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『ここでは誰も流されない』


(キャラ)糸色望、紅月カレン




 春です。
出会いと別れの季節などと世間は浮かれていますが、実際には花粉と低気圧と新生活への義務感によって人間の精神を破壊する、極めて暴力的な季節です。
ごらんなさい、あの無垢な子供たちの目を。
誰一人として桜なんか見ていません。彼らが見ているのは、屋台のジャンクフードと、くじ引きのSwitch2の空箱だけです。
大人になればなおさらタチが悪い。
花より団子、風情よりアルコール。
桜の木の下で泥酔し、「いやぁ、日本人の心ですねぇ」などと語っておりますが、その実、見ているのは桜ではなく部長の顔色と終電の時刻表です。

つまる話、皆さんにお聞きしましょう。
桜とは、何でしょう?

……ええ、結論はもう出ています。
桜とは所詮、宴会客の背景として無言で散らされる、季節限定の紙吹雪に過ぎないのですよ。


ええ。例えるなら────まるでこの私のように……。



「いいですねぇ、夜桜は……。──」

「──上を見れば毛虫の一家団欒。下を掘れば身元不明の白骨死体。──そんな手垢にまみれた表現を語る私は、大正浪漫の残滓をひきずった時代錯誤な着物男。──」

「──陸海空、どこを見渡しても絶望の包囲網です。やはり春は、人間が最も効率よく絶望できる季節なんですよ……」


…………うん。十六点、ってとこですね。
我ながら、次の家庭訪問のウラ予行練習としてはさまになったものです。


 さて、申し遅れもいいところですので、さっさと結論から話しましょう。
私の名前は糸色望。世間一般で言うところの教師です。
もっと分かりやすく言えば、鬼塚先生や坂本先生やヤンクミやブスバカ東大先生の対義語です。
文部科学省が存在を認めてはいけない、教育界のダークマターですね。

そして私は今、『殺し合い』という極めて教育上よろしくない催しに参加させられています。
……まったく、近年の教育現場は荒廃しているとは聞いていましたが、ついにここまで来ましたか。
これじゃあ学級崩壊どころの話ではありません。かのドラゴン先生も「ブスとバカはトー横に行け!」と叫び出すディストピアですよ。

…………そうなると、現代の教育者として、私が起こすべき第一行動は必然的に決まってきます。


「さて、死にますか」


もう一度言います。


「さて、死にますか」


大事なことなので再放送いたしました。
ただ、“いただきます”くらい生活に馴染ませたいので、念押しさせてもらいます。


「さて、死にますかぁ……。──」


「──死にますか……(哲学)」


 ……ええ、分かっているんです。
こういう人間ほど、案外しぶとく死ねないものなのです。
渇望と絶望は一字違い。
パラレルワールドの自分、──さきほど川に捨てた『厨二にも程がある衣装《支給品》』をノリノリで着ている自分が羨ましい限りでしょう。

それではみなさんさようなら。
日本の悪しき宴会文化も、謎のコスプレ衣装もさようなら。
『ゼロのマスク』だか『ゼネラルの覆面』だか知りませんが、自己演出だけは一流なあの黒い衣装もさようなら。
その衣装を全力で拒絶した、プライドだけは一丁前な私もさようなら。


「……さて、死にますか…………」







「………………さて、死にま────」


──、

────、



………
……




 私には、自分でも嫌になるくらいの『甘さ』がある。
戦えるとか、引き金を引けるとか、銃口を向けられても敵を睨み返せるとか、そういう戦術的な強さのことじゃなくて。
……もっと泥臭くて、もっと根本的なところにある、私の『弱さ』。

今でも、思い出すだけで奥歯が軋む。
数週間前、黒の騎士団で持ち上がった、あの軽薄で狂った提案。
“スパイ摘発のため、構成員全員の身元照会──『家系図』を提出させよう”
……誰が言い出したのかなんて知らない。知りたくもない。
でも、その瞬間、私は怒るより先に息が止まっていて、気付けば反論より先に涙を堪えていて。
──……こみ上げてきた過去に怯んだことが、私の弱さだった。
そして、ゼロに名前を出されず、庇われたこと。
何も聞かず、何も言わず、ただ自然に話題を切ったこと。
その瞬間に、怒りやプライドじゃなく、『ああ、助かった……』って心の底から安堵してしまったこと。
──それが、私の弱点だった。

殺し合いだとか、命の授業だとか……もう怒りを通り越して呆れるような狂った舞台だけど。
だったら逆に、私はこの状況を利用してやろうと思う。


「……え? ゼ、ゼロ…………!? な、なんでこんなところに、マスクが………………?」


私はこれを機会に、自分の『甘さ』にケリをつける。
誰かに守られなきゃ戦えない自分を、ここで断捨離してやる。

──家系図には載っていない、『紅月カレン』として…………っ!



「……いや、違う。これはただの支給品。主催者の悪趣味な悪戯ね。…………バカらしいわ」


 散れぢれの摩天楼を背に根を張る、桜の木。
花びらが頬をかすめる河川敷にて、私はぐしょ濡れの『あの衣装』を手に取り、……思わずため息を漏らした。

湿って重たいマントに、桜まみれのマスク。
それに……じめったくなった私の袖──アッシュフォード学園の制服。


「……」


……別に、今更だ。
二時限後、いつもの『設定』で保健室へ向かったら、気が付いたらこれ。
プライバシーも事情も全部無視なこの催しには、いちいち怒る気なんて捨てたけども。
……でも、これで確信したことがある。

このバトル・ロワイヤル。
──間違いなくブリタニア絡みだった……っ。
──ひいて言うなら先刻、『日本人は死んでください!』と喚き散らした……アイツの残党の……っ!


「……違う。今のは違うよね。……死んだ人を利用するみたいな言い方、…………最低。──」

「──……っ、……」


……唇を強く噛む。
胸の奥が、ギリギリと嫌な音を立てて軋んだ。


違う、……違う。

そんな八つ当たりしたいわけじゃない。
そういうのじゃなくて、…………ただ。……ただ、なんていうか。
私はまだ、ちゃんと整理できていないだけ……というか。
…………もう自分でももどかしくて、……動揺とかじゃないけど、…………とにかく、──とにかくっ…………!


「…………ゼロ……っ」


──和の象徴────『桜』。
夜風に舞う可憐な桃色が、支給武器である日本刀の抜き身に映り込む。
私はその刃を見つめながら、濁流となってかき乱してくる感情を──己の『甘さ』を。
無理やりにでも押し流そうと、必死に、必死にしがみついていた────。



「ケリを…………ここ、で、…………ケリを……。──」

「──ケリをっ……!!」


「実にその通りです。変な不審者が大量発生する季節の変わり目こそ、この世の新陳代謝として自ら命を絶ち、社会にケリをつけるべきなのです」

「……え?」


 ……背後からの声に。
私は『レジスタンスとしての外面』と『割り切れない想いに引き裂かれる等身大としての内面』の境界線が一瞬で霧散した気がした。

慌てて振り返ったそこにいたのは──桜よりも誰よりも、『和』そのものみたいな男性。
教科書に載っている大正時代の文豪が、そのまま墓場から這い出してきたかのような日本人。
丸眼鏡。書生服。青白い顔。……しかも、なんか幸薄そう。
その男は、見た目に反して異様に距離感ゼロのまま、ずいって顔を近づけてくると、


「初めまして。……ええ、紅月カレンさん……ですか」

「え? えっ?!」

「失礼。勝手ながら便利なアプリからあなたの情報をのぞき見させていただきました。我ながらストーカーの素質十分、実に気持ち悪い行為です。……さて、これで一応は『成立』したことになります」

「……い、いやちょっと!! ……あ、あなたは……一体…………?」

「自己紹介? はは、野暮ったるい。冥土のみやげに名前など、そんなものは後回しで良いでしょう。いいですか、カレンさん!!──」


「──私を『正当防衛』で殺してください!!! お願いします!!!!! その単刀で文字通り直入に!! さあ!! さあ!!!」

「は? はぁァア!!??」



──突然、私の両肩を掴んで、日本人どころか人として恥ずべき発言をしてきた。


……近い。
あぁ~~!! 近い近い近い近い!!!
レジスタンスとしての顔とか、黒の騎士団のエースとしての威厳とか、そういうの全部、秒で崩されたっていうか……。

あぁもう!! この人ほんっとにおかしいから!!!
私も素でいかせてもらうわよ!!! 素で!!! 
容赦しないんだから!!!




【♪命の授業(笑)】



 ──『人生』。
↑Q:この漢字、なんて読むか? ……だってさ。
答えは、こう……。


「え? じ、じんせ──」

「いいえ、正しくは『んちゅせい』です」

「はぁ?! 島人(しまんちゅ)基準?!」

「さあ、実際に口に出してみてください。……ほら、なんとも言えない、締まりのない、唾液の混じったような卑屈な響きがするでしょう?──」

「──『んちゅせい(笑)』……実に良い。向上心も主体性も感じられない。これこそ我々現代人が目指すべき、高次元の怠惰なのです!!」

「いやいやいやいや論理マッハすぎてついていけないわよ!? というか何一つ意味分かんないわよ!!!」



 ……で、Q:『人』という字は何でできてるか? ……だって。
金八? と思ったわよ。今の時代にって。
…………だけど、当然この男の吐く答えに、そんな地上波デジタルで包まれた偽善は一ミリも含まれていなかった。


「いいですかカレンさん。あの有名な坂本金八は言いました。『人という字は、人と人とが支え合ってできている』と!」

「私もそれしか答えようないじゃないの!! ネットの動画でしか見たことないけど金八!!!」

「ハハハ、よく見てください『人』という字を!! 一方がもう一方に、全体重を預けて寄りかかっているだけではありませんか!?」

「えぇ……?!」

「これは支え合いなんて美談ではない!! おんぶにだっこ、あるいは寄生です!!! 人という字は、寄生虫と宿主の関係を表しているのですよ!!」

「最悪っ!!!! ほんっと最悪!!!!」


 ……最後に。
とどめともなると、このセンセーは異常に目玉がギョロつき始め、狂気を帯びた熱量で身振り手振りが激しくなった。


「人生楽ありゃ~苦もあるさ~~~♪ ご存じですか、絶大な人気を誇るこの曲を!」

「水戸黄門……でしょ? さすがに知ってるわよ!」

「ええ、かの有名な水戸黄門。彼の生き様こそが『んちゅせい』の真理です。苦ができれば、角さんにあの変なノート見せびらかさせて楽をしてるでしょう!!」

「あれをマウント取ってる扱いすんじゃないわよっ!!」

「いいですか? とどのつまりこうです!!!──」


「──人生とは、“他方に全部してもらって”こそ初めて人生と呼べるのです!!! あなたが人生苦労してるのなら、私からすれば“人生《じんせい(笑)》”であって、“人生《んちゅせい》”ではないっ!!!」

「はぁあぁああ??! イミフイミフほんとに無理無理無理無理!!!!」



「ハッ──」

 「──ハッ」 「────ハッ!!──」


「絶望したっ!!! 絶望したっ!!!! 自立心の無理強いをする現代社会に絶望したっ!!!!──」


「──そこでカレンさん、あなたですよっ!!! 自殺よりも他殺の方が圧倒的にお得……!! そのことに気付いてしまった私を、どうか『正当防衛』で殺してください!!!!」

「ふざっけんなバカァッ!!! 自分で逝けーーーーーーーっ!!!!」



 ……以上。
夜桜の下で、自殺できない言い訳を延々と理論武装してる自称・教師。
それが『糸色望』という男だった。

もうほんと、何なのよこの人……。
“正当防衛で殺してください”とか、“現代社会がどうこう”とか、いろいろもっともらしく捲し立ててるけど。結局この人、ただ自分の偏った持論を誰かに聞いてほしいだけなんじゃないの?
しかも、とびきり面倒臭い形で。

私はもう、心底ヘトヘトだった……。
レインコート同然に濡れ果てたゼロのマントが、肌に張り付いて酷く冷たい……。


「はぁ…………」


もう何回目かも分からない、魂の抜けたようなため息が漏れる。
疲れた。ナイトメアフレームの戦闘じゃなくて、ただの会話でここまで精神的に摩耗することなんて……ある!?

甘さの断捨離とか、自分のアイデンティティとか、さっきまで格好つけて色々考えてた自分がバカみたいじゃない。
早くもこの最悪な巡り合わせのせいで、先の展開に絶望しきっちゃう。


……そんな、紅月カレンの最悪な序章(プロローグ)だったり……。






「と、ここで『投下終了します』宣言でもすれば、そりゃあ読後感としての締まりはいいでしょう!!」

「っ……はぁあああ!!??」

「しかし!!! こんな話コンペで採用された日には、不埒な輩によって私は確実にズルズルと生かされ続けます!!」

「何の話してんのアンタ!?」

「第三回放送、酷い時には中盤あたりまで無駄に生を引き延ばされる……それが昨今のパロディロワイヤルにおける『大人の事情』なのです!!──」

「──私はそれが嫌で嫌でたまらない!! 楽に退場したいからこそ、あなたに正当防衛を懇願しているのです!!! いいですか! 今すぐ最下部に表示させるのですよ!! 赤文字の編集で、【糸色望@さよなら絶望先生 死亡確認】……という、あの一歩(リザルト)を!!!」

「知らないわよそんなテロップ!!!! あぁもういやあああ~~~~!!!!」



 本当に頭痛がしてきた。今までに感じたことのない種類のエグい辛さ。
アッシュフォード学園の授業だってここまで苦痛じゃない。
チャイムの鳴らない分、全人生のどの退屈な講義よりも嫌気がさすんだけど!!!

夜空を舞う、桜……。桜がハラハラと散る、情緒ある夜……。
その無駄なエモーショナルさが、この狂ったセンセーの背後に奇跡的な説得力を醸し出してしまっていて……。
なんか、危うく脳がバグって納得させられそうになったんだけど!
色々危なかったわ私……!



「いいですか! 自分で努力して、自分でリスクを負う。そんなものは昭和時代の遺物です! 現代を生き抜く智慧とは、他人にやらせて、自分だけが気持ちよくなる……この『んちゅせいの錬金術』にあるのですよ!!」

「……はいはい、そうね。もう何でもいいわよ…………」

「例えるなら……これは私の話ですがね。いやらしい話……──」

「ッ!!!! あぁあああストップストップ!!! 他人にやらすってなにをっ!!!! この変態教師っ!!!!」

「……はて? 私の給料の話なのですが……それが何か不適切なことでも?」

「っっ~~~////!!??? ち、違う!!! 今のは私が悪いんじゃなくて!! この人の言い方がぁ!!」

「まぁよろしいです。他方に丸投げすべき苦労は、これほどリストアップするまでにあるんですよ!」

「だからもうって!!!!」



【他方に丸投げすべき「んちゅせい」的タスク】

  • 人生の大きな決断→必殺ワード:「親がこうしろと言ったから」。自分の進路すら他方のせいにすることで、失敗した時の責任を他方へと転嫁できる。
  • 責任の所在の明確化→「私は反対したんですけどね」という空気を出しつつ、最終決定のハンコを押した他方にすべての泥を被ってもらうサラリーマンの生存戦略。
  • 筋トレ→一般的女子は案外細マッチョ派。競争相手が勝手にゴリラ化することで、何もしない自分のモテ度が相対的にUP。
  • 駄菓子屋で万引き→そのあと店員が勝手に「君はさっきのやつと違い、金を払えて偉いな」と値引きしてくれる可能性あり。
  • ポケモンバトル→人間同士でやってみてください。暴行罪成立です。
  • エヴァ→貞本に漫画で丸投げした方が“分かりやすい”と高評価。
  • 野球→近鉄吉井「要求通りに投げただけ」



「ちなみに私はバントのことを自殺打と読んでいます! 1-3のソロプレイです!! つまり、かのバントの神様は長嶋監督に通算533回も『お前、そこで自殺しろ』と命じられたことになるのですよ!!──」

「──……次のランサー、彼で良いのでは?」

「あぁああああ脳が死んじゃう脳が死んじゃう脳が死んじゃう!!!! あああああああああああああああ!!!!!」



 怖い……。
コワい怖い、こっわい…………。
え? ……あぁ、別にこの偏屈センセーの存在が怖いってわけじゃないわよ…………。

怖いのよ、この人の狙い通りに事が進みそうで……!
何か変な魔力にでもかけられたみたいに、私の持った日本刀の切っ先がどんどん、その薄っぺらい着物越しの胸部に吸い込まれていくっていうかぁ……。
刃先が男の鼓動を求めて、私の右手がもう言うことを聞かないっていうかぁ……。
自制心がミリ単位も機能しなくなってる自分自身が、もう恐怖で仕方ないのよ…………!


「おお! さすがはカレンさん! あなたは出来のいい生徒だ!! ついに他殺による正当防衛の素晴らしさ、そのコストパフォーマンスの高さをご理解いただけたのですね!!!」

「あっ!!! ち、違っ……!! 違う違う違う!!!」


ほんと……最悪…………。
これじゃまるで、深夜アニメにありがちな“口では嫌がってるのに身体は正直”みたいなハレンチな流れになってるじゃないのぉ……!
ていうかぁああ……あぁぁぁ、もうっ…………!!

私はもう、もうっ…………!
仕方ない、仕方ないから……──もうっ!!!



……ゼロ──ルルーシュ、ごめん。
こんなことで、アンタの真似するなんて…………。


「ではカレンさん!! ぜひとも未練なくスパッと介錯を──」

「カ、カレンが命じるっ!!」

「へ?」


私はぐしょぬれのソレ。──そのマスクを若干被って、センセーと目を合わせる。
ぐしょぐしょで気持ち悪い。
でも、それ以上に。
こんな状況で、こんな台詞を使おうとしてる自分に、心底絶望しそうだった。



「あ、甘えるんじゃないわよ!!! ────生きろっ!!!!」



夜風が、吹く──。


………
……




 私には、自分でも嫌になるくらいの『甘さ』がある。
戦えるとか、引き金を引けるとか、銃口を向けられても敵を睨み返せるとか、そういう戦術的な強さのことじゃなくて。
……もっと泥臭くて、もっと根本的なところにある、私の『弱さ』。

……川の音だけが、静かに流れてる。
すっかり桜の舞い散り終えた河川敷で、私たちは力尽きたように並んで腰掛け。
ふと、隣のセンセーが遠い目をしながら、ぽつりと漏らした


「……『人生生きてりゃいいことがある』。常々思いますよ、カレンさん」

「……今回は『んちゅせい』じゃないのね……」

「……ええ。件の台詞、たいてい先の長い若者が無責任に言うでしょう? ご高齢の方が『生きてりゃ論』を掲げているのを、私はあまり見たことがない。……人生とは常々、始まった時点で終わっているものなのだと実感させられます」

「……じゃあ、やっぱり死ぬの?」

「いえいえ。滅相もない。──」


そこで彼は、眼鏡の奥の目を少しだけ細めて、自嘲気味に笑った。


「──八十まで生きて、“人生とはRTAが得なのか”をこの目で見届ける。その程度の知的好奇心に、なまじ教育者としてそそられただけですよ……」

「……」


相変わらず、根本から終わっている発言。
だけど私はもうそれを怒る気にもなれず、ただ流れる川の濁りを見つめて受け流した。
あの生乾きのゼロマスクはさっき川に沈めて水葬したし、日本刀も鞘に収めた。
なんかもう、色々とどうでもいい。

ただ、それでも。
殺し合いだとか、命の授業だとか、んちゅせいとか……全部バカみたいで、狂ってて、意味分かんないけど。
だったら逆に、私はこの不条理な状況(世界)のすべてを利用してやろうと思う。


「言っとくけど、さっきから何一つ良いこと言えてないわよ、アンタ」

「ふふ、生徒にトラウマだけを残して何も与えない。それこそが真の教育者なのですよ」

「…………はぁ」


これはたぶん。
私の『甘さ』を、少しずつ激流へ流していくための訓練。

──そんな春の授業の話。



【糸色望@さよなら絶望先生】
[状態]:いきりゅ
[装備]:不明
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×1~3
[思考]:カレンさん……。彼女は実に優秀だ。さしずめ私は、“逆正当防衛”にしてやられた、といったところでしょうか。
1:絶 望 し ……てはいませんよ? これが平常運転です。
2:次の授業では、もう少し締まりのいいセリフを考えておかねば。毎度毎度「死にますか」では芸がありませんからね。
3:しかし“生きろ”とは。……ああいう真正面からの言葉、教師という生き物には案外効いてしまうものです。困ったことに。

【紅月カレン@コードギアス 反逆のルルーシュ】
[状態]:疲労(大)/精神的消耗(特大)/ツッコミ過多
[装備]:藤堂の日本刀@ギアス/制服
[道具]:基本支給品一式、不明支給品×2
[思考]:この殺し合いを、自分の成長の糧にする。
1:……するんだけど。なんかもう別ベクトルで鍛えられてる気がする。
2:参加者全員を『生きさせて』、主催者の鼻を明かしてやるわ。
3:次あのセンセーが「正当防衛で殺してください」とか言い出したら、今度こそ川に蹴り落とす。


最終更新:2026年05月26日 08:05