「パラドは無事…当然か」
道を違えた友の無事へ、思わず浮かべた不敵な笑み。
嘲りや苛立ちはない、パラドの実力を知っているが故の納得。
嘗て肩を並べ戦ったバグスターに、想いを馳せるものも束の間。
緩んだ口元を引き締め、今しがた知った名を呟く。
嘲りや苛立ちはない、パラドの実力を知っているが故の納得。
嘗て肩を並べ戦ったバグスターに、想いを馳せるものも束の間。
緩んだ口元を引き締め、今しがた知った名を呟く。
「茅場晶彦……」
口から漏れ出た四文字こそ、定時放送を行った男。
数十名の脱落者より、グラファイトの意識を掻っ攫った運営側の一人。
見た目からして研究者然とした姿に、見覚えはない。
赤い甲冑を纏ったような異形も同様。
但し姿を変える際に使ったデバイスと、口にした名称は別。
数十名の脱落者より、グラファイトの意識を掻っ攫った運営側の一人。
見た目からして研究者然とした姿に、見覚えはない。
赤い甲冑を纏ったような異形も同様。
但し姿を変える際に使ったデバイスと、口にした名称は別。
「バグスターウイルスをプレイヤーの枷に使うだけではない。奴自身が力の恩恵に与るか」
既に殺し合いへバグスターウイルスが組み込まれてる以上、こういったやり方で利用されても不思議はない。
仮面ライダークロニクルが本格始動する前ならともかく。
元々人間だった者がバグスターになるのは、檀黎斗という前例が存在してるのもあり。
多少の驚きこそ抱くも、長ったらしい混乱を招く程ではない。
茅場はバグスターの力を自在に操る、己の目で見た情報を受け入れるのに抵抗はなかった。
仮面ライダークロニクルが本格始動する前ならともかく。
元々人間だった者がバグスターになるのは、檀黎斗という前例が存在してるのもあり。
多少の驚きこそ抱くも、長ったらしい混乱を招く程ではない。
茅場はバグスターの力を自在に操る、己の目で見た情報を受け入れるのに抵抗はなかった。
それはそれとして、不快感がないとは言わない。
同胞を増やす為でなく、羂索達の私欲でバグスターウイルスを利用されたのだ。
子供のように癇癪を起こしはせずとも、表情に険しさが増すのまで抑える気はない。
同胞を増やす為でなく、羂索達の私欲でバグスターウイルスを利用されたのだ。
子供のように癇癪を起こしはせずとも、表情に険しさが増すのまで抑える気はない。
(ゲンムやクロノスといい、裁定者を気取る奴は力を見せびらしたがるな)
準備が必須なれど、ルールを自在に書き換えるゲームマスターの特権能力。
檀正宗が使う時間停止(ポーズ機能)とどちらがマシか、考えるだけ無意味なので早々に打ち切る。
自分と違い人間達との共闘を選んだパラドも、今回の放送で思う所はある筈だ。
かといって今更バグスター側に付くなどと、優柔不断な真似をする男じゃない。
参加者を蝕むウイルスの除去も含め、本格的な対策へ乗り出すだろう。
檀正宗が使う時間停止(ポーズ機能)とどちらがマシか、考えるだけ無意味なので早々に打ち切る。
自分と違い人間達との共闘を選んだパラドも、今回の放送で思う所はある筈だ。
かといって今更バグスター側に付くなどと、優柔不断な真似をする男じゃない。
参加者を蝕むウイルスの除去も含め、本格的な対策へ乗り出すだろう。
尤も先に起こったもう一つの放送を見る限り、ルルーシュに一歩先を行かれたらしい。
羂索達からすれば、ウイルス除去も殺し合いの一環。
主催陣営との直接対決を否定しないなら、ある程度は除去成功の芽も残して当然。
プロトガシャットが手に入るよう仕向けたのもそれの内だろうが、入手した人物は良くも悪くも注目を向けざるを得ない皇帝。
順当に医療関係者が集まり、プレイヤー達は無事に解毒成功と考えるのは楽観が過ぎる。
羂索達からすれば、ウイルス除去も殺し合いの一環。
主催陣営との直接対決を否定しないなら、ある程度は除去成功の芽も残して当然。
プロトガシャットが手に入るよう仕向けたのもそれの内だろうが、入手した人物は良くも悪くも注目を向けざるを得ない皇帝。
順当に医療関係者が集まり、プレイヤー達は無事に解毒成功と考えるのは楽観が過ぎる。
媚び諂い軍門に下るか、利用せんと本性を隠し近付くか。
最初から奪い取るつもりで武力行使に出る者も、ゼロではあるまい。
この先もルルーシュが拠点に使うとしたら、テレビ局は放送前を超える火薬庫と化す。
ウイルス除去はグラファイトの関心を引かない、ただ戦闘が勃発するとあらば話は別。
己が敵として戦うに相応しい戦士がいるやも知れぬ、現在位置から見ても向かわない選択はない。
最初から奪い取るつもりで武力行使に出る者も、ゼロではあるまい。
この先もルルーシュが拠点に使うとしたら、テレビ局は放送前を超える火薬庫と化す。
ウイルス除去はグラファイトの関心を引かない、ただ戦闘が勃発するとあらば話は別。
己が敵として戦うに相応しい戦士がいるやも知れぬ、現在位置から見ても向かわない選択はない。
(地下に陣取る奴と再び顔を合わせるかは分からんが……何にせよ、現状は俺の望みが果たせているとは言い難い)
テレビ局の地下から転送され、定時放送を聞き今に至るまで。
戦いどころか参加者との接触自体叶っていない。
巡り合わせが悪いとは狂戦士の一件以降感じていたが、流石にここまでとは思わなかった。
さしものグラファイトも、時間の浪費にはため息の一つくらい零したくなる。
6時間を生き延びたのだって、これでは強さ故じゃなく単に戦闘を回避し続けたのと同じじゃないか。
伏黒甚爾を相手取った一戦や遊戯十代との決闘の誓い、銀髪の少女の命を拾ったのが無駄と言うつもりはない。
しかしいい加減、自身の本懐を遂げる闘争に恵まれても良い気がしないでもない。
戦いどころか参加者との接触自体叶っていない。
巡り合わせが悪いとは狂戦士の一件以降感じていたが、流石にここまでとは思わなかった。
さしものグラファイトも、時間の浪費にはため息の一つくらい零したくなる。
6時間を生き延びたのだって、これでは強さ故じゃなく単に戦闘を回避し続けたのと同じじゃないか。
伏黒甚爾を相手取った一戦や遊戯十代との決闘の誓い、銀髪の少女の命を拾ったのが無駄と言うつもりはない。
しかしいい加減、自身の本懐を遂げる闘争に恵まれても良い気がしないでもない。
件の少女は既に脱落し、回り回ってプロトガシャットがルルーシュの元へ届けられたと知る由もなく。
退屈という名の拷問を経て、ふいに立ち止まり一点を睨む。
視界に映る建造物は、悪逆皇帝の根城。
バグスターの、何より戦士としての感覚が剣呑な気配をハッキリと捉えた。
退屈という名の拷問を経て、ふいに立ち止まり一点を睨む。
視界に映る建造物は、悪逆皇帝の根城。
バグスターの、何より戦士としての感覚が剣呑な気配をハッキリと捉えた。
「やはり穏当に済む訳がないな。ルルーシュ、王自ら出るか玉座で待ち構えるかは知らん。だが既に、俺はお前の城を次なる戦場と見たぞ」
己が立ち塞がるに相応しい者か、神聖な戦場に泥を塗る無粋な輩か。
どちらにせよ、戦わない理由は無し。
数時間で蓄積した燻りをも焼き尽くす、膨大な熱が戦意となり燃え盛る。
どちらにせよ、戦わない理由は無し。
数時間で蓄積した燻りをも焼き尽くす、膨大な熱が戦意となり燃え盛る。
紅蓮の龍による侵攻を、皇帝の城にいる者達はまだ知らない。
知る余裕もないと言うべきか。
何せ王が不在の間、城には既に嵐を引き起こす来訪者の姿があったのだから。
知る余裕もないと言うべきか。
何せ王が不在の間、城には既に嵐を引き起こす来訪者の姿があったのだから。
◆◆◆
(リラックスしてる、って雰囲気じゃないわねよねぇ)
私もだけど、そう心の中で付け加え手を伸ばす。
相応に値段の張るだろう、焼き菓子を口に含み租借。
高級感ある甘さは嫌いじゃないが、水分も欲しくなる。
冷蔵庫から拝借したドリンクで喉を潤し、改めて同室の二人を見やった。
相応に値段の張るだろう、焼き菓子を口に含み租借。
高級感ある甘さは嫌いじゃないが、水分も欲しくなる。
冷蔵庫から拝借したドリンクで喉を潤し、改めて同室の二人を見やった。
記憶改竄の能力者討伐へ、ルルーシュ達が向かって早数十分。
テレビ局の防衛を任されたキャル達は、宛がわれた一室にて待機中。
予め気を遣って用意したのか、テーブルの上に置かれた菓子を時折摘まんでは口に放る。
女子三人の空間にしては、余り華やかな空気とは言い難い。
テレビ局の防衛を任されたキャル達は、宛がわれた一室にて待機中。
予め気を遣って用意したのか、テーブルの上に置かれた菓子を時折摘まんでは口に放る。
女子三人の空間にしては、余り華やかな空気とは言い難い。
「アイツらのことが心配?」
「……うん」
「……うん」
問い掛けられた沙耶香が数秒の間を挟み、こくりと頷く。
ルルーシュとて無策や分の悪過ぎる賭けで、意気揚々と出て行ったのではない。
本人なりに勝算ありと判断し、念を押した上で狩りへ乗り出したのだ。
それは沙耶香のみならず、残った三人全員が分かっている。
ルルーシュとて無策や分の悪過ぎる賭けで、意気揚々と出て行ったのではない。
本人なりに勝算ありと判断し、念を押した上で狩りへ乗り出したのだ。
それは沙耶香のみならず、残った三人全員が分かっている。
ただ相手が相手だ。
記憶改竄の能力者のみならず、その者がルルーシュ達を利用してまで殺したがる魔女。
聞く限り危険度たるや、最初に襲ったNPCどころか下手をすれば継ぎ接ぎの男以上。
万が一失敗し、ロロ達が命を落とす可能性もゼロではない。
記憶改竄の能力者のみならず、その者がルルーシュ達を利用してまで殺したがる魔女。
聞く限り危険度たるや、最初に襲ったNPCどころか下手をすれば継ぎ接ぎの男以上。
万が一失敗し、ロロ達が命を落とす可能性もゼロではない。
「それにルルーシュが言ってた、ゼインっていう参加者に利用されてる女の子の事も……」
自分と同じように洗脳され、都合の良い道具にさせられた少女。
直接顔を合わせてはいないけれど、数時間前の己と照らし合わせると他人事に思えない。
それまでに結んだ友情や大切な記憶を踏み躙られ、望まない人殺しを強要される。
沙耶香自身、一つ間違えれば取り返しのつかない事態へ陥っていた。
辿ったかもしれないIFの悲劇に、片足を掴まれてる女の子がいるのなら。
意思を否定し傀儡とする存在へ屈しないと、固く誓った身としても助けたいと思う。
直接顔を合わせてはいないけれど、数時間前の己と照らし合わせると他人事に思えない。
それまでに結んだ友情や大切な記憶を踏み躙られ、望まない人殺しを強要される。
沙耶香自身、一つ間違えれば取り返しのつかない事態へ陥っていた。
辿ったかもしれないIFの悲劇に、片足を掴まれてる女の子がいるのなら。
意思を否定し傀儡とする存在へ屈しないと、固く誓った身としても助けたいと思う。
「その利用された娘を救い出しても、他者の体を自由に渡り歩くのだろう?確実に潰さねば、次は我らの知る者が操られんとも限らん」
「やってることは、ほとんど寄生虫みたいなもんじゃないのよ」
「やってることは、ほとんど寄生虫みたいなもんじゃないのよ」
心底嫌そうに顔を顰めるキャルを尻目に、タギツヒメもまたゼインへ思考を割く。
ルルーシュ曰く、いずれ人類を滅ぼす存在。
少なくとも殺し合いに招かれる前の自分だったら、笑みの一つでも浮かべただろう。
生憎作り笑いをする気にもなれず、ただ興味がないとも言わない。
何を考え行動し、その果てに何故人類滅亡へ繋がるのか。
存在理由として人間に怒りを抱き続けた故、ゼインにも問いをぶつけたい。
望んだ答えが返って来るとは限らず、まして恩人の一人程の対話が出来る自信も無いが。
ルルーシュ曰く、いずれ人類を滅ぼす存在。
少なくとも殺し合いに招かれる前の自分だったら、笑みの一つでも浮かべただろう。
生憎作り笑いをする気にもなれず、ただ興味がないとも言わない。
何を考え行動し、その果てに何故人類滅亡へ繋がるのか。
存在理由として人間に怒りを抱き続けた故、ゼインにも問いをぶつけたい。
望んだ答えが返って来るとは限らず、まして恩人の一人程の対話が出来る自信も無いが。
「まあ、もしかしたらこうやって駄弁ってる間にアイツらが――」
帰って来るかもと、楽観的な予想は最後まで口に出来ない。
扉が勢い良く開かれ、ノックも無しに部屋へ飛び込む小柄な体躯。
黒のセーラー服と頭上の光輪が特徴的な、正義実現委員会の生徒。
息を切らせ、目元を前髪で隠していようと明らかな焦燥感。
次に出て来る言葉が何か、三人全員嫌でも分かった。
扉が勢い良く開かれ、ノックも無しに部屋へ飛び込む小柄な体躯。
黒のセーラー服と頭上の光輪が特徴的な、正義実現委員会の生徒。
息を切らせ、目元を前髪で隠していようと明らかな焦燥感。
次に出て来る言葉が何か、三人全員嫌でも分かった。
「て、敵襲です!えっと…出動をお願いします!」
◆◆◆
兜の隙間へ剣を差し込み、後頭部まで突き抜けた。
皮を裂き、肉を斬り、骨を貫き、命を終わらせる。
生物が呼吸をするのと同じくらい、己が身に馴染んだ感触。
脆い生がプチっと潰れる音はNPCも同じらしい。
とはいえ、本物の人間を殺した際の爽快感からは程遠い。
所詮データの塊に過ぎないが、これはこれで使い道もある。
皮を裂き、肉を斬り、骨を貫き、命を終わらせる。
生物が呼吸をするのと同じくらい、己が身に馴染んだ感触。
脆い生がプチっと潰れる音はNPCも同じらしい。
とはいえ、本物の人間を殺した際の爽快感からは程遠い。
所詮データの塊に過ぎないが、これはこれで使い道もある。
「き、貴様!この場所を、そして我らを誰だと思っている!?偉大なるルルーシュ様に仕えr」
最初から貸してやる耳はなく、ついでに言うとその手の内容は聞き飽きている。
顔面を真っ二つに断たれ、崩れ落ちる骸がまた一つ追加。
豪奢な金色の鎧の一団も今や、凄惨なバラバラ死体の山。
恨みがましく見上げる目を鼻で笑い、軽く首を解す。
顔面を真っ二つに断たれ、崩れ落ちる骸がまた一つ追加。
豪奢な金色の鎧の一団も今や、凄惨なバラバラ死体の山。
恨みがましく見上げる目を鼻で笑い、軽く首を解す。
「黄金を着込んでるならもうちょっと根性見せてみろよ、なぁ?」
破壊者の鎧を脱ぎ去り、振り返って笑い掛けた先には数十人の少女達。
銀髪で端正な顔立ちの男へ、頬を染め俯く初心な反応は一つも無し。
皆一様に緊張感を浮かべたまま、決して得物を離すまいと手の力を強める。
屈しない意思の表れか、恐怖を誤魔化す儚い抵抗か。
どちらにしても、玩具の分際で一丁前に人間らしい仕草だとジンガは嗤う。
銀髪で端正な顔立ちの男へ、頬を染め俯く初心な反応は一つも無し。
皆一様に緊張感を浮かべたまま、決して得物を離すまいと手の力を強める。
屈しない意思の表れか、恐怖を誤魔化す儚い抵抗か。
どちらにしても、玩具の分際で一丁前に人間らしい仕草だとジンガは嗤う。
因縁深い黄金騎士とどこか重なる、「守りし者」の強さを秘めた少女と斬り合ったのが少し前。
消化不良同然の、モチベーションを削ぐ終わり方への気分転換も籠めて。
NPCを狩りながら皇帝の居城、テレビ局へとやって来た。
消化不良同然の、モチベーションを削ぐ終わり方への気分転換も籠めて。
NPCを狩りながら皇帝の居城、テレビ局へとやって来た。
道中、素体ホラーや類するNPCを喰らい体力を回復。
万全とまではいかないが、鬱陶しい疲労感は現状薄い。
ついでに、ディケイドのカードを取り戻すのにも利用。
戦闘どころかジンガからすれば、何の面白みもない軽作業だったが条件はクリア。
こんな手間を掛けさせ意味があるのかと思いつつ、目的地へ到着し今に至る。
万全とまではいかないが、鬱陶しい疲労感は現状薄い。
ついでに、ディケイドのカードを取り戻すのにも利用。
戦闘どころかジンガからすれば、何の面白みもない軽作業だったが条件はクリア。
こんな手間を掛けさせ意味があるのかと思いつつ、目的地へ到着し今に至る。
「あなたをこれ以上進ませる訳には行きません。彼ら「金色の手」もまた、ルルーシュ様の配下。私達の王への敵対行為と、そう見なされて同然では?」
「おいおい、こんな連中まで引き入れるなんざぁ…皇帝様ってのは随分人手にお困りなんだな?」
「おいおい、こんな連中まで引き入れるなんざぁ…皇帝様ってのは随分人手にお困りなんだな?」
留守を任されたNPCの一体、眼鏡の刀使が警告を発する。
表情には警戒が見て取れるが、他NPC以上にオリジナルへ近付け生み出された為だろう。
凛とした佇まいに微塵の陰りも見られず、ジンガ相手にも臆さず立つ。
大の大人であっても気弱な性格なら、たじろんで当然の威圧感。
彼女の毅然さに感化されたのかは不明なれど、徐々に周囲の少女達も戦意を取り戻す。
忠誠を誓った主の城を守るべく、一人が抜刀の構えを取り、
表情には警戒が見て取れるが、他NPC以上にオリジナルへ近付け生み出された為だろう。
凛とした佇まいに微塵の陰りも見られず、ジンガ相手にも臆さず立つ。
大の大人であっても気弱な性格なら、たじろんで当然の威圧感。
彼女の毅然さに感化されたのかは不明なれど、徐々に周囲の少女達も戦意を取り戻す。
忠誠を誓った主の城を守るべく、一人が抜刀の構えを取り、
「大事な話の邪魔しちゃいけませんってのは、人間の常識だろ?」
耳元で囁かれた声に凍り付いた。
途端に背後から感じる気配へ、振り向く自由も与えられず。
何時の間に動いたのだとか、至極当然の思考すら抱く暇もなく。
ゴキリと、そんな音を最後に地面へ散らばる肉塊の仲間入りを果たした。
途端に背後から感じる気配へ、振り向く自由も与えられず。
何時の間に動いたのだとか、至極当然の思考すら抱く暇もなく。
ゴキリと、そんな音を最後に地面へ散らばる肉塊の仲間入りを果たした。
「ああ悪いな、軽く撫でただけのつもりだったんだが。人間は脆いってのをすっかり忘れてたよ」
哀れな少女の魂を、駄菓子と同じ感覚で味わい。
首を180度回転させられた刀使が足元へ転がる。
NPCとはいえ少女を一人殺しても、何ら悪びれず楽し気な態度。
人の見た目だけを真似た悪魔と、そう言われても通用する男へテレビ局前には寒気が漂う。
首を180度回転させられた刀使が足元へ転がる。
NPCとはいえ少女を一人殺しても、何ら悪びれず楽し気な態度。
人の見た目だけを真似た悪魔と、そう言われても通用する男へテレビ局前には寒気が漂う。
「まるで、自分は人間ではないとでも言いた気だな?」
来訪者の異様さが場を完全に支配する前に、待ったを掛ける者達が現われた。
名刀さながらの鋭い声色で言い放ち、タギツヒメがジンガと対面。
魔獣ホラーと大荒魂、人に仇為す異形同士の視線が交差。
その背後では視界へ飛び込む惨状に、沙耶香が思わず息を呑む。
NPCと分かっても人型で、しかも自分と同じ刀使も含まれている。
感情が希薄だからといって、グロテスクな死体へ無反応ではいられない。
名刀さながらの鋭い声色で言い放ち、タギツヒメがジンガと対面。
魔獣ホラーと大荒魂、人に仇為す異形同士の視線が交差。
その背後では視界へ飛び込む惨状に、沙耶香が思わず息を呑む。
NPCと分かっても人型で、しかも自分と同じ刀使も含まれている。
感情が希薄だからといって、グロテスクな死体へ無反応ではいられない。
「うっ……」
隣ではキャルも口元を抑え、せり上がった嘔吐感を抑える。
元となった金色の兵士達に良い思い出などない。
いけ好かない貴族の手駒であり、仲間と共に地下牢へ連れ込まれた事だってあった。
それでも凄惨な光景に、ざまあみろと言える程悪趣味になった覚えもなく。
頭を振って動揺を幾分鎮め、しでかした当人へと集中。
元となった金色の兵士達に良い思い出などない。
いけ好かない貴族の手駒であり、仲間と共に地下牢へ連れ込まれた事だってあった。
それでも凄惨な光景に、ざまあみろと言える程悪趣味になった覚えもなく。
頭を振って動揺を幾分鎮め、しでかした当人へと集中。
「ほぉ……まさかここで会えるとはなぁ」
一方ジンガは現れた三人、特に沙耶香とタギツヒメへ反応を見せた。
わざとらしく驚愕した風を装い、他者を挑発するのは常套手段だ。
ただこの時ばかりは予想外なのも事実、驚きは本心からのもの。
直接会うのは初めて、しかし顔も名前も何をして来たかも把握済。
わざとらしく驚愕した風を装い、他者を挑発するのは常套手段だ。
ただこの時ばかりは予想外なのも事実、驚きは本心からのもの。
直接会うのは初めて、しかし顔も名前も何をして来たかも把握済。
「皇帝様は随分と刀使がお気に入りらしい。あのチビを手土産で連れて来れば、融通が利いたかもな」
「なに?貴様、どこで刀使のことを……」
「肝心の皇帝様本人は、玉座で柳瀬舞衣と十条姫和でも囲ってる最中か?だとすりゃ良いご身分なこって」
「…っ!どうして舞衣達を知ってるの……?」
「なに?貴様、どこで刀使のことを……」
「肝心の皇帝様本人は、玉座で柳瀬舞衣と十条姫和でも囲ってる最中か?だとすりゃ良いご身分なこって」
「…っ!どうして舞衣達を知ってるの……?」
冗談めかして言った内容は沙耶香達からすれば、無視出来る類じゃない。
刀使の二文字のみならず、関係者の名前を正確に出した。
当てずっぽうで言えるものではなく、何者かから情報を手に入れたと考えるのが自然。
刀使の二文字のみならず、関係者の名前を正確に出した。
当てずっぽうで言えるものではなく、何者かから情報を手に入れたと考えるのが自然。
問題はその人物が可奈美や舞衣だった場合。
この男と遭遇し、単なる情報交換で済むのは有り得ない。
NPCの惨殺だけではない、態度や言葉一つへ籠められた悪意が心を許すべきでないと警戒を抱かせるのだ。
何らかの危害を加えられたか、ひょっとすると可奈美を殺した張本人の可能性とて否定出来ない。
声に緊張を滲ませる沙耶香とは正反対に、ジンガは楽し気な姿勢を崩さない。
思い出す様な仕草をわざと取り、焦らして余裕を剥ぎ取る工程を経て言う。
この男と遭遇し、単なる情報交換で済むのは有り得ない。
NPCの惨殺だけではない、態度や言葉一つへ籠められた悪意が心を許すべきでないと警戒を抱かせるのだ。
何らかの危害を加えられたか、ひょっとすると可奈美を殺した張本人の可能性とて否定出来ない。
声に緊張を滲ませる沙耶香とは正反対に、ジンガは楽し気な姿勢を崩さない。
思い出す様な仕草をわざと取り、焦らして余裕を剥ぎ取る工程を経て言う。
「心配しなくても、お前がご執心のお優しい刀使に俺は手を出しちゃいない。ヒーロー志望のチビが、親切にもお前らの話を教えただけだ」
「益子薫が、か?」
「益子薫が、か?」
集められた刀使の中で、ジンガの言う人物に当て嵌まるのは薫のみ。
名を出しておいて何だが、タギツヒメには俄かに信じ難い。
薫だって刀使としての実力は非常に高く、可奈美らと共に自分との決戦へ臨んだ少女。
ジンガの危険性が分からない筈ないだろうに、ペラペラ仲間の情報を口走る程迂闊とは思えなかった。
名を出しておいて何だが、タギツヒメには俄かに信じ難い。
薫だって刀使としての実力は非常に高く、可奈美らと共に自分との決戦へ臨んだ少女。
ジンガの危険性が分からない筈ないだろうに、ペラペラ仲間の情報を口走る程迂闊とは思えなかった。
「奴を庇う気はないが信じられんな。貴様のような男に向けるのは言葉に非ず、刃のみだろうよ」
「初対面だってのに自分嫌われたもんだ。大荒魂のお姫様は間違いなく、“こっち側”と思ったんだがなぁ?」
「初対面だってのに自分嫌われたもんだ。大荒魂のお姫様は間違いなく、“こっち側”と思ったんだがなぁ?」
意外そうに見つめる視線へ殺気を一つ返す。
刀使の情報を得ている以上、予想は出来た事だ。
こちらの正体についても知っており、だから余計に分からない。
まさかとは思うが、薫まで沙耶香のように洗脳され情報を抜き取られたのか。
刀使の情報を得ている以上、予想は出来た事だ。
こちらの正体についても知っており、だから余計に分からない。
まさかとは思うが、薫まで沙耶香のように洗脳され情報を抜き取られたのか。
「ま、刀使なんざどいつもこいつも荒魂やホラーと大差ないかもな」
「……何が言いたいの?」
「……何が言いたいの?」
初めて聞くワードへの疑問も一旦捨て置く。
勿体ぶった言い方へ焦燥を覚える一方で、嫌な予感があった。
具体的にどうと口に出せず、だが本当に聞いて良いのかも分からない。
沙耶香の内心を見透かしたように、弧を描いた口元が動く。
勿体ぶった言い方へ焦燥を覚える一方で、嫌な予感があった。
具体的にどうと口に出せず、だが本当に聞いて良いのかも分からない。
沙耶香の内心を見透かしたように、弧を描いた口元が動く。
「お前の大事なお友達の三人。衛藤可奈美と柳瀬舞衣、それに益子薫は立派な人殺しになったってだけの話さ」
「え………………」
「なっ…!?」
「え………………」
「なっ…!?」
あっさりと、それこそ今日の天気でも告げるように。
衝撃的という表現では到底片付けらない程の、頭部を激しく叩き付けられた痛みが襲う。
何を言われたのか、理解が出来ないししたくもない。
聞こえなかった振りに逃げるのを、残念な事にジンガは決して許さなかった。
衝撃的という表現では到底片付けらない程の、頭部を激しく叩き付けられた痛みが襲う。
何を言われたのか、理解が出来ないししたくもない。
聞こえなかった振りに逃げるのを、残念な事にジンガは決して許さなかった。
「いや実に見事なもんだ、拍手の一つでもしてやりたいくらいにな」
「あなた、なに言って……」
「聞こえなかったのか?お前の、大事な、お友達が、殺したんだよ!それも死んだ方が世の為になるような悪党じゃない。人間の価値観で言えば、疑いの余地なんざどこにもない善人って奴を!」
「あなた、なに言って……」
「聞こえなかったのか?お前の、大事な、お友達が、殺したんだよ!それも死んだ方が世の為になるような悪党じゃない。人間の価値観で言えば、疑いの余地なんざどこにもない善人って奴を!」
自分が今どんな顔をしてるのか、まるで分からない。
自分の声が震えてるのに気付ける余裕なんて、とっくに消え失せた。
知りたくなかった、信じたくない内容が耳から侵入し脳の奥まで届く。
出て行ってと、どれだけ願っても叶わない。
舞衣達が人を殺した、その言葉が毒となって沙耶香を蝕む。
自分の声が震えてるのに気付ける余裕なんて、とっくに消え失せた。
知りたくなかった、信じたくない内容が耳から侵入し脳の奥まで届く。
出て行ってと、どれだけ願っても叶わない。
舞衣達が人を殺した、その言葉が毒となって沙耶香を蝕む。
「偽りを並べるにしても、失敗だったな阿保が。連中の甘さは我とて知っておるわ。貴様の戯言通りに動く筈があるか」
「信じないのは勝手だ。だが少なくとも、衛藤可奈美は今も張り切って殺し回ってる最中だろうよ」
「…貴様、まさかそこまで知って……」
「おっとぉ?そういう反応するのはつまり、会ったんだな?今のアイツに!」
「信じないのは勝手だ。だが少なくとも、衛藤可奈美は今も張り切って殺し回ってる最中だろうよ」
「…貴様、まさかそこまで知って……」
「おっとぉ?そういう反応するのはつまり、会ったんだな?今のアイツに!」
沙耶香に代わり否定するも、返って来た嘲笑へ苦い顔を浮かべる。
舞衣と薫はともかく、可奈美については違うと断言不可能。
何せ今の彼女は自我を失い、無差別に殺戮を広げる骸人形。
雪原地帯を離れ別のエリアで剣を振るい、結果我が身を返り血で染めたとておかしくない。
ジンガの嘲りへ同意など御免だというのに、首を横には振れずにいた。
舞衣と薫はともかく、可奈美については違うと断言不可能。
何せ今の彼女は自我を失い、無差別に殺戮を広げる骸人形。
雪原地帯を離れ別のエリアで剣を振るい、結果我が身を返り血で染めたとておかしくない。
ジンガの嘲りへ同意など御免だというのに、首を横には振れずにいた。
「ま、死後もこき使われるのには流石に同情してやらん事もない」
軽薄な笑みと共に吐き出された軽口へ、沙耶香は何も言えず立ち尽くす。
色白の肌は更に青褪め、視界が安定しない。
自分が本当に地面へ立ってるのかすら、あやふやになる。
色白の肌は更に青褪め、視界が安定しない。
自分が本当に地面へ立ってるのかすら、あやふやになる。
頬に付けられた小さな傷を、塞いでくれた舞衣が。
命じられるまま冥加刀使になるのは嫌だと、そう思える切っ掛けを作ってくれた彼女が。
自分に温かさを教えてくれた手を、誰かの血で汚した。
嘘だと言ってやりたい、自分を騙そうとしてると突っ撥ねたい。
なのに肝心の言葉は喉奥で消え、掠れた呻きさえ出て来ない。
命じられるまま冥加刀使になるのは嫌だと、そう思える切っ掛けを作ってくれた彼女が。
自分に温かさを教えてくれた手を、誰かの血で汚した。
嘘だと言ってやりたい、自分を騙そうとしてると突っ撥ねたい。
なのに肝心の言葉は喉奥で消え、掠れた呻きさえ出て来ない。
(私があの時、可奈美を止められなかったから……?)
同時に思うのは舞衣だけでなく、可奈美まで他者を殺めたとの事実。
沙耶香もまたタギツヒメ同様、死して尚動く殺戮者をこの目で見た。
もし自分が真人に操られ、偽りの恋心へ現を抜かしていた間。
ジンガの言った内容が起きたとすれば。
それはつまり、可奈美を止められなかった自分のせいで誰かの命が潰えたんじゃないか。
沙耶香もまたタギツヒメ同様、死して尚動く殺戮者をこの目で見た。
もし自分が真人に操られ、偽りの恋心へ現を抜かしていた間。
ジンガの言った内容が起きたとすれば。
それはつまり、可奈美を止められなかった自分のせいで誰かの命が潰えたんじゃないか。
「あ…わた、し……」
直接殺してないなんて、何の言い訳になるという。
自分があの時失敗し、よりにもよってロロ達へ剣を向けたから。
自分の未熟さが事態を招いたとしたらと、考えるのが止められない。
水の中に落とされたみたいに息苦しく、視界がぼやけ出し――
自分があの時失敗し、よりにもよってロロ達へ剣を向けたから。
自分の未熟さが事態を招いたとしたらと、考えるのが止められない。
水の中に落とされたみたいに息苦しく、視界がぼやけ出し――
間近で聞こえた弾ける音が、意識を現実へ引き戻した。
ハッと顔を上げればいつの間にやら、鞘に納めた剣を構えた男が見える。
急に何だと問い掛けるでもなく、次いで自分の横へ視線を移す。
杖を男に突き付け、不快感をこれでもかと籠め睨むキャルがいた。
急に何だと問い掛けるでもなく、次いで自分の横へ視線を移す。
杖を男に突き付け、不快感をこれでもかと籠め睨むキャルがいた。
「ご挨拶だな。自己紹介から始めようって気もないか、最初から常識を知らないのどっちだ?」
「女の子いじめて喜ぶカス野郎が、常識どうのとか言える立場?顔の良さ以外ぜーんぶ、ドブに捨てちゃってるんじゃないの?」
「女の子いじめて喜ぶカス野郎が、常識どうのとか言える立場?顔の良さ以外ぜーんぶ、ドブに捨てちゃってるんじゃないの?」
挑発には挑発を返し、いつでも撃てるよう魔力を練る。
今しがたの魔力弾は防がれたが、次も同じで済ます気は無い。
射殺さんばかりにジンガを睨み付けたまま、沙耶香へ言葉を向ける。
今しがたの魔力弾は防がれたが、次も同じで済ます気は無い。
射殺さんばかりにジンガを睨み付けたまま、沙耶香へ言葉を向ける。
「こいつがまだ本当の事言ってるかなんて、分かんないでしょ。ホラ吹いて回っておちょくるのが好きなのよ、見るからに性格最っ悪だし」
刀使の情報は得ているも、沙耶香やタギツヒメと違い可奈美達との関りはない。
そんなキャルだから二人に比べれば、心を乱されず冷静さを保てた。
そんなキャルだから二人に比べれば、心を乱されず冷静さを保てた。
確かに何故この男が刀使を知ってるか、疑問に感じるのは最もだ。
かといって、話す内容全部が事実と断定するべきじゃない。
或いは本当に沙耶香の友人達が、人を殺したとしても。
重要な部分を歪曲したり、もしかするとほとんど事故同然な可能性だってゼロとは思えない。
どうせ素直に全容を教えてくれる奴じゃないのは、分かり切っている。
だったら、何をするかは一つだけ。
かといって、話す内容全部が事実と断定するべきじゃない。
或いは本当に沙耶香の友人達が、人を殺したとしても。
重要な部分を歪曲したり、もしかするとほとんど事故同然な可能性だってゼロとは思えない。
どうせ素直に全容を教えてくれる奴じゃないのは、分かり切っている。
だったら、何をするかは一つだけ。
「徹底的にボコって動けなくしてから、知ってること洗い浚い吐かせてやりゃ良いのよ。そんで改めてブッ殺す!」
「野蛮極まりない、と言いたい所だが我も同感だ。あの継ぎ接ぎと同じ、荒魂よりずっと悪辣だからな」
「野蛮極まりない、と言いたい所だが我も同感だ。あの継ぎ接ぎと同じ、荒魂よりずっと悪辣だからな」
少女らしからぬ殺気立ったキャルへ呆れつつ、タギツヒメも殺意を滾らせる。
直に相対し、肌を撫でる不快な気配で察しは付く。
真人と同じく、人の世に蔓延る負の念を煮詰めた悪しき魂。
斬るのに躊躇を抱いたが最後、骨の髄まで呪い尽くされると確信があった。
双剣を引き抜き構えを取り、チラと背後を見やる。
直に相対し、肌を撫でる不快な気配で察しは付く。
真人と同じく、人の世に蔓延る負の念を煮詰めた悪しき魂。
斬るのに躊躇を抱いたが最後、骨の髄まで呪い尽くされると確信があった。
双剣を引き抜き構えを取り、チラと背後を見やる。
「…奴がどこまで真実を語ったかは我にも分からん。だが、柳瀬舞衣達はまだ生きているだろう」
「っ!」
「戦って生き延びろ、全てはそれからだ。死ねば真実を確かめる術も、言葉を交わす機会すら水泡へ帰すのみよ」
「っ!」
「戦って生き延びろ、全てはそれからだ。死ねば真実を確かめる術も、言葉を交わす機会すら水泡へ帰すのみよ」
優し気に告げられたのとは違う、淡々とした言葉遣い。
でもそこに籠められたのが、戦闘を促すだけの冷淡さじゃないと分かり。
今言われた通り、死んでしまったら何一つやれないのは本当だから。
でもそこに籠められたのが、戦闘を促すだけの冷淡さじゃないと分かり。
今言われた通り、死んでしまったら何一つやれないのは本当だから。
全部を吹っ切ったとは言えないけれど、迷いで剣を錆び付かせている場合じゃない。
御刀を引き抜き写シを発動、肉体が霊体と化す慣れた感覚が駆け巡る。
御刀を引き抜き写シを発動、肉体が霊体と化す慣れた感覚が駆け巡る。
「ありがとう二人とも」
「別にこれくらいでお礼とかいいわよ。タギツヒメに言ってやりなさい」
「我とて礼欲しさに言ったつもりはない。それに――」
「別にこれくらいでお礼とかいいわよ。タギツヒメに言ってやりなさい」
「我とて礼欲しさに言ったつもりはない。それに――」
それに、一護や刹那だったらもっと上手く言えたと。
口に出さず胸に留め、即座に意識を眼前の敵へ集中。
こちらの戦闘態勢を見てか、向こうもその気になったらしい。
口に出さず胸に留め、即座に意識を眼前の敵へ集中。
こちらの戦闘態勢を見てか、向こうもその気になったらしい。
「お喋りよりも殺し合うのがお望みか?いいねぇ、分かり易くて嫌いじゃない」
数で圧倒的に差を付けられた事実を認識し、尚も余裕は崩さない。
強がりに過ぎないと楽観的に思える者は、NPCを含めて一人もおらず。
右手を顔の前に掲げた動作こそがトリガー、闇に全身を覆い隠される。
強がりに過ぎないと楽観的に思える者は、NPCを含めて一人もおらず。
右手を顔の前に掲げた動作こそがトリガー、闇に全身を覆い隠される。
そして現れるは紅い異形。
誇り高き騎士の鎧を腐らせ、悪しき魔獣の衣へ変貌させた姿。
人の皮を剥ぎ取りホラーの本性を見せたジンガに、場は緊張感を増す。
誇り高き騎士の鎧を腐らせ、悪しき魔獣の衣へ変貌させた姿。
人の皮を剥ぎ取りホラーの本性を見せたジンガに、場は緊張感を増す。
「ま・ず・は、一番喰い甲斐がありそうなお前からだ!」
「チッ…!」
「チッ…!」
遊び相手を決めるかの仕草で突き付けた指先には、人との対話を経た大荒魂。
足元から吹き荒れた黒き炎が、ジンガへ爆発的な加速を齎す。
距離を詰め叩き付けた一刀をあえて受ける理由はない。
既に写シは発動済だ、双剣を翳し防御。
八幡力を使い押し返さんとするも、予想以上の怪力へ逆に押される。
防いだ体勢のまま見る見る内に、沙耶香達の元からジンガ共々離されて行った。
足元から吹き荒れた黒き炎が、ジンガへ爆発的な加速を齎す。
距離を詰め叩き付けた一刀をあえて受ける理由はない。
既に写シは発動済だ、双剣を翳し防御。
八幡力を使い押し返さんとするも、予想以上の怪力へ逆に押される。
防いだ体勢のまま見る見る内に、沙耶香達の元からジンガ共々離されて行った。
「…って、ちょっと!?どこまでぶっ飛んで行くのよアイツら!?」
「わ、分からないけど私達も追わなきゃ……!」
「わ、分からないけど私達も追わなきゃ……!」
周辺の民家やらを巻き込んで、遠く遠くへ戦場を移した
速さを極めた沙耶香をして、息を呑む加速力。
ブルリと緊張故の震えが走るも一度に留め、キャルを促し追うべく踏み出し、
速さを極めた沙耶香をして、息を呑む加速力。
ブルリと緊張故の震えが走るも一度に留め、キャルを促し追うべく踏み出し、
「お待ちくださいお二人共。敵はあの銀髪の男だけではないようです」
眼鏡の刀使が待ったを掛け、揃って振り向けば答えが自らやって来た。
『金の手』部隊の屍の山には目もくれず、こちらへ近付く一人の参加者。
民族衣装らしき装いで、癖っ毛が特徴の青年。
ジンガのような嘲る気配は見当たらずとも、友好的とは言い難い。
全員の視線が己へ集まったタイミングで足を止め、矢を思わせる眼光で射抜く。
『金の手』部隊の屍の山には目もくれず、こちらへ近付く一人の参加者。
民族衣装らしき装いで、癖っ毛が特徴の青年。
ジンガのような嘲る気配は見当たらずとも、友好的とは言い難い。
全員の視線が己へ集まったタイミングで足を止め、矢を思わせる眼光で射抜く。
「強い気配を感じたが、一足遅かったか」
肌が引き裂かれるのにも似た、強烈な二つの闘気。
それらへの期待を籠め急いだつもりだが、どうやら既に始まった後。
惜しくは思うも問題無い、何せ戦士は件の二人だけじゃない。
それらへの期待を籠め急いだつもりだが、どうやら既に始まった後。
惜しくは思うも問題無い、何せ戦士は件の二人だけじゃない。
「…良い目をしているな、やはりここに来て正解だった」
伏黒甚爾程の強さは感じずとも、纏う気配は紛れもない戦士のソレ。
銀毛の剣士と猫耳の術師、そして眼鏡の剣士。
三人目は参加者でないとはいえ、これまで出会ったNPCよりかはずっと上等。
ならば最早躊躇が入り込む余地はなし。
これより、敵キャラクターとしての本懐を遂げさせてもらおう。
銀毛の剣士と猫耳の術師、そして眼鏡の剣士。
三人目は参加者でないとはいえ、これまで出会ったNPCよりかはずっと上等。
ならば最早躊躇が入り込む余地はなし。
これより、敵キャラクターとしての本懐を遂げさせてもらおう。
パット型のバグスター専用デバイス、ガシャコンバグヴァイザーを操作。
待機状態に移行し、不安を煽る気味の悪いメロディが流れ出す。
この場に集まった少女達全員、否応なしに理解してしまう。
苛烈極まる闘争の幕開けは、ここから始まるのだと。
待機状態に移行し、不安を煽る気味の悪いメロディが流れ出す。
この場に集まった少女達全員、否応なしに理解してしまう。
苛烈極まる闘争の幕開けは、ここから始まるのだと。
「培養!」
『INFECTION!』
『Let's GAME!BAD GAME!DEAD GAME!What's a NAME!?』
『THE BUGSTAR!』
体内のバグスターウイルスを最大限に活性化、人の皮を脱ぎ捨て真の姿へ変身。
火炎が屈強な肉体を形作り、存在を堂々と知らしめる。
レベル上限の枠を飛び越えた、紅蓮の龍がここに降臨。
グレングラファイトバグスターの登場へ、闘争が避けられないと誰しも思い知らされた。
火炎が屈強な肉体を形作り、存在を堂々と知らしめる。
レベル上限の枠を飛び越えた、紅蓮の龍がここに降臨。
グレングラファイトバグスターの登場へ、闘争が避けられないと誰しも思い知らされた。
「俺の名はグラファイト!この舞台で、戦士と認識する者全ての敵となる男だ!」
「い、いきなり出て来てやる気満々みたいだけど……空気を読みなさいよアンタはぁっ!」
「い、いきなり出て来てやる気満々みたいだけど……空気を読みなさいよアンタはぁっ!」
突然の展開やグラファイトの気迫に飲まれていたが、我に返るや怒鳴り返す。
襲撃者が複数人現れる可能性は、キャルとて考えなかったというと嘘になる。
だとしてもこんな風にタイミングが重なれば、文句の一つや二つは言ってやりたい。
大人しく引き下がるならこっちも有難い、残念な事にそう都合良くはいかないだろう。
襲撃者が複数人現れる可能性は、キャルとて考えなかったというと嘘になる。
だとしてもこんな風にタイミングが重なれば、文句の一つや二つは言ってやりたい。
大人しく引き下がるならこっちも有難い、残念な事にそう都合良くはいかないだろう。
「…どうにか退けるか、若しくはお二人が離脱する隙を作るしかありません」
「それが実際にやれるかは別問題だけどね……」
「それが実際にやれるかは別問題だけどね……」
何でこうなるのやらと頭を抱えるキャルを尻目に、眼鏡の刀使も自身の御刀へ手を掛ける。
キャル達はルルーシュの協力者だ、みすみす死なせる訳にはいかない。
今はまだテレビ局を放棄する選択は選ばず、この場で迎え撃つ。
昂り始める戦意を向こうも感じ取ったらしく、興奮を抑えられずに言う。
キャル達はルルーシュの協力者だ、みすみす死なせる訳にはいかない。
今はまだテレビ局を放棄する選択は選ばず、この場で迎え撃つ。
昂り始める戦意を向こうも感じ取ったらしく、興奮を抑えられずに言う。
「お前達も戦士ならば名乗れ」
「…鎌府女学院、糸見沙耶香」
「え、あたしも言う流れ?……ったくもう!キャルよ!空気読めない赤いバカをブチのめす女の名前!」
「…鎌府女学院、糸見沙耶香」
「え、あたしも言う流れ?……ったくもう!キャルよ!空気読めない赤いバカをブチのめす女の名前!」
片や静かに、片やヤケクソ気味に名乗りを上げた。
導火線にはとうに火が灯り、爆発の時を今か今かと待ち侘びている。
今更になって舞台は降りられない。
勝つか負けるか、生きるか死ぬかの二択以外に道は存在せず。
導火線にはとうに火が灯り、爆発の時を今か今かと待ち侘びている。
今更になって舞台は降りられない。
勝つか負けるか、生きるか死ぬかの二択以外に道は存在せず。
「お前達の強さを、俺に見せてみろ!」
荒ぶる龍の咆哮が響き渡り、避けられぬ戦いが始まる。
098:ロロ・ランペルージ:エンディング | 投下順 | 099:壊乱Ⅱ:空洞/悪夢 |
097:I'm a KAMEN-RIDER ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア:オリジナルライトニング | 時系列順 | |
087:ワタシだけのアルジサマ | タギツヒメ | |
糸見沙耶香 | ||
キャル | ||
078:最後 の 五道化 | グラファイト | |
095:Gの迷宮/絡み付く闇を切り裂いて | ジンガ | |
059:そうじゃないだろ | 仮面ライダーゼイン | |
小宮果穂 | ||
桜井侑斗(シビト) | ||
088:冥黒色の舞台裏にて | 凶星病理のコルファウスメット | |
079:すべて最低だと笑えたら | ELS一護 |