「………………は?」
放送が終わり、タブレットに追記された精神側の名簿を見ていた虹村億泰は、ある一つの名前に目が釘付けになった。
虹村形兆
それは、あるはずのない名前だった。
目をごしごしと擦って、もう一度その名前を見る。
目をごしごしと擦って、もう一度その名前を見る。
虹村形兆
見間違いではない。
自分のすぐそばに表示されたその名前は…紛れもなく兄の名前だった。
自分のすぐそばに表示されたその名前は…紛れもなく兄の名前だった。
「なんで…どういう、ことだよ」
兄貴は死んだ。
この目で確かにその死を見た。
蘇った?
いいやありえない。
仗助がいつだか言ってた気がする。
どんなスタンドだろうと人を蘇らせることはできないって。
自分のスタンドは治すことはできても死人を蘇らせることはできないって。
ありえない。
ありえないありえないありえない。
この目で確かにその死を見た。
蘇った?
いいやありえない。
仗助がいつだか言ってた気がする。
どんなスタンドだろうと人を蘇らせることはできないって。
自分のスタンドは治すことはできても死人を蘇らせることはできないって。
ありえない。
ありえないありえないありえない。
動揺する心をなんとか抑えつつ、助けを求めるように同行者の方を見る。
「せ、星歌さん…」
「…虹村君」
「…虹村君」
対峙する同行者…伊地知星歌の顔色もまた、暗い。
自分と同じように、大切な誰か…たとえば妹だという虹夏が呼ばれたりしたのだろうか。
しばらく、お互いに見つめ合う
やがて先に口を開いたのは、星歌の方だった。
自分と同じように、大切な誰か…たとえば妹だという虹夏が呼ばれたりしたのだろうか。
しばらく、お互いに見つめ合う
やがて先に口を開いたのは、星歌の方だった。
「虹村君…私を殴ってくれ」
「はあ!?」
「はあ!?」
突然の要求に、億泰は困惑する。
「な、何言ってんだよ星歌さん」
「いいから殴れ。私は…自分が許せねえんだ」
「て、敵でもねえ女を殴ったりなんかできねえですよ」
「…頼む、殴ってくれ。でないと私は…!」
「いいから殴れ。私は…自分が許せねえんだ」
「て、敵でもねえ女を殴ったりなんかできねえですよ」
「…頼む、殴ってくれ。でないと私は…!」
懇願する星歌の姿に、億泰は思う。
きっと星歌も、名簿を見てなにかショックなことがあったのだろうことは、バカな自分にもわかる。
それで彼女の気が済むというのなら、そうしてあげるべきなのかもしれない。
しかし…
きっと星歌も、名簿を見てなにかショックなことがあったのだろうことは、バカな自分にもわかる。
それで彼女の気が済むというのなら、そうしてあげるべきなのかもしれない。
しかし…
「ズルいっすよ、星歌さん」
「え?」
「辛いのが…苦しいのが、あんただけだと、思ってるんすか?」
「え?」
「辛いのが…苦しいのが、あんただけだと、思ってるんすか?」
億泰の言葉に、星歌はハッとする。
「わ、悪い、虹村君!私、自分のことばっかで…ああくそ、ほんとに私、自分の事ばっかだ」
「殴るなら…星歌さんも俺のこと、殴ってくだせえよ」
「虹村君…」
「お互い、もやもやしてるもん、ぶつけあって、吐き出しましょうよ」
「…はは、いつの時代のヤンキー漫画だよ」
「おう!やるとなったら、女だからって、手加減しねえぜ!」
「はっ!言うじゃねえか億泰!こっちだって、容赦しねえからな!」
「殴るなら…星歌さんも俺のこと、殴ってくだせえよ」
「虹村君…」
「お互い、もやもやしてるもん、ぶつけあって、吐き出しましょうよ」
「…はは、いつの時代のヤンキー漫画だよ」
「おう!やるとなったら、女だからって、手加減しねえぜ!」
「はっ!言うじゃねえか億泰!こっちだって、容赦しねえからな!」
そうして、両者の殴り合いはお互いがスッキリするまで続いた。
星歌の億泰の呼び方が変わっていることに二人が気づくのは、もう少し後の事だった。
星歌の億泰の呼び方が変わっていることに二人が気づくのは、もう少し後の事だった。
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
泥臭い殴り合いを終えた両者は、お互いのことを語り合うこととなった。
「そっか、死んだ兄貴が…」
「ああ…兄貴は確かに死んだ。死んだ奴が生き返るなんてありえねえ。なのになんで…」
「ああ…兄貴は確かに死んだ。死んだ奴が生き返るなんてありえねえ。なのになんで…」
タブレットを操る億泰のたどたどしい手つきを見ながら、星歌は言った。
「なあ億泰…今、西暦何年だ?」
「は?何年って…1999年?」
「なるほど、どおりでタブレットの扱いが高校生のくせに拙いわけだ…私にとっての今は、それより20年くらい未来だ」
「!?」
「は?何年って…1999年?」
「なるほど、どおりでタブレットの扱いが高校生のくせに拙いわけだ…私にとっての今は、それより20年くらい未来だ」
「!?」
ますます混乱する億泰に、星歌は自分の考えを述べた。
すなわち、この殺し合いの連中は、時代がバラバラの奴らを集めているんじゃないかと。
すなわち、この殺し合いの連中は、時代がバラバラの奴らを集めているんじゃないかと。
「つまりだ、死んだはずのお前の兄貴が生きてるのも…」
「過去から連れてきたってことっすか!?」
「可能性の話だけどな」
「でも、それなら…過去の兄貴がこの世界で死んだりとかしたら…過去の俺はどうなるってんだ!?」
「…そこまでは私にも分からねえよ」
「過去から連れてきたってことっすか!?」
「可能性の話だけどな」
「でも、それなら…過去の兄貴がこの世界で死んだりとかしたら…過去の俺はどうなるってんだ!?」
「…そこまでは私にも分からねえよ」
しばらく沈黙が続く。
やがて口を開いた億泰は、迷いのない顔で言った。
やがて口を開いた億泰は、迷いのない顔で言った。
「過去とか、未来とか、難しいことは分かんねえけど…この世界の兄貴が過去の兄貴なら…多分、親父を殺すために、殺し合いに乗ってるはずだ。兄貴の弟として…この虹村億泰が止める!今分かるのは、それだけだ!」
「事情は分かんねえけど…私も協力するぜ。兄弟で殺し合いとか…笑えねえ冗談だからな」
「事情は分かんねえけど…私も協力するぜ。兄弟で殺し合いとか…笑えねえ冗談だからな」
〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇〇
「それで、星歌さんの方は何があったんすか?いきなり殴れとか言ってきて…」
「…最初に精神側の名簿見てさ、妹の名前がなくてホッとして…だけど、肉体側の方に妹の名前があった」
「…そのショックで俺に殴れって言ったんすか?」
「…最初に精神側の名簿見てさ、妹の名前がなくてホッとして…だけど、肉体側の方に妹の名前があった」
「…そのショックで俺に殴れって言ったんすか?」
言いながらも、億泰はしっくり来なかった。
妹の名前があってショック…というのは分かる。
しかし、それで殴られたくなるというのが、いまいちピンと来ない。
妹の名前があってショック…というのは分かる。
しかし、それで殴られたくなるというのが、いまいちピンと来ない。
「…精神側の名簿にはさ、妹が所属してるバンドのメンバー…ぼっちちゃんに喜多ちゃん、リョウの名前があったんだ。虹夏にとってかけがえのない仲間で…私も仲良くしてた相手なのに、私は…妹がいないことを喜んでた」
「…家族が巻き込まれてないことを喜ぶのは悪いことじゃねえっすよ」
「…そうかもしれねえけどさ。自分がすっごく身勝手で自分本位な人間に見えて…腹が立った」
「星歌さん…」
「…さ、湿っぽい話はこれで終わりだ。せっかく殴り合ってあったまった心と身体が冷めちまう」
「…家族が巻き込まれてないことを喜ぶのは悪いことじゃねえっすよ」
「…そうかもしれねえけどさ。自分がすっごく身勝手で自分本位な人間に見えて…腹が立った」
「星歌さん…」
「…さ、湿っぽい話はこれで終わりだ。せっかく殴り合ってあったまった心と身体が冷めちまう」
気丈に振る舞う星歌の姿に、億泰はかつての兄の姿を幻視する。
自分に極力手を汚させないように振る舞い、一人で抱え込んでいた兄の姿を。
自分に極力手を汚させないように振る舞い、一人で抱え込んでいた兄の姿を。
「星歌さん、無理はしねえでください」
「あ?無理はしてねえよ。そりゃさっきはみっともねえ姿見せちまったが…億泰のおかげですっきりしたし。それに年長者として見栄くらいははらせてくれよ」
「それでも…本当にきつい時は、俺を頼ってくれよ!俺、頭悪いし、考えるの苦手だけどよ…姉とか年上とかって以前に、星歌さんは…もう俺にとって、大事なダチなんだからよ!」
「…ダチ、か。ありがとうな、億泰」
「あ?無理はしてねえよ。そりゃさっきはみっともねえ姿見せちまったが…億泰のおかげですっきりしたし。それに年長者として見栄くらいははらせてくれよ」
「それでも…本当にきつい時は、俺を頼ってくれよ!俺、頭悪いし、考えるの苦手だけどよ…姉とか年上とかって以前に、星歌さんは…もう俺にとって、大事なダチなんだからよ!」
「…ダチ、か。ありがとうな、億泰」
兄が巻き込まれた弟。
妹が巻き込まれた姉。
痛みや苦しみを背負いつつ、だけども2人は進んでいく。
お互いの傷を、分かち合って、進んでいく。
妹が巻き込まれた姉。
痛みや苦しみを背負いつつ、だけども2人は進んでいく。
お互いの傷を、分かち合って、進んでいく。
【一日目/深夜/F-2 森】
【伊地知星歌@ぼっち・ざ・ろっく!】
[身体]:エルメェス・コステロ@ジョジョの奇妙な冒険Part6 ストーンオーシャン
[状態]:全身に軽度の殴り痕
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:虹夏や結束バンドメンバーたちと共に、無事に帰る
1:虹夏の身体も、他の結束バンドメンバーも守る
2:形兆が殺し合いに乗っているなら、億泰と共に止める
[備考]
※参戦時期は少なくとも結束バンド結成以降です。
※スタンドに制限はかかっていません。
[身体]:エルメェス・コステロ@ジョジョの奇妙な冒険Part6 ストーンオーシャン
[状態]:全身に軽度の殴り痕
[装備]:なし
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~3
[思考・状況]基本方針:虹夏や結束バンドメンバーたちと共に、無事に帰る
1:虹夏の身体も、他の結束バンドメンバーも守る
2:形兆が殺し合いに乗っているなら、億泰と共に止める
[備考]
※参戦時期は少なくとも結束バンド結成以降です。
※スタンドに制限はかかっていません。
【虹村億泰@ジョジョの奇妙な冒険Part4 ダイヤモンドは砕けない】
[身体]:津上翔一@仮面ライダーアギト
[状態]:全身に軽度の殴り痕
[装備]:オルタリング@仮面ライダーアギト
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2
[思考・状況]基本方針:エンムとかいうやつをぶちのめして、殺し合いを止める。
1:兄貴が殺し合いに乗っているなら止める
2:星歌さんの知り合いや妹の身体を持つ者を見つけたら守る
3:仗助や露伴と合流する。由花子の肉体を持つ者にも会いたい。
2:アギト?変身?カッピョイイ――ッ!
3:妹さん大事にするんだぜ、星歌さん。
[備考]
※参戦時期は吉良吉影撃破後のどこか。
※津上翔一の本名は沢木哲也ですが、今後肉体の名前が記される場合は津上翔一とだけ表記されます。
※オルタリングは一つの支給品扱いです。
※形兆は過去の世界から連れてこられているのだろうと考えています。
[身体]:津上翔一@仮面ライダーアギト
[状態]:全身に軽度の殴り痕
[装備]:オルタリング@仮面ライダーアギト
[道具]:基本支給品、ランダム支給品1~2
[思考・状況]基本方針:エンムとかいうやつをぶちのめして、殺し合いを止める。
1:兄貴が殺し合いに乗っているなら止める
2:星歌さんの知り合いや妹の身体を持つ者を見つけたら守る
3:仗助や露伴と合流する。由花子の肉体を持つ者にも会いたい。
2:アギト?変身?カッピョイイ――ッ!
3:妹さん大事にするんだぜ、星歌さん。
[備考]
※参戦時期は吉良吉影撃破後のどこか。
※津上翔一の本名は沢木哲也ですが、今後肉体の名前が記される場合は津上翔一とだけ表記されます。
※オルタリングは一つの支給品扱いです。
※形兆は過去の世界から連れてこられているのだろうと考えています。
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| 虹村億泰 |