もう、ふ〜んっ。
でも、そんなお姉ちゃんにも、やさしい所があります。
エリカがちゃんと言うこと聞いたら怒らないし、エリカが誕生日のときは怒らないうえにプレゼントもくれます。
そのときエリカがもらったのは、日本列島最終形態みたいな、一枚の写真でした。
写真の正体が判明したのは、理科の授業中です。友達とガム食べながらお喋りしてたら、「あ。これ、『ちきゅーの写真』なんだ」ってなりました。
エリカは今でもその『命名:ちきゅー』を、ねむたいときとか、イライラするときに、ぼーっと見てます。
エリカは思います。
お姉ちゃんが怒るのをやめたら、エリカも、なぁなぁで接してもいいのにって。
でもお姉ちゃんは、すぐ叱ります。
だからエリカにとってはお姉ちゃんは、お姉ちゃんというより、悪友みたいな感じです。
エリカは友達は優しくて好きだけど、悪友はこわくて嫌いだから、お姉ちゃんを好きくありません。
この間もそうです。
エリカは学校で、勝手に『たまごかけカルボナーラ』と名付けている悪友に、サイフを取られました。
エリカが「返して」って言ったら、その悪友は「黙れ」って言って、頭を殴ってきました。
普通、頬とか殴りますよね。
でも彼はゲンコツをした。シュール。
親父でしか殴らないというのに、そこ。
そのあと、エリカはお姉ちゃんとお風呂に入ったのですが、お姉ちゃんはいつもの通り叱ってきました。
「……エリカ。いい加減に言いなさい、その傷……」
「え」
ショックでした。
悪友に殴られて、ずっと隠してきた頬っぺの傷です。
服とかでがんばって隠してたのに、お風呂だとバレてしまうのです。
翌日、エリカはカレーおごったあと、悪友に「財布を返して」と言いました。
財布のお金なんて、別にどうでもいいです。
ただ、あの中には、お姉ちゃんがくれた『ちきゅーの写真』が入っています。
あの写真だけは、世界中の一万円札すべてを含めても、枚数では負けてるのです。
でも悪友は返すどころか、エリカにひどい嫌がらせをしてきました。
エリカはもう、涙でいっぱいでした。
その時です。
なんと、あのお姉ちゃんが、すごいのを振り回しながら、悪友に突進してきました。
「エ、エリカを……放してぇえええええええええ!!!」
「お、お姉ちゃん!」
すごい顔して、すごく叫びながら、これまで見た以上にすごく怒る、すごいお姉ちゃん。
悪友たちは、火を見るよりも明らかに逃げていきました。
エリカはあたたかい火か、おいしい火しか知らないというのに。
エリカはカレーを食べてから、お姉ちゃんと一緒に帰りました。
ずっと、手を繋いで帰りました。
「ありがとう、お姉ちゃん」
「……別に。エリカが怪我をしたら、書類仕事や事情説明が面倒なだけよ」
お姉ちゃんは、そう言いました。
このときのお姉ちゃんの顔は怒ってましたが、どこかまんざらじゃなさそうでもありました。
それに対して、エリカはまんざらでした。
まんざらにクリームとバナナを挟んで、チョコデコレーションしてみたら、甘かった。
お姉ちゃんは自分のまんざらを失ったというのに、おやつまでくれたのです。
エリカは思わず、夕焼け空の星たちを眺めました。
エリカは、お姉ちゃんが大きらいです。
でも、それは、エリカがゆーしゅーなお姉ちゃんが望む、できる子になれないからです。
エリカはこの時、決意しました。
エリカは自分自身を尊敬できる人、つまり、うちゅーひこーしになります。
今はまだ、ロケットの作り方も、べんきょーを寝ない方法もわかりません。
でも、将来は、お姉ちゃんみたいにグルグルメガネかけて、うちゅーひこーしにならなきゃいけないんです。
十五歳になったエリカは、うちゅーで、写真を撮ります。
その、ちきゅーのマジ写真を恩返しとして、お姉ちゃんにぜったい渡します。
この夢は、まだうまくできないエリカの、先生と二人だけのひみつです。
じゃじゃ馬小学校 三年一組
西園寺 エリカ
◆
──すべてを読み終え、まりいは何を思ったか。
「…………っ、……ぅ……」
「え?」
「……バカ………………っ。あんた、ほんっとにバカね…………っ!!」
「え? えぇ?? 西園寺くん…………?」
「う、あああ……っ、──」
「──あああああああああああぁあああああああああああああああッ……!!!──」
「──エリカっ……エリカぁあああ…………!!! おね……お姉ちゃんが……絶対、絶対…………あぁうあああああああああああああ!!!!!──」
「──……ぜった、絶対ぃいいい…………!!!」
「えぇぇえ…………」
──かつて、
これほどまでに、感情を剥き出しにした西園寺まりいが、あっただろうか。
──かつて、
これほどまでに、血の通わぬ顔で、ただ空気を吸うしかできない鰯水が、あっただろうか。
────そしてまた、かつて。
────自分たちが立っている、この星の青さを、
────こんなにも切実に、意識したことがあっただろうか。
「誰が……。誰が死んでやるもんですか……。──」
「──こんな……こんなクソみたいな島でぇえええええええええええ!!!!!!!」
「え……………。あっ──」
──プツンッ
◆
「あああああああああああああああああああああああああああああ!!!!!! 佛説摩訶般若波羅蜜多心経観自在菩薩!!! 行深般若波羅蜜多時照見五蘊皆空度一切苦厄ぅ~~~~~~~~~~~~~~~~~~!!!!!!」
月光の下、『宇宙飛行士』の衣装に身を包み──。
春風高校生徒会長は鰯水の惨殺体になど目も暮れず、夜の荒野を爆走していく。
──約束が、ある。
【鰯水等@究極超人あ~る 死亡確認】
【西園寺まりい@究極超人あ~る】
[状態]:大号泣/感情暴走(愛)
[装備]:宇宙飛行士の衣装、二本刀
[道具]:エリカの作文
[思考]:全員粛清
1:エリカに本物の宇宙を見せるまでは、神だろうが主催者だろうが私が叩き潰す!!!!!
2:エリカのもとへ必ず生還する。その約束だけは、何があっても絶対に曲げない。
【作者コメント】
よく考えたらあ~るである必要0な回
でもあ~る知らなくても笑える設計にしたから安心して
エリカ作文のほとんどは、橘吉絵回想録での加藤三島のアホ会話から流用。ちなみにアーニャ回、スペランカー回、超かぐや回でも没会話使いました。ほぼ万能薬っすね~コレ
ま、これで俺ちゃんのパロロワ候補作21本は以上っす
ここまで読んでくれてありがとう、呪ってあげる
またどっかでコンペロワできるまで……グッバァーイ!!
最終更新:2026年03月20日 01:35