【初出】
I巻
【解説】
宿主の“
存在の力”を時の中に括りつけ、毎晩午前零時にその宿主が消耗した“
存在の力”を元に戻し回復させる一種の永久機関。形状は、むき出しの歯車を集積して組み上げられた「なにか」で、鼓動と共に歯車を回し、噛み合う先のない凹凸を外へと向けた、「永遠の心臓」。
戻す基準は宿主が一日(前の日の零時から次の日の零時までの間?)の内に保持した最大値までだった。
なお、体の傷も同時に回復するが、
意思総体を始めとした記憶や経験は元に戻されず、あくまで身体を構成する“
存在の力”を元に戻しているだけであった。
この機能は、「時を二十四時間前に戻す」といった直接時間に作用するものでは「ない」。その機能の本質は、往きては還る永遠の象徴物・時計に「一日に起きた劣化と消耗を否定させる」ことにあった。故に、後から吸収した力も回復するし、同様の干渉も受け付けなかった。
では、劣化・消耗に補填される動力源は何かといえば、欠落で生じた
歪みが持つ反発力、つまり“
徒”が乱した事象に対する世界の巨大な回復力と共振・連動することにあった。
時の事象に干渉する能力から『“
紅世”秘宝中の秘宝』とも呼ばれ、この宝具の宿主たる“
ミステス”は、通常は
トーチも動きを止められる
封絶内で自由に行動できる。
その能力の副産物か、宿主は“
存在の力”に対する鋭い感覚も得ていたが、これは実際には、本来の持ち主である
ヨーハンが宝具に封印された状態で外界を知覚するための仕掛けだった。
本編より300年以上前、後に『
約束の二人』と呼ばれることになる
ある“紅世の王”と人間が、永遠に共に在りたいと望み、時計塔を材料に作りあげた宝具。
かつては製作者の人間が変化した“
ミステス”『
永遠の恋人』ヨーハンが蔵していた物であったが、
坂井悠二が喰われてトーチと化した直後に転移してきたことで、坂井悠二は“
ミステス”となった。
“壊刃”
サブラクの襲撃で瀕死の重傷を負ったヨーハンを『零時迷子』に封じ無作為転移をさせる際に、“彩飄”フィレスは自分以外の誰かが触ろうとすれば攻撃するという『
戒禁』を施している。
しかし、
ヨーハンに瀕死の重傷を与えた攻撃と共に
サブラクが打ち込んだ
謎の自在式により、攻撃対象はフィレスを含む全てのものへと、また攻撃した際に“徒”の身体をへし折って“
ミステス”の中に残留させ、“
ミステス”の意志によっては吸収することを可能とするものに改竄されている。
打ち込まれた
自在式は『零時迷子』の中枢部に侵食し変質させ『零時迷子』を『
暴君I』に変化させていき、同時に
仮想意思総体の変換も行っていた。さらにその後、
ヘカテーにより発信機の役割を持った刻印をも打ち込まれていた。
ベルペオルの発言を見るに、XIV巻でサブラクが打ち込んだ『大命詩篇』によって、完全に『暴君I』として完成したと思われる。『大命詩篇』が打ち込んであるので、『
完全一式』の影響下にあるため、破壊できるのは
神威召喚された
アラストールのみと思われる。
『零時迷子』が変質した現在、
ヨーハンがどのような状態に置かれているかはXXI巻のエピローグで判明したが、
仮想意思総体の異常活性が発生した際に、
マージョリーの
自在式と悠二の身体を利用して一時的に『零時迷子』の外に出てきた。
この他にもXV巻のプロローグにて、
ベルペオルによると『零時迷子』には普通の使い方以外にも「
盟主が自由に思いのままに力を振るえるようになる」使い方があるらしく、それを聞いた
サブラクは「ある一つの可能性」に気付いた模様。
『暴君I』となった『零時迷子』は、
ダンタリオン教授によって
創造神“
祭礼の蛇”の
神威召喚の力を使うことで、本来『劣化と消耗を否定させる』現象を起こすための動力源として変質を復元しようとするこの世の反発力と午前零時にアクセスしていたところを、アクセスの瞬間に変質を復元しようとするこの世の反発力と接続する機能を付けられた。
これにより強引に時間(午前零時のみのアクセス)と量(劣化と消耗の否定分)というリミッターを外された『零時迷子』は現時点の歪みの総量の力を全放出するようになり、“
祭礼の蛇”坂井悠二はその全世界の歪みを己の力として使うことが可能となった。
神威召喚“
祭基礼創”を終えた『零時迷子』は、悠二曰く歯車はガタガタで『戒禁』もほとんど機能しておらず、さらに無限の“存在の力”に満ち溢れた新世界『
無何有鏡』では意味のない存在となってしまった。
さらに外伝『ホープ』で、『零時迷子』は機能を停止したことが描写された。
【
アニメ版】
基本的な使われ方は一緒だが、毎晩零時に宿主の『
器』の最大値まで“
存在の力”を供給し回復させる宝具になっており、すなわち“徒”としての“
存在の力”のキャパシティ=『器』という設定のアニメ内において、“徒”の統御できる限界まで“
存在の力”を供給する、異常に便利な宝具になってしまっていた。
原作においての『零時迷子』は『人を喰らう必要がなくなる程度で、大局を動かせるような代物ではない』という認識が基本だが、
アニメ版『零時迷子』の設定では
アシズを始めとする“徒”としての“存在の力”のキャパシティが大きい“王”が持てば、いきなり『
都喰らい』以上の“
存在の力”が手に入るという物騒な代物になってしまっていた。
しかも宿主の『器』の最大値まで一瞬で回復させないどころか、零時を過ぎても『器』が満ちない限り常に“
存在の力”を供給し続けるなど、時を零時で迷子にしきれていなかった。
しかし、これらの原作と異なる設定がないと“
存在の泉”の核として機能しないため、アニメ的にはこれでいいと思われる。
第二期では原作に先んじてデザインが登場した。核の周りを5つの歯車状リングと4つ(5つか?)の多段の歯車が取り囲む形で構成されている。
しかし原作の『零時迷子』は『
大命詩篇』の侵食で歪に変形しているが、
アニメ版ではそのような描写は無いので原作とデザインの整合性が図られているか不明。
また、『零時迷子』に仕掛けられた『戒禁』によって
ヨーハンの意識が外に出ることができないという設定になっていた。
アニメ第3期では原作通りだった。
最終更新:2024年08月17日 05:18