【種別】
存在

【初出】
I巻

【解説】
紅世の徒”による『世界の歪み』の発生を防ぐために彼らを討つ異能の遣い手たち。単に「討ち手」とも呼ばれる。“紅世の王”と、“王”と契約した元人間の、二人で一人を指している。
その呼び名の由来は、“王”との契約の瞬間に人間が垣間見る『炎の揺らぎ』からである。その幻視の光景から、いつしか『フレイムヘイズ』と呼称するようになったようだ。
『炎髪灼眼の討ち手』など、身に宿す“王”とその能力に応じた称号を持つ。称号は『■■の○○手』という形で統一されており、同じ“王”であれば、契約者が代替わりしても称号は替わらない。
19世紀後半から20世紀前半までの対[革正団]戦争以降、フレイムヘイズに呼びかける時は、契約者の名前を先に、“王”の名前を後にするのが礼儀とされた。
契約者の内に宿る“王”は、フレイムヘイズによって様々な形状をとる神器を通して意思を表出し、外界の様子を感知する。
フレイムヘイズと契約する“王”の真名が“□□の××”という形式を取るのは、より人間の側に近づいている=人間の立場に立つと言うことの暗喩。ただしメタレベルでの話であり、作品内ではこの件について触れられることはない。

【フレイムヘイズの誕生と生き方】
『世界の歪み』がいつか『大災厄』を引き起こすと考えて同族を倒す決意をした“紅世の徒”たちが、世界のバランスを崩さずにこの世の“徒”を討つために数百年間の試行錯誤の末に神威召喚を応用して、フレイムヘイズ誕生のシステムを作り上げた。
その性質上、基本的に“王”がフレイムヘイズとなるが、例外として、ダンタリオン教授の『強制契約実験』の被験者となったフレイムヘイズのなかには、普通の“徒”と契約した者もいる。

“紅世の徒”は人間の強い感情を感知したり共感したりする能力があるため、“紅世”に届くほどの“徒”に関する強い感情を抱いた人間を探し出し、人間に契約を持ちかける。
人間側が契約を了承することで、契約した人間の「人としての全存在」(運命という名の器)が“紅世の王”の召喚の代償として捧げられ消滅し、消滅した存在の分の時空に空いた空白に“紅世の王”が『』に見立てて身体を入り込ませ、完成する。
この際に“王”の本体は休眠し、『器』の大きさに合わせてその存在の大きさを調節する。

“徒”と闘う事が大前提であるため、基本的に“徒”に対する強い憎しみを持った人間を“紅世の王”は選ぶこととなる。
そのため基本的にフレイムヘイズは契約する前の人間時代に“徒”に何か大事なモノを奪われ、奪った“徒”に対する復讐心を原動力に、人としての全てを捨てて契約し戦っていた。『復讐者』であるため、若年者や激情家が多く、個人行動を好むものが多い。

しかし、いかに当初は強い憎しみを抱いても、長い年月その憎しみを維持することは難しく、また復讐を果たした後も“徒”と戦い続ける宿命にあるため、大抵のフレイムヘイズは精神をすり減らし、“徒”との戦いに疲れて自殺同然に消え果てる者も多かった。
そのため、いかに不老といえど、フレイムヘイズが長生きできることは希である。
長生き出来る者は、人間にとっては後付けに過ぎない「世界のバランスを守るという使命」を生きがいに出来たり、戦うことに生きがいを覚える、屈強かつ奇特な精神と実力を兼ね備えた一部の者のみであった。
“紅世の王”に復讐心を利用され、道具同然に使い潰されて消えるその様から、“徒”はしばしばフレイムヘイズを“討滅の道具”と蔑称していた。
ただし例外もおり、幼少期からフレイムヘイズとなるべく育てられたシャナ、誰かを守りたいという善意から契約を果たしたユーリイ教授に契約させられたサーレらは、特に復讐心を持っているわけではなかった。
19世紀後半以降、封絶の普及によって、一般人が親しい人物を喰らわれたことに気づくことが出来なくなり、フレイムヘイズとなるための激しい感情を抱けなくなることが多くなっていた。

復讐心が冷めてしまった、もしくは復讐を果たしたフレイムヘイズの中には、長い年月を経て、使命である「両界のバランスを守る事」を習慣を越えて生きる目的そのものまでに純化し、『調律』を存在意義とする者もおり、調律師と呼ばれていた。本編では、カムシン・ネブハーウがその一人であった。
復讐心を持たなくなったフレイムヘイズの中には、互助施設外界宿の管理者となって、後進の育成や種々の便宜を取りはからう者もいた(例:ピエトロ・モンテベルディ、『大地の四神』)。

【能力】
フレイムヘイズは“存在の力”を操作する力(ただし個人の修練が必要)と、『器』に宿った“王”の莫大な“存在の力”を扱うことができ、そのの色は契約した“王”と同じである。“王”の本質と契約者の持つ強さのイメージにより力を使う。
彼らが行使する力は、「炎」に限定されない。むしろ、本当の意味での炎使いは、シャナなど一部の者に限られる。
耐久力・膂力・治癒力は人間の域を遥かに上回る。程度としては、鉄の塊で出来た大砲を大して力を使わなくても軽々と持ち運んだり、胸を貫かれるような人間から見た致命傷でも戦闘を継続できたり、斬られた傷が数十分で完治したりする。強力なフレイムヘイズほど治癒は早い。

フレイムヘイズの“存在の力”の量は、人間だった時の「運命という名の器」の大きさを最大値とする。そのため、器が大きいほど強力なフレイムヘイズが生まれる可能性が上がる。契約するまではその正確な大きさは把握できないが、王族などの世への影響力が高くなる可能性のある者は器も大きい傾向がある。
器の中の“王”の力は消費しても自然回復が可能だが、あまり効率は良くないらしく、また常に戦闘が起きる可能性があることから、封絶の展開や修復には、基本的に自分の力ではなくトーチを使っていた。場合によっては人間を使うこともあるので、その気になれば人を“存在の力”に変換して使うこともできるようだ。

この世の流れから外れた存在であるため、“存在の力”に関する事象をありのままに感じとることができる。
それ故に“徒”に喰われて消えた人間を忘れることはないが、代わりに『本来そこにあったはずの世界』との違和感を感じることができなかった。

【フレイムヘイズと人間との差】
契約の際に『運命という名の器』を捧げるため、契約後は人間だった時のことは存在を食われた人間のように周囲の人から忘れ去られてしまった(おそらく写真などからも消える)。ただし、持ち物に関しては契約しても消えずに残るようだ(衣服など)。
『運命という名の器』を失った後は、その身体はこの世への広がりを無くし、肉体的成長・変化ができなくなる。不老であることや、腕を失っても再生するような人外の回復能力はこの副作用だった(フレイムヘイズが望めば、傷跡を自分の身に残すことは可能である)。

フレイムヘイズとして世を動かしたり、他人の記憶に残ることは可能だが、フレイムヘイズが死ねば写真や持ち物は消えてしまう(ただし存在の消失を感じ取れる人間の記憶には残るようだ)。

契約者が死亡したり、契約者の精神が崩壊するほどの衝撃を受けると、“王”との契約が解除され、器(契約者の身体)は砕け散り、炎と共に死体は欠片も残らず消滅する。これは“王”との契約を任意で解除した場合も同じである。
身体が炎と化して消滅するまでの過程は、状況・または個人差によって微妙に差異があるようで、意識がまだあっても致命傷を負った時点で徐々に炎と化して消滅する者もいれば、死んでも即座には消えず一時的に死体が残る者、身体を砕かれたと同時に炎と化し「爆散」するものもいる。

【現代のフレイムヘイズ】
フレイムヘイズになる人間は、通常はカムシンや『大地の四神』のように生前から存在の喪失を感知できる人間が“徒”と闘う為にフレイムヘイズとして契約する。たが、封絶の浸透でそういった特殊な人間も“徒”に襲われていることに気づけないことが多くなり、新たに契約する新参フレイムヘイズは減っていた。
現代では外界宿に所属する人間の構成員の他、吉田一美佐藤田中のようにフレイムヘイズと関わることで“存在の力”を感知するようになった者がフレイムヘイズとなることも稀に起きるようになり、減少傾向ではあるものの現代まで生まれ続けていた。

しかし、最終巻で新世界『無何有鏡』が創造されたことで、“紅世”との繋がりが断ち切られたこの世(旧世界)に“王”が渡り来ることは不可能になったため、旧世界で新たなフレイムヘイズは誕生し得ない。
新世界『無何有鏡』は“存在の力”に満ちあふれているので、“徒”の放埓を止めようとする秩序派の“王”でも自身が顕現人化して活動が可能なので、人間と契約をする必要が無く、新世界でもフレイムヘイズはもう二度と誕生しないと思われる。

新世界では、わずか二年あまりで、フレイムヘイズが“徒”の存在それ自体を悪として討滅することが時代遅れと見なされるようになった。“徒”の討滅の是非は、存在そのものから、その“徒”がとった行動に討滅の基準が変わりつつあるのである。
これについてベルペオルは、その状況をフレイムヘイズと“徒”に共通する『法』の萌芽かもしれないと考察した。

【補足 契約した“王”主体の能力】
  • 清めの炎』と呼ばれる能力によって、契約者の身体的な汚れや体内の解毒を行なうことが出来る。

『称号』 氏名 :(契約した“王”)

『炎髪灼眼の討ち手』 シャナマティルダ・サントメール :(“天壌の劫火”アラストール
『弔詞の詠み手』 マージョリー・ドー :(“蹂躙の爪牙”マルコシアス
『万条の仕手』 ヴィルヘルミナ・カルメル :(“夢幻の冠帯”ティアマトー
『儀装の駆り手』 カムシン・ネブハーウ :(“不抜の尖嶺”ベヘモット
『鬼功の繰り手』 サーレ・ハビヒツブルグ :(“絢の羂挂”ギゾー
極光の射手 カール・ベルワルドキアラ・トスカナ :(“破暁の先駆”ウートレンニャヤ&“夕暮の後塵”ヴェチェールニャヤ
『輝爍の撒き手』 レベッカ・リード :(“糜砕の裂眥”バラル
『星河の喚び手』 イーストエッジ :(“啓導の籟”ケツアルコアトル
『皓露の請い手』 センターヒル :(“殊寵の鼓”トラロック
『滄波の振り手』 ウェストショア :(“清漂の鈴”チャルチウィトリクエ
『群魔の召し手』 サウスバレイ :(“憚懾の筦”テスカトリポカ
『焦沙の敷き手』 ノースエア :(“遍照の暈”ウィツィロポチトリ
『愁夢の吹き手』 ドレル・クーベリック :(“虚の色森”ハルファス
『従佐の指し手』 パウラ・クレツキー :(“叢倚の領袖”ジェヴォーナ
『枢機の向き手』 ボード :(“勘破の眼睛”フェイ
『无窮の聞き手』 ピエトロ・モンテベルディ :(“珠漣の清韻”センティア
『震威の結い手』 ゾフィー・サバリッシュ :(“払の雷剣”タケミカヅチ
『憑皮の舁き手』 ドゥニ :(“截の猛狼”ガルー
『殊態の揺り手』 アレックス :(“環回の角”ハーゲンティ
『犀渠の護り手』 ザムエル・デマンティウス :(“吾鱗の泰盾”ジルニトラ
『姿影の派し手』 フランソワ・オーリック :(“布置の霊泉”グローガッハ
『昏鴉の御し手』 ヒルデガルド :(“鬼道の魁主”ヴォーダン
『具象の組み手』 ダン・ロジャース :(“弄巧の摽”フィフィネラ
『骸軀の換え手』 アーネスト・フリーダー :(“応化の伎芸”ブリギッド
『擒拿の捕り手』 オルメス :(“至知の月輪”ケリドウェン
『剣花の薙ぎ手』 虞軒 :(“奉の錦旆”帝鴻
『強毅の処し手』 季重 :(“突軼の戟”窮奇
『精微の解き手』 笵勲 :(“賢哲の鑑”白澤
『露刃の巻き手』 劉陽 :(“瘴煙の鉦”相柳
『玉紋の騎手』 ナム :(“曠野の手綱”名乗らず)
『燿暉の選り手』 デデ :(“爛班の炉”シャフレワル
理法の裁ち手 ヤマベ :(“祛邪の刻屈”オオヤマクイ
『興趣の描き手』 ミカロユス・キュイ :(“異験の技工”ヨフィエル
『氷霧の削ぎ手』 ノーマン・パーセル :(“凜乎の涌沸”スリュム
『戈伏の衝き手』 クレメンス・ロット :(“利鋭の暗流”ノート
『荊扉の編み手』 セシリア・ロドリーゴ :(“欺蔽の套子”クエレブレ
『魑勢の牽き手』 ユーリイ・フヴォイカ :(“虺蜴の帥”ウァラク
『蘇活の撫し手』 アルマ :(“生阜の抱擁”ケレス
『攪和の打ち手』 グリンカ :(“紀律の按拍”ダジボーグ
『奔馳の抜き手』 ジョージ :(“長柯の腕”ルグ
『誑欺の吐き手』 ファーディ :(“闊遠の謡”カリオペ
『替移の接ぎ手』 アーヴィング :(“訓議の天牛”ザガン
『空裏の裂き手』 クロード・テイラー :(“嘴距の鎧仗”カイム
棺の織手 ティス :(“冥奥の環アシズ

番外
『誘惑の絡め手』 (不明) :(不明)
『理性の担い手』 (不明) :(不明)
『潜める追っ手』 ノトブルガ :(“秘説の領域”ラツィエル
『末路の語り手』 シュルス・レルリス :(“筆記の恩恵”ペネムエ
『葉書の読み手』 魔女理銅子 :(“不明”丸子師走)

【由来・元ネタ】
英語でフレイムは「炎」、ヘイズは「もや、霧、かすみ」という意味。フレイムへイズ(Flame Haze)とは「炎の揺らぎ」という意味らしい。
多くの契約者の姓は、西洋の作曲家の名前からとられている。決して誰でも知っている名前ではないが、音楽史を学んでいれば名前を聞いたことがあるレベルを中心に選ばれているようである。

【コメント】
アニメ版から登場していた。
☆番外編にも出てこないような二次創作ネタを入れるのやめないか(メアや[巌楹院]のゴグマゴーグは出てるな)?
☆外伝にちゃんと登場しているキャラクターは入れていいだろう。
☆[宝石の一味]がオルメス以外とも絡んでいたら面白そうだったのにな。
☆新世界『無何有鏡』が創造されたから、フレイムヘイズはもう二度と生まれないんだろうな。
☆↑というか、人間の存在を分解する事を不可能とする理がフレイムヘイズ誕生の阻害(過去・現在・未来を捧げる事の妨害になる)という余禄を生んでたりしてな。もちろん、そんな副次作用は無いのかもしれないけどな。
☆↑2新世界『無何有鏡』に渡ってない“徒”もいるが、“紅世”との繋がりが断ち切られたことでこの世で生まれる可能性も無くなった。新世界『無何有鏡』では多分生まれないだろうけどな。
☆“存在の力”があふれている新世界『無何有鏡』なら、人間のままでも自在法を扱うことできそうだしな。喰われることもないから、戦うにしてもフレイムヘイズ化する必要が無いかもしれないな。
☆↑封絶を張られたら、手も足も出ないんじゃないか?たとえ核兵器を持ち出してもどうにもならないのは、『冷戦下の事件』の通りだ。
☆↑原作でも『封絶』張られてようが、動く手段はいくつか出ているわけだが?そして『ヒラルダ』の例を見てもわかるとおり、人間であっても自在式は扱える。既に用意してある自在式を動かすことが出来るなら、自らそれを生み出すことも当然可能だろう。なにしろ旧世界と違って、“存在の力”を使うと自分が消えるって枷がないんだからな。
☆高橋弥七郎の新作『カナエの星』でも、『半開きの目』という力が登場している。
最終更新:2020年10月29日 17:50