『Zero⇔11 Requiem』
(キャラ)扇要、ヴィレッタ・ヌゥ、早川アキ
網膜を焼くような、不愉快に鮮やかな夕日。
その眩しさから逃げるように逃げ込んだ路地裏には、湿った空気と、どこかの家の安っぽい揚げ物の匂い。
デビルハンターとしての終わりなき消耗から、吐息混じりの俺へ、ふと二つの音が投げつけられる。
一つ。
「まったく! アキはダイドーが好きじゃのぉ~!」──だなんて、硬貨が投入口へ吸い込まれる音と。
そしてまた一つ。
「……ほらよ、一緒に飲もうぜ。……おい、聞いてんのかよ!」──って、取り出し口から缶が転がり落ちる音。
もうじき『7778』で止まるであろう、ルーレットの余白の中で、そんな二人の音は波紋のように広がっていた。
……ありふれた日常──なんて高貴な言葉で飾りたくもない。
掃除してたら部屋の隅から出てきた雑誌みたいな。
風呂場へ持ち込んで、うっかり湯船に落として、ページがふやけても、「……あーあ」で終わる程度の。
そんな、どうでもいい一ページ。
俺は、その一ページの真ん中で、ガキみたいに笑ってる二人をただ無言で眺めて。
「んじゃいくぜ。ほ~らよっと!!」と。
放物線を描いて投げ渡される缶コーヒーに、手を伸ばしたその刹那──。
「……いや、らしくないだろ。デンジも、パワーも──」
「──…………んで。……俺自身も………………、」
──虚空を掴む感触で、俺は目を覚ました。
………
……
…
「……夢くらいせめて、マキマさんを見させてくれよ。……おい……っ、…………はぁ」
頬に伝わるのは、しけったソファの不快な感触。
視界を巡らせれば、枯れかけた観葉植物。埃を被ったパソコンに、主人のいなくなったテーブル。秒針を動かすことを放棄した時計盤。
ただ無機質に回り続ける換気扇だけが、俺の心にもないため息を吸い込み、ブゥン……と吐き出している。
誰かが途中で生活を投げ出した──そんな空間で、俺は挨拶代わりに『現状』を憂いてみせた。
「……あの世、ってわけじゃなさそうだな。長いことグースカしてて幸運なもんだ」
はぁ……。
──今度のため息は、本物だった。
……職業柄、悪魔絡みのイカれた事件には慣れてる。
死体にも、悲鳴にも、意味不明な理屈にも何もかもだ。
だが、今この『現状』ばかりは別。どんな悪夢とでもいいから置換してもらいたいくらいだ。
なんなんだ、一体。
気が付けば見知らぬ教室に放り込まれ、森口とかいう女教師が「殺し合いをしてもらいます」だと?
……バトル・ロワイヤル。……バトロワ。馬鹿みたいな単語だ。
あの似非先公が悪魔なのか、それとも単なる疾患者なのかは分からんが、仮にここが俺たちの『管轄内』だとしたら、マキマさんでも少しは困った顔するんじゃないか。
「……バトロワの悪魔?」
「すごいね。そのうち『菊次郎の夏の悪魔』とか『その男、凶暴につきの悪魔』でも出てくるんじゃないかな」
…………なんて。
マキマさんとアカデミー賞映画デートを十周くらい梯子して、脳みそ溶かさないとやってられない現状だ……、こりゃ。
「……で、『おかけになった電話は……』か。あーあ、電波対策も万全ってわけか。クソッ!!」
まぁあいにく、携帯の液晶はデートの約束どころかホウレンソウすら許してくれないんだけどな。
パンッパンに未読の溜まったLINEと、同じく無駄にパンッパンにさせられた家計簿アプリ。
しょうもない日常の残骸アプリばかりが俺を見つめ返してくる。
──0:08(sat)。……小ぇ時間も、俺をチラチラ。
……次に岸辺さんに会えたら、公安の端末は悪魔の処置済みなau契約にしろと、本気で進言してやる。
クソッタレ。
「……」
Ta,ta,ta,ta,ta...──。
「…………」
──掛時計が、うるさい。
Ta,ta,ta,ta...──。
「…………………」
──なおもうるさい。
──カルガモ親子のよちよち歩きみたいな、間の抜けた一定のテンポが、一層俺の神経を逆撫でしてくる。
Ta,ta,ta,ta...──。
──TA,,,,,,
「…………………………あぁ、うっせッ!!──」
「──…………って、あ。…………」
──そして、部屋の掛け時計には『電池が入ってないこと』を思い出した時。
俺は、乱れた結い髪を一触りして、深く、長く呼吸を置いた。
……狐の悪魔は、恐らく呼び出し可能。
……ご丁寧にも支給された武器は、使い慣れた日本刀だ。
なら、デビルハンター──ここで言うところの『一般人保護係』としての準備は、整っている。
姿勢を整え、スパイス程度に緊張感を纏いながら、俺はリビングのドアへ視線を投げた。
曇りガラスの向こう。
ぼんやりと、だが確実にそこにある影。
二つの影がちょうどノブに手をかけようかと、うっすら重なった時。
俺はロック画面に映る──あのバカ二人のニヤニヤ顔を、そっと暗転させた。
………
……
…
◆
「あぁ、約束するよ。俺も……いや、ここにいる全員をだ。こんなふざけた殺し合いで終わらせたりはしない」
「…………扇、さん」
「……正直、自信なんてないさ。俺はゼロじゃない。藤堂さんでもない。カレンみたいに突っ走れるわけでもないし、南みたいに皆を落ち着かせるのも得意じゃない。──」
「──でも、それでも、誰かがやらなきゃいけない。──」
「──ここで『仕方なかった』で済ませたら、きっと俺は後悔する。……俺は自分を嫌いになりたくない。だから、最後まで足掻いてみたいんだ。──」
「──そうだよな、千草……」
「……」
「…………『千草』……」
俺は、その名前を心の中で反芻する。
『扇要』。
ならびに同行者の女は、『千草』と名乗る。
彼らが口にする単語は、どれも現実感が薄い。
イレブン。日本解放戦線。
黒の騎士団。ゼロ。
……まるで安い映画の設定みたいだった。
だが今更だ。そんなのは。
それに少なくとも、こいつらの視線は人を殺す側の目じゃなかった。
『敵』が同じなら、それで十分だろう。
「早川さん、俺たちで殺し合いを止めよう。俺たちは一人じゃない……いつでも心の中にはゼロがいる、そう信じたいんだ」
「……ええ。こちらとしても、あなたに出会えたのは助かりましたよ、扇さん」
「……っ! あぁ、ああ!!」
固く握られる手。熱を帯びた想い。
……嫌いじゃない。
俺のバトル・ロワイヤルという一ページは、二人のレジスタンスを保護するという形で、一旦は綴りを止めるとする。
【早川アキ@チェンソーマン】
[状態]:健康、重度の虚無感(喪失の残滓)
[装備]:日本刀
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:デンジ、パワー…………待ってろ、すぐ飯作ってやる。
1:扇と千草を保護対象と見なし、安全圏まで連行する。死なせるのは寝覚めが悪い。
2:この異常事態を悪魔の仕業と仮定し、主催者・森口の身柄を確保。必要なら殺処分も辞さない。
3:早めに『コン』の試し撃ちが必要だ。
4:マキマさんに会いたい。
5:『ゼロ』……? 「俺たちは一人じゃない」って……0なら一人もいねぇじゃねぇか。
【扇要@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:ゼロなら、きっとこの状況を打破してみせるはずだ……!!
1:反抗勢力(黒の騎士団の再現)を組織する。
【千草@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:……。
1:扇…………。
………………
……………
…………
………
……
…
◆
【♪Øgi Requiem】
──あの時、
───あの瞬間……、
────あの、一瞬だけは…………。
…
……
“…………なっ?! ……こ、こんな時間に呼び出して貴様……。チェス…………だと…………?”
『あぁ、ゼロ。……こう見えて、俺はボードゲームに自信があるんだ。──』
『──……いいな、もし俺が勝ったら、約束通りそのマスクを剥いでもらう。……皆の前で、な』
“…………お、扇…………”
……
…
……あの一瞬の、ゼロの狼狽。
あれこそが、俺が『対等』になれた唯一の瞬間だったのかもしれない──。
「……なあ扇。……このアキという男、本当に信頼してもいいのだろうか」
「……っ! 静かにしてくれ千草っ! ……俺も分からないよ。でも、その時になったら……その時だろう」
「なっ!? お、お前……何を言って──」
「……すまない、言葉を誤った。……ただ、今は利害関係なしに支え合える仲間が必要なんだ」
「お前…………」
動揺を隠すように、俺はわざとらしく溜息をつく。
黒の騎士団、副司令。この腕章の重みに、俺はいつまで経っても慣れることができない。
運悪く、こんな残酷な時代に『扇要』として生を受けた俺は、常に得体の知れない重圧に晒され続けてきた。
俺は、ゼロが評価してくれたほど頼りがいのある人間じゃない。
自分がこの役職にいることだって、今でもどこか信じられないんだ。正直言って……。
だが、そんな俺にも。
「ただ聞いてくれ、千草」
「……お、ぉ、何をだ…………?」
「これは秘密なんだが……いつか、ゼロがいなくなった時のことも考えなきゃいけないと思ってるんだ。──」
「──……『二代目ゼロ』を皆で決めなくては、とかね。俺個人としては、カレンを推薦したい」
「な、なんだと……?!」
──心から愛してくれる人が、できた。
「今のゼロのやり方じゃ、みんな死ぬ気がするんだ。……俺はただ、“誰も死なない道”を選びたいだけさ。──」
「──極端な話、ブリタニアへの平和的降伏……土下座外交も視野に入れるとか」
「ど、土下座ぁ…………?!」
「千草、聞いてくれ。……俺はもう正直、この日本って土地……もういいんじゃないかなって思う」
「なッ!? ……お、お前……死ぬかもしれないからって…………本音をベラベラと……」
「玉城が言っていたんだ。“先祖の誇り、民族の尊厳……そんなの分からない、”って。戸籍なんて紙……俺は一度だって見たことがない。──」
「──……俺が守りたいのはそういう大きな話じゃなくて、『目の前にあるもの』なんだ。……ゼロだって、腹の底じゃ同じ考えだよ、きっと」
「おま…………ど、どうしたのだ……おまっ…………」
「“どうした”……か。こんなこと、昔の俺なら言わなかっただろうなって。……ナオトにも顔向けできないよ。──」
……そうだ。分かっている。
本当はこんなこと、比べるべきじゃないんだろう。
騎士団も大事だ。日本だってまだ終わっちゃいない。
そんなことは、俺が一番分かっている。
でも……もし『その時』が来たら──俺は選べるのかなって。
……そう思えば、思うほど、
目の前の────『彼女』だけは、離せなかった。
「──千草、こんな……こんな愚かなイレブンですまない。君のような気高い女性を巻き込んで……。──」
「──でも、誓うよ。俺はその分、君を……そう、──」
「──『ゼロ』が世界を導くなら……俺は君だけを、『ワンハンドレッド』に愛したい……!」
「…………お、扇…………」
「ついてきてくれないか? ……こんな最低な男に」
「………」
…
……
“負け、か……。相変わらずだなゼロは。……そうやってチェスのように、俺らを駒扱いしているんだろう?”
『……もういい。いいだろ……。明日に備えて、早く寝──』
“……分かっているんだからな、みんな”
『……あ? な、なにをだ……』
“……口々に噂をしているんだ。君の、その正体。──”
“──……お前、卜部さんだろ?”
……
…
真夜中の静寂。
目の前を歩くアキの、無防備だが隙のない背中を視界に入れながら、俺は千草の手を強く握り直した。
今の俺は、情けないほどに無力だ。アキさんを頼りにしなくては、この地獄を生き残ることすら叶わない。
だが、それでも、この『温もり』だけは、本物だと思いたい。
固く握られる手──。
熱を帯びた想い──。
……最初に出会えた参加者が、彼女で良かった。
本当に。
心の底から。
「千草……」
「………………扇」
……そうだ。
千草に、『レクイエム《鎮魂歌》』なんて──必要ない────。
【扇要@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:野心(自己愛と逃避)
[装備]:不明
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:一人でも多く仲間を募り生還したい。もちろん、千草も……。
1:アキさんは頼りになる。今の俺たちじゃ彼が必要だ。……彼が死ぬような展開だけは、全力で阻止したい。
2:帰還後は民主主義投票でゼロの在り方を決める。ただ、俺は一個人として卜部(ゼロ)のやり方は支持できないよ。
3:戦い以外の方法があるなら、そっちを選びたい。……それは殺し合いも、ブリタニア問題も。
4:そのあと、千草の望む国へ移住する。そこで俺は本でも書いて、君も子供たちも一生食うには困らないようにするよ。
5:卜部の死の真相は一体……。このまま曖昧にはできない。騎士団のみんなと確かめていこう。
【千草(ヴィレッタ・ヌゥ)@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:健康
[装備]:不明
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:……今は、ただこの人を支えたい。
1:早川アキを必要次第利用。使えなくなったら始末。
2:……私は、どうなるのだろう。
最終更新:2026年05月31日 00:36